ノイジーマイノリティ(noisy minority)とは「声だけ大きい少数派」を意味する言葉です。マーケティングや社会現象を論じる際、サイレントマジョリティ(silent majority)「静かな大衆」と対をなす概念として注目されています。
ネット上の誹謗中傷や、SNSでの極少数の発言者の意見がマスメディアに取り上げられ、大きな炎上に繋がるなど社会的な問題に至る場合もあります。
インバウンド需要が高まる中、政治やマーケティングなどにおいても、ノイジーマイノリティの意見が宿泊施設や観光施設の経営に悪い影響を与えるケースも出てきています。
この記事では、ノイジーマイノリティについてその概要と、店舗経営に障害を与えた事例、そして店舗や組織がノイジーマイノリティに惑わされないための対策について詳しく紹介します。
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ノイジーマイノリティとは
ノイジーマイノリティとは、特定の話題や状況において、大きな声で意見を発信する少数派を指す言葉です。この少数派は実際の人数は少ないものの、発言力や影響力が強いため、周囲に与える印象が大きいことが特徴です。
ここでは、ノイジーマイノリティの意味や注目される背景をみていきましょう。
ノイジーマイノリティーの意味
「ノイジーマイノリティ(noisy minority)」とは、日本語に直訳すると「声高な少数派」で、声だけ大きい少数派を意味します。「目立つが少数である者」「少数派は声がでかい」と近年では悪い意味で使われることも多く、「ラウドマイノリティ(loud minority)」や「ヴォーカルマイノリティ(vocal minority)」ともいわれます。
総務省が実施した「社会課題解決のための新たなICTサービス・ 技術への人々の意識に関する調査研究」によると、SNSを使って「自ら情報発信や発言を積極的に行っている人」の割合は、日本では全人口の1割にも満たないと言われています。
SNS上の議論をリードしているのは「5%以下の人々」の意見であり、言い換えるとノイジーマイノリティの意見であると言えます。
ノイジーマイノリティは、多くの場合その主張に裏付けが乏しいにもかかわらず、声高く騒ぎ立てるために影響力が高い集団を意味しています。
その声の大きさから一見すると世間一般の人々の意見である“世論”のように受け止められてしまうケースもありますが、実際には限定的な属性である、あるいは社会全体をみた場合に低い比率の集団です。
マーケティング・広告業界では、「少数派ではあるものの声が大きいので、ついつい彼らの意見を取り入れて、彼らの意見に施策を合わせた結果、サイレント・マジョリティたちが離れていって大失敗するので注意が必要だ」と警告されています。
サイレントマジョリティとの対比で語られる
「サイレントマジョリティ(Silent Majority)」とは、日本語に直訳すると「静かな多数派」で、「ノイジーマイノリティ」と反対の意で使われます。「物言わぬ多数派」とも言われ、積極的に発言をすることはありませんが、実際には多数派である人々のことです。
「サイレントマジョリティ」という言葉が使用されるようになったきっかけは、アメリカのニクソン大統領が行った1969年の演説にあるといわれています。ニクソン氏は、ベトナム戦争に反対する学生らが「サイレントマジョリティ」であるとし、声を上げない大多数派は同意しているという内容の演説を行いました。
これ以降、「サイレントマジョリティ」という言葉がおもに政治の世界で使用されるようになりました。
現在「サイレントマジョリティ」は政界の他にも、マーケティング、広告業界などで用いられるようになっています。
インターネットでの炎上などによって広く用いられるように
SNSなどのインターネット上で炎上騒ぎになるニュースは、度々メディアのニュースで取り上げられています。これらの炎上騒ぎを起こしている人々は、インターネット利用者のうち僅か0.5%であるという説があります。つまり、ノイジーマイノリティであるということです。
しかし、炎上騒ぎの様子がニュースで報道されてしまうと、あたかも世論であると捉えられかねません。
ノイジーマイノリティによって起こりうる店舗経営の障害・事例
ノイジーマイノリティは、少数派でありながらも騒ぎ立てることで影響力が高くなるため、店舗経営に障害を与える恐れがあります。
ノイジーマイノリティによってどのような障害が起こりうるのでしょうか。実際に起った事例とともに紹介します。
SNSなどでの強い批判・炎上
ノイジーマイノリティは少数派でありつつも、批判を声高らかに繰り返し行うため、実際に存在する人数よりも多数いるイメージを与えます。そのため、店舗や企業にとってリスクとなることがあります。
