はじめまして。株式会社ライフブリッジの代表の櫻井亮太郎と申します。我々ライフブリッジはコンテンツ造成、インバウンド受け入れ研修、SNSを用いた海外向けPR、そして翻訳・通訳サービスを提供し、日本、特に地方を観光で豊かにすることを目的として2006年に創業しました。
このコラムでは、観光業界で今起きていることや最新のトレンドをわかりやすく解説し、読んでくださる皆さんにすぐ役立つアイデアをお届けしたいと思っています。
文/櫻井 亮太郎(株式会社ライフブリッジ)
関連連載:
株式会社ライフブリッジのインバウンド対策ソリューションを見てみる
【訪日ラボは、8月5日にインバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を開催します】
会場での開催に加え、一部講演ではオンライン配信(参加費無料)も実施!さらに、チケットを購入した方限定でアーカイブ配信も予定しています。
ご来場が難しい方や当日ご都合が合わない方も、この機会にぜひご参加ください。
30年前から“イメチェン”した日本
今や観光立国の名に恥じない日本。2024年、観光業は自動車産業の次に輸出額の多い産業となりました。今や東京・大阪・京都の3大都市圏だけではなく、日本全国で外国人観光客を見かけるようになっています。今年3,500万人の訪日客が予想される日本も、その数が急激に増えはじめたのはここ10年少し前から。その前はどうだったのでしょうか。少しの間30年前にタイムスリップしてみましょう。
30年前の1994年、私は英国の大学に通っていました。その大学は100か国を超える国々から学生が集まっており、さながら「ミニ国連」。イギリス人もいましたが、自己紹介はいつも「My name is Taro, I’m from Japan, Nice to meet you」と名前と国籍を伝えるところから始まります。バブルが弾けた直後でしたが、とはいえ日本は当時世界で最もお金持ち。「JAPAN」の名は知れ渡っていました。ただ、面白かったのはその学生たちが当時「JAPAN」という言葉から想起したのは「トヨタ」「ホンダ」そして「ソニー」だったことです。
30年後の2024年。日本を訪れようとしている外国人は「JAPAN」という言葉から何を想起し、どんな体験を求めているのでしょうか。インターネットが普及し、SNSで人々が世界中の情報をいとも簡単に得ることができる今、それは画一的ではなくその人が持つ趣味趣向に大きく依存するようになりました。ラーメンや寿司等、日本の食を食べつくしたい人もいれば、アニメのロケ地を巡りたい人もいる。そして、大自然の中で滞在中トレッキングやスキーに勤しみたい人も多い。
そもそも30年前、日本は世界の人々にとって日本は「ものづくりの国」であり「観光」をする場所ではありませんでした。しかし、現在はSNSの登場により大都市だけではなく、日本各地のあらゆる情報が世界中に拡散され、訪日客はその情報をもとに自分の趣味趣向に忠実に従って日本各地へ向かっているのです。例えばSNSが無ければニセコや白馬のスキー場が外国人で溢れることも、日本のウィスキーがこんなに有名になることもなかったでしょう。
「テーマ性」が誘客の鍵
またコロナを挟み、観光のトレンドは大きく変わりました。買い物をメインにする人が減り「特別な体験」を求める人が増えています。最近の調査で東アジアや東南アジアからの観光客の約8割が、都市ではなく地方を訪れたいと考えていることがわかっています。ただし日本のほとんどが地方であり観光地間の競争は激しくなるばかり。そして東京・大阪・京都といった3大都市圏から近いエリアが有利なのは間違いありません。では「それ以外の地方」に勝機はあるのでしょうか。私は、「テーマ性」が鍵だと考えています。
一般的に外国人観光客向けの旅行商品は、国籍やエリア別に作られることが多いのですが(例えば「台湾人向け」や「欧米人向け」等)。私はこのやり方にはリスクがあると思っています。なぜなら観光客の数が少ない地域で外国人だけをターゲットにすると十分な集客が難しくなりますし、コロナや政治的な理由で外国人が日本に入ってこれなくなると、外国人一本足打法の旅行商品は需要が瞬く間になくなってしまいます。
