まもなく冬の終わりを迎えるオーストラリアでは、7月ごろに州境が解除され規制緩和が進みました。
しかし、ビクトリア州での新型コロナウイルスの感染者拡大により州境を再度閉鎖し、各州で規制の再強化が進んでいます。
通常、春から夏にかけてさまざまなイベントが開催されますが、今年多くのイベントが延期または中止になり、各所で観光業やローカルビジネスを盛り上げるため柔軟な施策を打ち出しています。
この記事ではオーストラリアのコロナ渦で人気になった商品や遊び方、観光への意欲、日本の観光業に対する声について解説します。
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移動制限中も旅行への意欲は変わらず。オーストラリア観光業の様子
オーストラリアでは3月末頃から6月にかけて新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、移動制限などの規制がなされました。
この期間には本来は多くの人が旅行に出かけるスクールホリデーやイースターの大型連休がありましたが、家に籠る生活を余儀なくされていました。
7月に規制が解除された後は、国内旅行への熱が高まっています。
ソーシャルディスタンスを保ちながら家でキャンプが話題に
規制強化期間中は日常に必要な移動以外は禁止、個人宅への訪問人数も規制があったため、長期休暇を自宅で過ごすことを余儀なくされました。
オーストラリアでは、70万以上のキャンピングカーやトレーラーが車両登録され、約30万人以上がイースター休暇に家族や友人とキャンプに行くほどアウトドアが人気です。しかし今年は外出規制中でアウトドアができないため、家でのキャンプの方法がさまざまなメディアで取り上げられました。
多くの人が車道にキャラバンカーを停車し車中泊や、裏庭や家の中にテントを張ったりバーベキューを庭で家族と楽しむ姿を「#holidayathome」「#campathomeheroes」などのハッシュタグとともにSNSにアップし、コンテストまで行われました。
規制解除発表後、旅行サイトの検索比は前週比600%増に
6月ごろには各州で感染者数が落ち着きはじめ、規制緩和に向けたステップが前倒しで行われました。同州内での外出や旅行が許可がでる前から、多くの人が国内旅行に向けた予約や検索を行っていたことが報道されました。
報道によると、一部のレストランやホテルなどでは規制解除発表後すぐに予約を取ろうとしても、約1ヶ月先まで満席のところもあったそうです。
国境閉鎖に伴い海外に行けず、州外への旅行もすぐにはできない状態が3月より約10週間続く間に、多くの人の関心は近場での旅行に移行しました。
オーストラリア国内旅行予約サイト「wotif」によると、規制期間中に人気観光地宿泊施設の関心度が場所によっては700%上昇したことを発表しました。
さらに、Expediaオーストラリアでもニューサウスウェールズ州内の旅行規制解除が発表された後、長期休暇に向けた検索が前週比600%増となり、日本人旅行者にも人気のブルーマウンテンや、ワインの産地で有名なハンターバレーが多く検索されていたことを発表しました。
アフターコロナ時代、観光業回復の鍵は海外バックパッカーか
感染再拡大による州境再閉鎖になど、回復の目途が立ちづらい観光業ですが、アフターコロナ時代はワーキングホリデーなどのバックパッカーが回復の鍵になるという声がでています。
現在オーストラリアでは、市民権または永住権保持者以外のビザホルダーの入国を受け付けていません。南オーストラリア州の観光団体は現地メディアに対し、コロナ終息後ワーキングホリデーやバックパッカーが訪れることを歓迎したいと話しました。
オーストラリアではワーキングホリデーを世界各国から年10万人以上受け入れています。このビザでは条件を満たせば最長3年滞在でき、就労も制限なく可能です。そのため、農園や過疎地域では働き手としての需要が高くなっています。
多くのワーキングホリデービザ保持者が国内各地を移動しながら観光もするため、他観光客よりも地域での消費金額や滞在日数が多く、注目されています。
人気商品や定番イベントにも変化
オーストラリアでは毎日のように至る所で農作物やフード、ファッションなど多種多様なマーケットが開催され、生活の一部として根付いています。
春を迎える8月末ころから真夏の年末にかけて大規模な定番イベントが多く開催されますが、これらも新型コロナウイルスの影響により変化を見せています。
また、ロックダウン中はオンラインショッピングの需要が増え、規制前とは売れ筋商品や検索内容にも変化が出ました。
宝石、自家製ビール、コーヒーメーカーなどオンライン買い物や検索に変化
ロックダウンは必要最低限以外の外出ができないため、多くの人がオンラインでの買い物に移行しました。食料品や衣料品など生活必需品以外にも自宅での生活や関係を快適にするアイテムが人気を集めています。
独自のカフェ文化が発展するほどコーヒー人気が高いオーストラリアでは、コーヒーマシンなどの家電製品の需要が増加しました。他にも大手デパートでは美容アイテムが規制前から400%増、パジャマなどの家着が1100%増となり自宅での時間を快適に過ごすアイテムが人気になりました。