店舗に対して批判的に思ったのが、たとえ一部の消費者であってもノイジーマイノリティとなって広まってしまえば、世間からも批判されてしまう恐れがあります。
特にソーシャルメディアを運営する店舗は、消費者への対応や批判されそうな事象に、敏感になっておく必要があります。
店舗が閉店に追い込まれることも
ノイジーマイノリティによっては店舗経営の障害となり、中には店舗が閉店に追いやられることもあります。
あるコンビニでは、周辺にある多数の会社のビジネスパーソンがコンビニを利用していたことについて、一部の近隣民からの苦情が入りました。その結果、ある会社内で「社員はコンビニ利用禁止」としたところコンビニの売り上げが低迷し、閉店へと追いやられました。
コンビニを使えなくなったビジネスパーソン、売り上げが減ってしまったコンビニ、そして最寄りのコンビニが潰れてしまった近隣民。苦情を入れていた一部のノイジーマイノリティによってあらゆる立場の人間が不利益を被りました。
場合によって、ノイジーマイノリティが店舗経営にもたらす被害は大きいということが分かります。
ノイジーマイノリティに惑わされないために
店舗や企業では、経営に障害をもたらす可能性があるノイジーマイノリティの意見に振り回されないことが大切です。ノイジーマイノリティに惑わされないために押さえておくべきことと、マーケティング対策を解説します。
ノイジーマイノリティに惑わされがちな今日のマーケティング
ノイジーマイノリティは少数派でありながらも声が大きいのが特徴であるため、企業では彼らの意見に耳を傾けてしまいがちです。
ノイジーマイノリティの意見のみを受け入れて判断してしまうと、声を上げない大多数のサイレントマジョリティが離れていき、施策が失敗する恐れがあります。
企業内ではノイジーマイノリティの意見に大きく注目し、サイレントマジョリティの意見が反映されないことが度々あります。
本当に重要なのはマジョリティ
「マジョリティ」とは直訳すると「大多数・多数派」という意味ですが、マーケティング分野のイノベーター理論では「アーリーマジョリティ(early majority)」や「レイトマジョリティ(late majority)」という言葉で用いられます。これらは、新しい商品やサービスなどが消費者に普及されていくための戦略や過程を表します。
「アーリーマジョリティ」は、新しいサービスに慎重でありながらも、情報に敏感で関心が高い層です。他の層に比べて、早めに生活に新サービスを取り入れるため、マーケット全体の34%を占めると言われています。
一方で「レイトマジョリティ」は、新しいサービスに懐疑的で、多くの人々が生活に取り入れたことを確認してから自らも取り入れるという層です。「アーリーマジョリティ」同様、マーケット全体の34%を占めており、マーケティング戦略の際に押さえておくべき層です。
ソーシャルリスニングなどを活用したマジョリティへの働きかけが重要
ソーシャルリスニングとは、ソーシャルメディアにおける消費者の日常的な会話や投稿を収集・分析し、マーケティングに活かす手法です。
企業のSNSアカウントやホームページに直接寄せられる声だけでなく、単なる消費者の「つぶやき」を吸い上げることで、より多くの顧客を対象に対策ができます。
消費者の生の声を分析すれば、新商品・新サービス開発、ブランドイメージ調査、広告の反響測定などに役立てることができ、企業運営の改善につながります。
消費者の声に応えることで、満足度や好感度の向上にも有効です。たとえば「サービスの利用方法が分からない」とつぶやいている消費者に向けて、利用方法のチュートリアル動画を展開すれば、その消費者は、動画を参考に、ストレスなくサービスを利用開始できるでしょう。
企業アカウントへ要望したわけでもないのに手厚いサポートを受けられたことにより、企業に対して好感を抱いたり、良い評価を与えたりすることが期待できます。
ソーシャルメディア分析を活用して、消費者を積極的にサポートしていくことをアクティブサポートと言い、顧客満足度の向上施策として注目を集めています。
向き合うべき顧客は、ノイジーマイノリティではなくマジョリティ
ノイジーマイノリティは少数派でありつつも激しく批判をし、炎上騒ぎを起こすことであたかも世論の意見だと思わせます。そのため、企業はノイジーマイノリティの意見を受け入れてしまうケースがあります。
しかし、企業が向き合うべきはノイジーマイノリティではなく、物言わぬ多数者のサイレントマジョリティです。企業はソーシャルリスニングなどを活用し、サイレントマジョリティのニーズや悩みを探るための工夫が必要です。
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