コンテンツ造成に効く 5つの法則【今考える インバウンド集客の「本質」vol.2】

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日本政府観光局によると2024年の年間訪日外客数は3,686万9,900人となり、前年比では47.1%増、コロナ前である2019年比では15.6%増と、過去最高であった2019年の3,188万2,049人を約500万人上回りました。

日本を訪れる外国人観光客は一体どこまで増えるのでしょうか。

2023年の世界観光ランキングによると、観光客が最も訪れている国はフランス(1億人)で、スペイン(8,500万人)、アメリカ(6,500万人)、イタリア(5,725万人)と続き日本は13位(2,507万人)でしたが、2024年に日本を訪れた外国人の数は2023年の7位だったイギリス(3,700万人)に迫る数字を記録しています。

「歴史・文化・自然・気候」という観光客が求める全ての要素を持ち合わせ、それを安定した治安がしっかり支えている日本はまるで 地球最後の「観光新大陸」。世界中がその発見に注目しています。

今後、宿泊施設や航空便等の受入れ体制の状況にもよりますが、私は今後、日本には現在のアメリカ並みの訪日外客数(6,500万人)にまで増えると予想しています。そしてその多くがリピーターの人々になるはずです。

前回のコラムでも触れましたが、訪日客リピーターになればなるほど、東京・京都・大阪といった3大都市圏を離れ、「テーマ性」のある旅を求めるようになります。定番の観光に満足した人々は、次第に 自分の趣味や興味を満たす旅 を探し始めるのです。

上記のテーマ性を念頭に、私は日本各地で前回のコラムでも紹介した聖地・岩船山爆破体験ツアーをはじめ「そこにあるものを活かす」コンテンツ開発を行ってきましたが、訪日客に売れるコンテンツにはいくつかの法則があることに気付きました。

私は2024年10月、宮城県白石市にある白石城という本物の城を舞台に、参加者が日本の時代劇や映画で見る「あのシーン」を台本に沿ってお客様に演じてもらい、その様子を撮影した映像をお客様にお届けする体験『Be a Samurai』開発のお手伝いをさせて頂きましたが、このコラムでは、この体験コンテンツを例に「コンテンツ造成に効く5つの法則」についてお話ししたいと思います。

文/櫻井 亮太郎(株式会社ライフブリッジ)


▲『Be a Samurai』紹介動画

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法則1. 日本を連想できる(Authentically Japanese)

訪日観光客が日本に期待するのは 「日本らしさ」。その土地ならではの 文化や歴史、自然風景 は、彼らの心を強く引きつけます。食文化、伝統工芸、建築物、祭りなど、日本らしいコンテンツは世の中に溢れていますが、興味深いのは外国人の視点で見た「日本らしさ」 が、日本人のそれとは少し違うこと。

例えば、「抹茶」は日本を代表する伝統的な飲み物ですが、外国人にとっては 抹茶フレーバーのスイーツやラテ も日本らしい。同様に例えそれが韓国料理店だとしても「和牛」を食べれば、彼らにとってはそれもまた日本らしい特別な体験となります。我々が当たり前だと思っていることでも、外国人にとっては 「まさに日本!」 と感じるものが沢山ある。大切なのは 「日本人が思う日本らしさ」ではなく、「外国人が連想する日本」 を意識すること。彼らの視点を取り入れることで、より魅力的なコンテンツを生み出せます。

『Be a Samurai』では、日本を象徴する存在である 「サムライ」 をテーマにすることで、武士道や戦国時代に興味を持つ人々 をターゲットとしました。近年、真田広之さん主演のドラマ 『Shogun』 や、ゲーム 『Ghost of Tsushima』 の影響もあり、世界におけるサムライ人気はますます高まっています。しかし、日本国内には 甲冑を着るといったサムライ体験がすでに数多く存在 しており、単なる体験ではなく 差別化を図ること が重要でした。

法則2. ユニークである(Unique & One-of-a-Kind)

何度も日本を訪れたことがあるような観光客にとって魅力的なコンテンツとは、他の国や地域ではもちろん味わえない、日本国内でもその地域だけで体験できる、他の人に伝えたくなるような「唯一無二」の体験です。

日本各地には多くの観光資源がありますが、地域独自の特性を最大限に引き出したユニークなコンテンツを作ることが重要。その地にしか存在しない風習、食、宗教、建築物、そして人。他の地域との「差」をみつけ、日本中探してもどこにもない「テーマ性を帯びた」商品をつくる。そのテーマが好きな人なら絶対に参加したくなる商品をつくる。

