インバウンドが増加傾向にあるなか、言葉や文化の違いから、訪日客の接客に戸惑った経験がある方も少なくないのではないでしょうか。
飲食店や小売店、宿泊施設などが必要なサービスを提供するうえで、インバウンドへのコミュニケーション対策の必要性は高まっています。
本記事では、接客業におけるインバウンド対策について解説するとともに、実際の接客で使えるフレーズについてもご紹介します。
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訪日客はコミュニケーションに困っている
インバウンドの訪日旅行中の困りごとの代表例として、「店舗スタッフとのコミュニケーション」が挙げられます。
観光庁が実施した「訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査」によると、外国人観光客が旅行中に困ったこととして「ごみ箱の少なさ(21.9%)」の次に多く挙げられたのが「施設スタッフとのコミュニケーション(15.2%)」でした。前年度調査(22.5%)と比較すると減少しているものの、依然として課題であることがわかります。また、コミュニケーションで困った場所としては、都市部・地方部ともに飲食店が最も高く、そのほかには百貨店・ショッピングセンター、鉄道駅、小売店などが挙げられています。
関連記事:2024年度 訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査
店舗スタッフもインバウンドへの接客に悩んでいる
訪日客だけでなく、店舗スタッフ側もコミュニケーションの悩みを抱えています。
株式会社TableCheckが飲食店を対象に実施した調査によると、インバウンド対策の課題として「接客時の外国語対応」が1位に挙げられました。次いで外国語での電話対応、問い合わせ対応、ネット予約の多言語対応と続き、言語に関する課題が上位に並びました。訪日客向けのコミュニケーション対策を行うことで、顧客満足度を高められるだけでなく、インバウンド対応をしている店舗として顧客層の拡大も期待できます。
インバウンドを集客する上で、こうした課題への対策は必須といえるでしょう。
関連記事:飲食店のインバウンド対策9選!実施したほうがいい理由と食文化への対応も紹介
インバウンドを接客する際の心得
外国人とのコミュニケーションに自信がない人もいるかもしれませんが、訪日客の多くは「日本ならではの食事や文化体験」を求めて日本を訪れています。完璧なコミュニケーションや自国で過ごすような快適さを求めているわけではないので、まずは楽しんでもらいたいという気持ちで接することが大切です。ここではインバウンドに接客する際の3つの心得を紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
1. 完璧に話せなくてもOK
訪日客に接する際、完璧に英語や相手の言語を話せなくても問題ありません。もちろんある程度の語学力は役立ちますが、それ以上に大切なのは、相手が何に困っているのかを理解し、丁寧に対応しようとする姿勢です。まずは簡単な挨拶や、身振り手振りを使ったコミュニケーションをとってみます。相手を理解しようとする気持ちがあれば、完璧に伝わらなくても十分コミュニケーションができるでしょう。
2. 困ったそぶりはせず笑顔で
訪日客が何を言っているのか理解できない、スムーズな意思疎通ができないといった場面でも、困ったそぶりを見せず、笑顔で対応するようにします。海外では相手の目を見て話す習慣がある国も多いため、言葉が伝わらなかったとしても、目を見て笑顔で話すことで安心感を与えられ、コミュニケーションも円滑に進みます。訪日ラボが最新の口コミデータを元に独自調査している「インバウンド人気飲食店ランキング」では、上位にランクインする飲食店はフレンドリーな雰囲気が評価されています。友好的で親切な対応は、訪日客にとって高評価のポイントとなるようです。
関連記事:上野で外国人に人気の飲食店ランキング!もんじゃ、ラーメンをおさえ1位は?
