「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」として、平成25年(2013年)にUNESCOの世界遺産に登録された富士山は、日本のみならず世界的に有名な観光地です。訪日外国人観光客からの需要も高く、積極的なインバウンド対策が行われています。
都市部の観光施設ならともかく、富士山のような自然環境の場合、どのように訪日外国人観光客に配慮すればよいのでしょうか。今回は、富士山におけるインバウンド対策の方法についてご紹介します。
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富士山を訪れる訪日外国人観光客の動向
世界文化遺産登録で旅行者数が増大
富士山にはどれほどの訪日外国人観光客が訪れているのでしょうか。平成27年(2015年)の山梨県の資料から確認してみましょう。
山梨県観光に訪れた実人数で3,146万2,000人で、その内862万5,000人が宿泊客。宿泊客数は前年比で+16.7%。訪日外国人観光客の宿泊客は131万3,000人で、前年比で+38.4%と大幅な増加を見せています。
このような変化が起こったのは、富士山が世界文化遺産になったことで注目が集まったためだと見られています。登録されたのは調査の2年前、平成25年ですが、影響が長続きしているようだと見られています。
富士山を含む「富士・東部圏域」では、前年の平成26年と比較して観光客の流入数が107.3%に。富士山五合目では前年比138.1%と大きく上昇した一方、その他の地域では観光客数が微減しました。このようなデータからも富士山人気が高まっていることが理解できます。
訪日外国人観光客の登山者も
また、別のデータからも富士山のインバウンド需要を確認してみましょう。関東地方環境事務所が、平成27年8月に富士山における外国人登山者の割合、国籍などの調査を行いました。
調査は22日土曜日と23日日曜日、26日水曜日、27日木曜日の2回に分けて、登山口で全下山者を対象に行われました。
22、23日の外国人登山者の割合は吉田ルートが21%、富士宮ルートが12%。26、27日の割合は吉田ルートが28%、富士宮ルートが10%。登山ルートによる差は見られますが、登山者の10~20%が外国人だということが分かりました。
外国人登山者のうち国内在住者が35%、海外在住が65%で、訪日外国人観光客が過半数を占めています。吉田ルートを利用した外国人登山者の国籍は欧米系が40%、東アジア系が39%、東南アジア系が11%。富士宮ルートは欧米系41%、東アジア系44%、東南アジア系9%。訪日外国人観光客の多くは日本に近いアジア系なのですが、欧米系がかなり多くなっています。興味関心の違いを反映した結果なのではないでしょうか。
富士山のインバウンド対策
海外における富士山人気について、データから見てきました。ここからは世界文化遺産に登録されたことにより注目が集まり、訪日外国人観光客数が増加していることが確認できます。
では、このような状況下で、富士山ではどのようなインバウンド対策が行われているのでしょうか。
山小屋などで利用できる無料Wi-Fiの提供
都市部ならともかく、電波が届かずインターネットが利用できない山間部、森林は珍しくありません。しかし、富士山では2016年7月10日から「富士山 Wi-Fi」の提供がスタートしました。ワイヤ・アンド・ワイヤレスが、すべての山小屋を含む49か所で無料で利用できます。
KDDIも参画しており、同社は登山口にて多言語音声翻訳システムを活用した観光案内をスタート。道案内、登山に関するアドバイスなどを行い、安全な登山をサポートすることが目的です。
なお、この取り組みは9月10日までの期間限定で行われる予定。NTTドコモもまた、富士山で2015年から無料Wi-Fiサービスを行っています。山頂、五合目など8か所にアクセスポイントを設けています。
情報収集に活用できるアプリの開発
アイブリッジ、富士急行はアプリ「FUJI-Q RESORTSアプリ」を2016年7月1日にリリースしました。位置情報と連動し、レジャー施設、レストランなど各種施設の特典やクーポンを自動配信、富士山エリアの主要観光施設紹介、交通案内などを行う機能を搭載しています。
宿泊先、航空券などを自分で手配する個人旅行者の増加を受けたもので、手軽に情報収集できる環境の提供を目的としています。
富士山が見られない悪天候時の対策
自然の魅力をプッシュした観光資源にとって避けては通れないのが、天候の問題。富士山の場合、雲で隠れてしまう可能性があります。海を越えて日本にやってきた訪日外国人観光客にとっては、ショックでしょう。
このような事態を避けるために、用意されているのが「男前証明書」「べっぴん証明書」。悪天候のせいで富士山を見ることができなかった場合に配布されます。「今日は日本一の美女である富士山が恥ずかしがって姿を隠してしまった。ここにあなたが男前(べっぴん)であることを証明する」というユーモラスな文章、富士山の写真が掲載されています。
まとめ:富士山でもさまざまなインバウンド対策
世界文化遺産登録されたことで、国内外から注目が集まっている富士山。データからは実際に訪日外国人観光客数が増加していることが分かります。
インバウンド対策も実施されていますが、Wi-Fi、情報収集用アプリ、悪天候対策など内容は多岐にわたります。日本語に不慣れにもかかわらず、海を越えてやってきてくれた訪日外国人観光客向けに、手厚いサービスを行っているのでしょう。
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