ASEAN域内における関税政策を解説。撤廃までの推移と期待される域内経済効果

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東南アジアの10か国からなる「東南アジア諸国連合」(ASEAN)は、近年その経済的な成長が注目されています。

ASEANにおいては、2018年から域内の諸国間での関税が撤廃されています。

諸国連合内で関税が撤廃されているEUなどと同じように、さらなる経済的発展が見込まれます。

ここでは、ASEANが関税撤廃に至った推移と、現在までに確認できる域内諸国の経済活動の変化について紹介していきます。

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ASEANとは

そもそもASEANとは「東南アジア諸国連合」の略称で、東南アジアの10か国からなる組織です。

経済や政治、安全保障、軍事、教育、社会文化の統合促進を目指し成立しました。

ここではASEANの成立背景や、関税制度を除いた経済的成果について紹介します。

ASEANの現在までの成立推移

ASEANは1967年8月、近隣諸国が緩い結びつきのもと、バンコクで5か国の原加盟国により、善隣友好の促進を目的として設立されました。

経済統合化の世界的な動きを受けて、1992年に自由貿易地域の設立を宣言し、1995年には社会主義国であるベトナムの加入を認めるなど、時代に合わせてその組織のありかたは移り変わってきました。

2007年11月に「ASEAN憲章」と「ASEAN経済共同体創設のためのブループリント」に署名が行われ、現在の共同体としてのあり方が成立しました。

原加盟国はインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの5か国で、1984年にブルネイ、1995年にベトナム、1997年にラオス、ミャンマー、1999年にカンボジアが加盟し、現在までに10か国が加盟しています。

ASEANの経済活動

ASEANは単一市場を確立し、経済統合を模索してきました。

第4回公式首脳会議にて採択された「シンガポール宣言」に基いて、域内の市場統合を目的したASEAN自由貿易地域(AFTA)が創設されました。

2003年にはその対象を広げた自由化を目指して、ASEAN経済共同体AEC)への発展に合意し、2015年12月31日に発足しました。

ASEANには工業団地やエコ工業団地のほか、経済特区やテクノロジーパーク、イノベーション地区などの多くの経済圏があります。

2018年には、ASEAN加盟国のうち8か国が、世界で最も優れた経済国として認められています。

ASEANの関税制度について

ASEAN域内では、2018年に関税撤廃を完了しています。

ここでは、関税撤廃に至るまでの詳しい推移と、その特徴について解説します。

ASEANの関税撤廃政策

ASEAN諸国は2007年以降、加盟国への輸入関税を段階的に引き下げ、2016年までの輸入関税ゼロを目標としていました。

ASEAN各国では、ASEAN物品貿易協定(ATIGA)に基づき、2010年に先進ASEAN諸国(ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ)における関税が撤廃されました。

さらにこれに続き、2018年1月1日には後発ASEAN諸国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)でも、関税が原則全て撤廃されています。

これにより、域内での大規模な経済成長が見込まれています。

貿易阻害を行わない工夫が必要

2018年の関税撤廃では、ベトナムの自動車輸入関税30%もゼロとなりました。

経済共同体に共通して言えることですが、国内産業を侵害しないようにしつつ、輸出国の貿易を阻害しないようにすることには調整が必要です。

損益のバランスを取りながら、共同体としての安定化を図ることが、経済的発展にもつながります。

ASEANと日本の経済的な関わり

2008年4月に日本・ASEAN包括的経済連携協定が結ばれ、日本にとっての初のEPA(経済連携協定)が実現しました。

ここでは日本・ASEAN包括的経済連携協定を例として、ASEANと日本についての関係について紹介します。

日本・ASEAN包括的経済連携協定とは

日本・ASEAN包括的経済連携協定は、2005年4月に交渉が開始され、2007年11月の日ASEAN首脳会議において物品貿易に係る交渉妥結が確認されました。

2008年の3~4月にかけて署名が行われ、同年12月に順次発効し、2010年7月には全締結国間で発効しています。    

この協定では、物品貿易の自由化・円滑化のほか、知財・農林水産分野での協力や、サービス貿易及び投資の自由化・保護についての交渉継続について規定されています。

日本は、多くの鉄鋼業品について、10年以内に関税を撤廃することと、農林水産品の関税削減によってASEAN側に配慮した対応をすることを申し出ました。

ASEANからは、原産地規則の累積による裨益効果が大きい品目(薄型TV、薄型TVパネル、自動車部品など)について、多くの国との関係で十分な関税撤廃・削減が約束され、質の高い内容を実現したいと申し出ました。

同協定は日本初のマルチEPAとして、日本と緊密な関係を擁するASEANとの戦略的関係を強化するものとなっています。

ASEANから見られる急速な発展に対して

ASEANでは20世紀末から急速な経済発展を進めており、EUやNAFTAに対抗するためのさまざまな域内諸国や対外政策を打ち出してきました。

地理的にも遠くない日本とも深い関係にあり、日本側からしても工業用品の輸入にあたって重要な貿易相手であると考えられます。

これからの経済発展も大いに見込まれる地域であるため、今後の動向が注目されます。

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<参照>

世界情報通信事情:東南アジア諸国連合(ASEAN)

JETRO:ATIGAに基づくASEAN域内の関税撤廃が完了-ベトナムの自動車輸入関税30%もゼロに-

JETRO:ベトナム関税制度

外務省:日・ASEAN包括的経済連携協定(概要)

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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