日本政府観光局(JNTO)は、日本のインバウンド市場を拡大する中核的な存在として、地方自治体・DMO・観光関連事業者と連携しながら、長年にわたり海外に向けたプロモーションを展開してきた組織です。
そんなJNTOの公式サイトには、インバウンド施策を検討する上で欠かせない多種多様な情報が掲載されています。各国の観光市場の動向、各種統計データ、デジタルマーケティングのガイドライン、さらには現場の取り組みまで、幅広いコンテンツが集約されており、インバウンドに取り組む自治体やDMO、観光事業者にとっては、まさに「情報の宝庫」。
今回は、JNTOサイトに掲載されているコンテンツと、施策への活用方法について紹介していきます。
文/川口政樹(株式会社デイアライブ)
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JNTOサイトから得られる情報
それでは、JNTOサイト内に掲載されている主要なコンテンツを、具体的なページや資料名とともにご紹介していきます。各コンテンツは、施策の検討や実践に向けた有用なエビデンスとなるだけでなく、実務に直結するノウハウが盛り込まれています。
1. インバウンドの基本情報
・訪日外客統計
毎月中旬に公表される、インバウンドの基本的な統計データが「訪日外客統計」です。
年別、月別、市場(国)別の訪日外客数の推移がグラフや表形式で公開されているとともに、市場ごとの増減要因が記載されているため、毎月チェックしておきたいデータですね。
日本全体のマクロデータなので、国別の訪日動向やピーク時期、季節ごとの変動など、数値に基づいた施策の検討に役立ちます。
なお訪日外客数とは、法務省集計による出入国管理統計に基づき算出されたもので、外国人正規入国者から、日本に居住している永住者等の外国人を除き、これに外国人一時上陸客等を加えた入国外国人旅行者の数字となっています。
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・訪日旅行データハンドブック
次に紹介するのは、インバウンド担当者のバイブル的存在である「訪日旅行データハンドブック」。
こちらは、主要市場別に人口、所得、外国旅行傾向等の基礎データや、訪日旅行への期待、消費額、都道府県別訪問地などマーケティングに必要なデータが詳細にまとめられているので、インバウンド業務に携わるならまずは目を通しておくべき資料となります(1,000ページ以上あるので、ターゲット市場から読み込んでいきましょう)。

この資料により、たとえば市場別の「訪日旅行に関する期待内容」と、自地域の観光コンテンツを照らし合わせ、ターゲットとなる市場を絞り込んだり、ターゲット市場へのプロモーション期間を、「祝日」「学校の長期休暇」「月別訪日客の推移」のデータに基づいて決定する、といった活用が可能になります。
関連記事:インバウンドに関わる詳細データを掲載 JNTO「訪日旅行データハンドブック2023」
2. インバウンド戦略
「訪日インバウンド市場別情報」ページ内にある市場ごとのページには、「訪日マーケティング戦略」というPDFが掲載されており、JNTOがその市場に対してどのような戦略をもって取り組むのか、という方針と具体的なターゲット、ターゲット別の戦略・戦術が詳しく記されています。
また、各ターゲットの特徴も別のPDFにてまとめられています。
たとえば台湾市場におけるターゲットは、次の3つとなっており、ターゲットごとに訴求する観光コンテンツやアクティビティ、BtoB及びBtoCにおける施策が優先順位とともに記載されています。
- ターゲットA:30〜40代 家族・親族 FIT
- ターゲットB:20〜40代 夫婦・パートナー、友人 FIT
- ターゲットC:50代以上 世帯可処分所得上位40%(55万円 / 月以上) 夫婦・パートナー、家族・親族 FIT

インバウンドプロモーションを実施する際は、このようなJNTOの戦略・戦術を理解し、それに沿った施策にしていくことが効果的なので、ぜひこの資料を活用してみてください。
3. デジタルマーケティングのガイドライン
「デジタルマーケティングの活用支援」というページは、JNTOが長年にわたり観光情報を発信し蓄積してきた数々のノウハウが詰まっている資料が集まっています。
これから多言語観光サイトやインバウンド向けプロモーション動画を制作する方、多言語でInstagram・Facebookを運用している方には必見の内容となっています。
「外国人旅行者を魅了するウェブサイトの作り方(英語実例集)」では、サイトのコンセプトつくりから、事業者選定、コンテンツの更新、アクセス分析まで、具体的な内容が盛り込まれています。
たとえばサイトに掲載する画像については、「望ましい画像」が10のポイントごとに実際の画像とともに列挙され、「避けるべき画像」も具体例と共に示されているため、実際のサイト運用にも大いに役立ちますね。
さらに、「インバウンド向けプロモーション動画の作り方」では、動画制作手法のみならず、動画を活用したプロモーション戦略の全体像が解説されており、過去に多額の予算をかけて制作した動画を再活用する際にも参考になります。

また、SNSについては「効果的な情報発信のためのInstagram運用ガイドライン」と「効果的な情報発信のためのFacebook運用ガイドライン」の2種類が公開されています。