『Be a Samurai』では「本物の城」「城内で甲冑を着ることができる(これがかなりレア)」「参加者に役を与えセリフを用意する」「本格的な映像」等、日本中に溢れる甲冑体験との差別化を徹底的に図ることで、日本人、外国人問わずサムライ好きならどんなに遠くとも「時間と距離を超えてでも行きたくなる」商品をつくりました。

法則3. 映像に残せる(Photogenic & Shareable)

現代の観光において、「写真映え」や「動画映え」は欠かせない要素。観光客が訪問先で撮影した美しい風景や決定的な瞬間を、SNSを通じて自発的にシェアすることは、認知拡大に大きな効果をもたらします。「ここでしか撮れない」と感じる瞬間を提供することで、SNSでの拡散が促進され、新しい観光客を引き寄せるのです。

『Be a Samurai』では撮影前に全員で台本の読み合わせを行い、撮影が始まると監督が「シーン1,アクション!」「カット!」と叫び、城内はさながら本物の撮影現場のような雰囲気に包まれます。緊張した参加者はNG出しまくりますが、それも楽しい。こうやって参加者が必死にセリフを覚え、演じたシーンは体験終了後、編集され、数週間後、参加者の元にデータとして届けられます。

彼らが次に取る行動は、もう想像できますよね? そう、SNSへの投稿です。全員で力を合わせ、約3分間演じ切った 壮大なアクションシーン。これを世界中の人々に見せたくなるのは当然です。参加者自身がSNSを通して宣伝してくれる仕組みをつくることで、広告宣伝費をあまり掛けずに情報発信を行う体制を整えることができます。

法則4. インバウンドフレンドリー(Inbound-Friendly & Welcoming)

外国人観光客が日本での旅行を楽しむためには、多言語対応や外国語が話せるガイドの存在など、実用的なサポートも重要ですが、何より「言語の壁を乗り越えようとする姿勢」が大切。

現地の言葉が話せなくても、簡単な単語やジェスチャーを使ってどうにかコミュニケーションを取ろうとすること自体が観光客にとって特別な体験なのですが、日本人はどうしても完璧な対応を求め、失敗を恐れ、積極的なコミュニケーションを避けがちです。

訪日客が日本の文化や風習について知りたいと思っていても、彼等とのコミュニケーションに消極的な人が多い日本では、コミュニケーションを取るチャンスが少ないのが現状。観光地や施設のスタッフは「英語を使うのが怖い」と感じるのではなく、単語のみのシンプルな表現や笑顔で積極的にコミュニケーションを試みることが重要です。ほとんどの訪日客は「上手な英語」ではなく、「親しみのある態度」や「表情やジェスチャーを交えてコミュニケーションしようとする努力」を最も評価してくれます。そう、我々のロールモデルは「大阪のおばちゃん」なのです!

完璧な英語や言語スキルがなくても、相手に「伝えたい」という気持ちがあれば、それだけで観光客にとって温かい印象を与え、この姿勢がGoogle Map等の評価に大きく影響し、評価が高ければ新たな来客に繋がります。

『Be a Samurai』では、参加者に多言語で訳された「台本」を渡し、撮影を始める前に台本読み合わせを行うのですが、これは我々と参加者のアイスブレイクを兼ねており、セリフのディレクションを行うだけでなく、我々スタッフの自己紹介はもちろん、どこから来たのか、何故このツアーに参加することにしたのか、どんな映画が好きなのか、日本滞在中に何をしたいのか等を聞きながらコミュニケーションを深めることで、その後行われる演技への緊張を緩和し、参加者とスタッフが最高の作品をつくるための雰囲気づくりを行っています。

法則5. 夢をかなえられる(Fulfilling Aspirations)

訪日観光客の多くは、日本のアニメ漫画、映画などに描かれる世界観に憧れを抱き、その夢を実現するために日本を訪れます。これらのコンテンツは、観光客に「自分がその物語の一部になれる」と感じさせる力。すなわち「没入感」を生み出します。こうした憧れを現実のものとする場や機会を提供することで、満足度をさらに高めることができます。

