11月4日から7日までの4日間、台湾・台北市で開催されていた「台湾国際旅行博2022(ITF2022)」は、大盛況のうちに閉幕しました。
ITF2022は、日本と台湾が入国制限を大幅に緩和し、両国の往来が再開してから初の大規模な旅行博です。そしてその期待に違わず、4日間の会期中、会場は非常に多くの来場者により熱気を帯びていました。
日本からの出展者、および地元台湾の来場者へ行ったインタビューをもとに、ITF2022を振り返ります。
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台湾最大の旅行博、ITFとは?
台湾国際旅行博(ITF、Taipei International Travel Fair)は、1987年に始まり、今回で30回目を数える台湾最大の旅行博です。
世界各国の観光関連の企業・団体が、それぞれの旅行商品や観光地の魅力をPRするために出展します。その中でも日本ゾーンは、近年では参加国中で最大規模の出展数を誇る、来場者から大変人気のエリアとなっています。
2020・21年にはパンデミックによる渡航制限の影響があり、オンラインを活用しながら規模を縮小しての開催となっていました。
しかし今回のITFは、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着きを見せ、各国で規制緩和が進んでいることから、全面的に対面で開催されました。アジアという規模で見ても、各国で観光客の渡航制限が解除されてから初の大規模な対面での旅行博ということで、世界中から注目が集まっていました。
会場の様子
11月4日から7日までの期間の入場者数は19万5,000人以上に達し、昨年比172%を記録しました。それだけ多くの台湾人が待望していた海外旅行、コロナ禍で我慢していた旅行欲を取り戻そうとする意欲がうかがえます。
会場内を歩き回ると各ブースでは熱心に旅の情報や旅行商品について話を聞く来場者の姿や、両手にパンフレットをもって次のブースに足を運ぶ姿が目に入ります。そして全体を通して楽しげで明るい雰囲気が会場を包んでいました。
出展者へのインタビュー
訪日ラボのスタッフは会場現地に赴き、今回のITFで日本からの出展者の方々、および現地台湾からの来場者の方々にインタビューを行いました。
まずは日本からの出展者に、出展に至った経緯や、来場者の反応などについてお話をうかがいました。
出展に踏み切った理由は?
ITF2022への出展を決めた理由について、大分県の安田様、河室様は「ブース出展は以前から予定していましたが、日本への観光客の渡航解禁を受け、実際に渡航して対面でセールスすることを決めました。台湾を重要な市場だと捉えているので、市場ニーズをしっかり把握したいです。」と、やはり対面で直接反応が見られるITFの重要性を感じているということです。
九州旅客鉄道株式会社(JR九州)の水嶋様は、「日本への観光客の渡航解禁の前から出展を決めていました。
今年は九州の自治体と西日本鉄道株式会社と九州旅客鉄道株式会社が初めて連携して出展するので、仮に水際対策が緩和されなくても出展するつもりで準備をしていました。台湾は重要なマーケットで、コロナ禍を経ての変化を現場で見たいという思いもありました。」と出展へのかねてからの意気込みを語ります。
また福岡県観光連盟の川邊様は、「コロナ前からたくさん台湾の方に来て頂いていました。コロナ禍で渡航制限のあった期間に生まれた新たなスポットも知ってもらいたいため、出展を決めました。」と意気込みを語ります。
