新型コロナウイルス感染病拡大により、新しい生活様式が定着しつつあります。特にテレワークの導入により、インターネット環境が整っていればどこででも働けるようになりました。
テレワークが定着する中で、「ワーケーション」にも注目が集まっています。今回はワーケーションとワーケーションを誘致する事例について詳しく解説します。
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そもそもワーケーションとは?
ワーケーションとは、work(仕事)とvacation(休暇)を組み合わせた造語で、テレワークを活用して観光地や帰省先で仕事をすることを指します。
ワーケーションと混同されやすいのがリモートワークです。リモートワークは自宅やコワーキングスペースなどオフィス以外の場所で働くことを指します。一方ワーケーションは観光地や温泉地で休暇を楽しみながら仕事をするスタイルのことです。
海外ではワーケーションで仕事をしている人も珍しくありません。
たとえば、アメリカでは新型コロナウイルス感染病拡大が問題となる前からリモートワークという働き方が定着していました。労働者の約半数がリモートワークの可能な仕事に就いており、さらにその半数が実際にリモートワークで働いています。もともとリモートワークが可能な環境が整っていたため、ワーケーションも取りやすかったのです。
他にも新型コロナウイルス感染拡大によりワーケーションを取り入れる人の数が増え、リモートワークビザやノマドビザを発行している国もあります。
一方、日本ではワーケーションを導入している企業は多くありません。リモートワークは定着しつつありますが、ワーケーションの導入が進まない背景には「ワーケーションに関する制度やルールが確立されていない」「会社への帰属意識が強い」などの制度や文化的な問題があります。
これまで会社に出勤し、組織全体で働いてきた日本人にとっては、会社に出勤せず個々で働くスタイルに抵抗があるようです。
政府がワーケーションを推進する理由
政府はワーケーションという新しい働き方を推進しています。次は政府がワーケーションを推進する理由について詳しく解説します。働き方改革
2019年4月から働き方改革関連法が施行されました。働き方改革とは、政府が推進する「多様な働き方を選択できる社会」を実現するための改革です。日本の労働環境では、長時間労働や仕事と生活の両立が課題となっています。テレワークは柔軟な働き方を推進する方法のひとつです。新型コロナウイルス感染病拡大によって多くの企業でテレワークが定着し、より多様化する働き方に対して新たにワーケーションの施策が打ち出されました。
厚生労働省が令和3年3月に発表した「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」では、ワーケーションをテレワークの形態の1つとして定義しています。
新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策
新型コロナウイルスは飛沫感染や接触感染により広がっていきます。特に換気の悪い密閉空間や人が密集している状況、近距離での会話などで集団感染が確認されるケースも多く、感染拡大防止のためテレワークが推進されるようになりました。令和3年11月に感染防止をしながら日常生活や経済社会活動を継続できるよう行動制限が緩和されましたが、インターネット環境が整っていればどこでも仕事ができることがわかり、テレワークを継続している企業も多いようです。
地方創生と活性化
ワーケーションは仕事と休暇を両立できるだけでなく、地域の観光地を活性化させるメリットも持っています。地方では若者の地元離れや都市部への人口流出が課題となっており、慢性的な人手不足で悩んでいる地域も少なくありません。さらに新型コロナウイルス感染症拡大によって観光客が減少し、大きな打撃を受けています。
ワーケーションを積極的に誘致することで地方を訪れる観光客が増加し、地域活性化のきっかけになります。観光客が増加すれば、観光業界に限らず広い業界に恩恵をもたらしてくれるでしょう。
ワーケーション受け入れの課題
ワーケーションを推進するためには、受け入れの課題を解決することが大切です。新しい働き方として注目されているワーケーションですが、必ずしも受け入れ環境が十分であるとは限りません。次はワーケーションの受け入れに関する課題について詳しく解説します。
ワーケーションを導入する企業の課題
