観光庁は、2024年度(令和6年度)の「訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査」を実施しました。
旅行中に「困ったことはなかった」と回答した割合は回答件数の半数を超え(51.1%)、前回調査から21.4ポイント増加しました。
旅行中に困ったこととして特に多かった項目は、「ごみ箱の少なさ」(21.9%)、「施設等のスタッフとのコミュニケーション(英語が通じない等)」(15.2%)でしたが、前回調査よりもそれぞれ7~8ポイント程度改善しています。
本記事では、今回公表された調査結果の中から、注目すべきポイントを抜粋してまとめます。
関連記事:【前回調査】「訪日外国人が旅行中に困ったこと」ごみ箱の少なさ、スタッフとのコミュニケーションが増加
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観光庁「訪日外国人が旅行中に困ったこと」についてアンケートを実施
観光庁は、訪日外国人旅行者が快適に観光できる環境整備を進める上で、現状と課題を明らかにするために「訪日外国人が旅行中に困ったこと」を継続的に調査しています。
また今回から新たに、観光地等における混雑・マナー違反等についても調査が行われました。
本調査では訪日外国人旅行者を対象に、5つの空港(成田国際空港、東京国際空港、関西国際空港、新千歳空港、福岡空港)にて対面式アンケートを実施したもので、回答数は計4,189件でした。
回答者の60%以上が20代と30代で、5大市場(中国、韓国、台湾、香港、米国)で各400件以上、タイ・マレーシア・インドネシアで各100件以上、豪州で80件以上、欧州で320件程度の回答が集まりました。また約70%が2回以上訪日経験があるリピーターであり、滞在日数は4〜5日が最も多い結果となりました。
1人あたりの訪問都市数は約3都市となっています。


「困ったことはなかった」半数超え、「ごみ箱の少なさ」「スタッフとのコミュニケーション」に課題
全体の51.1%が旅行中に「困ったことはなかった」と回答し、前年調査(29.7%)から大幅に増加しました。
旅行中に困ったこととしては、前年と同様に「ごみ箱の少なさ」(21.9%)、「施設等のスタッフとのコミュニケーション」(15.2%)が挙げられましたが、いずれも割合は前年から減少しています。
また今回の調査から新たに追加された「観光地や地域の混雑」(13.1%)が3位に入り、「入国手続き」(8.6%)に困った割合が増加しました。
なお全体として、訪日旅行中に困ったことがあった人の割合は、都市部と地方部で大きな差は見られませんでした。


都市部と地方部で受け入れ環境に差がつく結果に
都市部と地方部の両方を訪問した人の場合、すべての項目で便利に感じた割合は都市部が地方部を大きく上回りました。
一方で、都市部か地方部のどちらかのみを訪問した人については、それぞれ大きな差は見られません。

また便利だと感じた具体的な理由について、「フリーWi-Fi」や「クレジットカード / デビットカード」では「利用可能な場所が多かった」が多くなり、「多言語表示」の項目では「多言語対応されている場所が全般的に多かった」が突出して高い結果となりました。
「コミュニケーション」では、「スタッフが英語(または自分の言語)を話せた」や「コミュニケーション機器を利用できた」などの理由が50%を超える結果となりました。
また「公共交通」の項目では「目的地への経路を簡単に特定できた」が80%を超えています。
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ごみ捨てで困った際に「あきらめて持ち帰る」対応が多数
ごみ箱の少なさについて困った場所としては、都市部と地方部いずれも「観光スポット、観光案内所」が最も高くなりました。
具体的に困った際のシチュエーションは、都市部と地方部いずれも「ごみ箱が近くになかった」となっています。また訪日回数別で見てみると、特に地方部においてリピーターほど「ごみ箱があふれかえっていた」と答えた割合が多くなりました。


ごみ箱の少なさに困った際の対応としては、「ごみを捨てることをあきらめ、持ち帰った」が最も高くなりましたが、「ごみ箱以外の場所に放置した」という回答も少数ながら見受けられました。

