SWOT分析は、自社の内部環境と外部環境を「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの視点で整理・評価する手法です。
企業や事業の課題を明確化し、効果的な戦略を立案するために活用されます。
とくに変化の激しい市場や予測困難な自然災害など、外部環境が不安定なビジネスシーンにおいて、競争力の向上やリスク対策にSWOT分析が役立ちます。さらに、インバウンド需要の高まりへの対応策を検討する際にも有効です。
本記事では、SWOT分析の具体的な進め方から、実際の活用事例、注意点までわかりやすく解説します。
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SWOT分析とは
![▲[SWOT(スウォット)分析の4項目]: ▲[SWOT(スウォット)分析の4項目]](https://static.honichi.com/uploads/editor_upload_image/image/19440/main_48f7e14d77ac98d9c03a64d4324c2369.png?auto=format)
SWOT分析とは、企業や事業の現状を把握して戦略立案を効果的に行うためのフレームワークで、「SWOT」は「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の頭文字です。
SWOT分析では内部環境から強みと弱みを、外部環境から機会と脅威をそれぞれリストアップし、4つの視点から整理・評価します。
【内部環境】
- 強み(Strength):自社の競争優位性や他社にはない特徴
- 弱み(Weakness):自社の課題や改善が必要な要素
【外部環境】
- 機会(Opportunity):外部環境の中で活用できる成長のチャンス
- 脅威(Threat):リスクや外部要因による障壁
カテゴリーに仕分けするときには、先ほど紹介した「自社でコントロールできるか否か」を意識するとよいでしょう。
また、外部環境の「機会」と「脅威」は、目標の達成へ貢献するか、それとも障害となるかで区別します。
SWOT分析を行う目的
SWOT分析の目的は自社の現状を客観的に把握し、新規事業の企画やマーケティング戦略の策定、リスク管理などに役立てることです。このフレームワークを活用することで、以下のような成果が期待できます。
競争力の強化
SWOT分析を活用することで、資源、戦略、時間の3点において、最適な選択や現状理解が可能になります。
資源の活用や戦略の策定には、自社が持っている資源を効果を上げやすいものから活かしていく必要があります。また戦略の策定・実践は時代や競合の動きを加味してベストなタイミングでなくてはいけません。
SWOT分析によって優位となる焦点、優先順位が明確になることで、効率的に業務を遂行し無駄な消費や戦略の失敗を回避できます。
成長機会の発見
時間の経過とともに課題やその対策は変わり続けます。
SWOT分析を用いて定点観測することで、変遷も含めて課題や対策の棚卸しになり、回数を重ねることで精度を上げることができるでしょう。
リスク管理の強化
外部環境の脅威を事前に認識し、対策を講じることで、リスクを最小限に抑えられます。これにより、予期せぬトラブルや損失を回避できます。SWOT分析のやり方
次に、SWOT分析のやり方を解説します。分析する対象を明確にして取り組むことが大切です。
1. 目標を設定する
分析に入る前に以下の3点を明確にします。
- 何のために分析するのか
- 分析する対象は何か
- 分析することで何を得たいのか
環境要因のリストアップが必要で、自社の現状把握だけでなく、業界や競合他社の情報収集が大切です。
2. 外部環境の【機会】と【脅威】を分析する
分析は外部環境の「機会」と「脅威」のリストアップから始めます。外部環境とは、自社の外部に位置し、自社の活動に直接または間接的に影響を及ぼす要素を指します。
【外部環境の要素の例】
- 業界全体の市場規模と成長性
- 国内の経済情勢
- トレンドや話題性
- 地域や周辺環境
- 競合他社の動向
内部環境は、外部環境の現状によって「強み」か「弱み」かが変わるので、外部環境を先に分析します。
3. 内部環境の【強み】と【弱み】を分析する
続いて、内部環境の「強み」と「弱み」をリストアップします。2で行った外部環境とは異なり、自社でコントロールができるモノや事象を考えます。
外部環境であげた点について比較検討することで、強みと弱みに振り分けられていきます。データを活用し、具体的な内容にすることで比較の精度が増します。
4. 戦略を練る
4つのカテゴリーがすべてリストアップできたら、「SWOTクロス分析」で戦略を練ります。それぞれのカテゴリーをかけ合わせ、下記の4つの分析をします。
- 機会×強み:自社の強みを生かしてビジネスチャンスを確実に掴む戦略
- 機会×弱み:ビジネスチャンスの障害となる弱みを解消する戦略
- 脅威×強み:自社の強みを生かして脅威を回避する戦略
- 脅威×弱み:懸念材料に対する弱みを補填し脅威を最小限に抑える戦略
最も優先順位の高い戦略は、機会×強みです。そこから得た戦略を実施する中で、他の戦略が変化していく可能性もあります。
分析結果の活用例
SWOT分析の結果は実際にどのように活かすことができるのかを解説します。
今回は、ある飲食店(カフェ)について、SWOT分析を実施したとします。以下のように強み・弱み・機会・脅威をリストアップしました。
