2019年9月に迫った今年のラグビーワールドカップ(W杯)は、日本の各地で試合が行われます。
ラグビーは世界的にも人気の高い競技であり、海外から多数のファンが訪れ、そのついでの観光旅行がにぎわうと考えられます。W杯出場チームの欧州とオセアニア地域では旅行への一人当たりの消費額が大きく、インバウンド経済にも良いインパクトが期待されています。
日本といえば温泉というイメージを持つ訪日外国人は多く、この期間の温泉への来訪も増加が見込まれます。その際、問題となってくるのがタトゥーです。欧州とオセアニア地域では一般の人が気楽にタトゥーを楽しむ傾向や文化がある一方で、彼らを迎え入れる日本では刺青に反社会的なイメージが根強く残っており、特に通例として入場を制限してきた温泉施設での受け入れ方法が模索されているようです。
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「タトゥーがあっても入浴できる100の温泉」を公開
ラグビーW杯の一部試合は、温泉の有名な大分県で開催されます。大分県の代表的観光地である別府市では、タトゥーがあっても入浴が可能な市内100施設を示す地図を作成し、インターネットで公開を始めました。
このサイトは外国人向けに作られ、日本の温泉事情とタトゥーの扱いを説明するとともに、観光情報と楽しみ方を紹介しています。「旅診断」を利用した外部のアプリとの連携も行われているので、ボランティアガイドに案内してもらうことも可能です。それぞれの機能を紹介します。
1. 別府温泉を紹介する「Enjoy!onsen」
「Enjoy!onsen」は訪日外国人向けに作られた別府温泉を紹介するウェブサイトです。別府市の作成した地図は、"100 Tattoo-allowed Hot Springs in Beppu, Japan"として紹介されています。「タトゥーOK」「温泉タイプ」「施設のスタイル」「泉質」の条件から要望にあった施設があるのかどうかを調べることができます。検索結果はGoogleマップで示されるので、現在地からの距離といった情報の把握も容易になっています。
大浴場に入浴可能な50施設を水色・貸切湯40施設はオレンジ・足湯や手湯など服を着たまま楽しむ10施設は青色と、施設のスタイルも一目でわかるような工夫がされています。
2.スマホ用アプリ「Huber.TOMODACHI GUIDE」ガイドマッチングサービス
「Enjoy!onsen」内の「旅診断」に回答すると、運営会社Huberが紹介するボランティアがレコメンドされるガイドマッチングサービスが利用できます。スマホ用アプリ「Huber.TOMODACHI GUIDE」を用いて、目的地付近のボランティアガイドとアプリ上でコミュニケーションができるようになっています。目的地や希望を伝えることができ、お互い合意したら待ち合わせして出かけるシステムです。
利用者は個人情報登録が必須となっています。外国人はパスポートを、ボランティアガイドも日本国内の身分証明書を登録することで、トラブルの発生を防ぎます。
ホテルや旅館ではタトゥーは断っている
宿泊施設と温泉が一つの敷地内に建設されているホテルや旅館では、タトゥーの入った人の入場を断るケースもあります。これは、日本社会にはいまだ刺青・タトゥーは反社会勢力という観念が広く存在しており、宿泊客の減少が心配されるためです。銭湯のような「公衆浴場」は保健衛生上必要な施設だとされ、入れ墨(タトゥー)が入っていても入場することが可能ととらえることのできる判例も過去には出ています。同時に、施設が入場を断ることは社会通念上の判断であり、法令違反にはならないとの見解も示されており、入れ墨(タトゥー)を理由に施設側が入浴を拒否することに法的な根拠があるかというとはっきりしないのが現状のようです。
実はタトゥーはそんなに気にされていない?
例えば、東京にある温泉施設「大和の湯」ではタトゥーのある客の入浴は禁止していませんが、他人の健康に被害を及ぼすタバコは禁止しています。タバコと比べると、タトゥーが他人に直接的な迷惑をかけていないことは明白です。
別の銭湯では「タトゥーがあるだけで迷惑な風紀を乱すお客様ということにならない」という意見と一緒に、「大声で喋る」「騒ぐ」などの迷惑行為を注意するポスターを掲示してます。
タトゥーのイメージを変えてきたのは著名人
世界を舞台に活躍するスポーツ選手や歌手には、タトゥーを入れている人も少なくありません。
例えばイギリスのサッカー選手だったデヴィット・ベッカム氏は家族への想いをタトゥーにデザインしています。現役時代の活躍はもとより、引退後も継続的に公益的な運動に参加することで世界中の人々の尊敬を受けています。昨年電撃的引退を果たした歌手の安室奈美恵さんも、ベッカム氏同様、社会的な尊敬を集めながらタトゥーのある人物でした。沖縄の観光大使を務め国際的な日本のイメージアップにも貢献してます。
こうした有名人の存在が、タトゥー=反社会というイメージを徐々に薄めつつあるといえるでしょう。
広まりつつあるタトゥーフレンドリー、観光立国まであと一歩
ラグビーW杯の開催により、温泉どころの大分県にも訪日外国人が増えることが予想されます。タトゥーを反社会的人物とリンクする入れ墨と同一視していたことは過去になりつつありますが、実際のところまだ抵抗のある日本人も場所によっては少なくありません。
アプリを通じ、受け入れ態勢の整った施設を訪日客に示すことで、トラブルの回避と訪日旅行の充実を図ることができるでしょう。今回の大分県の取り組みは、日本が観光立国を目指すにあたり、ハード面と並んでソフト面のアップデートも必要だという示唆を与えてくれる、一つの貴重な事例になるかもしれません。
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