ワーケーションを導入するには、社員の稼働時間をきちんと管理しなければなりません。特にワーケーションは仕事と休暇がセットになっているため、公私の切り替えが曖昧になってしまう可能性があります。他にも業務内容や成果を正しく把握することも重要です。公平な人事評価をおこなうためには成果の把握はもちろん、成果までのプロセスも把握しておかなければいけません。人事評価は社員のモチベーションにも繋がるため、正しくおこなう必要があります。
管理や評価以外にも、インターネット環境やチャットツール、WEB会議システムなどリモートワークができる環境整備に必要なコストも大きな課題です。ワーケーションの場合、作業する場所の水道代や光熱費、宿泊施設の費用なども発生するのでコスト的な問題もあるでしょう。
リモートワークでは社内の情報を持ち出すため、情報セキュリティ対策も必要です。安全なセキュリティシステムを導入するだけでなく、情報の取り扱い方についても学ばなければなりません。
ワーケーションを誘致する地方自治体の課題
ワーケーションを誘致する地方自治体にもたくさんの課題があります。まずはワーケーションに必要な宿泊施設やワークスペースが必要です。訪れる人は旅行も兼ねているため観光資源も欠かせないでしょう。快適に仕事をするためにはWi-Fiなどの通信環境の整備やセキュリティ対策も不可欠です。さらに長期滞在をする場合はスーパーやコインランドリーなど生活に関するサービスの有無も大切になります。
業務型ワーケーションの受け入れをおこなう場合は、地域コーディネーターの採用や育成も必要です。ワーケーションの形は企業によって異なるため、ワーケーションに精通する人材の有無は誘致の成否に関わります。
もちろん魅力あるプログラムも重要です。そこでしか体験できないプログラムやいちおしのグルメなど、「行ってみたい!」と思えるようなプログラムの開発をしなければなりません。
ワーケーションを導入している企業
次は実際にワーケーションを導入している企業について詳しく解説します。日本航空株式会社
日本航空株式会社は2017年よりワーケーションを導入しました。主に間接部門の約2,000人の社員を対象に導入され、初年度の利用人数は11名。しかし、2020年度には2割以上にあたる約400人がワーケーションを利用しました。日本航空株式会社のワーケーションは有給休暇を活用し、リゾート地や観光地などでテレワークをおこなう福利厚生のワーケーションスタイルが中心です。休暇目的の位置付けのため、移動費や宿泊費は社員が負担することになっています。
ワーケーション実施日は就業時間を上司に報告するのに加え、勤怠管理システムへの登録や進捗状況の共有もおこない仕事の支障がないよう工夫しています。
日本マイクロソフト株式会社
もともとワーケーションや在宅勤務制度がなく、いつでもどこでも活躍できる制度設計の中で仕事ができるようにしています。現場や会社に行かないのではなく、必要があれば現場や会社にも行くけれど、選択肢と多様性の中で効率性や働きやすさを優先しながら選択することに重きを置いています。
ワーケーションを誘致する自治体の事例
最後はワーケーションを誘致する自治体の事例について詳しく解説します。長野県
長野県茅野市では、八ヶ岳や温泉、寒天工場見学などの観光資源をもとにワーケーションの誘致をおこなっています。茅野市にはコワーキングスペースだけでなく、リゾートホテルやペンション、キャンプ場、別荘などの幅広い宿泊施設があります。個人だけでなく、企業の要望を取り入れながら体験ツアーの作成をおこなっています。
北海道
北海道では、道内市町村のテレワーク施設の情報やインセンティブ情報などワーケーションに関する情報をまとめたポータルサイトを開設しています。ポータルサイトを通じて希望の市町村のマッチングやプラン提案、コーディネートをおこなっています。
新たな需要の創出へ
新型コロナウイルス感染症拡大によりインバウンドの需要が見込めず、観光業界は長らく低迷してきました。観光業界の復興を図るには、ワーケーションを導入することで国内誘致をおこなうのが効果的です。ワーケーションを誘致することで地方への観光客が増え、地域活性化にも繋がるでしょう。
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<参照>
・北海道:北海道型ワーケーション
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