8月1日、大阪・関西万博の会場にて「観光クロスオーバーサミット2025」が開催されました。
今年で3回目の開催となる本イベントでは、観光分野で新たな挑戦に取り組む若手を対象とした「観光クロスオーバーコンテスト」の最終審査に加え、大阪観光局理事長 溝畑氏による基調講演や、ゲストによるトークセッションが行われ、会場は大いに活気づきました。
今回は、本イベントのレポートをお届けします。 訪日ラボのメールマガジン登録はこちら>(無料)- 「観光は地域の総合的な戦略産業」大阪観光局理事長 溝畑 宏氏
- ユースチームが活動内容をプレゼン
- 観光への挑戦を語る!「観光クロスオーバーコンテスト」最終審査&授賞式
- 1. 認知症当事者が「旅のガイド」に
- 2. 食のスペシャリストが地方交流を促進
- 3. 観光地を「子どもの成長を記録する旅先」へ
- 4. ピクトグラムで食の課題を解決
- 5. 理髪店からはじまる新たな地域観光
- 6. eスポーツなどを組み合わせた医療観光
- 7. ソーラーモビリティによる持続可能な地域創生
- 8. 路線バスの直通運転による地域活性化
- 「観光クロスオーバーコンテスト」結果発表
- ファイナリストとともに語るセッション「若者が観光で挑戦するには」
- トークセッション「地域を観光から活性化」
目次
「観光は地域の総合的な戦略産業」大阪観光局理事長 溝畑 宏氏
冒頭では、元観光庁長官・現大阪観光局理事長の溝畑 宏氏が登場。「観光の未来」をテーマに基調講演を行いました。
溝畑氏は冒頭、2025年が大阪にとって大きな節目であると述べました。第二次世界大戦の終結から80年、阪神・淡路大震災から30年といった区切りに加え、大阪・関西万博の開催年でもあることから、この機会を成長の契機とすべきだと語りました。
また、訪日外国人観光客数や観光消費額が増加傾向にある現状を踏まえ、関西の潜在力を活かした「アジアNo.1の国際観光文化都市へのロードマップ」を発表。万博を起点に、大型イベントやインフラ整備、経済政策を同時に進め、持続的な発展を目指す方針を示しました。
さらに万博についても、一過性のイベントで終わらせず、そこで生まれる出会いや学びをいかに世界へとつなげていくかが重要だと強調しました。途中、「もっと外国人と会話をしてほしい」と来場者に呼びかけ、自ら参加者に声をかける場面もあり、会場は大いに盛り上がりました。
続いて、溝畑氏が理事長を務める大阪観光局の事業紹介に移りました。同局ではSDGsの達成を目標に、ホテル事業やコンシェルジュ育成といったラグジュアリー対応、ペットツーリズム、観光ショーケース、多様性尊重に関する取り組みを展開します。
さらに「観光は地域だけでなく、日本や世界を動かすもの」と述べ、人間力と挑戦心の必要性を訴えました。そして「従来型の観光産業では評価されにくい現実を直視し、新しい挑戦に踏み出してほしい」と参加者に呼びかけました。
また、戦後80年という節目に触れ、日本が世界平和への意識を新たにし、国際協調を進めるとともに、自国の魅力を世界へ発信する意義を語りました。
基調講演で溝畑氏は、「観光は地域の総合的な戦略産業である」と強調しました。その実現には、各地域が持つ景観やスポーツといった資源を活かした観光の企画が重要だと述べました。
そして最後に、新たな観光産業プラットフォームとして、通称「Kanko Leadership Platform」を発表。大阪発・世界をリードする組織として、観光産業を抜本的にアップデートするため、3年後に政策提言を行うことを目標にするとしました。
ユースチームが活動内容をプレゼン
基調講演の後は、ユースプレゼンテーションチームが登壇。本サミットに向けて4か月間活動を重ねてきた、学生やU30によるユースチームが、「ボツタビ」をコンセプトとした取り組みを発表しました。
観光への挑戦を語る!「観光クロスオーバーコンテスト」最終審査&授賞式
1. 認知症当事者が「旅のガイド」に
最初に登壇したのは、介護タクシーを活用した介護付き旅行を展開する「トラブルケアふくおか」の清水 正樹氏です。
清水氏は、認知症当事者による「旅のガイド」を体験できる新たな観光サービスを紹介し、旅行が当事者にとって大切な時間となることや、その取り組みがブランド化につながる可能性を述べました。
2. 食のスペシャリストが地方交流を促進
3. 観光地を「子どもの成長を記録する旅先」へ
4. ピクトグラムで食の課題を解決
同社では、この課題を解決するためにピクトグラムを制作し、言語や文化の違いを越えて観光客が安心して食を楽しめる仕組みを提供していると説明しました。
5. 理髪店からはじまる新たな地域観光
空間デザインを手がける株式会社ムラヤマの加持 翼氏は、ぬくもりを感じる旅が好きだと語ります。
そこで、髪を整えることで得られるリフレッシュ感が旅の体験にも通じると考え、「旅するヘアカット」を企画。山口県下関市を起点とした具体的なプランも示し、観光と組み合わせた新しい取り組みを提案しました。
6. eスポーツなどを組み合わせた医療観光
和歌山県の高校に通う諏訪 光夢氏は、白浜地域の課題としてパンダ返還による観光危機や高齢化に伴う予防医療の問題を挙げました。