コミュニケーションで困った際にはICTツールを活用
「施設等とのスタッフとのコミュニケーション」に困った場所は、都市部と地方部ともに「飲食店」が最も高くなりました。
困った結果として、都市部と地方部それぞれで70%以上がICTツール(自動翻訳システムや翻訳アプリケーションなど)を利用してコミュニケーションを行った一方で、「コミュニケーションを諦めた(自分で情報を調べる等行った)」割合もそれぞれ20%以上となっています。
関連記事:飲食店のインバウンド対策9選!実施したほうがいい理由と食文化への対応も紹介


都市部・地方部ともに多言語対応に遅れ
「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」については、都市部と地方部ともに「飲食店」が最も高く、「道路標識」については、特に都市部よりも地方部で顕著でした。

困った理由は「多言語対応されていない / 表示言語数が不足している」が最も高くなっています。
困った際の対応では「自動翻訳システムや翻訳アプリケーション等のICTツールを利用して解読を行った」が最も高く、「表示の解読をあきらめた」割合も30%程度にのぼりました。
特に飲食店においては、手書きのメニューなど翻訳アプリで対応できない部分で困っているようです。
関連記事:今すぐできる飲食店の多言語対応とは?おすすめの方法や対応すべき言語も紹介


観光地・地域の混雑で情報発信が不足
「観光地や地域の混雑」について困った場所としては、都市部と地方部いずれも「観光スポット、観光案内所」が最も高くなりました。特に「観光スポット、観光案内所」や「鉄道駅、バスターミナル」、「交通機関の車内」の項目においては、それぞれ都市部が地方部よりも10%以上高い結果となっています。
また困った内容としては、混雑や渋滞などの情報量や情報発信不足が最も高くなりました。
関連記事:オーバーツーリズム調査、インバウンド観光客への「マナー啓発」が最も重要な対策に


地方部ではバスに困る人が多い
公共交通機関の利用については、都市部では新幹線以外の鉄道の割合が特に高く、地方部ではバスの割合も高くなりました。

公共交通機関を利用する上で困ったものとして、特に「乗り場や降り場の特定」がそれぞれ40%以上と最も高くなりました。また都市部においては「目的地までのルート検索」が44%で同率1位になりました。
困った際の対応としては自分でインターネットなどで調べた人が最も多いものの、あきらめて他の交通機関を使った人も10%程度いることがわかりました。


入国手続きで困った割合が増加傾向に
入国手続きについて、前回調査と比較して5空港全てで困った割合が増加傾向になりました。特に新千歳空港や関西国際空港、福岡空港で困った割合が高くなっています。
関西国際空港や福岡空港は2025年にリニューアルが行われており、入国審査場などの受け入れ体制が強化されているため、次回以降の調査でどのように変化するか注目です。

また入国手続きの際で困った内容として、待ち時間や手続きの時間の長さが67%と突出して高い結果となりました。

一部で改善傾向にあるものの、課題が残る結果に
訪日外国人が旅行中に困ったことは「なかった」という項目が前年から大きくポイントを伸ばし、受け入れ対策が進んでいる様子がうかがえます。
一方で「ごみ箱の少なさ」や「コミュニケーション」、「観光地や地域の混雑」で困っている人が多いことも浮き彫りになりました。ごみの放置などは観光地のオーバーツーリズムの側面でも問題となっており、混雑の課題と合わせて対策は急務であるといえます。
「スタッフとのコミュニケーション」や「多言語表示の少なさ」は各地で対応されつつあるものの、さらなる取り組みの拡大が求められている状況です。事業者単体でもインバウンドの受け入れ状況を再度確認し、対応していくことが重要となるでしょう。
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<参照>
観光庁:訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査を実施しました ~旅行中「困ったことは無かった」と回答した割合が大幅増~
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