地方においてこれから必要なのは国籍を選ばない「テーマ性の高い商品」だと私は考えます。「〇〇好きに特化した商品」と言えばわかりやすいでしょうか。例えば私が栃木県栃木市で始めた「聖地・岩船山爆破体験ツアー」はその一例です。この商品は「特撮ヒーローが好きな人」向けに造成をされており、テレビでみるような爆破シーンを参加者の目の前で再現するという商品として販売し、国籍を問わず多くのお客様がこのユニークな体験を楽しんでいます。この商品では参加者を半円状に等間隔に並べ、その中心で3回爆破を行うことで、炎や煙を背景とした自撮り写真や動画が撮影できるのですが、1組(大人3名まで)3万5,000円と比較的高単価にもかかわらず、最近ではキャンセル待ちが出る程の人気です。また最近では結婚式の「前撮り需要」が高く、世界中のカップルに利用していただいています。
「幕の内弁当」という罠
訪日客が目に見えて増えてきた2013年頃から、国内ではインバウンド誘客合戦が繰り広げられていますが、地方、とりわけ「大都市から離れている地方」では取ってはいけない戦略がひとつあります。それは「幕の内弁当」戦略です。毎年様々な国で「旅行博」と言われる世界中の国や自治体、そして民間企業が出展できる旅の祭典が開催されており、日本からもかなりの数の自治体が参加しているのですが、多くのブースが地域のあらゆるパンフレットを持ち寄り紹介した結果「我々の町には長い歴史と文化があり、美味しい山の幸と海の幸、美しい自然に囲まれています」といった画一的な印象のものばかりになってしまっています。
私はこれを「幕の内弁当戦略」と呼んでおり、「我々の地域には何でもあります」というこの誘客戦略は、「それなら東京、京都、大阪に近い似たような町に行けばよい」という結果を招く可能性があるのです。
私は日本の地方にもっと
- 時間と距離を超えても行きたくなる
- 特定の趣味や興味を持った人向けの
- 高付加価値な商品
が必要だと思っています。そして、上記の条件を満たした旅行商品は「高単価」であることが許されます。それは参加者が「どうしても参加したい」からなのです。
以上、【今考える インバウンド集客の「本質」vol.1】をお届けしました。次回は「売れるコンテンツ造成の法則」についてお話しします。
著者プロフィール:株式会社ライフブリッジ代表取締役 櫻井 亮太郎
仙台市出身。中学卒業後、渡米。英国リッチモンド大学卒業。10年間の海外生活を経て1999年に帰国。外資系銀行、証券会社でキャリアを積み、2006年故郷仙台で株式会社ライフブリッジを設立。全国でインバウンド人材育成に特化した研修・講演を行う傍ら、登録者300万人※のYouTubeチャンネルの「Abroad in Japan」をプロデュース。2020年4月には自らもYouTubeチャンネル「Ryotaro's Japan」を開設。登録者数15.7万人※のYouTuber、そしてフォロワー数7.2万人※のインスタグラマーとして、多くの観光プロモーションに携わっている。※登録・フォロワー数は2024年1月現在
また近年はそのインバウンドにおける豊富な経験と強い情報発信力を用いて「聖地・岩船山爆破体験ツアー」、「蔵王キツネルーム」等、インバウンド向けツアーの企画・造成・コンサルティング・PRを一気通貫に行っている。 内閣府クールジャパンプロデューサー、一般社団法人宮城創生DMO会長、宮城ワーケーション協議会共同代表。https://www.lifebridge.jp/
関連連載:
株式会社ライフブリッジのインバウンド対策ソリューションを見てみる
インバウンド対策にお困りですか?
「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!
【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。
<本セミナーのポイント>
- 変わりゆく市場の状況と、今後注目のトレンドを把握できる
- 旅マエの顧客行動を理解し、集客・予約率アップのヒントが得られる
- 旅ナカの接客品質を高め、顧客満足度向上に繋がる実践的な対応を学べる
- 各分野の専門家から、ビジネスを加速させる具体的な戦略や成功事例が聞ける
詳しくはこちらをご覧ください。
→宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。
「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!