旅行業界は、今や観光関連産業は第一線で日本経済を支える産業として将来を担っており、旅行業界は就活生にも注目の業界の一つです。
JTB、楽天、近畿日本ツーリスト、エイチ・アイ・エスは旅行業界の大手4社として名をはせています。帝国データバンクは8月に「2018年の国内旅行業者の経営実態調査」を発表し、国内旅行業者の2018年の売上高合計(2016年~2018年の売上高が判明した2881社)は前年比1.6%増の4兆6758億円となったと伝えています。JTBやエイチ・アイ・エス(HIS)、日本旅行などの大手旅行会社を中心に増収となったそうです。
観光業界は、当然ながら、近年話題性の高いインバウンド市場とも深く関連しています。またこの頃はデジタル化や災害対策にも注力している業界です。
この記事では、旅行業界、観光産業を取り巻く現状や、日本の旅行業界における大手4社の存在と特徴、将来的な課題や今後の展望について解説します。
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旅行業界とは?
近年の旅行業界は、毎年過去最高を更新するレベルで推移するインバウンド市場の拡大や、一時は下火であった国内旅行の回復傾向によって将来性のある業界として注目されています。2018年に観光庁が発表したデータによれば、日本における観光消費額は20兆円規模であり、前年比でもプラスの結果となっています。
どんな仕事?
旅行会社は宿泊施設や航空会社、鉄道会社から部屋や座席を仕入れ、ツアープランを組んで顧客に販売します。近年ではOTA(Online Travel Agent)と呼ばれる無店舗型のオンライン旅行会社が増加しており、大手旅行会社では店舗の展開とともにwebサイトを利用した販売も行っているケースが増えています。
旅行会社における職種としては、旅行の企画にあたるツアープランナー、顧客と対面して営業活動に従事するカウンターセールス、ツアーに同行して案内業務を担うツアーコンダクターなどがあります。
旅行会社によって取り扱っている宿泊施設や航空会社が異なるのは、それぞれが自社のコネクションを発揮して仕入れるためで、旅行会社では宿泊施設やレジャー施設、インフラ各社と緊密に連携をとり顧客に1つでも多くのプランや選択肢を提供できるよう努めています。
旅行業と旅行業者代理業の違い
旅行業では旅行の企画をし、旅行業者代理業では企画されたツアーやプランの販売をします。旅行業の営業には観光庁、または管轄都道府県への申請、および営業保証金の供託が必要で、企画できる規模によって3つの登録種別があります。
第1種旅行業では海外、国内を対象とする旅行全般の企画作成や実施、第2種旅行業では国内における企画作成や実施、第3種旅行業では国内における、一定の条件を満たす企画作成や実施ができます。
一方、旅行業者代理業は旅行業者と契約をし、ツアーやプランの販売を代理することによって営業しており、成約時の仲介手数料が主な利益となります。
旅行業者代理業では都道府県知事への申請のみで業を営むことが可能で供託金は不要となっています。
旅行業界の大手4社とは?
