日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2019年の訪日外客数は前年比2.2%増の3,188万2,000人でした。JNTOが統計を取り始めた1964年以降の最高値です。
一方、12月は韓国市場の減速により前年同月比4.0%減の252万6,000人となりました。
今回は、市場ごとの特徴をふまえ、2019年の訪日外客数の動向を解説します。
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東アジアは韓国市場が減速、同時に3市場で過去最高を記録
東アジア市場では、韓国市場の動きに注目が集まりました。
韓中関係の改善による中国への渡航需要回復や韓国経済の低迷、日韓関係の悪化により航空便の減便や運休が重なり、8月以降の訪日外客数は半減する状況となっています。
特に12月は前年同月比63.6%減と、大幅に減速しました。日韓情勢の影響は、日本旅行商品の不買行動も引き起こしましたが、JNTOの公式SNSでの情報発信や「日韓交流まつり」へのブース出展が功を奏し、11月以降は一部旅行会社や航空会社で日本旅行商品の広告が再開されました。
韓国市場が減速する中でも、中国と台湾、香港はそれぞれ過去最高の訪日旅行者数を記録しています。特に中国は、全市場で初の950万人超えとなりました。
中国と台湾のリピーター、FITを東北や四国へ誘客
中国と台湾ではリピーターを中心にFIT旅行の需要が高まったことから、インフルエンサーや有名タレントを活用し、東北や四国などへの地方誘客プロモーションを実施しました。
香港では、6月上旬以降に「逃亡犯条例」改正案への反対が発端となった大規模デモの影響で、空港が閉鎖されるなど混乱を招きました。しかし一方で、日本の地方都市への新たな航空路線の就航ならびに増便に伴い、家族やカップル、友達同士の旅行などあらゆる旅行スタイルを楽しむリピーターが増加したと考えられます。通年の訪日外客数は過去最高を記録する結果となっています。
東南アジア市場、現地での訪日旅行商品の販促に手応え
東南アジア市場は、タイ・シンガポール・マレーシア・インドネシア・フィリピン・ベトナム・インドの全市場において、過去最高の訪日旅行者数を獲得しました。
なかでもフィリピンは年計で初の60万人超え、マレーシアは50万人超え、インドネシアとベトナムは40万人超えと、高い伸びを記録しています。
この成長の理由に現地で開催された旅行博や旅行フェアがあります。JNTO等の出展を通じ訪日旅行商品の販売促進を実施したことや、BtoB向けのセミナーや商談会が開催されてきました。
航空便の新規就航、増便も:フィリピンで顕著
さらにタイやシンガポール、フィリピン、ベトナム市場は、航空便の新規就航や増便が訪日外客数の伸びに大きく影響しました。特にフィリピンは、2月のマニラ〜羽田便、7月のマニラ〜関西便、8月のクラーク〜成田便の新規就航などにより、6月以降は前年同月比が20%を超える増加を記録しています。
欧米豪市場はラグビーワールドカップで急成長
欧米豪市場は、桜シーズンやラグビーワールドカップ2019の開催から訪日需要が高まり、年間を通じて好調な伸びを見せました。豪州・米国・カナダ・英国・フランス・ドイツ・イタリア・ロシア・スペインの全市場で、訪日旅行者数は過去最高となっています。
豪州は2018年12月にシドニー〜関西線を増便、2019年9月にはパース〜成田便を新規就航したことに加え、ラグビーワールドカップの日本開催も契機となり、初めて年計で60万人を超えました。航空会社との共同キャンペーンや旅行博への出展、SNSの活用とインフルエンサーの招聘なども、誘客促進を後押ししました。
英国市場をターゲットとした動画プロモーション
同じくラグビー大国である英国は、ラグビーワールドカップ開催期間中の前年同月比が9月は84.3%増、10月は85.6%増となるなど、急成長が見受けられました。ロンドン〜関西線の就航等による航空座席供給量の増加をはじめ、現役オリンピック選手を起用した東北方面を巡る動画の制作と公開や、富裕層向け旅行会社との商談会など、さまざまな方面から訪日需要の喚起に取り組みました。
「ジャポニスム2018」から引き続き日本への関心高いフランス
フランスは2018年に日仏友好160周年に併せて開催された日本関連の文化イベント「ジャポニスム2018」の影響で、日本への関心の高まりが顕著です。
エールフランス航空が羽田路線を増便したことも契機となり、全ての月で同月過去最高を更新しました。特に9月以降は、ラグビーワールドカップの開催に伴い訪日需要が高まり、前年同月比が2桁となるなど、好調に推移しています。
フランス市場の継続的な訪日需要の喚起に向け、JNTOフランス語公式Instagramを開設し、若年層をターゲットにした投稿を行うなど、新たな需要開拓にも注力しました。
まとめ:2019年の訪日客数は過去最多を記録、東京五輪に向けて弾み
2019年は、インバウンドの重点市場の1つである韓国市場が大幅に減速したものの、航空便の新規就航や増便、現地旅行博でのプロモーションが功を奏し、韓国以外のアジア市場では訪日客数が過去最多多数となりました。欧米豪市場も、ラグビーワールドカップ2019の日本開催を契機に、好調な伸びを記録しました。
東京オリンピックの開催を間近に控えた2020年は、アジア市場はリピーターを中心に地方誘客を促進、欧米豪市場は訪日旅行の認知拡大に向けた継続的なプロモーションと富裕層向けのコンテンツ拡大が、4,000万人突破への鍵となるでしょう。
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<参照>
JNTO:プレスリリース(2020年1月17日)
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