『Be a Samurai』では「軍議」と「決戦」それぞれの台本が用意されており、それに沿って撮影を行います。友人や家族等、グループでの利用を想定しており、「殿」役、「参謀」役(人数が増えた場合は参謀が増える)、「足軽」役に分かれ、それぞれをこちらが用意した台本を元に演じてもらいます。

『殿、ご決断を!』

『伝令!敵軍がそこまで迫ってきており、我が軍はもはや……バタッ(倒れる)』

『たわけ!猿が!』

『皆のもの、出陣じゃー!』

等、日本人なら誰しもが知る名セリフばかり。あのシーンを本物の城で、本物の甲冑を着ながら、参加者自身が演じることができるのです。

ちなみに英語版の台本ではシェークスピアをヒントに『中世の英語』が各セリフに散りばめられており、例えば

『殿、ご決断を!』のシーン。

通常の英語であれば

『My lord, we need your decision, sir!』
『マイロード、ウィーニード・ユア・デシジョン、サー!』

となるところを、

『ミロード・ウィーニード・ユア・デシジョン・サイアー!』

とシェークスピア作品に出てくるような中世風の英語に訳すことで、参加者の没入感を高めています。

また「決戦」のシーンでは、城外で敵との戦闘を撮影し、本格戦国ドラマさながらの迫力ある映像が完成します。

アニメ漫画の舞台となった場所を巡る「聖地巡礼」ツアーのように、ファンが映画で見た風景を実際に目にしたり、登場人物が訪れたスポットで同じようなポーズを取って写真を撮ることはもはや日本全国でみかける光景ですが、そこから更に一歩踏み出し、それらのシーンを再現するアクティビティやイベントを提供することで、没入感を高め、彼らにとっての「夢」をかなえることで満足度が高く、高単価でも売れる商品が作れるのです。

今回は訪日客に向けたコンテンツ造成のヒントになる法則についてお話ししましたがいかがでしたか。

次回は法則4でも触れた「インバウンドに効くコミュニケーション」について掘り下げてお話したいと思います。お楽しみに!

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著者プロフィール:株式会社ライフブリッジ代表取締役 櫻井 亮太郎


仙台市出身。中学卒業後、渡米。英国リッチモンド大学卒業。10年間の海外生活を経て1999年に帰国。外資系銀行、証券会社でキャリアを積み、2006年故郷仙台で株式会社ライフブリッジを設立。全国でインバウンド人材育成に特化した研修・講演を行う傍ら、登録者300万人※のYouTubeチャンネルの「Abroad in Japan」をプロデュース。2020年4月には自らもYouTubeチャンネル「Ryotaro's Japan」を開設。登録者数15.7万人※のYouTuber、そしてフォロワー数7.2万人※のインスタグラマーとして、多くの観光プロモーションに携わっている。※登録・フォロワー数は2024年1月現在
また近年はそのインバウンドにおける豊富な経験と強い情報発信力を用いて「聖地・岩船山爆破体験ツアー」、「蔵王キツネルーム」等、インバウンド向けツアーの企画・造成・コンサルティング・PRを一気通貫に行っている。 内閣府クールジャパンプロデューサー、一般社団法人宮城創生DMO会長、宮城ワーケーション協議会共同代表。https://www.lifebridge.jp/

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      この記事の筆者

      櫻井亮太郎

      櫻井亮太郎

      仙台市出身。中学卒業後、渡米。英国リッチモンド大学卒業。10年間の海外生活を経て1999年に帰国。外資系銀行、証券会社でキャリアを積み、2006年故郷仙台で株式会社ライフブリッジを設立。全国でインバウンド人材育成に特化した研修・講演を行う傍ら、登録者300万人※のYouTubeチャンネルの「Abroad in Japan」をプロデュース。2020年4月には自らもYouTubeチャンネル「Ryotaro's Japan」を開設。登録者数15.7万人※のYouTuber、そしてフォロワー数7.2万人※のインスタグラマーとして、多くの観光プロモーションに携わっている。※登録・フォロワー数は2024年1月現在
      また近年はそのインバウンドにおける豊富な経験と強い情報発信力を用いて「聖地・岩船山爆破体験ツアー」、「蔵王キツネルーム」等、インバウンド向けツアーの企画・造成・コンサルティング・PRを一気通貫に行っている。 内閣府クールジャパンプロデューサー、一般社団法人宮城創生DMO会長、宮城ワーケーション協議会共同代表。https://www.lifebridge.jp/

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