【独自調査】9割がインバウンド売上「大きく落ち込んだ」…客足戻り始めは前回調査より楽観傾向に:新型コロナ意識調査実施

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安倍晋三首相は5月14日の記者会見で、39県における緊急事態宣言の解除を発表しました。一方東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、京都府、兵庫県、北海道の7都道府県については緊急事態宣言継続となり、そのうち大阪府、京都府、兵庫県の関西3府県については21日に改めて判断される予定です。

そこで、訪日ラボでは各社のインバウンド事業に対する影響度合いを探るため、読者・メールマガジンユーザーの皆様を対象に「緊急事態宣言解除と新型コロナ意識調査」を実施しました。

前回の調査では主に、事業への影響やそれに対する対策などを尋ねました。今回は「具体的にどのくらい影響が出ているのか」「21日に緊急事態宣言が解除された場合、いつ観光客が戻ってくるか」などを尋ねました。その結果を都市部・地方のエリア別、インバウンド事業者・ソリューション企業の業種別でも分析しました。

< 調査結果 >

  • 調査対象:訪日ラボWebサイト読者・訪日ラボメールマガジンユーザー
  • 調査方法:インターネット調査
  • 調査時期:2020年5月18日〜2020年5月20日
  • 回答者数:101名
  • 設問数:12問(回答内容によって異なります)

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新型コロナ意識調査:調査概要

この度訪日ラボが行った「緊急事態宣言解除と新型コロナ意識調査」では、まず「インバウンド関連の事業について、売り上げや客足といった側面で新型コロナウイルスに関する影響を受けているか」どうかを尋ね、次に「どの程度影響を受けているか」「この状況が続いた場合、事業をいつまで続けられるか」などを選択式で尋ねました。

今回の調査では、

  • 新型コロナで9割が売り上げまたは客足「落ち込んだ」と回答
  • 運転資金の不足により、過半数が年明けまで事業続かない可能性
  • 客足の回復時期予想、日本人観光客「秋ごろ」インバウンド「オリンピックまで」が最も多い

ということがわかりました。以下で調査結果を紹介します。

新型コロナで9割が売り上げ「落ち込んだ」

新型コロナによるインバウンド事業の売上(もしくは客足)への影響はどれくらいですか?4月の前年同月比を基準にお答えください。※単一回答
新型コロナによるインバウンド事業の売上(もしくは客足)への影響はどれくらいですか?4月の前年同月比を基準にお答えください。※単一回答
  • 質問
    • 新型コロナによるインバウンド事業の売上(もしくは客足)への影響はどれくらいですか?4月の前年同月比を基準にお答えください。※単一回答
  • 回答
    • 落ち込んだ:93.1%
    • 横ばい:4.0%
    • 増加した:3.0%

インバウンド関連の事業が新型コロナウイルス感染拡大による影響をどれくらい受けているか尋ねると、回答者の93.1%が「(売り上げまたは客足が)落ち込んだ」と回答しました。程度の差はあれ、ほとんどのインバウンド事業に新型コロナウイルスの影響が及んでいることがわかります。

売り上げ・客足の落ち込み4割が「91~100%」と回答

新型コロナによる売上もしくは客足の落ち込みは、おおよそどれくらいですか?4月の前年同期比を基準にお答えください。※単一回答
新型コロナによる売上もしくは客足の落ち込みは、おおよそどれくらいですか?4月の前年同期比を基準にお答えください。※単一回答
  • 質問
    • 新型コロナによる売上もしくは客足の落ち込みは、おおよそどれくらいですか?4月の前年同期比を基準にお答えください。※単一回答
  • 回答
    • 91~100%:42.6%
    • 81~90%:16.0%
    • 71~80%:13.8%
    • 70%未満:27.7%

次に、売り上げまたは客足の落ち込みが具体的にどれくらいかを尋ねると、回答者の42.6%が「91~100%」減少していると回答しました。91~100%減少となると新型コロナウイルスの流行前と比べほとんど売り上げ・または客足がないということになり、事業存続も危ういと考えられます。