![▲[SWOT分析をカフェの経営に活かした場合]:口コミラボ編集部作成 ▲[SWOT分析をカフェの経営に活かした場合]:口コミラボ編集部作成](https://static-media.kutikomi.com/uploads/editor_upload_image/image/286/main_233f55cae175b0a357350e09b61fa927.png?auto=format)
戦略は「強みを活かす」ことを意識しますから、まずは強みにフォーカスして考えます。
コーヒー雑貨も扱っているので、コーヒーと雑貨をセットにしたギフトセットの販売開始などが考えられます。また、クロス分析で強みを生かして機会を掴む戦略として、広いスペースを活用し半分をビジネスパーソンが仕事や打ち合わせしやすい電源カフェにするなどが考えられます。
弱みの改善も必要なので、社内で勉強会を開催してオーナーの知識を共有しスペシャリストを育成します。さらに、その知識を商品と一緒にお客様へ届けるサービスを行えば、競合店との差別化にもつながります。
SWOT分析の注意点3つ
SWOT分析は効果的な手法ですが、最大限の効果を引き出すためにはいくつかのポイントに注意する必要があります。ここでは、SWOT分析を進める際に意識すべき3つの重要なポイントを紹介します。
1. 「強みを活かすこと」を念頭に置く
SWOT分析により強みや機会などの現状が把握できても、それを戦略に有効に活用できないと意味がありません。
戦略を立てるためには「強みを活かすこと」を念頭において戦略策定をし、できることから実践していくと良いでしょう。
2. 目的・目標を明確にする
また、「SWOT分析のやり方」の章でも述べましたが、「何のために分析するのか」「何を分析するのか」が明確でなくてはいけません。
そのためには、戦略の大枠があり、最も効果的に戦略を実践するためにSWOT分析をするのが適しています。
3. いくつかのフレームワークを組み合わせる
SWOT分析の偏りを防ぐために、いくつかのフレームワークを併用します。それにより見落としを防止し、完成度の高い分析結果が得られます。
SWOT分析でよく使用されるフレームワークは、PEST分析、ファイブフォース(5F)分析、バリューチェーンなどです。
ここから、SWOT分析でよく使われるフレームワークを紹介します。
SWOT分析でよく使われるフレームワーク
SWOT分析を行う際には、いくつかの他のフレームワークを併用することで、見落としや重複を防ぎ、偏りのない分析結果を得ることができます。
ここでは、SWOT分析でよく使われるフレームワークを3つ紹介します。
PEST分析
マクロ環境を分析する「PEST分析」は、SWOT分析における外部環境のリストアップ、比較検討を行うときに有効です。マクロ環境分析とは、自社でコントロールできない外部環境要因の分析を指し、「PEST」は以下の各カテゴリーの頭文字です。
- Politics(政治)
- Economy(経済)
- Society(社会)
- Technology(技術)
中長期的なマクロ環境の変化について仮設を立て、各カテゴリーをかけ合わせることで今後の業界の動向を予測します。
マクロ環境について変化していくもの、一時的に変化するもの、変化しないものを予測して、マーケティング戦略に活用します。
ファイブフォース分析
「ファイブフォース分析」は、業界の収益性に影響する5つの力をリストアップ、比較検討して、収益拡大や事業の参入および撤退、資源の最適配分を考えるフレームワークです。
5つの力は以下のとおりです。
- 業界内の競合
- 新規参入の脅威
- 代替品の脅威
- 売り手の交渉力
- 買い手の交渉力
業界の動向を分析するPEST分析に対し、業界の収益性に特化した分析と言えます。
バリューチェーン
「バリューチェーン」は、事業を機能ごとに分類して、どの機能からどれほどの付加価値が生まれているかを分析するフレームワークです。
各機能の強み・弱みを分析でき、SWOT分析の内部環境のリストアップ・比較検討に役立ちます。
バリューチェーンの構造は、事業活動を「主活動」と「支援活動」に大別し、これに「利益」を加えた形です。
![▲[バリューチェーンのフレームワーク構造]:口コミラボ編集部作成 ▲[バリューチェーンのフレームワーク構造]:口コミラボ編集部作成](https://static-media.kutikomi.com/uploads/editor_upload_image/image/282/main_bfd1a6b91672df1a6b4bc28069a01719.png?auto=format)
業界や市場で有利に働く自社の強みや、戦略を成功させるキーポイントを明確化でき、コスト削減や利益の最大化につながります。
自社だけでなく競合他社の分析に活用でき、他社の動向を予測することもできます。
関連記事:バリューチェーンとは?サプライチェーンとの違い、分析方法、事例をわかりやすく紹介<
4つの要素に分けて分析することで経営戦略を作るための手法
SWOT分析をすることで、見逃している自社の資源やビジネスチャンスを捉え、新たなアイデアを生みだすことが可能です。
また、SWOT分析をするタイミングやメンバーも重要で、同じ分析課題でも時と人を変えることで新たな発見が生まれます。
強みを生かした戦略を実践し、生じた課題に対してSWOT分析を実施することで戦略の結果をより追求することも大切です。
一度分析して終わりではなく、何度も繰り返して精度を上げ効果的な戦略を導き出しましょう。
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