大阪府大阪市は平成28年(2016年)10月12日、国家戦略特区による規制緩和を活用して、10月31日から民泊を認める条例を施行し、事業者の申請を受け付けることを発表しました。市内の中央区はAirbnb(エアビーアンドビー)が発表した「2016年に訪れるべき16の地域」でダントツ1位を獲得しており、民泊に関しては国内屈指の注目株です。
インバウンドビジネスの活性化につながるニュースではありますが、手放しに喜ぶことはできません。民泊には多くのトラブルが懸念されており、それらを防止するための対策が不可欠だからです。それではどのような制限のもと、民泊の許可が下ろされたのでしょうか。
【訪日ラボは、8月5日にインバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を開催します】
会場での開催に加え、一部講演ではオンライン配信(参加費無料)も実施!さらに、チケットを購入した方限定でアーカイブ配信も予定しています。
ご来場が難しい方や当日ご都合が合わない方も、この機会にぜひご参加ください。
「2016年に訪れるべき16の地域」に選ばれた、民泊にはうってつけの地域
Airbnb Japanは平成28年(2016年)1月8日、2015年のAirbnb利用者4000万人以上の旅行パターンから人気が急上昇した地域を選定した「2016年に訪れるべき16の地域」を発表しました。メキシコシティやアテネ、バリ島など有名な地域が名前を連ねるなか、大阪市中央区が7,000%増を記録し、1位を獲得。2位のバンコク(タイ)は1,230%増にとどまっており、その他の地域を大きく引き離す形になりました。
評価点としては以下のような内容が掲げられました。歴史的な建造物あり、ショッピングあり、グルメありとさまざまな楽しみ方ができることが、人気急上昇の要因だったようです。
- 16世紀後期に日本を支配した豊臣秀吉によって建造された大阪城
- 300以上の店舗があり、買い物が楽しめる
- 黒門市場は「大阪の台所」として知られ、旅行者は新鮮な食材を使った料理で空腹を満たせる
- 裏難波と呼ばれるエリアは急速に知名度が増しており、近年、食堂やバーが増加している。
- 道具屋筋商店街、千日地蔵尊通りもグルメの街として知られる
どんなルールのもとで民泊営業が許可されるのか
民泊を合法的に運営できる地域は民泊条例を制定した東京都大田区などに限られていますが、中央区が所属する大阪市がここに加わります。では、どのような法整備のもとで民泊営業が行われるのでしょうか。「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に関するガイドライン 」から、確認してみましょう。
施設面
施設に関しては以下のような制限が設けられます。安全、生活、生活環境の確保など比較的ハードルの低い内容になっています。
- 居室の床面積は、1人あたりの最低居住水準とされる25㎡以上であること(風呂、台所などを除く)
- 飲用できる水道設備、調理器具、清掃器具を設けること
- 寝具、テーブル、椅子、収納家具などを設けること
- 消防法令上「旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの」に該当するため、規模や収容人数などによって消防設備の設置、防火管理者の選任をはじめとした義務を守ること
宿泊者の管理
宿泊者の管理は、事業者が責任をもって行う必要があります。具体的には以下の通り。近隣住民とのトラブルの回避はもちろんのこと、違法滞在の温床になる可能性があるため、しっかりとした対応が求められています。
- 滞在者の氏名、住所、職業、国籍、旅券番号を記載する滞在者名簿、旅券のコピーを保存する
- 対面などにより滞在者名簿に記載された人物と滞在者が同一人物であることを確認する
- 施設の使用方法、ゴミの捨て方、火災時の通報先などを滞在者に説明する
- 近隣住民への苦情窓口を設置し、対応する
- 滞在者の違法薬物使用、売春などが疑われる場合は通報する
言語対応
宿泊客が使用する言語に対応することも当然、必要。ホテルや旅館とは違うとはいえ、契約や連絡などの場面でコミュニケーションが必要になるためです。必ずしも英語を使う必要はありませんが、中高で英語を学び、大学で第2外国語を少々……という一般的な日本人にはここまで準備するのは難しいかもしれません。
- 契約書などは、滞在者の言語に対応する
- 使用する言語に対応できる人材を緊急連絡先などに配置する
まとめ:Airbnbユーザーが高く評価する大阪市で、民泊解禁
大阪市は「2016年に訪れるべき16の地域」で1位に選ばれました。大阪城をはじめとした歴史的な建造物や豊富なグルメ、ショッピングエリアの存在などがAirbnbユーザーの心を惹きつけたようです。そんな大阪市で、10月31日から国家戦略特区による規制緩和を活用して民泊が解禁されます。犯罪の温床になったり、近隣住民とのトラブルを引き起こしたりしないよう事業者には宿泊者の管理や言語対応などが義務付けられます。
決して厳しい条件ではありませんが、マンションを片っ端から借りていい加減な運営を行うような悪質な業者には対応するのが難しいのではないでしょうか。また、宿泊客が使用する言語でコミュニケーションをとったり、契約書などを用意したりする必要があるため、空き部屋さえあれば誰でも民泊営業が始められるという環境ではないようです。
<関連記事>
10分で理解する民泊サービス その実態とは?背景や法的要件、課題などを解説
目次民泊サービスとは?:Airbnb(エアービーアンドビー)を例にAirbnb(エアビーアンドビー)のしくみ・特徴なぜ民泊に注目が集まっているのか?民泊ビジネスの抱える問題点民泊ビジネスと法的要件合法的に民泊ビジネスを行なうには?民泊ビジネスには、法的問題のほか、近隣トラブルも課題となるまとめ:今後の民泊市場の法的・ビジネス的動向に注目民泊サービスとは?:Airbnb(エアービーアンドビー)を例に日本でも急速に広まりつつある民泊ビジネス。業界の中でも最も有名なAirbnb(エアビーアンドビ...