日本国内ではJTB、楽天、KNT−CTホールディングス、エイチ・アイ・エスの4社が旅行業界における大手4社とされています。JTBは国内外の旅行取扱額トップを誇る国内最大手の旅行会社で、旅行取扱額全体では1兆円以上の収益をあげています。
元々はインバウンド顧客をメインターゲットとした旅行事業を運営していましたが、事業が軌道に乗ってからは国内旅行の取扱数を増やしており、国内外の旅行全般において圧倒的な存在感を示しています。
国内最大級のECサイトを運営する楽天では国内旅行を中心とした旅行商品を取り扱っています。他サービスと連携したマーケティングはさまざまや事業を手がける楽天ならではの強みといえるでしょう。
KNT−CTホールディングスは近畿日本ツーリストとクラブツーリズムの経営統合により設立した旅行会社で、各地方に点在する連結子会社を活かして地場ならではのツアーやプランの企画を実現しています。
一方、エイチ・アイ・エスは海外旅行に特化した旅行事業を手掛けています。また、ホテル事業や格安SIM業界への参入も行っており、今後は他業界のサービスと連携した旅行商品やサービスを提供していくことが予想されています。
旅行業界を取り巻く環境
近年では訪日外国人客数の増加やそれにともなうインバウンド市場の拡大によって盛り上がりを見せている旅行業界ですが、日本人、外国人の旅行に対する意識には変化が見られるようです。以下では、旅行業界を取り巻く現状と旅行業界の将来について解説します。
日本人は旅行したくてもお金はかけたくない
平成の大不況と言われていた時代に比べると国内経済は上向きになっているものの、デフレ状態を脱したとは言いがたい状況が続いており、経済状況は日本人の旅行に関する動向にも影響を与えています。観光庁が発表している旅行・観光消費動向調査によれば旅行に関する消費動向についてはわずかに上昇傾向にはありますが依然横ばいに推移しており、1回あたりの旅行に費やす金額の平均値は減少傾向にあります。
これらの傾向からは旅行への意識の高まりはあるものの、出費は抑えたいという日本人の旅行に関する消費動向が見えてきます。
訪日外国人は増えてる!
2011年の上半期には東日本大震災の影響で落ち込んだ訪日外国人観光客数も現在では完全に回復し毎年大幅な増加を記録しています。ビザ発給要件の緩和や円安相場も相まって訪日外国人客数、インバウンド消費額とともに過去最高を更新するレベルでの推移が続いており今後の伸びにも期待できるでしょう。
また、訪日外国人観光客が増加している大きな要因の1つに観光庁が主導するビジット・ジャパン・キャンペーンがあります。
ビジット・ジャパン・キャンペーンでは、民官が一丸となってインバウンド向けプロモーションや訪日客の観光消費拡大のためのさまざまな施策に取り組んでおり、元々は訪日外国人客数1,000万人を目指して始まったキャンペーンでしたが、努力の甲斐あって訪日外国人客数は2016年には2,000万人を突破し、2018年には3,000万人を突破するなど、その数値を大きく伸ばしています。
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今後はどうなる?
世界的にインターネット社会へと移り変わる時代の中で旅行業界においても積極的にオンライン化を取り入れる動きが生まれています。OTAではオンラインのみで航空券や宿泊プランの比較検討、予約手配まで完結でき、実店舗に足を運ぶ必要がないことや営業時間に縛られず旅行のプランニングができることが好評を集めています。
また、OTAでは店舗の維持費や人件費などのコストを抑えられるため、より安価な宿泊プランやツアープランの提供が可能になるというメリットもあります。
価格という点では各社が最安値の価格競争を繰り広げる一方で、プライベートカスタムツアーや長期間の豪華クルーズ周遊など、富裕層や時間的、金銭的に余裕のあるご老人をメインターゲットとした高価なプランも増加しています。
ターゲット層を絞った旅行企画が旅行業界のマーケティングにおいては増加傾向にあり、今後も価格の二極化が進む可能性が高いといえるでしょう。
必要性が高まる訪日外国人対応策
観光庁が調査した宿泊旅行についての統計では2015年時点で年間5億泊以上の宿泊が旅行者によって行われており、そのうち6,561万泊は訪日外国人旅行客によるものであると発表されています。訪日外国人旅行者のみの宿泊数は前年比で46%増となっており、年を追うごとに訪日外国人旅行者による宿泊施設の利用が増加していることがわかります。
各旅行会社では、年々増加する訪日外国人旅行者が訪日旅行をより快適に楽しめるようさまざまな対応策に取り組んでいます。
JTB:訪日外国人向けパッケージ「サンライズツアー」
JTBでは訪日外国人観光客向けのパッケージであるサンライズツアーのリニューアルを行っています。より多くの訪日外国人にニーズに合わせたツアー提供するために、1964年に販売を開始したサンライズツアーの内容見直しを行い、それぞれの観光地を巡るツアーについて1日プランや半日プラン、ナイトツアーなど所要時間や時間帯を複数のプランから選択できるようにしています。
また、ウォーキングツアーやトレインツアー、バスツアーといったように利用する交通機関もニーズに合わせて選択できるようになっています。
「旅行会社」×「インバウンド」①:JTBの訪日外国人観光客集客への取り組みとは?
