2020年3月24日、東京オリンピック・パラリンピックの開催が、最大で1年延期されることが明らかになり、7月には新たな開催日程も決定しました。
新型コロナウイルスの流行が世界各地に起きており、4か月後に収束しているかどうかの見通しも立たない中、むしろ落ち着いてイベントを迎えることができるという点ではほっとした関係者もいるかもしれません。
東京オリンピック開催まで残り4か月というタイミングで決定された延期ですが、ここまでたどり着くまでに、様々な印象的な出来事がありました。
東京オリンピックの誘致活動、世間の注目を集めた様々な関連イベントについて整理します。
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「お・も・て・な・し」で勝ち取った、東京オリンピック・パラリンピック
まずは、招致活動の開始から、東京オリンピック・パラリンピックの開催決定の経緯に関連した出来事を整理します。
誘致活動開始から開催決定まで
2020年の夏季オリンピック・パラリンピックの開催地選考には、アゼルバイジャンのバクー、カタールのドーハ、トルコのイスタンブール、スペインのマドリード、イタリアのローマ、日本の東京の6都市が立候補しました。
2012年5月23日の1次選考によって、候補がイスタンブール、東京、マドリードの3都市に絞られ、2013年9月7日にブエノスアイレスで開かれたIOC総会において、開催都市が東京に決定しました。
東京オリンピック・パラリンピック開催の決定打となった「お・も・て・な・し」
東京オリンピック・パラリンピック招致活動の成功を決定的にしたとされるのが、滝川クリステルさんによる最終プレゼンテーションです。
音節の一つひとつを示すようにジェスチャーを加えながら「お・も・て・な・し」と発音し、合掌した姿は、世界に、そして日本に大きな印象を残したようです。
「お・も・て・な・し」のリズムをまねる人や、「日本の日常生活」を基準とした違和感を指摘する人も現れました。
エンブレム(紋章)そして大会そのもののデザインも変更
東京オリンピック、パラリンピックについては、関連したもののデザインが次々と変わっていったという印象を持つ人もいるかもしれません。
知的財産権の侵害疑惑!大会の公式エンブレム撤回
東京オリンピック・パラリンピック開催の5年前となる2015年7月24日には、コンペで選出された佐野研二郎氏のエンブレムが公開されました。
ところがエンブレムに対し、ベルギーのデザイナーが自作を盗作されたとして訴訟を起こします。後に訴訟は取り下げられましたが、東京オリンピック・パラリンピックの大会組織委員会は2015年の9月1日にエンブレムのデザインの撤回を決定し、組市松紋(くみいちまつもん)という日本古来の模様をモチーフとしたエンブレムを採用することになりました。
【海外の反応】東京2020大会オリンピック・パラリンピックのエンブレム |
※新型コロナウイルスのパンデミックを受け、東京オリンピック(五輪)・パラリンピックは1年程度の延期が決定しました。詳細な日程、選考基準などは、公式情報が発表され次第、順次更新します。2020年に開催される東京オリンピックまで、あと1年程度となりました。今週からは、スポンサー企業である日本コカ・コーラ株式会社が東京2020オリンピックエンブレムを活用したデザインボトルでペットボトル飲料を販売しています。この記事では、東京オリンピックのエンブレムに焦点を当て、採用されたデザインに込められた意味...
メダルは「都市鉱山」で作る
東京2020大会は「Be better, together /より良い未来へ、ともに進もう。」の持続可能性コンセプトを掲げています。サステナブルな社会の実現へ向けて、国内外に課題解決のモデルを示すことを目的に、東京オリンピック、パラリンピックのメダルは五輪史上初のリサイクルメダルとなっています。
「都市鉱山」と銘打った使用済み携帯電話等の小型家電等から金属を集めて作成されます。 全国各地に広がったプロジェクトは、最終的には国内の全市区町村数1,741のうち9割以上にあたる1,621自治体の市区町村が参加し、2017年4月1日~2019年3月31日の2年間で約78,985トンの小型家電と621万台の使用済み携帯を回収しました。
東京2020のメダルはどんなデザイン?オリンピックとパラリンピックのテーマは?史上初の「リサイクルメダル」を解説
※新型コロナウイルスのパンデミックを受け、東京オリンピック(五輪)・パラリンピックは1年程度の延期が決定しました。詳細な日程、選考基準などは、公式情報が発表され次第、順次更新します。2020年の東京オリンピックが開幕されるまであと一年という日に、メダルおよびメダルケースのデザインが発表されました。「五輪史上初」と言われて話題になっている東京五輪のメダルですが、いったい何が史上初なのでしょうか?そのヒントは、近年注目され始めたサステナブルというコンセプトにありました。東京五輪2020年のオリ...