その解決策として、従来の観光資源にとどまらず地域経済の基盤を築く取り組みである「癒しと冒険の町 白浜E-ヘルスツーリズム」を提案。健康診断、eスポーツ、エステなどを組み合わせた新しい旅の形を紹介しました。
7. ソーラーモビリティによる持続可能な地域創生
8. 路線バスの直通運転による地域活性化
「観光クロスオーバーコンテスト」結果発表
全員の発表を終えた後、結果発表と表彰式が行われました。観光クロスオーバー賞はHAN氏が、フェアフィールド・バイ・マリオット 道の駅プロジェクト賞は北村氏が受賞しました。
さらに北村氏は、大阪・関西万博賞も併せて受賞しました。審査員を務めた2025年日本国際博覧会協会 広報・プロモーション局担当部長 木嶋氏は、地方の料理を通じた地方創生が、今後より良い取り組みにつながることへの期待を述べました。
ファイナリストとともに語るセッション「若者が観光で挑戦するには」
イベント内のセッションでは、「若者が観光で挑戦するには」をテーマにディスカッションが行われ、一般社団法人 関西イノベーションセンターリーダーの楠田 武大氏と、コンテストファイナリストの6名が登壇し、活発な議論が繰り広げられました。
本セッションはコンテストのアフターセッションとして、最終審査で語り切れなかったエピソードや想いを、ファイナリストが順に披露しました。
トップバッターの北村氏は、「さすらい食堂」の具体的な運営構想として、固定店舗で勤務する料理人が挑戦する機会や、デジタルノマドワーカーが日中の業務と並行して料理を提供する形を挙げました。
続いて菊池氏は、ピクトグラムを活用する競合企業の増加に触れ、差別化の課題があることを指摘しました。また、スペインが「食」を国の成長産業として推進している事例を踏まえ、今後同様の取り組みが増える可能性を実感として語りました。
理髪店を起点とした提案を行った加持氏は、自身の旅を振り返り、「地域の人々との自然な交流が印象に残った」と語りました。その経験を踏まえ、理髪店の1対1の構造からヒントを得て、同様の交流を生む方法を考えたと説明しました。
一方、地元・和歌山県に焦点を当てた提案を行った諏訪氏は、不登校経験を持つ自身の体験に触れ、eスポーツを通じて会話や社会との接点を得られることに魅力を感じたと語りました。旅行と組み合わせることで、心身の健康を促進したいという想いも伝えました。
続いてHAN氏は、実現にあたっての難しさについて問われ、メーカーの技術者とともに5年以上かけて研究・開発を進めてきた過程を説明。すでに実証実験も行っており、行政による高齢者宅への訪問などに活用する構想を描いていると語りました。
また加藤氏は、ビジネスモデルに関する質問に対し、「すぐに起業するのではなく、大学で研究を行い、そのデータをもとに行政へ提案していきたい」と、高校生ならではの視点で将来の展望を述べました。
トークセッション「地域を観光から活性化」
「地域を観光から活性化」をテーマにしたトークセッションでは、Forbes JAPAN Web編集長の谷本 有香氏、下関市長の前田 晋太郎氏、積水ハウスホテルマネジメント株式会社 フェアフィールド・バイ・マリオット 道の駅プロジェクトCEO 岡本 勇治氏の3名が登壇しました。
まず岡本氏から、積水ハウスとマリオット・インターナショナルによる地域活性化事業「道の駅プロジェクト」の紹介が行われました。岡本氏は、具体例を交えながら、新規雇用の創出や人的交流の機会提供を通じて、地域活性化に取り組む意図を説明しました。
道の駅の魅力を活かした具体的な運用イメージについては、道の駅と連携しながらホテルを運営する形で、「お土産は道の駅、夕食は地域のレストラン」といった具合に、ホテルを起点とした送客を進めていきたいと語りました。
それに対し前田氏は、下関の課題として「観光客が日帰りに偏っており、夜が極めて弱い」と述べた上で、そういった宿泊施設の誘致は夜まで営業する飲食店にとって悲願であり、観光地としてのフェーズが変わっていくのではないかとコメントしました。
関連して谷本氏は、日本の観光における課題として「夜の魅力が弱い」点を指摘。具体例として、多くの店舗や施設が早く閉まることを挙げ、ナイトエコノミーの開発によって観光の幅を広げられるのではないかとの見解を示しました。
それに対して岡本氏は、「北海道のスナックと連携した企画が進んでいる」と明かし、都心では夜の観光としてスナックに訪れる観光客がいることに触れ、その取り組みを地方にも広げたいと語りました。一方前田氏は、下関市で行なっている夜間活性化の取り組みとして、水族館でのナイトショーの開催を挙げ、そのような取り組みが今後さらに必要になっていくだろうと述べました。
最後に岡本氏は、「まだ知られていない地域を訪れる旅に魅了される人もいると思います。国内には魅力的な場所が数多くありますので、興味を持たれた方はぜひ活用してください」と呼びかけ、トークセッションを締めくくりました。
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