ナイトタイムエコノミーとは?取り組むメリットや課題・具体的な事例を解説

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夜間帯の消費を取り込む「ナイトタイムエコノミー」は、夜の時間帯を有効活用することで、収益向上や集客が期待されるため、宿泊施設飲食店、観光事業者にとって新たなビジネスチャンスとして注目されています。

本記事では、ナイトタイムエコノミーに取り組むメリットや課題を整理した上で、地域の実践事例をもとに具体的なアイデアや展開のヒントをご紹介します。

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ナイトタイムエコノミーとは

ナイトタイムエコノミー(NTE)とは、日没から日の出までの時間帯(おおむね18時〜翌6時)における経済活動全般を指します。具体的には、飲食・宿泊・エンターテインメントなどの夜間コンテンツを活用し、消費を促進する取り組みなどが含まれています。

近年、訪日外国人旅行者の増加を見据えた新たなインバウンド施策としても注目されており、日中に限定されない消費の場を創出することで、地域経済の活性化や新たな雇用の創出が期待されています。

たとえば東京都では、「戦略的なナイトタイム観光の推進」の一環として、夜間のプロジェクションマッピングや建造物、桜・紅葉などのライトアップを積極的に展開し、多彩な夜間コンテンツの充実を図っています。

その成果として、2024年の「世界の都市総合力ランキング」では、ナイトライフの充実度において東京都が前年の30位から8位へと大きく順位を上げました。こうした取り組みにより、東京都は夜間を楽しめる観光都市としての国際競争力を着実に高めています。

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日本の観光においてナイトタイムエコノミーが重要な理由

訪日外国人観光客の増加に伴い、東京都をはじめ全国の自治体や民間事業者が、ナイトタイムエコノミーの推進に力を入れています。

ナイトタイムエコノミーが日本の観光において注目される背景には、次のような理由があります。

観光客の長期滞在やリピート訪問につながる

2024年の訪日外国人旅行者数は過去最高を記録し、JTBの推計では、2025年に4,020万人に達すると予測されています。

一方で、日本各地の観光地では夜間の魅力発信が十分とはいえず、課題が浮き彫りになっています。実際に、「地方都市では夜の繁華街が賑わっていない」「閉店時間が早く、ショッピングが楽しめない」といった声が、訪日外国人旅行者から多く寄せられています。

こうした不満やニーズに対応するためには、閉店時間の見直しや、夜間も楽しめるコンテンツの拡充が求められます。ナイトタイムエコノミーの推進は、観光客の長期滞在やリピート訪問を促す有効な施策であり、地域経済の活性化にもつながると期待されています。

訪日客の消費単価向上に貢献

日本に訪れる外国人旅行者の数は増加しているものの、「数」だけを追いかけるのは、観光地に負担をかける要因にもなります。実際に政府は、消費単価の高い「高付加価値旅行者」を呼び込むなど、消費額を重視する方針に転換しています。

そのため、観光客の夜間滞在や消費を促進し、観光支出の増加につながるナイトタイムエコノミーは重要な施策と言えます。

実際に海外の例では、ロンドンで約2.3〜3.4兆円、ニューヨークで約2.1兆円の経済規模が試算されており、ナイトタイム経済の大きな可能性が示されています。

インバウンド消費の拡大にともない、夜間コンテンツの需要も高まっています。ナイトタイムエコノミーの充実は、一人あたりの旅行消費額の向上につながるでしょう。

滞在時間が分散され、オーバーツーリズム対策になる

ナイトタイムエコノミーは、観光地の混雑や環境負荷といったオーバーツーリズム対策の一つとしても注目されています。

夜間や早朝といった新たな時間帯に観光の選択肢が広がることで、滞在時間を分散させることが可能になります。たとえば、日中に混雑する人気スポットで、夜間のライトアップやナイトツアーなどの体験型コンテンツを提供すれば、訪問時間が分散し、混雑の緩和が期待できます。

このように、時間的な分散を促す取り組みは、オーバーツーリズムの緩和につながり、観光地全体の受け入れ体制の持続可能性を高めると考えられます。

ナイトタイムエコノミーにおいて想定される課題

経済効果やオーバーツーリズムの緩和といったメリットがある一方、ナイトタイムエコノミーの取り組みには課題もあります。実際にナイトタイム観光が盛んな欧米では、治安維持や労働力確保、交通など、複数の課題が顕在化しています。