国立競技場もデザイン変更
2012年に「2019年9月のラグビーW杯の会場使用に間に合う」「計画予算1,300億円」「8万人規模」「開閉式の屋根」「延床面積約290,000平方メートル」などの細かい規定のもとで、コンペが実施されました。
そしてこのコンペの結果、ザハ・ハディド氏の案が新国立競技場に採用されることが決定します。しかし、建設にあたって必要な予算が3,000億円に達することが判明し、2015年に計画は白紙となりました。
同年8月には再コンペに向けて計画が動き始め、A案B案という2つの案のうち、木材を使用した国立競技場を建設するA案が採用されました。
結局、国立競技場は2019年11月に、1,569億円をかけて完成しました。もともとの計画ではラグビーワールドカップに間に合わせるはずでしたが、それも実現しませんでした。
「コンパクトな五輪」についても変更?
東京オリンピック、パラリンピックに関しては「コンパクトな五輪」をコンセプトに大会を誘致しました。しかし、その開催エリアも予算も、どんどん拡大していってしまいます。
2013年1月時点で約7,300億円と見積もられていた予算は、一時3兆円を超えるまでにふくれ上がり、その後、東京都の関連整備費を含め2兆1,600万円に縮小されました。
開催時期の延期を受け、必要経費はさらに増えることも見込まれます。
大きな物議をかもした、大会会場の設備や対策
オリンピック、パラリンピックの競技会場の設備や、観客の安全を確保するための暑さ対策には、一般人からの「本当に大丈夫なのか」という声が集まりました。
「臭い!」不十分すぎた、お台場の汚水混入対策
昨年8月15日から18日にかけてお台場にて行われたトライアスロンのテスト大会を兼ねたワールドカップが開催されました。
選手らから「臭い」などの苦情が出たほか、16日午後1時の水質検査で大腸菌が基準値(100ミリリットル以下の海水に含まれる数が250個以内)の2倍を超え、水質水準が最悪の「レベル4」に該当する数値であったことが判明しました。
17日のパラリンピックのテスト大会では、トライアスロンの3つの種目のうち、スイム(水泳)が中止となりました。これにより、ランとバイクの2種目からなる、デュアスロンへの変更が行われています。
大腸菌の大量発生については下水の流入が原因として指摘されています。通常であればトイレや風呂、台所といった家庭や工場などの汚水は雨水と一緒の下水道管で集め処理していますが、大雨が降ると処理能力が限界を超えるため、汚水は未処理のまま川や海に放流される仕組みになっています。
世界のトップアスリートが競技する会場に汚水が混じっていたというニュースは、社会に大きなインパクトを与えました。
当初はスクリーンによって、大腸菌などの不純物が海に流入するのを防ぐはずでしたがそれがうまく働かなったようです。組織委員会はスクリーンを強化し、万全の大腸菌対策を講じることを表明しています。
傘や打ち水、風流だけど有効性は…
2019年5月24日、東京都の小池百合子知事は記者会見で、東京オリンピック・パラリンピックに向けた暑さ対策として、打ち水と、日傘に抵抗がある男性でも使えるかぶるタイプの傘を推奨しました。
ツイッターなどのSNSでは、どちらもどれほど有効なのか疑問視する声が多数見られました。
とりわけかぶるタイプの傘については、傘をかぶる職員と小池氏の写真が拡散され、「恥ずかしい」「罰ゲームみたい」「つばの広い帽子じゃダメなのか」など、批判的な投稿が多く寄せられました。
東京五輪のボランティアはこんなスタイルでやらされるらしいが、やはり何かの罰ゲームなんだろうな。pic.twitter.com/swQoBdFrqm
— 🏕インドア派キャンパー 📣ⒻⒸⓀⓁⒹⓅ🔥 (@I_hate_camp) May 26, 2019
「東京は暑すぎる」マラソン・競歩の競技会場が北海道に
オリンピックの開催まで1年を切った2019年11月、マラソンの競技会場が東京から北海道に変更されることが正式に決まり、選手や観戦を楽しみにしていた層に大きな衝撃を与えました。
昨年9月から10月にかけてドーハで開催された世界陸上・マラソンの惨状を考慮した結果とされています。同大会では、夜間に実施したにもかかわらず、暑さと高い湿度のために途中棄権する選手が相次いだそうです。これを受け、選手を守ることを優先した決定がIOCによって下されました。
この判断は、東京でのマラソンに照準を合わせてきた一部の選手や強化委員会には歓迎されませんでした。何をもって「アスリートファースト」とするのかという点については、見解が分かれるところのようです。
【海外の反応】東京五輪なのに”北海道”でマラソン?「オリンピック自体もう北海道でもいい」
東京オリンピックマラソンおよび競歩が2019年11月1日の国際オリンピック委員会(IOC)での議論により、札幌での開催に決定され、前例ない会場移行に多くの戸惑いが広がりました。以前より大会開催時期の猛暑対策については様々な問題点が指摘されてきました。特に、炎天下で長時間競技する上記2種目への対策には注目が集まっていました。東京都知事の小池氏は「あえて申し上げるならば、合意なき決定」と述べ、同意ではないが最終決定権限を有するIOCの決定を妨げることはしないと、東京都としての決断を発表しました...