さらに人気急増アイテムとして注目されたのがジュエリーです。大手通販サイトebayでは指輪などジュエリーアイテムが72%も注文が増加しました。
ebayオーストラリアマネージングディレクターのティム氏は「ロックダウンが人間関係が悪化させると予測してましたが、その逆のようです」と話しました。
また、ニューノーマル時代に向けて検索内容にも変化がありました。職種別電話番号が検索できるイエローオンラインでは、人々の動物への関心が急上昇し、養鶏場や犬のブリーダー検索が増加したと話しました。また、パブなどの酒場が規制で開いていないためか、自家製醸造キットへの検索数も約3倍増えています。
ローカルビジネスを支えるマーケット、オンラインでサポート
オージーライフに根付いているマーケットにも新型コロナウイルスによる変化が出ています。
会場によっては手作りマスクが販売され、これまでマスク文化がなかったオーストラリアでは大きな変化といえます。
マーケット会場には至る所に消毒液とソーシャルディスタンスを呼び掛ける看板が設置されました。
普段であればピクニックのように自由に座ったり寝ころびながらマーケットで買ったものを楽しめる芝生エリアにも、あらかじめ椅子がセットされ自然にソーシャルディスタンスを保てる工夫がされています。
新進ローカルブランドなどが出店し、州外からも多くの人が訪れる人気マーケットでは、規制強化により開催中止になったマーケットの代わりにInstagramのストーリー機能を使用したオンラインマーケットを開催しました。
マーケットが開催可能になった現在も定期的にオンラインマーケットを行い、ローカルビジネスをサポートしています。
収穫祭は中止または延期になるも、経済刺激のため祝日は実施
オーストラリアでは、8月から9月にかけて春の訪れをつげる収穫祭を開催し、地域ごとに開催日に合わせて祝日が設定されますが、今年は新型コロナウイルスの影響により多くの収穫祭が中止または12月に延期となりました。
クィーンズランド州政府は通常収穫祭の開催日に合わせて設定する祝日を、延期・中止に関わらず多くの地域で今回のみ特別に一律8月14日に設定することを決定しました。 この祝日は「ロングウィークエンド」と名付けられ、州民が週末を利用し出掛けることで地元経済を活性化することが狙いです。
クィーンズランド州は地元観光業の救済を積極的に行っており、破綻後買収が決定したヴァージンオーストラリアの再建支援ため株式購入や資金貸付けなども検討しています。
日本の観光業の現状に対する評価・評判
オーストラリア人にとって日本は人気観光地です。日本観光局統計データによると訪日オーストラリア人数は年々増え、2019年には62万人を突破しました。
オーストラリアでは第2外国語として日本語を学ぶ学校が多く、ほとんどの州で学習外国語TOP3に入っています。日本に興味がある人も多く、観光業のニュースに関心が集まっています。
日本のコロナに対する取り組みへの反応
Go toキャンペーンが日本政府より発表されたときは、オーストラリアの報道番組にて外国人も対象になるものとして「日本がお金を払って観光誘致している」と報道されました。Facebookでも多くシェアされ、「今すぐ日本に行きたい!」など日本に行くことを心待ちにする投稿が多くなされました。
その後このニュースが誤報であることが報じられ、「来年行こうと思っていたのに」などと落胆の声があがりました。
そのほか、日本のテーマパークでの取り組みも報道されました。
検温の実施やマスクの着用などに加え、「乗り物に乗る際に叫ばない」などのルールが課されたことが話題となり、日本の絶叫系乗り物のレベルを考えると厳しい要求ではないか?という形で報道されていたこともありました。このニュースもFacebookで話題となり、多くのいいねやシェア投稿がされています。
いずれにしろ、日本の新型コロナウイルスに対する動きについて、オーストラリア人は関心を寄せていたことがわかります。
観光地紹介のFacebookでは日本の自然風景に高評価
日本政府観光局が手掛ける「Visit Japan」のオーストラリアページは、フォロワーがFacebookでは18万人、Instagramでは12万人もいる人気アカウントです。
なかでも紅葉や滝など、大仏、五重塔を撮影した投稿が好評で、約1万ものいいねやコメントがつくものもあります。
定期的に投稿されているページには実際に訪れた経験があり懐かしむ声や、日本に行ってこの景色を見てみたいと期待の声が多く寄せられています。
観光業回復に向け柔軟な対応をするオーストラリアに注目
オーストラリアでは2020年の1月から3月の第一四半期に観光業で60億豪ドルの損益、4月から6月にの第2四半期はさらに悪化する見込みを発表しました。
オーストラリア国家政府をはじめ各州政府も、観光業存続交付金や州内観光の奨励、祝日移動など柔軟な対応を行い、土日祝日にはビフォーコロナの頃に近い売り上げや賑わいを戻しつつある企業や観光地も出てきています。
こうした動きは日本のインバウンド事業にヒントになるものもあり、今後もオーストラリアの観光事業に注目することが重要です。
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