インバウンド市場が成長する中、訪日客がどこでなにをしているかを明らかにするために、様々なSNS分析やGPSを活用したロケーション分析が行われており、インバウンドの足取りが徐々に明らかになってきました。訪日ラボでも、インバウンド人気観光地ランキングおよびSNSなどの投稿から、なぜその観光地が人気なのかを分析しています。
このように、実際に「訪日客」の動向やトレンドについては明らかになりつつありますが、「外国人」に有名な観光地や、なぜその観光スポットに行きたいと思っているのかというのは、意外と知られていません。新規の訪日外国人、つまり次のインバウンド需要を掴むためにも「旅マエよりもっと前のフェーズにいる外国人」すなわち「”超”旅マエ外国人」が知っている日本を知ることは重要でしょう。
そこで、訪日ラボでは、世界80か国4,000万人の調査回答者へのアクセスを有し、海外リサーチに特化したソリューションを提供するSyno Japan株式会社に協力いただき、「”超”旅マエ外国人が知っている日本」について調査しました。早速見ていきましょう。
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「”超”旅マエ外国人が知っている日本」調査概要
今回、調査にあたって訪日主要国のうち、特にリピーターの多い国として台湾、そして急速に成長している東南アジア市場としてタイ、およびシンガポール、そして今年から誘致が加速している欧米豪の中からアメリカ、ドイツの合計5ヵ国を対象にインターネット調査を実施しました。
質問項目は、TripAdvisorを参照したインバウンドで人気の観光地ランキング TOP30にあがる観光地にについて、「一般の外国人に知名度はあるのか」「1番行きたい観光地はどこか」について質問。さらに、1番行きたい日本の観光地に抱くイメージを自由回答とすることで「旅マエ以前の準訪日外国人は、何を基準に観光地を選ぶのか」を明らかにしようという、といったものです。
今回の調査で見えてきたことは
- 欧米豪市場においては、観光スポットレベルでの認知獲得が進んでおらず「そもそも日本の観光地名や、その魅力の認知を広める」ことが課題。
- インバウンド市場として順調に成長している台湾、タイなどでは、一般的に日本の観光スポットが知られている。
- 外国人に刺さる日本の観光資源の訴求ポイントは「美しさ・歴史・自然」
などがわかりました。それぞれについてより詳細に見ていきましょう。
「”超”旅マエ外国人が知っている日本」調査詳細
Q1:次の観光地から地名を知っているものを選択して下さい
今回調査として観光スポットの選択項目にしたのは、TripAdvisorを参照したインバウンドで人気の観光地ランキング TOP30です。各選択肢の紹介はこちらのページを参照頂くとして、この「訪日外国人に」最も人気の観光スポットTOP30が、各国の”超”旅マエ外国人に、どれほどの認知度があるのでしょうか?
次の観光地から地名を知っているものを選択して下さい※複数回答
観光地名 | 台湾 | タイ | シンガポール | アメリカ | ドイツ | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|
広島平和記念資料館 | 26.16% | 28.27% | 29.39% | 21.64% | 13.01% | 23.69% |
奈良公園 | 51.63% | 28.55% | 23.11% | 4.64% | 3.11% | 22.21% |
明治神宮 | 33.47% | 21.50% | 24.21% | 4.16% | 2.52% | 17.17% |
金閣寺 | 44.62% | 29.94% | 5.73% | 2.13% | 1.36% | 16.76% |
京都駅ビル | 25.67% | 24.56% | 22.74% | 4.73% | 4.37% | 16.41% |
知っているものはない。 | 19.74% | 19.00% | 34.38% | 65.70% | 76.80% | 43.12% |
こちらの表は、今回調査対象の各国の回答率平均値TOP5を抽出したものです。訪日主要国である台湾、タイでは、親日国であり、また訪日経験者も多い国ということもあってか、人気ランキング上位の観光スポットを中心に認知度は高い水準を示しています。
一方でアメリカ、ドイツでは、歴史的背景から広島平和記念資料館を除きすべての観光スポットで知名度が5%以下で、知っているものはないとする回答がアメリカで65.7%、ドイツで76.8%に及びました。このことから、欧米豪市場においては「そもそも日本の観光地名や、その魅力の認知を広める」ことが課題であることがうきぼりになりました。
Q2:次の観光地から最も行ってみたい場所を選択して下さい
では、これらの観光スポットの中から最も行きたいところはどこなのでしょうか?単一回答で質問した際の、各国TOP5は以下のとおりです。
次の観光地から最も行きたいものを選択して下さい※単一回答
順位 | 台湾 | タイ | シンガポール | アメリカ | ドイツ |
---|---|---|---|---|---|