今後、ナイトタイムエコノミーを推進するにあたっては、安心・安全な環境の確保が不可欠であり、具体的にどのような課題が想定されるのかを慎重に検討する必要があります。

治安維持と安全確保の徹底

まず考慮したいのは、夜間における治安の維持と安全確保の徹底です。

オランダをはじめとする欧米では、夜間ならではのトラブルの対処や経済活性化に取り組む「ナイトメイヤー(夜の市長)」という制度も誕生しています。

日本は、比較的治安が良く、夜間でも安心して外出できる環境にありますが、ナイトタイムエコノミーを健全に発展させるためには、引き続き治安維持と安全確保の取り組みが不可欠です。

東京都では、夜間の観光を安心して楽しめるよう、東京都観光ボランティアによるナイトタイムのガイドサービスを展開するなど、安全対策に取り組んでいます。

深夜・早朝の労働力確保

ナイトタイムエコノミーを推進するうえで、いかにして労働力を確保するかも重要な課題のひとつです。

深夜や早朝の勤務が伴うことから、人手不足に加え、サービスの質の低下も懸念されます。そのため、従業員に対する十分な教育や研修を行うとともに、適切な待遇の整備によって、労働力の安定的な確保と定着を図ることが求められます。

実際に、ナイトタイムエコノミーの拡充に取り組む日本各地では、雇用促進のためのプロモーション活動を行ったり、テクノロジーを活用して省人化を図るなど、人手不足に対応するさまざまな工夫が進められています。

都市衛生・騒音問題と地域住民との共存

ナイトタイムエコノミーを地域に定着させるには、その地の住民自身が夜を楽しむ文化が維持されてこそ、地域ならではの魅力が生まれ、インバウンドを含む観光客の来訪につながるとされています。

そのため、ナイトタイムエコノミーを推進するうえで、地域住民との共存や配慮は必要不可欠です。とくに、都市衛生や夜間の騒音問題などについては十分に配慮し、近隣住民の理解を得ることが必要になるでしょう。

一方で、地域住民の居住地域とナイトタイムエコノミー推進エリアをゾーニングし、住民への影響を最小限に抑える方法も検討されています。

いずれにせよ、観光客のみならず地域住民も積極的に夜を楽しめる環境が整ってこそ、ナイトタイムエコノミーは持続的に定着します。そのため、住民・事業者・行政といったステークホルダーが連携し、推進体制を構築することが望まれます。

深夜交通インフラの整備

ナイトタイムエコノミーの推進においては、夜間の移動手段の確保が重要となっています。

日本では終電が24時前後であり、電車を逃すとタクシー以外の移動手段が限られます。さらに、タクシーは深夜料金が加算されるため、夜間の快適な移動環境が整備されていないのが現状です。

これに対し、各地域において、行政と連携し、金曜の終電延長や施設間のシャトルバス運行などの取り組みが進められています。また、アクセスが良い居住地や宿泊施設の近くにナイトタイム観光の拠点を設け、夜間交通に過度に依存しない体制づくりを図る事例も増えています。

インバウンドを惹きつけるナイトタイムエコノミーの事例

日本の各自治体や事業者で、ナイトタイムエコノミー推進の取り組みが行われています。

ここではとくに、ナイトタイムエコノミーを地域経済の活性化へとつなげている事例や、訪日外国人旅行者をターゲットにした取り組み事例をご紹介します。

夜の東京を駆け巡るナイトバスツアー(JTBグループ)

株式会社JTBグローバルマーケティング&トラベルは、訪日外国人旅行者向けに「東京ナイトエンターテイメントバスツアー」を発売しました。2階建てのオープンデッキバスで夜の東京を巡るツアーで、東京タワーのライトアップをはじめ、東京ならではの夜景を楽しむことができます。

バス内では三味線ライブのサプライズ演出もあり、参加者が一体となるエンターテインメント性の高い内容です。ツアーの最後には、「有楽町産直横丁」へ案内され、個人旅行ではなかなか体験しづらいローカルな酒場横丁の雰囲気を楽しめます。