3. ジェスチャーの違いを知っておく
言葉が伝わらない時のコミュニケーションとして、ジェスチャーは有効な手段ですが、国や文化によって意味が異なる場合があります。例えば、人差し指と親指で輪っかを作る「OKサイン」は、他の国では失礼な意味を持つこともあるようです。誤解を招かないためにも、事前に基本的なジェスチャーの違いを理解しておくと良いでしょう。
関連記事:「OKサイン」が海外では反対の意味に…絶対NGな注意すべきボディランゲージ5つ
インバウンドを接客するための準備
言葉のやりとり以外にも、インバウンド対策の方法はいくつかあります。事前の準備が認識のズレを防いで顧客満足度を上げることにつながり、リピーターや口コミによる新規顧客獲得も期待できます。ここではインバウンドを接客する際の対策を3つ紹介します。
1. 写真付きのメニューで視覚的に伝える
特に飲食店で重要なのが、外国人観光客にも伝わるメニュー表の作成です。文字だけでは伝わらなくても、メニューの横に写真が添えてあるだけでわかりやすくなり、オーダーしやすくなります。メニュー表を作り直すのが大変な場合は、店内の壁に写真を添えたメニューを貼り付けるのもおすすめです。宗教上の理由などで食事に制限がある人でも、視覚的に理解することで安心して注文しやすくなるでしょう。
関連記事:宗教別の食べてはいけないものを一覧で紹介!押さえておきたいタブーと飲食店での対策とは
2. 翻訳機や翻訳アプリを利用する
音声入力式の翻訳機やアプリを使えば、簡単な会話のやり取りが可能になります。翻訳機には日本語から外国語への翻訳ができる一方向翻訳機と、日本語から外国語、外国語から日本語への翻訳ができる双方向翻訳機があります。特に双方向翻訳機は、訪日客とのスムーズな会話に役立ちます。
こうしたツールを導入する際には、各自治体や国の補助金を活用できる場合があるので、ぜひ一度確認してみてください。
3. インバウンド対策研修を受講する
より質の高いインバウンド接客を実現するために、専門の研修を受講することも有効です。インバウンド対策研修では、語学学習のほか文化や習慣の違いへの理解を深めることができます。例えば株式会社ライフブリッジの提供する「カタカナ接客英語研修」では、ネイティブに伝わる発音トレーニングを行っており、研修を通して実践的なスキルを習得することで、外国人観光客への接客に役立てられます。
関連記事:壁を扉に変える言葉 ~カタカナ英語でひらくインバウンド接客~【今考える インバウンド集客の「本質」vol.3】
4. 指さし会話でコミュニケーションを行う
指さし会話は、⽇常的によく使う単語や⽂章を多⾔語で表示し、それを指さしすることで会話する方法です。外国⼈と接する時の簡単なコミュニケーションツールとして、使用する場所や環境に応じて使われています。言葉が伝わらなくても意思疎通を図ることができるため、注文や質問など具体的な内容を伝えたい場合に特に有効です。こうした方法を活用することで、よりスムーズなコミュニケーションが期待できます。
インバウンドの接客時に使えるフレーズ15選
インバウンドの接客対応をする際に、特にコミュニケーションが必要になるシチュエーションを「来店編」「オーダー編」「会計編」に分けて、それぞれのシーンで使えるフレーズを紹介します。来店編
お客様が来店したら、まずは笑顔で挨拶をします。また、席に案内するために予約の有無や人数の確認が必要になります。実際にフレーズを使いながら覚えるといいでしょう。- 【1】Good morning. / Good evening. / Good afternoon.(いらっしゃいませ)
- 【2】How many people?(何名様ですか?)
- 【3】Do you have a reservation?(予約はされていますか?)
- 【4】Would you like a smoking or non-smoking section?(喫煙席と禁煙席、どちらがよろしいですか?)
- 【5】This way, please. / Right this way.(こちらへどうぞ)
- 【6】Here is the menu. / Here you go.(メニューはこちらです)
オーダー編
お客様がメニューを選んでいる間は、質問がないか適宜様子を確認するようにすると安心です。料理や食材の英語訳はあらかじめ調べておくとスムーズです。おすすめメニューは、写真やイラスト付きのメニューがあるとより案内がしやすくなります。- 【7】Are you ready to order? / May I take your order?(ご注文はお決まりですか?)
- 【8】What would you like to order?(ご注文をどうぞ)
- 【9】Certainly. / OK.(かしこまりました)
- 【10】Would you like something to drink?(お飲み物はいかがですか?)
- 【11】Anything else?(ほかにご注文はございますか)
会計編
会計時は、レシートなどのわかりやすく数字が書かれたものを見せながら伝えるのがおすすめです。また、支払い方法に応じたフレーズも覚えておくことで、実際の接客時にも慌てずに対応ができるでしょう。- 【12】That’s 5,000 yen all together.(全部で5,000円です)
- 【13】Would you like to pay by cash or credit card?(お会計は現金ですか、クレジットカードですか?)
- 【14】Could you enter your PIN?(暗証番号をお願いいたします)
- 【15】Thank you very much. Have a good night / day! Hope to see you soon!(ご来店ありがとうございました。おやすみなさい / よい一日を!またのご来店をお待ちしています)
インバウンド対策で満足度アップにつなげよう
インバウンド接客では、直接の会話以外でも、さまざまな対策を行うことで円滑なコミュニケーションにつながります。接客の質を向上させることで、トラブル防止につながるだけでなく、顧客満足度が向上し、リピーター獲得や口コミ評価のアップなども期待できるでしょう。
訪日ラボでは、インバウンド対策に関するさまざまな情報を発信しています。インバウンドの受け入れ環境整備に関する記事や、自治体の補助金情報なども紹介しているので、ぜひご参考ください。
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<参照>
観光庁:訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査を実施しました ~旅行中「困ったことは無かった」と回答した割合が大幅増~
株式会社TableCheck:コロナ前の3倍、インバウンド外食市場進まない。飲食店側の対策、7割以上が未実施
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
→「THE INBOUND DAY 2025」特設ページを見てみる
【インバウンド情報まとめ 2025年6月前編】最新の「観光白書」公開!インバウンドに関わる政策の変更点を徹底解説 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月前半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
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→最新の「観光白書」公開!インバウンドに関わる政策の変更点を徹底解説 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月前編】
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