このガイドラインの素晴らしいところは、SNSの仕様変更に合わせて更新されるところ。(最新版は2024年3月の第6版)
Instagramは新しい機能が追加されたり、既存機能の仕様が変更されたりといったことが頻繁に起こります。その情報をキャッチアップして対応するのは大変ですが、こちらのガイドラインに沿って運用しておけば十分に対応できるので、運用担当者としては重宝します。
もちろん、使えるノウハウもたくさん盛り込まれているので、これさえあればSNSの運用に困ることはないでしょう。
4. インバウンドノウハウ・優良事例
・インバウンドノウハウ
「インバウンドノウハウ」は、インバウンドに関する実務的なノウハウがまとめられた特集ページ。マーケティング、プロモーション、訪日インバウンドの動向など、幅広い知識を学べます。
「高付加価値旅行者に選ばれるデスティネーションになるために必要なこと」や「大きな成長が期待される『フィリピン市場』の可能性とは?(JNTOマニラ事務所インタビュー)」など、有識者やJNTOの知見を吸収できるコンテンツが揃っています。
・地域の取り組み事例
「地域の取り組み事例」のページでは、自治体やDMOがどのようなインバウンド施策を実施し、成果に結びつけたかが数多く紹介されています。実際の取り組みを通して成功のポイントや工夫点を学ぶことができるため、施策導入の参考として非常に有用です。
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5. 海外商談会出展情報
「出展・参加者情報」には、BtoB施策を実施する上で必要となる、海外で開催される各種展示会や商談会の参加者募集に関する情報が掲載されています。
時にはJNTOブースで掲示するパンフレットや動画の募集など、予算がかからない取り組みもあるので、定期的にチェックしておきましょう。
6. 自然災害等の非常時対応
「自然災害等の非常時の外国語による発信」のページには、JNTOによる非常時における発信内容が記載されています。
JNTOが、年中無休・24時間対応の多言語コールセンター「Japan Visitor Hotline」を運用しているのはご存知でしょうか。
災害・緊急時には、外国人観光客への情報発信が非常に重要ですが、日本語での情報発信もままならない災害時において、外国語での発信にまで手が回らないのが現状です。
そんなとき「Japan Visitor Hotline」や、このページに掲載されている情報だけでも発信しておけば、多くの外国人観光客の安全確保につなげられます。
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JNTOによる支援メニュー
JNTOは、単なる情報提供に留まらず、実際の現場支援を目的とした各種サポートメニューも用意しています。以下に、その主なサポート内容を紹介します。1. デジタルマーケティング各種支援メニュー
JNTOサイトに掲載されている月刊ウェブマガジン「Japan Monthly Web Magazine」に記事広告を掲出可能です。フォロワー数が多いJNTOの公式SNSでの発信もセットになっています。事業終了後に専門的な分析レポートとしてまとめてもらえるため、今後の施策に活用できます。
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また、デジタル広告の支援では、JNTOが保有するオーディエンスデータを活用したWeb広告を実施してもらえるため、「訪日検討・予約検討」段階のユーザー層に対して効率的に情報を配信できます。
JNTO「デジタルマーケティング各種支援メニューの案内」はこちら
2. 地域へのインバウンドサポート受託事業
インバウンドに関する助言、海外の旅行会社・メディアの招請支援、海外の旅行会社セールス活動における支援、さらには海外でのセミナー・商談会への集客支援を有償で支援してくれます。無料相談対応もしてくれる(JNTO本部で1時間程度)ので、まずは相談してみてはいかがでしょうか。
JNTO「地域へのインバウンドサポート受託事業」についてはこちら
3. セミナー・講演を通じた情報提供
JNTOでは毎年オンラインセミナーを開催しています。2024年は「地域の観光戦略に欠かせないデータ収集と分析・活用ノウハウ」というテーマで開催され、その概要が記事として公開されています。
またJNTOの賛助団体や会員になると、インバウンド旅行振興フォーラムや実務担当者情報交換会にも参加できるため、最新の情報を共有する機会が得られます。(JNTOの賛助団体・会員についてはこちらをご覧ください)
JNTO「セミナー・講演を通じた情報提供」はこちら
JNTOサイトを徹底的に活用することが、インバウンド成功の近道!
ここまで紹介してきたように、JNTOサイトはインバウンド戦略に必要な情報が集約されたプラットフォームとなっています。これらの情報を活用することで、ターゲット市場の正確な把握、効果的なプロモーション戦略の策定、さらには緊急時の対応まで、インバウンド施策の全体像を具体的に描けます。JNTOの公式サイトをこまめにチェックし、現場の意思決定に役立つ豊富な情報資源として、ぜひ積極的に活用してみてください。
著者プロフィール:株式会社デイアライブ 川口政樹
1996年三重県庁に入庁後、農林、土木、福祉、教育などの行政分野での勤務を経て、2015年から観光行政に携わる。三重県観光連盟出向中に、事務局次長として公式サイトやSNSを全国1位に育てあげるとともに、サイトを活用したマネタイズの仕組みを構築し、DMOの収益構造を大きく改善。出向後は、県庁にて観光DXの推進や観光振興基本計画の策定を担当。2024年から株式会社デイアライブにて、セミナー講師、観光DX・デジタルマーケティングの支援、観光人材育成などを行っている。観光庁「令和6年度 地域周遊・長期滞在促進のための専門家派遣事業」登録専門家。https://dayalive.jp/
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