スポーツ庁、文化庁および観光庁は2月5日、「第8回スポーツ文化ツーリズムシンポジウム」を文部科学省講堂にて開催しました。
今回のシンポジウムでは、3庁長官によるトークセッションや、スポーツと文化の力を活かした観光モデルの成功事例を紹介する「スポーツ文化ツーリズムアワード2024」の表彰式が行われました。
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3庁連携協定の署名式・トークセッション
シンポジウムの冒頭では、スポーツ庁の室伏 広治長官、文化庁の都倉 俊一長官、観光庁の秡川 直也長官による、連携協定の署名式が行われました。

署名式を経て今後さらに3庁の連携を強めていく考えを示したうえで、3庁の長官によるトークセッションが開かれました。
セッションでは、「3庁連携による各庁への期待」と「3庁連携により今後取り組みたいこと」の2つのテーマをもとに、各長官の考えが示されました。
以降は、セッションの内容を長官ごとにまとめてご紹介します。
スポーツ庁:室伏 広治長官「国際イベントの需要を活用した取り組みを」
室伏長官は、「アウトドアスポーツ」と「武道ツーリズム」を軸に、スポーツを観光資源として活用する可能性を述べました。
四季のある日本の自然環境を活かしたアウトドアスポーツや、日本の精神文化に深く通じる武道は観光との親和性も高く、新たなコンテンツの創出が期待できるとして、3庁の今後の連携に期待を寄せました。

また、2025年の世界陸上やデフリンピック、2026年のアジア大会(愛知・名古屋)などの国際イベントを活用し、スポーツと日本の文化体験を組み合わせたツーリズムの推進が重要だと強調しました。
そして、そのためにはデジタル化の推進も行い、それぞれの情報が紐付くネットワークをつくる必要があると述べました。
また国際イベントの需要を一過性のものとして終わらせず、さらなる相乗効果を生むためにも、今後の3庁の連携はますます重要になるという認識を示しました。
文化庁:都倉 俊一長官「自治体・民間との連携が重要に」
都倉長官は、ハード面では世界に誇る文化財が数多くあるとした一方で、これからの課題として「ソフトコンテンツをさらに充実させることが求められている」と指摘。「スポーツや文化イベントを目的とした観光」を確立する上で、日本は他国と比べてコンテンツの育成が足りていない状況だという認識を示しました。
同時に、日本はソフトコンテンツの宝庫としてポテンシャルがあるといい、「観光資源としてのソフトコンテンツがさらに充実したら、観光立国としての将来は明るいのではないか」と期待を述べました。

また今後の取り組みについては、民間とのつながりを持つ文化庁ならではの強みを活かしていきたいと述べ、「民間が持つクリエイティブな部分と行政をつなげられれば、一つの大きなパワーになる」と意欲を見せました。ほかにも全国の自治体との連携の重要性も強調し、国・自治体・民間の連携をさらに強めていくべきだと語りました。
観光庁:秡川 直也長官「長期的な取り組みこそが成果として表れる」
秡川長官は、観光庁の立場は「外国人観光客がスムーズに日本を訪れ、各地域を楽しんでもらうこと」とし、その上でスポーツ庁や文化庁が担う分野こそが、訪日客が日本への関心を高める要素となると述べました。

また現在のインバウンド市場の盛況について「これまでの積み重ねが成果になっている」とし、観光においては長期的な取り組みが必要であると語りました。
そして、今後も行政機関や民間との連携を密に行い、これまでの取り組みを継続していく考えを示しました。
「スポーツ文化ツーリズムアワード2024」表彰式
トークセッションに続き、「スポーツ文化ツーリズムアワード2024」の表彰式が行われました。
本アワードはスポーツ文化ツーリズムの優れた取り組みを評価するもので、計7団体が表彰されました。
スポーツ文化ツーリズム賞:山形県飯豊町商工観光課
スポーツ文化ツーリズム賞には、山形県飯豊町(いいでまち)商工観光課の「『白川湖の水没林』における『映える』カヌーツアーを主軸としたサステナブルな観光地づくり」が選ばれました。
この取り組みでは、白川湖の水没林を活用した「映えるカヌーツアー」などのウォータースポーツ体験が広告塔となり、地域活性化につながっています。また湖岸でのライトアップやアート展示による新たな来訪者の獲得や、クリーンアップ活動などによる湖の特別な景観や地域文化を守る取り組みも行っています。
カヌーツアーなどの仕組み化により地域経済の循環につながっていること、地域の文化的背景を活用して課題の把握・解決に向けた施策が行われていることが評価されました。
スポーツツーリズム賞:サロマ湖100kmウルトラマラソン実行委員会
スポーツツーリズム賞には、サロマ湖100kmウルトラマラソン実行委員会の「サロマ湖の雄大なロケーションを舞台にした100kmの日本陸連公認レースウルトラマラソンの原点『サロマ湖100kmウルトラマラソン』」が選ばれました。
この取り組みでは、40年近く開催されている100kmのウルトラマラソンを通じ、地域と一体となった運営が実施されています。参加者は4,000名以上にのぼり、宿泊・交通・飲食など多方面で地域経済に貢献しています。
大会参加者やインフルエンサーによる情報発信も活発で、観光誘致のモデルケースとして評価されました。