「81~90%」「71~80%」を選んだ回答者もそれぞれ1割以上おり、およそ7割の事業者が売り上げ・客足7割以上減の大打撃を受けていることがわかります。

事業の資金繰り、過半数が「年明けまで持たない」

現在の状況がこのまま続いたと仮定します。資金などを考慮した場合、インバウンド関連事業の持続性(資金ショートしてしまいそうな時期)についてお答えください。※単一回答
現在の状況がこのまま続いたと仮定します。資金などを考慮した場合、インバウンド関連事業の持続性(資金ショートしてしまいそうな時期)についてお答えください。※単一回答
  • 質問
    • 現在の状況がこのまま続いたと仮定します。資金などを考慮した場合、インバウンド関連事業の持続性(資金ショートしてしまいそうな時期)についてお答えください。※単一回答
  • 回答(上位3項目を抜粋)
    • 来年4月以降の資金繰りも問題ない:29.0%
    • 7〜9月でショート:26.1%
    • 来年1〜3月でショート:20.3%

現在の状況がこのまま続いた場合、インバウンド関連事業をいつごろまで続けられるか尋ねたところ、「来年4月以降の資金繰りも問題ない」が29.0%で最も多い結果となりました(「答えられない・わからない」を除く)。

一方で「5~6月でショート」を選んだ回答者も13.0%おり、インバウンド事業が窮地に立たされている企業も一定数あることがわかります。

45%がすでに補助金を利用

新型コロナに関連し、政府や地方自治体などの補助金・助成金・融資について利用しましたか?※単一回答
新型コロナに関連し、政府や地方自治体などの補助金・助成金・融資について利用しましたか?※単一回答
  • 質問
    • 新型コロナに関連し、政府や地方自治体などの補助金・助成金・融資について利用しましたか?※単一回答
  • 回答
    • 利用した:45.5%
    • 利用検討中:40.6%
    • 利用しない、するつもりがない:13.9%

政府や地方自治体などの補助金・助成金・融資を利用したかどうかを尋ねると、45.5%の回答者が「利用した」と答えました。前項で見たようにすでに運転資金が不足している事業者もおり、補助金などの利用率はかなり高いといえます。

利用を検討している回答者も40.6%おり、今後補助金などの利用率はさらに上がっていくと予想されます。

補助金への理解度は比較的高い

政府や地方自治体などが提供する補助金・助成金・融資制度について、十分理解していますか?※単一回答
政府や地方自治体などが提供する補助金・助成金・融資制度について、十分理解していますか?※単一回答
  • 質問
    • 政府や地方自治体などが提供する補助金・助成金・融資制度について、十分理解していますか?※単一回答
  • 回答
    • 完全に把握し、理解している:8.9%
    • よく理解している:57.4%
    • あまり理解していない:31.7%
    • 全く理解していない:2.0%

補助金・助成金・融資制度の利用状況に加えその理解度についても尋ねたところ、「完全に把握し、理解している」「よく理解している」の合計は66.3%となり、理解度は比較的高いことがわかりました。

補助金などは種類が多く、また条件も複雑なことが多いですが、「理解していない」回答者は3割ほどにとどまりました(「あまり理解していない」「全く理解していない」を合計)。

日本人観光客の客足予想「秋ごろに戻る」が多数

21日に全国的に緊急事態宣言が解除された場合、「日本人観光客」の客足の回復はいつごろになると思いますか?※単一回答
21日に全国的に緊急事態宣言が解除された場合、「日本人観光客」の客足の回復はいつごろになると思いますか?※単一回答
  • 質問
    • 21日に全国的に緊急事態宣言が解除された場合、「日本人観光客」の客足の回復はいつごろになると思いますか?※単一回答
  • 回答(上位3項目を抜粋)
    • 秋の行楽シーズン(5か月後)ごろには:52.5%
    • 年末年始シーズン(7か月後)ごろには:18.8%
    • 1か月後ごろには:10.9%

21日に全国的に緊急事態宣言が解除された場合、いつごろまでに日本人観光客の客足が戻りはじめると思うか尋ねたところ、最も多かった回答は「秋の行楽シーズン(5か月後)ごろには」で、回答者の過半数が選択しました。

続いて「年末年始シーズン(7か月後)ごろには」が18.8%と2番目に多くなっています。「1か月後ごろには」と日本人観光客の客足回復は比較的早いと予想している回答者も1割ほどいました。

その他の意見には、「流行の第2波」がいつ来るか、またどのくらい長引くかによる、といったものが見られました。

インバウンドの客足予想「オリンピックまでには戻る」が多数

21日に全国的に緊急事態宣言が解除された場合、「外国人観光客(インバウンド)」の客足の回復はいつごろになると思いますか?※単一回答
21日に全国的に緊急事態宣言が解除された場合、「外国人観光客(インバウンド)」の客足の回復はいつごろになると思いますか?※単一回答
  • 質問
    • 21日に全国的に緊急事態宣言が解除された場合、「外国人観光客(インバウンド)」の客足の回復はいつごろになると思いますか?※単一回答
  • 回答(上位3項目を抜粋)
    • オリンピック開催までには:36.6%
    • 2月の春節(9か月後)ごろには:18.8%
    • それ以上後:16.8%