ITF2022への出展を決めた理由について、広島県の松岡様、広島国際空港株式会社の三谷様は、「日本と台湾の渡航制限の緩和があったため出展を決めました。広島空港を中国・四国地方のゲートウェイとしてご利用いただき、新しい広島を発見してほしいという想いがあります。」と語り、日台両国の渡航制限の大幅緩和はやはり出展の大きな動機になったことがわかります。
日本航空台湾支社の蘇様は、「去年は観光での渡航はできなかったためブースを出していませんでした。今回は日台両方の水際対策の大幅緩和のニュースを受け、日本本社に相談した上で、急遽出展することに決めました。今回は青森県と福井県と連携して出展しています。」と話し、台湾人から人気が高い東北地方の自治体と連携したブースを展開しています。
また台南市と姉妹都市である日光市の日光市観光協会の福田様は「9月末に台湾観光協会に誘われ、急遽出展を決めました。」と語り、実際の来場客と話してわかったこととして「日光東照宮は認知されているが、それ以外の観光地を含めた"日光"についてはあまり知られていないと感じた」と、台湾に向けたプロモーションにもっと注力すべきと振り返ります。
こうした渡航制限の大幅緩和をきっかけに出展を決めた団体が多くあった一方で、かなり前から戦略的に出展を決めていた団体もあります。
岐阜県の岡本様はITFについて、「台湾は期待の高い市場であり毎年出展している。今回はコロナでストップしていた日本へのFIT(個人旅行)が漸く解禁された直後ということで、PRには絶好のタイミングと思っている。」と語り、すでに来週・再来週に訪日する予定の来場者にも出会ったということです。
藤田観光株式会社の岸様、游様、近藤様は、「ブースを出したのは今回が初めてです。国境が開いても開かなくても日本は『台湾の人が行きたい国no.1』ということもあり、今回の出展を決めました。」と台湾市場への期待を語っています。実際に来場者からは旅行商品の値段についてなど具体的な質問が多かったといいます。
また佐賀県の辻様は、「台湾市場を重要視しています。コロナ禍においてもオンラインで市場調査を継続的に行っていましたし、今回のイベントにも迷いなく出展を決めました。」と、渡航が厳しく制限されたいた時期から、再開を見据えて施策を重ねてきたということです。
来場者の反応は?
地元・台湾の方が中心となる来場者の反応について、東武タワースカイツリー株式会社の鈴木様、東武鉄道株式会社台北事務所の山内様は「『新しい観光スポットはありますか?』など、コロナ禍の3年間での変化を知りたい方が多い印象を受けます。
東武鉄道沿線の観光コンテンツでは、東京スカイツリー、日光・鬼怒川が人気ですが、川越に興味を持っていただく方も多く、ディスカウントパスのパンフレットも用意した分が無くなりました。」とおっしゃっていました。
3年ぶりの対面での大規模開催となった今回のITFでは、出展者側の想定を超える来場者の熱量があったということです。
愛媛県の正岡様、田上様は、「サイクリングや観光列車の問い合わせが多くあり、今治タオルの知名度が上がっているのも実感しました。既に日本旅行を予約している方も多く、日本円にもう換金したという人もいました。」と、来場客の前のめりな姿勢を振り返ります。
九州観光機構の加納様は、「来場いただいた皆さんには、非常に九州のコンテンツに興味を持っていただきました。パンフレットが予想以上にはけてしまって、用意した分では足りないくらいです。」と来場客の熱気を感じています。
また宮崎県の小川様、宮崎県観光協会の鷹取様は、「神社をモチーフにしたブースを出しましたが、神社仏閣は台湾人に人気があり大盛況でした。御朱印帳をもらうために3時間待っていた人もいました。」と語り、台湾人の日本の伝統文化への関心の高さを感じたということです。
来場者からはどんな質問が?