関連記事:JTBグループ、夜の東京を駆け巡るナイトバスツアーを発売

日本最長級・約3か月連続の「アウトドアシアター」(富士急ハイランド)

富士急ハイランドでは、標高830mという立地条件を活かし、夏でも涼しい気候を利用した「アウトドアシアターイベント」を開催しています。約3か月にわたる開催期間は、国内でも最長級となるナイトシアターイベントであり、ナイトタイムエコノミー観光資源として活用した好例といえます。

本イベントでは、全30作品の映画を屋外で上映するほか、山梨県初出店となるフードトラックや、アウトドアブランドによる体験型コンテンツも展開。映画鑑賞だけでなく、「食」や「体験」を組み合わせた複合型の満足度の高いナイトコンテンツを実現しています。

<参照>富士急行株式会社:富士急ハイランドは「ナイトタイムエコノミー」を強化へ日本最長級・約3ヶ月連続の「アウトドアシアター」を開催!「安心・健全な夜遊び」でインバウンド誘致と新たなカルチャーを発信

ガイド付きツアー「広島バーホッピング」(広島県)

広島県では、訪日外国人旅行者を対象に、流川・薬研堀エリアの飲食店を地元ガイドと巡るガイド付きツアー「広島バーホッピング」を提供しています。

地元に精通したガイドと交流しながら繁華街の人気居酒屋を訪問し、広島ならではの料理や地酒を楽しめるナイトツアーとなっています。外国人旅行者に高く評価されており、地域密着型の夜間コンテンツとして定着しつつあります。

本取り組みでは、ツアーの提供にとどまらず、受け入れ環境の整備にも力を入れています。たとえば、英語メニューを備えたインバウンド対応店舗をまとめたWebサイトの制作や、訪日客向けの「指差し会話シート」など、言語の壁を越えるツールを展開。外国人旅行者が安心して楽しめる環境づくりに取り組んでいます。

さらに、ツアー参加後に他の店舗にも足を運んでもらえるよう、協力店舗を紹介するWebサイトも運営し、バーホッピング情報と併せて旅行者の回遊促進と販売支援を図っています。

関連記事:「アサヒビール」で大阪の日常を味わうツアー販売 Osaka JOINER・アサヒビール・JTBが提携

<参照>国土交通省 中国運輸局:広島の繁華街流川・薬研堀におけるナイトタイムコンテンツ造成事業

ナイトコンテンツ専用Webサイト「仙台夜時間」(宮城県)

仙台市では、旅行者の滞在時間の延長や宿泊促進、消費拡大を目的に、夜間観光コンテンツの創出とその利用促進に取り組んでいます。その一環として、夜の仙台の楽しみ方を紹介する情報サイト「仙台夜時間」を開設。多言語対応により、訪日外国人旅行者にもわかりやすく情報を提供しています。

同サイトでは、地元の特色を活かした夜間コンテンツを紹介。観光地の夜間利用を促進する実用的なプラットフォームとして機能しています。

たとえば「松島ライトアップクルーズ」では、幻想的にライトアップされた松島湾の島々を約40分間クルージング。日中とは異なる風景が楽しめます。また、「まちあるき体験」では、地元の女性ガイドが国分町エリアの魅力的な飲食店や文化スポットを案内。英語対応も可能で、インバウンド向けの受け入れ体制も整備されています。

<参照>仙台市:仙台市ナイトコンテンツ専用ウェブサイト

地域の魅力を活かしたナイトタイムエコノミーの可能性

ナイトタイムエコノミーは、訪日外国人旅行者の夜間消費を促す有効な手段であり、地域資源の再発見や新たな収益機会にもつながります。本記事で紹介した各事例からも、地域ならではの魅力を活かした夜間コンテンツの創出や、既存スペースを活用したイベントの開催が、インバウンド需要の取り込みにつながることがわかります。

行政や地域住民と連携し、地域の文化や強みを活かした独自のコンテンツを創出することで、ナイトタイムエコノミーの可能性をさらに広げていけるのではないでしょうか。

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〈参照〉

東京都政策企画局:2050東京戦略 ~東京 もっとよくなる~

東京都産業労働局:ナイトタイム観光、歴史・文化を活かした観光の促進について

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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