日本ラグビー協会は6月24日、2019年秋に開催されたラグビーワールドカップ日本大会の分析レポートを公開しました。
全国12都市で44日間にわたり、42試合(台風で中止になった3試合除く)が開催され、約1か月半のあいだ日本が熱狂した同大会は、日本人にとって記憶に新しいことでしょう。
同レポートによると、大会の経済波及効果は過去最高の6,464億円(4,309百万ポンド)となり、うち訪日客による消費が54%の3,482億円を占めたようです。
以下では、ラグビーW杯日本大会の影響を、同レポートの分析から振り返ります。
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ラグビーW杯日本大会の経済波及効果は過去最大6,464億円
チケット完売率99%で過去最高を記録した同大会では、その経済波及効果も過去最高の6,464億円(4,309百万ポンド)となりました。
前回2015年のイングランド大会の経済波及効果は約3100億円(23億ポンド)であり、大会組織委員会は今回の日本大会における15~19年度の経済波及効果の予測は総額4,372億円と2018年3月に発表していました。しかし、実績はどちらも上回る数字となりました。
経済波及効果の内訳は、(1)観光客による消費や大会運営費、スタジアムなどのインフラ整備などの「直接効果」が3,157億円(2,104百万ポンド)、(2)訪日客が飲食をした時に用いられた原材料などの生産額を示す「第一次間接効果」が2,172億円(1,448百万ポンド)、(3)前述の二つの効果による雇用者給料の増加などによるサービス・原材料の生産額「第二次間接効果」が1,135億円(757百万ポンド)でした。
同レポートは、今回の経済波及効果が高くなった要因として、「直接効果」の大部分を占める訪日客の消費支出が影響しているといいます。
訪日客の消費支出が54%の3,482億円
同大会において、訪日客が消費した額は3,482億円(2,321百万ポンド)で経済波及効果全体の約54%を占め、全体の数字を押し上げる結果となりました。
海外からの訪日客数は約242,000人で、その内訳は欧州54%、オセアニア22%、アジア9%、北米7%と、やはりラグビーが人気のヨーロッパからの訪日客が多くなりました。
また、訪日客の平均宿泊数は16泊、一人あたり消費金額は686,117円(4,574ポンド)でした。2018年の訪日外国人の平均宿泊数6泊に比べ、宿泊数が大幅に伸びているのは、ラグビーは試合間隔が長く、大会日程も44日間と長期にわたることが関係しています。
一人あたり消費金額でも、2018年訪日外国人の147,907円と比較すると4.6倍となっています。滞在期間の長期化は消費金額を押し上げる要因ではありますが、一人1泊あたりの消費金額でみても、2018年訪日外国人の25,056円に比べ、同大会では42,644円と約1.7倍となっています。
一人あたり消費金額が増えた背景には、滞在日数が長期化したことと実際に消費単価が高かったことの両方があるようです。
訪日客の消費単価が高くなったカギは「コト消費」
訪日客の消費単価を押し上げた要因には、宿泊、飲食、娯楽等サービスといったエンターテイメントに対する消費金額が高くなったことがあるようです。
同大会の訪日客と2018年の訪日外国人の消費行動を比較すると、大会の訪日客の方が一人1泊あたりの宿泊、飲食、交通、娯楽等サービスの消費単価は高く、買物の消費単価は低くなっています。
これは、ラグビーW杯の訪日観戦客からは買い物などのモノ消費よりも、食や体験などのコト消費がより重視されたと言えます。
訪日客の訪問先は平均4.8都道府県
同大会は全12都市16会場で開催されたため、訪日観戦客の多くは複数の都市を移動しました。
訪日観戦客の訪問先は平均4.8都道府県で、2018年の訪日外国人の平均2.5都道府県と比べても、より広い範囲を移動したことがわかります。
訪日客の訪問率トップ10は東京都、京都府、大阪府、広島県、神奈川県、大分県、兵庫県、静岡県、福岡県、奈良県の順でした。このうち、試合開催地ではなかったのは京都、奈良、広島と有名な観光地が揃っていることから、日本に観戦目的で訪れたものの、人気観光地にまで足を伸ばした人が多かったようです。
また、訪日客が滞在中に行ったアクティビティでは「日本の酒を飲む」や「日本の歴史・伝統文化鑑賞」「日本の日常生活を体験」などを、通常時より多くの人が経験した一方で、テーマパークを訪問した人は通常より少ない結果となりました。
訪日客「大変満足」が85%、通常より高い満足度
日本ラグビー協会は、W杯終了後、訪日観戦客に対して満足度を7段階で調査しました。
その結果、「大変満足」と回答した人がは全体の85%となり、2018年の訪日外国人平均の61%に比べると大幅に高い数字となりました。
ほとんどの訪日客には、ラグビー観戦にともなう日本への訪問に満足してもらえたと言えるでしょう。
社会現象をひき起こしたカギは、SNSの発達
ラグビーW杯日本大会は、国内でも大きな盛り上がりを見せ、日本が強豪スコットランドを破って史上初の決勝トーナメント進出を決めた試合の国内テレビ放送は、瞬間最高視聴率53.7%を記録しました。
日本で同大会が大きな話題になるにつれて、それまでラグビー好きでもなく、ルールなどにも詳しくない人々が試合に熱狂する姿が「にわかファン」としてメディアでもよく取り上げられるようになりました。
このように同大会がラグビーに詳しくない人も含め、世界中の多くの人々を巻き込んで大盛況を見せたことには、SNSの発達が関係しています。
大会期間中、関連動画のソーシャルメディアでの再生回数は20.4億回と前回のイングランド大会の3.7億回の約6倍でした。
同レポートでは、人々はSNSを通じて、試合観戦だけでは知ることのできない情報に触れ、選手やチームに対する親近感を覚え、周囲の人と情報を共有しあうことで大会への関心を強めていったと、分析しています。
大成功に終わったラグビーW杯に続き、東京五輪に向けてインバウンド誘致
ラグビーワールドカップ日本大会は、多くの外国人が日本を訪れるきっかけとなり、日本に大きな経済効果を生みました。訪日客からの満足度も高く、国内からも大盛況を見せた同大会は成功に終わったと言えるでしょう。
ラグビーW杯後の今年、開催を予定していた東京オリンピックは新型コロナウイルス流行の影響で来年2021年に延期が決定しました。
訪日客が一度ほぼ0の状態になってしまった現状で元の数に回復するには時間がかかることが予想されます。東京五輪をラグビーW杯につづき、日本を観光立国に近付ける好機とするためには、今から計画的にインバウンド誘致や受け入れ環境の整備に力をいれる必要があるでしょう。
<参照>
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