茨城県では8月から「開運茨城」をコンセプトに渡辺直美氏をキービジュアルにしたプロモーションを実施しています。ITFの出展ブースでは即売を意識し、旅行会社4社と連携して旅行商品を販売していました。
来場者からはどんな質問を多く受けたかについて、茨城県の佐藤様は、「コロナ禍でしばらく日本の情報が途絶えたので、新しい情報が欲しいというような質問が多いです。『茨城県のどのあたりを回ればいいのか?』などです。」とおっしゃっていました。
やはりコロナ禍の3年の間にできた、日本の新しいスポットへの興味が高いようです。
そして来場者からの質問に共通する特徴は、「実際に日本旅行を想定した具体的な質問」であるという点だということです。
西日本鉄道株式会社の生田様は、「自治体と九州旅客鉄道株式会社との共同出展で九州一丸となってPRしています。
『ここに行くにはバスでどうやって行けばよいか?』というような具体的な質問も多く、新型コロナウイルスが落ち着いてきた中での、台湾の皆様の旅行意欲の高まりを感じます」とおっしゃっておりました。
札幌市の大村様は、「既に来月再来月の日本旅行を予約している人からの、具体的な質問が多い印象です。『地図がほしい』『どういうところがおすすめ?』などです。」と語り、すでに日本への渡航が決まった段階での質問が多くみられたということです。
和歌山県観光交流課の和田様、森永様は、今回のITFや商談会では、「旅行会社の方からは、コロナ禍で往来できなかったこの3年ほどの間に、新しくできたホテルやレストランがどのようなものがあるかなどの質問を多く受けました。
また、『新たな旅行商品の造成やPRに必要となる写真の素材をください』という声もあり、USBに素材を入れて渡しています。」と語り、旅行会社からツアー造成やプロモーションの準備と思われる質問があったということです。
訪日台湾人の特徴として、「リピーター率が非常に高い」というものがあります。一般に、訪日回数が多い旅行者ほど、地方部などのディープなスポットへの興味が高いとされていますが、そうした特徴が現れた質問もあったようです。
東京観光レップの小須田様、陳様は、「来場者の皆様は、東京の観光地はよく知っています。そんな中で、初めて訪日する方からは『どこにいったらいいか?』というような質問を受けます。一方で、何回も日本に行っている方は、ディープなところを追い求めるようになっていて、コロナ前よりも離島と自然に関しての質問が増えました。」とおっしゃっていました。
来場者へのインタビュー
来場者である台湾の方々にも、訪日旅行の楽しみや、水際対策への反応についてお話をうかがいました。
これまでの訪日旅行や、次の予定は?
訪日旅行についても、今までの経験や次の訪日の予定、日本で楽しみにしていることなどをうかがいました。
家族で来ていた50代の女性は、「旅行価格の割引が多いから」という理由で今回のITFに来たということです。
訪日旅行については、「十数回行っています。個人旅行で、大阪、京都、福岡などに行きましたね。次は来年に訪日予定で、今は情報収集の段階です。九州、鳥取、愛媛が候補目的地です。」と言っていました。
日本で楽しみにしていることについては、「冬だと温泉ですね。ショッピングも楽しみたいです。あらかじめ決めたところでというよりは、歩きながらショッピングをしたいです。」と言っていました。日本のメジャーな観光地を訪れたことがあるということで、鳥取や愛媛といった、大都市圏からは離れた地域にも魅力を感じていることがわかりました。
若い世代も訪日旅行を楽しみに
大学を卒業したばかりで、友人同士で来たという女性2人は、「韓国やタイには行ったことがあるが、日本にはまだ行ったことがなく、日本を旅行してみたいから」という理由でITFに来たということです。
訪日旅行の予定については、「4月の清明連休、桜のシーズンの時に、5-6日間で訪日する予定です。大阪、沖縄、東京が候補目的地で、一人は友達と6人で行き、一人は彼氏と2人で行きます。日本のグルメや風景を楽しみたいです。」と言っていました。若い世代にとって日本は、カジュアルな旅行の目的地としても捉えられているようです。
親戚同士の大学生の男性2人は、「日本の個人旅行解禁のニュースを見て、すぐに日本に行きたいと思った」ために、今回のITFに来たということです。
訪日旅行については、「日本には十数回行きました。東京、大阪、関西地方などを訪れましたね。
来年の旧正月が終わった後、2月に東京〜東北各県〜札幌の7泊8日のプランを立てています。YouTuberの東北旅行の動画を見て、東北を回りたいと思いました。
青函トンネルも通りたいです。日本では、風景やご当地グルメを楽しみたいです。」と言っていました。YouTuberなどのインフルエンサーに紹介されることにより、大都市圏から離れた地方部への需要が喚起されていることがわかりました。
日本の水際対策をどう思うか?