文化ツーリズム賞:琵琶湖疏水沿線魅力創造協議会
文化ツーリズム賞には、琵琶湖疏水沿線魅力創造協議会の「フィールドミュージアム『琵琶湖疏水』の魅力発信等による文化・景観や観光振興への貢献」が選ばれました。
京都の発展を支えた琵琶湖疏水を観光資源として活用しており、歴史的な文化資源を守りながら、官民連携で観光振興や地域活性化を進める取り組みが評価されました。インバウンド観光の受け入れ強化にも期待が寄せられています。

日本遺産ツーリズム賞:公益社団法人 日本観光振興協会
日本遺産ツーリズム賞には、公益社団法人 日本観光振興協会の「日本遺産『御周印』(ごしゅういん)・『御周印帳』(ごしゅういんちょう)」が選ばれました。
全国104の日本遺産をめぐる御朱印プロジェクトを企画し、専用の御朱印帳を作成して観光地を巡るきっかけを提供。観光客の周遊促進と地域経済の活性化に貢献し、日本遺産の認知向上にも寄与したことが評価されました。

食文化ツーリズム賞:公益社団法人 新潟県観光協会
食文化ツーリズム賞には、公益社団法人 新潟県観光協会の「地域の食文化を体現するレストランを起点とした旅を誘発する『新潟ガストロノミーアワード』」が選ばれました。
この取り組みでは、「食」を軸にした観光振興を目的に、新潟県内の飲食店や宿泊施設、特産品、若手シェフを発掘・表彰し、国内外に発信しています。新潟を「ガストロノミーの聖地」としてブランディングすることで、国内外の観光客誘致を進めました。
海・山の幸に恵まれた地域の食文化を生かし、観光と食を結びつける横断的な取り組みが評価されました。

新しい観光賞:特定非営利活動法人AYA / 福岡よか街プロジェクト事務局
新しい観光賞では、2団体が選ばれました。
一つは特定非営利活動法人AYAの「『挑戦!世界自然遺産・小笠原諸島へ大冒険!』医療的ケア児やその家族がリードユーザーへ!!」です。
医療的ケア児とその家族のために、医療従事者が帯同する小笠原諸島ツアーを企画。フェリー体験、マリンアクティビティ、地域の子どもたちとの交流会などを実施し、観光のバリアフリー化を推進しました。
インクルーシブデザインの視点で観光プログラムを見直し、「誰もが楽しめる観光」を実現した点が評価されました。

2団体目として、福岡よか街プロジェクト事務局の「ホーム・アウェイ関係なく福岡を楽しもう!『福岡よか街プロジェクト』〜サッカー×地域資源×ユーザー投稿による街のにぎわい創出〜」が選ばれました。
アビスパ福岡のサポーターとアウェイチームのサポーターを対象に、サッカー観戦&観光の情報アプリ「ユニタビ」内で、ユーザー投稿型で情報を集約・発信。また試合日前後の地域周遊を促進するため、公共交通機関との連携による1日乗車券の販売やクーポン配布を実施しました。
スポーツと観光を結びつけた先進的なプロジェクトとして高く評価されています。

過去受賞団体の取り組み紹介
「スポーツ文化ツーリズムアワード2024」に続いて、これまでのアワードで受賞した団体の取り組みについて紹介がありました。
2020年・武道ツーリズム賞:Ageshio Japan株式会社
Ageshio Japan株式会社は、沖縄の空手に特化した旅行会社として、海外の空手愛好家と地元の道場をつなぐ事業を展開。2020年には「武道ツーリズム賞」を受賞しました。

沖縄の空手道場の特徴として、個人宅で実施されることが多く、町のコミュニティと一体化していることが挙げられています。稽古だけでなく、地域の人と触れ合う文化も海外の空手愛好家にとっては魅力だといいます。
またコロナ禍を経て、マーケットへのアプローチ不足という課題が判明し、旅ナカのオフラインと旅マエ・旅アトのオンラインを掛け合わせたサービスの実証実験を行いました。今後はそうした旅行サイクルのDX化を進め、リピーター獲得を目指す取り組みを行うということです。
2021年・新しい観光賞:公益財団法人 名古屋観光コンベンションビューロー
公益財団法人 名古屋観光コンベンションビューローは、街全体を舞台にしたスポーツイベント「ロゲイニング in なごや」を企画・運営。観光とスポーツを組み合わせた取り組みが評価され、2021年に「新しい観光賞」を受賞しました。

「ロゲイニング in なごや」は、名古屋市内の観光スポットや店舗を巡りながら制限時間内にチェックポイントを回り、得点を競う競技です。
街を回遊することで参加者自身が名古屋の魅力を発見することを狙いとしており、イベント開始当初は約200人だった参加者数は、2023年には1,300人以上にまで増加しました。全国的にも、この規模で開催されるロゲイニングは珍しいそうです。
一方の課題として、2024年参加者の88%を県内居住者が占めていることを挙げており、県外からの誘客を今後のテーマとしました。
また今後もイベントとして自走していくために、地域のステークホルダーとの連携強化や、2026年開催のアジア大会の活用などを行うとしています。
関連記事:「地域観光新発見事業」成果発表会レポート:地域ならではの観光コンテンツが、地方発展の起爆剤に
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