ことし3月にJRおおさか東線が全線開業したことを受け、新大阪駅から奈良方面のアクセスが大幅に便利になり、奈良のインバウンド誘客の促進が期待されます。奈良県の宿泊者数増加が急務な背景もふまえ、おおさか東線開業による具体的なメリットと今後の課題について見ていきましょう。
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おおさか東線開業で奈良まで乗り換えなし&10分短縮
これまで新大阪駅から奈良駅へ移動する際は、東海道線に乗車後大阪駅で大阪環状線などに乗り換える必要があり、所要時間は1時間ほどかかっていました。今回のおおさか東線の全線開業により、乗り換えが不要となるだけでなく、乗車時間も約10分短縮できるようになります。
新大阪ー奈良間を初めて直通で結ぶ「直通快速」として1日8本が運行されることから、関西の玄関口である新大阪駅から奈良方面へのインバウンド誘客の促進への効果が期待されるでしょう。観光業者からも、全線開業によって奈良を訪れる訪日客が増加することを期待する声が上がっています。JR西日本は、全線開業で約10万人の利用者を見込んでいます。
2020年に向け宿泊施設の供給過剰が懸念される奈良へインバウンド誘客促進を
ニッセイ基礎研究所の2020年・2030年に向けた宿泊施設の稼働率予測から、奈良県は近畿2府4県の中で訪日外国人観光客の滞在時間がもっとも短く、奈良市を訪れた訪日客のうち奈良県に宿泊するのはわずか7.9%に留まっていることが明らかになりました。約70%は奈良県ではなく大阪府、約20%は京都府に宿泊しているのが現状です。
京都では稼働率7割切りも…インバウンド急増とホテル建設ラッシュの裏にあるリスクとは/2020年の宿泊施設の都道府県別・稼働率予測
現在全国各地で、2020年に東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、宿泊施設の建設が進んでいます。2018年に訪日外国人観光客数が3,000万人を突破し2030年に6,000万人を目指す中で、訪日客のさらなる増加が見込まれる一方、ニッセイ基礎研究所は、宿泊施設に対する需要の地域差の広がりが顕著になるとの予測を調査結果より明らかにしました。都道府県別にみた宿泊施設の稼働率予測から、今後の宿泊施設の課題やインバウンドの地方誘客のあり方を見ていきましょう。インバウンド対策にお困りですか?「訪...
現在奈良県はホテル・旅館の客室数が全国最下位である一方、客室不足には至らないとの予測ですが、過去のペースを上回る客室数の増加が予定されています。ホテルオープン計画を加味すると、2020年と2030年の稼働率は60%を切る見込みで、稼働率の大幅な低下が懸念されるでしょう。奈良県での滞在時間を延ばし宿泊施設の稼働率を底上げするためにも、大阪から奈良へのさらなるインバウンド誘客促進の1つのきっかけとなる、おおさか東線の全線開業の効果に期待が集まります。
アクセス向上だけではインバウンド誘客は厳しい!?
おおさか東線全線開業による新大阪ー奈良間のアクセス向上だけでは、奈良県へのインバウンド誘客促進は厳しいとの見方もあります。現在は、京都駅から近鉄特急を利用し奈良へ移動する訪日客が多いことから、おおさか東線の全線開通によりアクセスが向上するからといって、新大阪駅から奈良県を訪れる訪日客数の伸びは不透明です。
ただ、奈良県を訪れる上でのアクセスの選択肢が増えるのは事実であるため、来日前から訪日客が情報収集できるよう、積極的にアクセスの利便性をPRしていくことが重要となるでしょう。奈良市観光協会はJR西日本などと協力し、16日から県内の寺社を巡るツアーなどを展開し、全線開業を国内外へPRします。
まとめ:訪日旅行の行き先の新たな選択肢として奈良をPR
おおさか東線の全線開業により、関西圏の旅行先の新たな選択肢としての奈良県の認知拡大と、奈良県へのインバウンド誘客促進が期待されます。新大阪ー奈良間のアクセスが大幅に向上した点と奈良県の魅力的な観光資源の積極的な情報発信が、奈良県での訪日客の滞在時間を延ばし宿泊者数を増やす上での鍵となるでしょう。
<参考>
・ニッセイ基礎研究所:都道府県別にみた宿泊施設の稼働率予測〜インバウンド拡大に伴うホテル建設が進み、一部地域では供給過剰も〜
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