年々訪日外国人観光客は増え続けています。東京オリンピックも開催される2020年に向け、政府は訪日外国人観光客数の目標4000 万人を掲げています。そんな追い風を受け、魅力的なインバウンド市場になっているのが旅行業界です。国内の大手旅行会社は、訪日外国人観光客を集客するため、様々な取り組みを行っています。この記事では、大手旅行会社・株式会社JTBのインバウンド対策について説明していきます。インバウンド対策にお困りですか?「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客...
楽天:観光情報アプリと連動したプリペイドSIM
楽天では訪日外国人向けに日本国内で利用可能なプリペイドSIMを現地のコンビニエンスストアや空港で販売しています。さらにこのプリペイドSIMは観光情報アプリと連動しており、訪日前や訪日時の情報収集にこのアプリを利用することで、通信可能量がアップチャージされるというサービスを提供しています。
楽天グループがついにインバウンド業界に参入
訪日外国人が日本を訪れる際の不満として今なお指摘され続けているのが、世界の観光地では整備されていて当たり前の「無料公衆無線LAN環境」。そうした声に応えて登場したのが、楽天グループのプリペイドSIMカード×観光情報アプリ「J-TripGateway」です。今回はこのサービスについてご説明しましょう。楽天コミュニケーションズ株式会社のインバウンドソリューションを資料で詳しくみてみる訪日外国人向けプリペイドSIM「楽天グループのプリペイドSIM×観光情報アプリ「J-TripGateway」」を...
KNT−CTホールディングス:Tabee Japan
KNT−CTホールディングスでは訪日外国人向けの旅行情報や予約手配についてのポータルサイト「Tabee Japan」の運営を開始しました。また、写真に特化したサービスで人気を集める「Instagram」でのプロモーションにも力を入れており、多言語対応ポータルサイトや人気SNSを活用したマーケティングによりさらなる訪日外国人客の取り込みをねらいとしています。
エイチ・アイ・エス:中国人をターゲットにチャンネル
エイチ・アイ・エスでは訪日外国人客の中でも最も多くの割合を占める中国人にねらいを絞り、旅マエ・旅ナカの中国人向けに、情報を提供するチャンネルの充実を図っています。中国のOTAと連携し、中国国内でプロモーションやフリーペーパーを発行しています。これにより、ブランドイメージを定着させたり、訪日旅行の魅力を伝えたりしています。
「旅行会社」×「インバウンド」②:HISの訪日外国人観光客集客への取り組みとは?
年々増え続ける訪日外国人観光客に伴い、2020年の東京オリンピックに向け、政府は観光ビジョンの中で、訪日外国人観光客数の目標を4000 万人まで引き上げました。そんな追い風を受け、魅力的なインバウンド市場になっている、旅行業界。国内の大手旅行会社は、訪日外国人観光客集客へ、様々な取り組みを行っています。前回の記事「旅行会社」×「インバウンド」①:JTBの訪日外国人観光客集客への取り組みとは?の続編として、今回は株式会社エイチ・アイ・エス(H.I.S.、以下HIS)のインバウンド対策について...
旅行業界はインバウンドがポイント
年々増加する訪日外国人客やインバウンド市場の拡大、2020年に開催される東京オリンピックにともなう訪日外国人客のさらなる増加を見越して、旅行業界では特にインバウンド市場をメインターゲットとした施策が注目を集めています。今後の旅行業界では、さらなる市場規模の拡大やビジネスモデルの多様化が期待されています。業界を取り巻く環境や消費動向にもポジティブな影響が表れるでしょう。
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今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。
今回もインバウンド業界最大級メディア「訪日ラボ」副編集長が、10〜11月のインバウンドトレンド情報についてお話ししていきますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
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