民泊は取り締まりの対象!? グレーゾーンから違法との見方が強くなった「闇民泊」について解説
訪日ラボでも何度か触れている「民泊」。2016年4月に民泊に対応すべく旅館業法の緩和を行ったり、6月には民泊新法に関する最終報告書が提出されたりしたことは記憶にあたらしいです。<民泊に関する規制緩和についてはこちら>そのような規制緩和がおこなわれつつも、そもそも旅館業法においては民泊の形式は想定しておらず、民泊に関してダイレクトに定めたルールがないのが現状です。そこで問題となっている、いわゆる「闇民泊(ヤミ民泊)」の問題点について解説していきます。目次闇民泊とは、旅館業法の制限を受けずに営...
合法な施設のみを提供する民泊仲介プラットフォーム「STAY JAPAN」:安全性を高め、民泊本来の魅力
世界的に人気を博しているものの、宿泊業者や地域住民の生活に悪影響を及ぼすおそれが懸念されている民泊。世界的な観光地として知られるフランス・パリでは住宅不足、学級閉鎖などの悪影響を及ぼしていると言われています。高い需要があることから積極的な導入を求める声が上がっているものの、日本では慎重な対応が進められています。<関連記事>そんな中、宮城県仙台市に本社を置く百戦錬磨は、日本シェアハウス協会と提携し、合法で安全な民泊上の普及に向けた事業をスタートしました。今回は、事例として同社の取り組みをご紹...
【7/16開催】【Next Food Vision 2025】食の最新トレンドを発信〜大型オンラインイベント〜※好評につき再放送※
外食店舗、支援サービス、業界のトップ企業が集結!
さらに、有名飲食店や外食産業を牽引する企業による特別基調講演も開催。
成功企業のリアルな戦略や、これからの外食業界を生き抜くヒントがここに詰まっています!
最新のトレンドを知り、トップ企業の成功ノウハウを学びたい方、
業界の最前線で活躍する企業とつながり、新たなビジネスチャンスを掴みたい方にぴったりのイベントです。
今こそ、業界の未来を共に創る一歩を踏み出しませんか?
皆さまのご参加をお待ちしております!
<応募者特典>
-
イベント登壇企業の各種お役立ち資料
※口コミアカデミー内でのアーカイブ配信は予定しておりません -
本イベントのアーカイブ動画(1週間)
<本セミナーのポイント>
- 有名飲食店&業界をけん引する企業の基調講演 - 成功企業の戦略や実例を直接学べる貴重な機会!
- 外食業界の最新トレンド&成功ノウハウが手に入る - 変化の激しい市場で勝ち残るための最前線情報をキャッチ!
- 外食業界を支える最新サービス&ソリューションの紹介 - 飲食業界の課題解決につながるアイデアが満載!
- トップ経営者や専門家が語る「成長の秘訣」と「業界の未来」
- 業界をリードする企業が実践するプロモーション戦略やDX事例を公開!
- 効率化や売上向上につながる最新ツール・サービスを知るチャンス
詳しくはこちらをご覧ください。
→【Next Food Vision 2025】食の最新トレンドを発信〜大型オンラインイベント〜※好評につき再放送※【7/16開催】
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。
「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!