続いて、21日に全国的に緊急事態宣言が解除された場合、いつごろまでにインバウンドの客足が戻りはじめると思うか尋ねたところ、「オリンピック開催までには」戻ると予想した回答者が36.6%で最も多い結果となりました。

「10月の国慶節・紅葉需要(5か月後)ごろには」「年末年始の冬需要(7か月後)ごろには」を選んだ回答者も一定数いる一方、「それ以上後」インバウンドの客足回復には時間がかかると予想している回答者も16.8%いました。

日本人観光客の客足回復時期については「秋の行楽シーズン(5か月後)ごろ」と予想する回答者が多かった一方、インバウンドでは「オリンピック開催までには」が最も多く、日本人観光客より客足の回復が遅れると予想する人が多いようです。

なお、ほかに「解除後すぐに」「1か月後ごろには」という選択肢もありましたが、この2つを選んだ回答者はいませんでした。

インバウンドの客足回復、地方でわずかに悲観傾向/前回調査時より状況悪化か

21日に全国的に緊急事態宣言が解除された場合、「外国人観光客(インバウンド)」の客足の回復はいつごろになると思いますか?※単一回答 エリア別集計
21日に全国的に緊急事態宣言が解除された場合、「外国人観光客(インバウンド)」の客足の回復はいつごろになると思いますか?※単一回答 エリア別集計

同じ項目を「都市部」と「地方」のエリア別で集計すると、地方のほうが「それ以上後」の割合が高いことがわかりました。全体的に見ても、都市部のほうが若干インバウンドの客足回復について楽観的な傾向が見られます。

一方前回の調査では、地方のほうが都市部よりわずかに先行きを楽観視する傾向が見られました。新型コロナウイルスの流行が長引いたことで、前回の調査時(4/28~5/3)よりも地方の状況が悪化し、インバウンドの先行きを不安視する人が増えたと考えられます。

※なお、ここでの「都市部」は総務省の「大都市部」の定義に基づき、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府の6都府県としています。企業の所在地を「その他・海外」とした回答は含みません。

インバウンドの客足回復、前回調査よりわずかに楽観傾向

21日に全国的に緊急事態宣言が解除された場合、「外国人観光客(インバウンド)」の客足の回復はいつごろになると思いますか?※単一回答 時期別集計
21日に全国的に緊急事態宣言が解除された場合、「外国人観光客(インバウンド)」の客足の回復はいつごろになると思いますか?※単一回答 時期別集計
さらに同じ項目を前回の調査と比較しました。今回の調査では前回に比べ「それ以上後」の割合がわずかに減少し、「オリンピック開催までには」が微増しました。

いずれも少しの差ではありますが、39県で緊急事態宣言が解除されたのちの今回の調査では、インバウンドの先行きにわずかながら楽観ムードが漂っていることがわかります。

流行長引く可能性、第2波・第3波への備えを

すでに39県で緊急事態宣言が解除されましたが、それでもインバウンド事業の存続が厳しい企業も一定数あることがわかりました。補助金の利用率は比較的高く、現在検討中の事業者も多いことから、その利用率は今後さらに上がっていくと予想されます。

それでも、現在の状況が続いた場合はインバウンド関連の事業が年明けまで持たない、と回答した事業者も過半数いることから、日本のインバウンド事業者がかなり深刻な状況に置かれていることがわかります。

日本人観光客の客足回復時期については半数の回答者が「秋ごろ」と予想した一方、外国人観光客については「オリンピックまでには」と、客足が戻るには時間がかかると予想している回答者が多いことがわかりました。

新型コロナウイルスの「流行の第2波」は近いうちに来るといわれていますが、それがどのくらい長引くのか、またどの程度で抑え込めるのかについては、現時点では予想できません。第2波、第3波と流行が長引くことも考えられるでしょう。

したがって、この「第1波」だけで新型コロナウイルスの流行が完全に収束するとは思わずに、「流行が続く中で事業を続けていくにはどうするか」を考える必要があります。

すでに行われている他社の事例などを参考にしながら、オンライン通販を始める、他社と連携するなど、「ウィズコロナ」の中で事業を存続していくための方法を模索していくとよいでしょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

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