今国会において統合型リゾート(IR)実施法が成立しました。これを元に政府はカジノの開設に向けた準備を本格的に進めることになります。しかしこの後には実際にIRを導入する各地方自治体における議会承認〜国の認定が必要となりますので、IR導入を検討している各自治体レベルでこうした議論が進んでいくこととなります。それでは今回成立した「カジノ法案」と言われる「統合型リゾート(IR)実施法」によって何がどうなるのかを改めてご説明しましょう。
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そもそも「IR施設」とは何かをおさらい
今回は「カジノ法案」という言葉が先行していますが、正式名称は「カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法」となっており、カジノはあくまも統合型リゾート(IR)の一部に過ぎません。
統合リゾートは英語ではIntegrated Resorts(IR)と表記され、IR部分にはカジノだけではなく、ホテル、劇場、ミュージアム、MICE施設として企業等の会議用施設(Meeting)、企業等の報奨、研修旅行で使用する施設(Incentive Travel)、国際機関、団体、学会などの国際会議(Convention)、展示会、イベント(Exhibition/Event)で使用する設備を含むものです。
こうしたIR施設全体のうち、カジノ部分の床面積は通常5%未満となっていることが一般的ですが、IR施設全体で見た時にはその売上の80%以上がカジノから発生します。
日本における報道のほとんどは「カジノ」部分のみが一人歩きしているために「ギャンブルを推奨している」かのような印象を受けますが、実際にはIR施設が機能するためには、カジノ以外の部分は収支を気にしすぎることなく最高の施設とサービスを提供することに集中、そして収益部分をカジノが引き受けることによって、統合型リゾート(IR)全体の収支として見た時に黒字になるという形の施設なのです。
統合型リゾート(IR)の設置場所は全国で3箇所
さてそれではこの「カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法」について、詳細に見ていきます。
まず気になる設置場所についてですが、現時点ではその設置箇所は全国で3箇所に限るとされており、最初の認定から7年後経過後に、3箇所よりさらに設置場所を増やすかどうかの検討が行われることとなります。
都道統合型リゾート(IR)誘致を目指す都道府県や政令指定都市は「区域整備計画」を作成し、政府に申請する必要がありますが、現時点では北海道、大阪、和歌山、長崎などが都道統合型リゾート(IR)誘致に名乗りをあげており、北海道は自然と共存する形のIRを構想、また長崎県では訪日外国人にも人気のテーマパークであるハウステンボスにIR誘致をする計画のようです。
入場料は一回6000円で入場回数の制限あり
カジノに関しては根強いギャンブル依存症の要因となる、ギャンブル依存症を悪化させるなどの懸念が持たれています。
これに関しては、主に日本人利用者を対象に一度の利用あたりの入場料を6000円徴収するほか、入場回数も7日間で3日、28日間で10回までと細かく規定されています。
さらに本人や家族からの申告に基づく利用制限措置も取られ、当然ながら20歳未満が利用することは出来ず、暴力団員の入場固く禁じれられています。ただ、あくまでこうした入場料、利用回数の制限は日本人利用者に限られるものです。
本人確認はマイナンバーカードで厳格に行う
日本人利用者、また日本に住んでいる外国人がカジノを利用する際の本人確認、また利用回数の確認はマイナンバーカードを用いて厳格に行い、なりすますなどでの利用、本人確認なしでの利用が起きない体勢を築くことになります。
カジノの事業収入の30%が納付金(税金)となる
冒頭にご説明したように、統合型リゾート(IR)の収益の80%以上を稼ぎ出すカジノ部分からの収入の30%を、事業者は納付金(カジノ税)として国と地方自治体に収める必要があります。
大和総研の試算によると、シンガポールにあるIRと同程度の規模のIRが日本で3箇所に建設された場合について、その経済波及効果は、運営によるものだけで年間およそ2兆円になるとしています。
ということは、単純計算で1箇所のIRあたりの運営による経済効果は年間でおよそ6600億円となり、IR誘致に成功した都道府県や政令指定都市は、その30%である1980億円の税収が新たに見込めるということになります。
カジノ部分の面積はIRの延べ床面積の3%まで
世界の事例をみるとIRにおけるカジノの床面積は5%以下であることが一般的ですが、今回の法案によると、日本の場合はカジノの面積はIR施設の延べ床面積の3%までとする方針です。なお、この3%には通路、飲食スペースは含まれません。
実際にカジノが開業するのは2020年半ばの見通し
今回遂に政府が新たな観光収入の柱になるとして進めてきた統合型リゾート(IR)実施法が成立しましたが、設置場所の決定などに加え、政府内の検討に委ねられている事項は331項目もあります。そのため、全てが順調に進んだとして、日本ではじめてのカジノの開業は2020年半ばとなる見通しです。「観光先進国」を実現するために政府が大号令をかけて進めるIRの今後から目が離せません。
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