まるで予言の書?「AKIRA」現実は、苦渋の決断で2021年へ
次第に新型コロナウイルスが猛威をふるうようになると、東京オリンピック・パラリンピックの開催が疑問視されるようになりました。
こういった風潮の中で話題となったのが、アニメAKIRAです。
AKIRAは原作マンガが1982年に連載開始され、38年前の作品が2020年の東京オリンピック開催を予言したとして、誘致決定時からたびたび話題となっています。
新型コロナウイルスの流行により、東京オリンピックの開催可否が取り沙汰されるようになると、作中でカウントダウンを示す看板に「中止だ中止」という落書きがされているシーンがSNS上で注目され、東京オリンピック・パラリンピックの中止が現実味を持って語られるようになりました。
東京都の小池知事がオリンピック・パラリンピック中止の可能性について明確に否定する会見も開かれましたが、ともすればこのような社会的なムーブメントが影響したのかもしれません。
【AKIRA予言】今日であの「あと147日」:SNSで「#オリンピック中止」「#中止だ中止」がトレンド入り
※新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京オリンピック(五輪)・パラリンピックは1年延期され、開会式は2021年7月23日(金)、閉会式は2021年8月8日(日)となりました。新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が止まらない中、SNS上ではあるアニメの一コマが話題になっています。それはアニメ「AKIRA」の「東京オリンピック開催迄あと147日」という看板の下に、「中止だ中止」と落書きされているシーンです。2月28日は、2020年東京オリンピック開催までまさに「あと147日」とな...
カナダ選手団が不参加を表明、聖火リレーが中止
3月23日、カナダ選手団が東京オリンピックへの不参加を表明し、開催予定の2日前である翌24日には聖火リレーの中止も発表されました。
東日本大震災の被災地に、ついに聖火到着も…聖火リレー開催直前の中止決定!新型コロナ感染リスクに対応が不十分な現場も
※新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京オリンピック(五輪)・パラリンピックは1年程度の延期が決定しました。詳細な日程、選考基準などは、公式情報が発表され次第、順次更新します。今年夏、東京で56年ぶりに開催が予定されていた東京オリンピック・パラリンピックですが、新型コロナウイルスの影響により延期されることが決定しました。それに伴い、3月26日に開始予定だった聖火リレーも中止となりました。聖火は3月20日に、東日本大震災により大きな被害を被った宮城県に到着しました。昨今の事情を鑑み、聖火リ...
3月24日、ついに延期決定へ「遅くとも2021年夏まで」
安倍首相は「大会の中止はしない」「人類が新型コロナに打ち勝った証として、完全な形で実施する」旨を発言していましたが、3月23日にいたり、予定通りの開催が困難ならば、延期の判断も行わざるをえないと言及します。
その前日の22日には、IOCが、大会の延期を含めた具体的な検討を組織委員会などとともに始めていること、そして4週間以内に結論を出すとの発表をしています。
24日には安倍首相とIOCのバッハ会長の間での1年程度の大会延期の合意がなされ、2020年内の開催は見送られることが決まりました。
中止or延期?東京オリンピックは「また」幻になるのか:過去の五輪中止の歴史と経済損失予測を整理
新型コロナウイルスの流行が影響し、今年夏に開催を予定している東京オリンピックにも中止の噂が流れています。しかし、もしオリンピックが中止となれば、その前後に見込まれていた様々な業界での経済的成長が阻まれ、多大な損失が発生することは明らかです。多くの関係者が予定通りの開催へと向けて動いていますが、コロナウイルスの蔓延度によっては最悪の事態も考慮しなければなりません。3月23日には残念ながら、カナダのオリンピック委員会(COC)により、2020年東京オリンピック・パラリンピックに同国の選手団を派...
確かに進めてきた道、大会延期を乗り越えた先へ
ここまで決して平坦な道のりではありませんでしたが、 東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、関係各所は確かに物事を前に進めてきたことが確認できたのではないでしょうか。
東京オリンピック・パラリンピックの1年程度の延期が決まり、大会の中止ほどではないとはいえ、大会の運営にかかわる組織や、選手、スポンサー企業を含む多くの企業などが、大きな負担を強いられることになると考えらえます。
また史上初のオリンピック開催延期とあり、様々な戸惑うフェーズが存在するでしょう。きっかけとなった新型コロナウイルスの流行は、いわば、特定の国や組織にとっての課題ではなく、人類全体で立ち向かうべき存在です。
こうした困難を乗り越えた先に待つ東京オリンピックの開催は、世界に歴史を刻むこととなりそうです。こうした東京オリンピックの「独自性」を打ち出し、2021年の海外からの観戦客の誘致に活かしていく姿勢がこれからのインバウンド市場に求められています。
<参照>
産経新聞:トイレ、風呂、台所の汚水流入、お台場の水質「最悪」 五輪テスト中止で波紋
BusinessJournal:東京五輪、迷走の連続で露呈した招致計画の「ウソ」…いつの間にか消えた「コンパクト五輪」
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