2022年11月現在、日本に入国するには、「ワクチン3回接種済みの証明書、もしくは出国前検査の陰性証明書が必要」となっています。
この水際対策については、前述の大学生の男性2人と、大学を卒業したばかりの女性2人は、「日本が承認するワクチンを3回接種しているから問題ありません。」と言っていました。また50代の女性は、「日本の水際対策には、不便を感じませんでした。自分の安全も、日本人の安全も保証できるからです。」とと
台湾は新型コロナウイルスに対して、発生初期から抑え込みに成功し、「台湾モデル」として世界的に評価されました。そのため、ワクチンを追加接種した国民も多く、日本の水際対策はそれほど障壁には感じないと考えられます。
北部九州エリアの複数県連携をまとめた長崎県観光連盟は
開催終了後、北部九州エリア(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県)の複数県連携の出展を取りまとめた、長崎県観光連盟の吉田様にお話をうかがいました。
2020年、2021年とコロナ禍で往来が厳しく制限されていた頃から継続して出展してきた同団体は、今年の会場の熱気について語ります。
「コロナへの警戒心」はもはや下火に
「今年の出展を準備するにあたって、入国規制が緩和されるのではないかと期待していたのですが、その期待がかなったことになります。
会場では、ブースで配布している観光情報のパンフレットがどんどん無くなっていったという現地スタッフの声が象徴的でした。
台湾人は6回以上訪日しているようなヘビーリピーターが多いので、コロナ前に訪れたお店はまだ営業しているのか、という問い合わせが多くあったと聞いています。
その一方で一般的なコロナ対策に関する質問はほとんどなかったと聞きました。コロナ禍初期にみられたコロナに対する警戒心は下火で、むしろ観光地に対する興味関心が前面に現れていました。」
「パンフレットを配るだけ」の時代は終わり
入国規制が大幅に緩和することを期待して、北部九州エリアのブースは昨年までと比べてより即売性にこだわったといいます。
「今年の出展に際しては、台湾大手旅行会社のライオントラベルとタッグを組み、ブース内で九州周遊商品を紹介する仕組みをつくり、会場内で旅行商品の販売や予約までできるようにしました。
ITF自体も即売会の性質があるので、それを活かしてコンバージョンを設定し、効果検証を試みようとした形となります。
観光団体の出展だけではブース来場者に対して、九州来訪の強い訴求が期待できないと考えたので、今回は九州観光機構、九州旅客鉄道株式会社、西日本鉄道株式会社、福岡国際空港株式会社と連携して、一気通貫で訪日客のカスタマージャーニーを支援する商品販売やプロモーションを実施することができたと思います。
これまでの旅行博などへの出展でありがちだった、「パンフレットを配って終わり」という一方通行の情報発信ではなく、来場者のカスタマージャーニーに沿い、欲しい情報が欲しいタイミングで手に入るなどといった取り組みが、より重要になってくると考えています。」
「最重要市場」台湾、インバウンド復興の土台として期待
ITF2022の来場者への取材を通して、多くの台湾人が「すぐにでも日本に行きたい」という熱量をもって、早期の訪日旅行を現実的に計画していることがわかりました。
またその熱量に呼応して、日本からの出展団体も、台湾を最重要市場と認識して「絶対に獲っていくんだ」という勢いをもってITFに臨んでいたことがわかりました。
日本と台湾は政治的な問題も少なく、文化的にも近接しているといえます。そのため、訪日台湾人旅行者数は毎年安定して計算ができます。
親日国家・台湾からの訪日客が、日本のインバウンドの復興に向け、安定した土台としての役割を担うことに期待がかかります。
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