立教大学観光学部の野田健太郎教授と、株式会社JTB総合研究所が「観光産業におけるSDGsの取り組み推進に向けた組織・企業団体の状況調査」の調査結果を2021年6月8日に発表しました。
調査結果によると、SDGsに取り組みを行っている企業が最も少なかったのは観光産業(宿泊業と旅行業)で20.3%でした。そのうち、宿泊業は43.3%と高い割合なった一方で、旅行業は16%と最も低い結果でした。
なお、全業種で最も高かったのは金融業で85.7%であり、観光業界でのSDGsへの取り組みの遅れが際立っています。
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観光産業におけるSDGsの取り組み推進に向けた状況調査実施
調査では、帝国データバンクが保有するデータベースから無作為に抽出した全国の企業および関連団体に対して、郵送とオンラインで実施され、合計840件の回答が得られました。
調査結果によると、SDGsに取り組みを行っている企業が最も少なかったのは観光産業で20.3%でした。宿泊業は43.3%と高い割合なった一方で、旅行業は16%と最も低い結果でした。
調査結果から、SDGsに取り組む効果については、全業種で「従業員の意識の向上(55.8%)」「ブランド力の向上(34.9%)」「経営方針の明確化(28.6%)」がトップ3となりました。
観光産業の上位3位も回答率が低いものの、同じ結果となりました。
また、観光産業の特徴としてSDGsの効果にあげたものは、「売り上げの増加(27.6%)」、「収益の増加(21.9%)」、「取引先の増加(18.2%)」が全業種に比べて突出して高い結果となりました。
またSDGsの各ゴールに対する「チャンス」の認識について「環境」「平和と公正」「パートナーシップ」が全業種の平均と比べて高くなりました。
雇用、技術革新がSDGs推進のリスクに
一方で、SDGsに取り組むリスクと課題について、観光業界の課題が指摘されました。
SDGsの各ゴールに対する「リスク」の認識については、観光産業(旅行業+宿泊業)では、「雇用」「技術革新」に対するリスクやチャンスの認識が全業種と比べて低い結果でした。
SDGsに取り組む上での課題について、全体では「定量的な測定が難しい」が56.6%と最も多く、「社内の認識が低い(37.4%)」「必要な人材が不足している(37.0%)」が続きました。
観光産業で見ると、「必要な人材が不足している(観光産業38.5%、全体37.0%)」「運用する時間的な余裕がない(観光産業35.9%、全体26.0%)」「必要な予算が確保できない(観光産業 35.9%、全体21.3%)」が全業種より大幅に高くなりました。
観光業が求める支援|補助金と認証設定、地域連携
同調査では、観光産業がSDGsの取り組みに対して期待する支援策についてもアンケートがとられました。
その結果、求める支援策として「SDGsに取り組む際に利用できる補助金」が69.2%と最も割合が高く、「SDGsに取り組んだ企業に対する認証、認定」「SDGsをテーマにした地域との連携」がいずれも61.5%で、「SDGsをテーマにしたビジネスマッチング(56.4%)」「SDGsを活用したビジネス策定の支援(46.2%)」と続きました。
観光業でのSDGsの取り組み加速へ
本調査で、観光産業におけるSDGsの取り組み状況や課題を、他の業種との比較により分析した結果、観光産業のSDGsへの取り組みは著しく遅れていると言えます。
今回のアンケートでは、観光産業の回答企業のうちの大半が中小規模の旅行事業者であったことから、SDGs達成への活動に時間・人材を充てられず、SDGsへの取り組みに着手できないのが現状だと考えられます。
今後の方向性として、観光産業の事業者の大半が補助金不足など金銭面を理由にSDGs推進が遅れていることからSDGsへの取り組みをビジネスにつなげることが必要だと考えられます。
関連記事では、日本、海外問わず様々な方法でSDGsを意識した先進的な取り組みが進んでいる企業・団体を紹介しています。
それらを参考に、今後も収益が上がる方法でSDGsの取り組みを実施していくべきだと考えられます。
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