1位 | 奈良公園(18.57%) | 河口湖(14.87%) | 広島平和記念資料館(11.83%) | 広島平和記念資料館(37.75%) | 広島平和記念資料館(30.54%) |
2位 | 金閣寺(12.55%) | 姫路城(12.47%) | その他(9.86%) | その他(9.30%) | 奈良公園(9.21%) |
3位 | 沖縄美ら海水族館(12.05%) | 新宿御苑(7.44%) | 奈良公園(9.58%) | 松本城(5.63%) | その他(5.44%) |
4位 | 清水寺(9.23%) | 松本城(6.64%) | 沖縄美ら海水族館(7.89%) | 伏見稲荷大社(5.07%) | 松本城(5.02%) |
5位 | 伏見稲荷大社(6.52%) | 広島平和記念資料館(6.52%) | 新宿御苑(7.61%) | 姫路城(4.79%) | 姫路城(5.02%) |
台湾では、意外と京都や奈良、沖縄のベタな観光スポットが上位を占めています。タイでは、河口湖周辺にある新倉山浅間公園が、インバウンド界隈でもよく見かける「富士山・五重塔・桜」のセットのビュースポットとして人気で絶大な知名度を持っています。そのため、河口湖=富士山という認知が広まっているのではないでしょうか。
一方でアメリカ、ドイツでは、やはり広島平和記念資料館がトップにランクイン。その他では松本城や姫路城、また伏見稲荷などが上位に入っていることから、歴史的コンテンツへのニーズが伺えます。シンガポールは、丁度東アジアと欧米圏の中間的なニーズが見られます。
また、アメリカ、ドイツ、シンガポールでは「その他」の選択肢が上位にあがっています。これに対し追加で「それではどこに行きたいですか?」と問うと、「東京」「北海道」という都道府県レベルでの回答が多かったことから、Q1のでも触れたとおり、具体的な観光スポットの認知が進んでいないことが伺える結果となっています。
Q3:Q2で選んだ観光地に抱くイメージやキーワードは?
では、「”超”旅マエ外国人」が日本に興味をもつきっかけは何なのでしょうか?Q2で選んだ観光スポットに対して抱くイメージやキーワードから、各国での興味関心ポイントを見てみましょう。
Q2で選んだ観光地に抱くイメージやキーワードを5つ挙げて下さい※自由回答
順位 | 台湾 | タイ | シンガポール | アメリカ | ドイツ |
---|---|---|---|---|---|
1位 | beautiful(73) | beautiful(312) | beautiful(64) | beautiful(64) | interesting(27) |
2位 | pretty(46) | nature(85) | cool(44) | sad(36) | exciting(21) |
3位 | nice(42) | peaceful(79) | peaceful(44) | peaceful(34) | historical(14) |
4位 | deer(38) | interesting(69) | nice(36) | interesting(33) | story(13) |
5位 | clean(33) | culture(65) | interesting(29) | cool(31) | cool(12) |
各国語の自由回答についてキーワード化し、各国での出現回数TOP5をピックアップしたものが上記の表です(括弧内はキーワードの出現回数)。
これを見ると、殆どの国で「美しさ」が、日本の観光資源における魅力訴求ポイントになることがわかります。意外なのは、ドイツおいては「美しさ」はランク外で、「興味深さ」が1位となっています。
Q2で「広島平和記念資料館」がランクインした国では、「平和」や「悲しさ」といった、その歴史の悲劇を伺わせるキーワードが上位に食い込んでいます。全体を見渡して見えてくるのは、総じて「自然」や「歴史」から見えてくる、まさしくクール・ジャパン的な「美しさ」が、「”超”旅マエ外国人」に魅力的にうつるのではないか、という示唆です。
まとめ:新規顧客(初訪日外国人)を獲得するには、「外国人」の研究が必要不可欠
昨今のインバウンドビジネスにおいては、様々な分析ツールの登場や、各地での事例化によって「訪日外国人」の分析・研究が進んでいます。しかしながら、2020年やそれ以降を見据え、観光立国を果たしていくのであれば、新規顧客の発掘が必要不可欠です。すなわち「一般の外国人」の研究をすすめ、いかに日本に興味を持ってもらい、訪日需要に繋げていくかが、今後の日本のインバウンドを左右する大きな課題でしょう。
<調査概要>
- 調査対象・有効回答数:
- 台湾(810)、タイ(874)、シンガポール(355)、米国(355)、ドイツ(239)
- 属性:
- 台湾(男性49.56%、女性50.44%)、タイ(男性48.84%、女性51.16%)、シンガポール(男性48.98%、女性51.02%)、米国(男性44.54%、女性55.46%)、ドイツ(男性50.49%、49.52%)
- 調査日:
- 2017年12月14日〜18日
- 調査方法:
- インターネット調査
- 調査協力:
- Syno Japan株式会社
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