この記事は約6分で読み終わります。

コト消費傾向が強くなってきている訪日外国人観光客。インバウンド市場での主要客である訪日中国人観光客も、団体旅行から個人旅行(FIT)にシフトしつつあり、今後、旅ナカでの情報収集がインバウンド対策の焦点になってくるものと考えられます。

そのような状況の中、通信会社であるNTTドコモが、訪日外国人観光客向けの知名度向上のため面白いプロモーションを開始しました。

 

ドコモが成田空港に「スマホ専用トイレットペーパー」を設置

NTTドコモ(以下ドコモ)が「スマホ専用トイレットペーパー」を、12月16日から2017年3月15日まで限定で成田空港に設置します。

mynavi.jpより引用

mynavi.jpより引用

スマホ専用トイレットペーパーとは、スマートフォンの画面を拭く用の小さなトイレットペーパー状の画面クリーナーです。ペーパーを引き出すと、ドコモが提供する訪日外国人観光客向けの、有料Wi-Fiサービスや、翻訳および観光情報を提供するアプリの案内が印字されています。

設置場所は成田空港の制限エリアから出口に向けた到着動線で7箇所、合計86個で、トイレの個室内やジェットタオル横に設置されます。

あわせてプロモーション動画「HOW TO USE TOILETS in JAPAN. -日本のトイレの使い方-」を公開

ドコモは前述の「スマホ専用トイレットペーパー」の設置にあわせて、12月16日に「HOW TO USE TOILETS in JAPAN. -日本のトイレの使い方-」と題した動画をYouTubeにアップロードしています。

動画は、和式トイレの使い方からウォシュレットの使用法を、”海外でイメージされる日本らしさ”のテイストに合わせて紹介。また動画の後半では、スマートフォンは便座の5倍以上の菌が付着していることを紹介。併せて「スマホ専用トイレットペーパー」についても触れられています。

 

ドコモのプロモーション戦略

では、なぜドコモはこのようなプロモーションを始めたのでしょうか。その背景・理由には以下の4つがあると考えられます。

訪日外国人観光客の旅行中情報収集手段はスマホがメイン

訪日外国人観光客が旅行中に役に立った情報源:観光庁 訪日外国人消費動向調査より引用

訪日外国人観光客が旅行中に役に立った情報源:観光庁 訪日外国人消費動向調査より引用

訪日中国人観光客が団体旅行からFIT(個人旅行)にシフトしつつあり、インバウンド全体のターゲットも、あわせてFITにシフトしつつあります。

現状でも、旅ナカ(旅行中)での情報収集手段で使われるのは、圧倒的にスマートフォンで、訪日外国人消費動向調査においても、「日本滞在中に役に立った旅行情報源」という質問項目には、全訪日外国人観光客の56.4%が役に立ったと回答しています。

団体旅行ではツアー会社が旅程を決めるため、スマートフォンで情報収集するシーンは「何を買うか」がメインでした。しかしながら、自由な旅程を組めるFIT化が進むにつれ、スマートフォンの利用シーンはより広がり、したがってWi-FiやプリペイドSIMといったスマートフォンの通信手段の重要性が、より高まってくるもとの考えられます。

通信環境後進国、日本

しかしながら、日本は先進国の割に通信環境であると言われています。前述の観光庁の調査によれば、「日本滞在中にあると便利な情報」という質問項目では、全訪日外国人観光客の53.3%が「無料Wi-Fi」をあげています。「あると便利な情報」としてあげられているため、実際には過半数の訪日外国人観光客が通信環境で不便を感じている、とも言えるでしょう。

訪日外国人観光客が日本で利用したインターネット接続手段:総務省 WI-FI利用に係る調査結果より引用

訪日外国人観光客が日本で利用したインターネット接続手段:総務省 WI-FI利用に係る調査結果より引用

また、総務省のWi-Fi利用に関する調査によれば、無料Wi-Fiを利用した訪日外国人観光客は48.8%となっており、観光庁の調査の丁度裏返しの数値となっています。また、注目すべきは国際ローミングの利用が過半数を超えていることです。

インバウンド向け有償通信サービスは伸びしろがある

対して、プリペイドSIMが40.5%、ポータブルWi-Fi(*)の利用は25.6%、有料のWi-Fiスポット契約の利用は20.9%にとどまっています。日本の無料Wi-Fi環境の悪さは、翻って、これらの有償通信サービスの利用を後押しする要因ともなりうるでしょう。

海外旅行者のデータローミング利用について:telecompapaerより引用

海外旅行者のデータローミング利用について:telecompapaerより引用

telecompapaerの2013年の調査によれば、海外旅行をする人の56%が国際ローミングを利用しており、総務省の調査とほぼ同水準となっていることから、ここ数年は同様のトレンドの模様。また、同調査では、国際ローミングを利用しない人に対し理由を質問しており、「(データローミングは)高すぎるから」という理由が86%となっています。

よって、有償Wi-FiスポットやプリペイドSIMといった有償通信サービスは、無料Wi-Fiよりも使い勝手が良く、国際ローミングよりもコストパフォーマンスが高いことを訴求できれば、より利用が広まるのではないかと考えられます。

*いわゆるポケットWi-Fi。ポケットWi-Fiという語はイーモバイル(現ワイモバイル)の登録商標。

通信会社の選択基準はブランディング勝負?

それでは、訪日外国人観光客が日本で有料Wi-FiスポットやプリペイドSIMを契約する際、どの通信会社にするかの選択基準はどうなっているのでしょうか。これは我々日本人が海外旅行をする際を想像すれば、自ずと答えが出てくるのではないでしょうか。

観光客にとって、訪問先の国の通信会社の各プランの料金体系・特徴を把握し、比較することは非常に難しいものです。よって、選択基準は空港で見かけた、有名そう、などのブランディング勝負になってくるものと考えられます。

ドコモも今回のプロモーションではブランディングが目的としており、マイナビニュースの取材に対し、

「通信キャリアとして、ドコモの(訪日外国人向け)サービスを印象付けたい」。ドコモの広報に聞くと、今回の取り組みでは外国人に対する知名度向上の効果にも期待しているようだ。―マイナビニュース「ドコモが成田空港にスマホ専用トイレットペーパー、ビジネス的にもおいしいわけ」より引用

と回答しています。

日本のトイレのコンテンツ力・拡散

ドコモがブランディング戦略として「トイレ」を活用した理由は、日本のトイレのコンテンツ力にあると考えられます。日本のトイレのホスピタリティは海外で定評があり、Youtubeでも、有名YouTuberらによる動画が数多くアップロードされています。

トイレの紹介動画にも関わらず、「The Amazing Japanese Toilet ★ ONLY in JAPAN #09 日本のハイテクトイレ」と題した動画は100万再生を突破。「TESTING JAPANESE TOILETS」も60万再生されており、日本のトイレのコンテンツ力を物語っています。

ドコモは動画を用いて、動画の拡散と旅マエでの認知、そして成田空港に到着後の旅ナカでの認知の両方を狙って、今回のプロモーションを仕掛けたのだと思われます。

 

まとめ:インバウンドプロモーションの参考に

今回のドコモのプロモーションは、SNSなどでの拡散、そして旅マエ・旅ナカでの認知・知名度向上において非常に面白い戦略をとっています。また、通信会社であるドコモがトイレをコンテンツとした自由な発想などは、インバウンドプロモーションの参考になるのではないでしょうか。

<参照>

 

役にたったら
いいね!してください

インバウンド最新情報をお届けします。

これ以上前の記事はありません…