兆単位の経済損失が!?…なぜ2020年のサマータイム導入に関して慎重な議論が必要?簡単に考えてはいけない日本のサマータイム問題を 簡単にわかるように解説

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今年7月に、五輪組織委員会の森喜朗会長が、安倍晋三首相にサマータイムの導入を要請したことを受けて、日本でもサマータイムが導入されるのかという議論、実現性があるのかといった話に加え、IT業界からの猛反発など様々な反応が巻き起こっています。

日本サマータイム導入で「損する人・得する人」インバウンド業界に与えるメリットとデメリットを検証

2020年の東京オリンピックに向けてサマータイム導入が本格的に検討され始めました。五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が二度にわたり官邸で安倍首相に直談判を行い、積極的な働きかけをしたのが功を奏した形です。しかし政権内の菅義偉官房長官は慎重論を表明しており、ネット世論でも賛否両論が繰り広げられています。なぜオリンピックのためのサマータイム導入に批判が相次いでいるのでしょうか?改めてサマータイム導入のメリット・デメリットを確認し、インバウンドに与える影響を考えてみましょう。インバウンド...

サマータイム(夏時間)とは、日の出時刻が早まる3月から11月にかけて、時間を1時間進めることで、太陽が出ている時間を有効的に活用しようとする考え方です。欧米を中心に古くから導入されてきたサマータイム。今回、導入が検討された背景には、2020年の東京オリンピックの大会期間中の2週間に関して「この時期の日中にオリンピックを開催する事が適切なのか?」という話題が大きくなってきたことから、競技開催時間を早めることに加えて検討が始まったものです。

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サマータイム導入に関する政府と東京都の対応

2020年の東京オリンピック開催期間中のサマータイム導入について、菅義偉官房長官は8月6日午前の記者会見で、「政府として決定した事実はない」と話しており、サマータイム導入は決定した事項ではないと語っています。

しかし、安倍晋三首相はサマータイム導入を検討するよう自民党に指示。元々は東京オリンピックの開催前年、開催年の2019年、2020年のみの運用の方針だったものが、オリンピック開催を機に恒久的に夏時間を運用する方針で、政府・与党は、秋の臨時国会への議員立法提出を目指しているとされます。

また実際の東京オリンピックの開催都市である東京都の小池百合子知事は、「日本全国での話になるので、国において検討を深めるのを見守りたい」と事態を静観しています。

IT業界を中心に有識者はサマータイム導入に猛反発

しかしこのサマータイム導入について、IT業界は猛反発していますが、それはなぜなのでしょうか?その理由は大きく分けて、「準備時間が足りない」「影響範囲や対応可否が不明」「リソースの不足」「経済損失が膨大になる恐れ」の4つがあります。それぞれについて解説しましょう。

サマータイム導入への反発その①:そもそも東京オリンピック開催までの時間が短すぎる

政府が検討しているのは2019年の試験導入、2020年からの本格導入とされています。サマータイムによって変更が必要となるのは、日本全国で「時間」を基準に稼働しているありとあらゆる全てのシステムです。

たとえば身の回りの家電、スマホ、PCだけにとどまらず、東京証券取引所、銀行など金融の現場、電車やバスなどの交通網、国や自治体のインフラ、医療現場、放送システム、企業内の業務システム、財務、人事給与などのシステムまで、「時間」を基準に稼働しているシステムは数知れず、こうしたシステム全てのサマータイム対応には、調査段階だけで膨大な時間が必要であると専門家は語ります。

サマータイム導入への反発その②:サマータイム導入による影響の範囲、対応が本当に出来るのかが不明

海外ではサマータイムの導入に成功していると言われますが、海外では「時間」を基準に稼働する家電や様々なシステムの導入以前からサマータイムは導入されています。つまり、家電やシステムは、サマータイムを採用することを前提に設計されているという経緯があるのです。

しかし、日本の場合、既に一般家庭に浸透している「時間」を基準に稼働する家電、「時間」を基準に稼働するシステムが、設計の段階でサマータイム導入を意図して設計されていないという大きな違いがあります。

また、一般的なサマータイムは時間を1時間進めるという思想ですが、政府が今回検討している日本版サマータイムは、1時間ではなく2時間進めようというものです。サイバーセキュリティを専門とする立命館大学情報理工学部の上原哲太郎教授によると、サマータイムを導入することの必要性の調査、工数の見積もり、予算見積もり、リソースの確保、修正作業、動作確認テストなどは、通常でも4、5年かかるとしており、そもそもサマータイム導入による影響の範囲がどの程度であるのか、対応が本当に可能なのかは、現時点では全くの未知数です。

サマータイム導入への反発その③:業界としてそもそもリソースが足りていない

エンジニアの人材不足による2020年問題が叫ばれて久しく、こうした事態を受けて、今年3月に発表された新学習指導要領では、2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化される事が決定しています。

こうしたエンジニアの人材不足の中、既に消費税改正の対応、元号改正への対応でエンジニアのリソースが不足することが明らかです。そこに来て、サマータイムの導入が正式決定するとなると、システムの修正作業、動作確認テストなどにさらに膨大なリソースが必要となります。

その対応に対してどれだけの時間がかかるのか不明ですが、通常でも4、5年かかるとされる作業を、2019年からの試験導入に間に合わせようとすると、どう考えても通常業務を全て止めても間に合うかどうか…という状況であることが容易に想像が付きます。

ただでさえ労働時間が長いとされるエンジニアの労働時間が、さらに長くなることも想像され、これは厚生労働省が進めている「働き方改革」に完全に逆行しています。

サマータイム導入への反発その④:サマータイム導入による経済損失が導入による効果を超える可能性が非常に高い

政府が検討を進めるサマータイムを導入した場合の経済効果について、第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストの試算では、明るい時間帯の支出が増えるなどの要因で年7,000億円程度の経済効果があるとしています。

しかし立命館大学情報理工学部の上原哲太郎教授によると、サマータイムの導入は調査や対応を重要インフラだけに限定して試算しても少なくとも3000億円程度がコストとして必要としています。

そのため、サマータイムを導入するとなると、前述のIT企業の疲弊、サマータイム導入によって時間の調整が必要になる家電、交通、金融、自治体などコールセンターのパンク、サマータイム導入に伴うシステムアップデートと称したサイバーテロの横行などによって、その経済損失は兆単位に達すると試算しています。

まとめ

日本におけるサマータイム導入はまだ検討が始まった段階ではありますが、警戒すべきは、主にリテラシーの低い一部の世論がサマータイム導入がどれほど難しいことなのか、その経済損失がどの程度なのかを全く理解しないままに、「なんとなく良いことのようだ」ということで賛成の論調に傾いているように見えること、政府もこうしたごく一部の意見を反映した世論を元にサマータイム導入に向けて動いているように見えることです。

東京オリンピックによる経済効果の裏で、サマータイム導入による経済損失が膨らんでいるというような未来を避けるためにも、慎重な議論が求められます。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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