「観光協会からDMOへの道」、箱根DMOの官民一体プロジェクト

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観光地域づくり法人(DMO)として、観光庁により登録されている団体は312法人(2025年2月時点)。その中には観光協会や観光圏など既存組織を母体とするものもあり、今後も新たに登録を目指す既存団体もあるでしょう。観光協会からDMOへと移行し新たなミッションを遂行していくには戦略、人材、風土などさまざま改革を必要とします。今回は(一財)箱根観光協会が2018年にDMOとして登録されて以来7年間の取り組みに、観光協会からDMOへ進化を遂げるために何が必要かを探ってみましょう。

文/萩本良秀(地方創生パートナーズネットワーク)

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噴火災害を契機に官民連携、地域一体型の組織を目指してDMOを設立

オンラインイベント「注目DMO Meet up!」(地方創生パートナーズネットワーク主催)は、重要テーマに独自の手法で取り組むDMOの声を聞き、その分野の専門家との意見交換を通じて各DMOが実践できるヒントを学ぶために開催されており、2月7日に第5回が行われました。この日は「観光協会からDMOへの道」をテーマに、箱根観光協会(以下、箱根DMO)の佐藤守専務理事が登壇。どのように地域の合意形成や新たな施策の取り組みを行い、成果を上げてきたかを聞きました。

佐藤氏は1992年に(株)リクルート入社。2000年のインターネット宿予約サイト「ISIZEじゃらん(現じゃらんnet)」のサービス立ち上げ、(株)リクルート北海道じゃらんの社長などを経て、箱根DMOには2018年の設立時より出向。その翌年より専務理事として7年間、箱根DMOの運営に関わってきました。

広大なエリアに「箱根17湯」と呼ばれる豊富な温泉資源に恵まれ、首都圏からの交通利便性も相まって、圧倒的な知名度と集客力を持つ箱根町。しかし、正月の箱根駅伝でも知られる高低差の激しい広大な地形に主要観光地が点在し、宿泊業とそれ以外の業種、行政と民間事業者、異なる世代、地域内観光協会10団体など、それぞれの間で異なる意見や考えを持ち、必ずしも一枚岩でなかったと聞きます。そして2015年には箱根山が小規模噴火。気象庁の警戒レベルが(3)となり観光客数と消費額が3割近く減少。東日本大震災に続く自然災害の脅威により、地域関係者の危機感が生まれました。

箱根になぜDMOが必要だったのか?」という問いに対し、「地域がバラバラのままでは地震や噴火など自然災害に再び直面した際に大きなダメージとなり、いずれ競合観光地に負けるであろうという危機感から、官民一体となった全体的な組織が箱根には必要だった」、と佐藤氏は言います。時期を同じくして観光庁が日本版DMO法人の登録制度を創設しましたが、決して補助金目当てではなく、すでに構想していた組織を国が提唱するDMO制度を活用して形にすることで、「観光地そのものを経営する視点のもと、官民一体で箱根町の観光経済を拡大発展させる」という取り組みが始まりました。

このような経緯で、箱根町観光協会を母体として「官民一体ALL箱根」の組織的活動を目指し、2年の構想期間を経て2018年4月に箱根DMOを発足、同年12月に登録DMOとして認定されました。

箱根DMOのミッションと、官民一体で取り組む主要アジェンダ:箱根観光協会提供
▲箱根DMOのミッションと、官民一体で取り組む主要アジェンダ:箱根観光協会提供

DMO内外の人材混成プロジェクトで、地域を一つの会社のように運営

それ以前は、箱根関所や総合案内所、道の駅などを運営、同じパンフレットを毎年更新、といった定型的事業を観光協会として行ってきた現場で、一から地域連携を進めていった経緯を、佐藤氏に聞きました。

箱根DMO戦略推進委員会」というワーキング・グループを立ち上げ、ディスカッションを重ねました。会社であれば何のために自社は存在するのかというミッションがある。箱根という地域は観光客というお客様のために何をやるのか、何が大事かといった議論を最初の2か月間毎週2回は続け、マーケティング、売上、利益、税収、住民参加といったキーワードが出てきました。

「箱根DMO戦略推進委員会」による初年度のディスカッション:箱根観光協会提供
▲「箱根DMO戦略推進委員会」による初年度のディスカッション:箱根観光協会提供

来訪者へのアンケートでは毎年、約7500件の回答を取得。箱根観光に改善を求める項目では「交通渋滞」「夜やっている店が少ない」「公共交通の混雑」「クレジットカードが使えない」という、不動の上位にある不満の解消に取り組みました。観光庁の「オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業」を活用し、「Hakone Digital Map」を開発。利用者にはタクシー乗り場のリアルタイムな待ち人数や道路渋滞の一定時間後の予測、比較的空いているスポットを案内。公式LINEサービス「HAKONE DMO Touch!」では日別の人流予測を表示するなど、観光DXに取り組みました。全国の観光地でも課題となっている人手不足については、経済産業省「地域の人事部補助金」を活用して企業横断の階層別研修、地域独自の採用ページ「はこワク!」、外国人積極採用に向けた研修会などを進めています。

この続きから読める内容

  • 行政と連携して災害時にも率先して対応、箱根DMOの世界水準の取り組み
  • 観光協会からDMO登録するべき理由、箱根におけるその「必然性」
  • 著者プロフィール:萩本 良秀
  • 日本の魅力ある商品を在日外国人インフルエンサーとつなげるマッチングプラットフォーム「trial JAPAN」
  • 【インバウンド情報まとめ 2026年2月後編】訪日中国人数6割減でも「インバウンド全体としては好調」、観光庁 / 1月の訪日外客数359.8万人、韓国が史上初の110万人超え ほか
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この記事の筆者

萩本良秀

萩本良秀

地方創生パートナーズネットワーク 事業支援ディレクター。民間企業や関東広域DMOなどインバウンド観光関連事業で、多言語ウェブサイトやInstagramなどSNSを活用したデジタル・マーケティング担当を歴任。全国通訳案内士(英語)として150名以上の外国人旅行者をガイド。観光庁「地域周遊・長期滞在促進のための専門家派遣」など、観光庁や文化庁事業の委員、自治体や観光団体のイベントでの講演、大学ではホスピタリティ科目の講師も務める。

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