弥生時代の人々の暮らしを現代に伝える佐賀県の吉野ヶ里遺跡をご存知でしょうか、昭和61年(1986年)から始まった調査により、国内最大規模の環濠集落の遺跡であることが確認され、学校の教科書にも掲載されている有名な場所です。
「訪日外国人観光客にウケる歴史系の観光資源」を考えたとき、最初に思い浮かぶのはSAMURAI(侍)、NINJA(忍者)あたりではないでしょうか。時代としては、戦国~江戸です。吉野ヶ里遺跡はそれらの時代からは大きく外れますが、国内外から観光客が訪れる人気スポットになっています。
今回は、インバウンド業界での成功例として、佐賀県の吉野ヶ里遺跡(現在は、国営吉野ヶ里歴史公園として整備)の事例をご紹介いたします。
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観光地としても成功を収めている吉野ヶ里遺跡とは
吉野ヶ里遺跡は、佐賀県東部の神埼郡に位置し、50ヘクタールにわたる弥生時代の大規模な環濠集落(水稲農耕とともに現れた集落の形態で、集落の周囲に堀が設けられている)の跡があることで有名。
700年間にわたり、続いた弥生時代の変遷が伺えることや、日本について記された最古の記録「魏志倭人伝」の邪馬台国を彷彿とさせることから、歴史研究において重要な拠点と考えられています。現在は国の特別史跡に指定され「国営吉野ヶ里歴史公園」として管理されており、銅剣をはじめとした出土品も、学術的な価値が高いことから国の重要文化財などに指定されています。
佐賀県で考古学研究が行われるようになったのは、大正時代前半のこと。昭和9年(1934年)から、吉野ヶ里遺跡を取り上げた報告が相次ぐようになり、かねてからその存在は知られていました。
農地開発や護岸工事で人骨や鉄器などが出土したことをきっかけに、昭和20年代末に日本考古学協会を主体とした緊急発掘調査が実施。昭和40年代以降は、大規模開発の増加に伴い、本格的な発掘調査が行われるようになりました。
国内で広く知られるようになったのは、大々的な報道が行われた平成元年(1989年)から。国営歴史公園になることが決定したのは、その数年後の平成4年(1992年)です。
体験プログラムなどの導入で、息の長い観光資源に

国営吉野ヶ里歴史公園がオープンした平成13年(2001年)度、同公園には約68万人が訪れましたが、その後、来場者数は年々減少。 平成16年(2004年)度には約41.5万人にまで落ちこみました 。
しかし、翌年度から イベントの充実化や体験プログラムの実施などが功を奏し、約57.1万人まで増加 し、以降、約10年間にわたって50~60万人台をキープ。 平成27年(2015年)には、インバウンド需要の増加などを受け、開園時を上回る73.1万人が来場 しています。
国営吉野ヶ里歴史公園の運営方針
一度は人気が傾きかけたものの、息の長い観光資源として運営が続けられている吉野ヶ里歴史公園。平成29年(2017年)3月末に、国土交通省九州地方整備局が発表した資料「国営吉野ヶ里歴史公園管理運営プログラム」で、その運営方針が紹介されています。
弥生時代が体感できる施設やプログラムを用意
総面積約117ヘクタールに及ぶ吉野ヶ里歴史公園のうち、約50ヘクタールが特別史跡区域を含む史跡指定地となっており、公園整備は遺跡の保存、活用に配慮しながら進められています。基本的なコンセプトとして掲げられているのは「弥生人の声が聞こえる」というフレーズ。「物見やぐら」「王たちの家」「煮炊き屋」といった施設が復元されており、弥生時代に触れられるようになっています。
また、「勾玉づくり」「火おこし体験」「竪穴住居での宿泊体験」といったプログラムを通じて、古代の暮らしが体験できるようにもなっており、修学旅行、社会科見学のスポットとしてもよく活用されています。団体利用者数は年間7~9万人にのぼるといいます。
公園設備を利用した「弥生の丘マルシェ」などの取り組みも
そのほかにも県内外から店舗が集まり、ハンドメイド作品やグルメコーナーなどが楽しめる「弥生の丘マルシェ」、地元の商工業者が駐車場を利用して販売を行う「軽トラ市」といったイベントも。弥生時代との関連性は弱いものの、これらでも公園設備が活用されています。
インバウンド対応を含め、どんな人でも歴史に触れられる環境づくり
どんな人でも快適に利用できるよう、ユニバーサルデザインの導入にも注力しており、園内には車いすの昇降装置や、音声案内に対応した洋式トイレなどが設置されています。

また、インバウンド来園者数も年々増加傾向にあります。このインバウンド需要の増加を受け、 パンフレットやスタッフの多言語対応、Wi-Fi環境の整備なども進められており、訪日外国人観光客向けの配慮も欠かしていません 。

さらなるインバウンド需要の取り込みのために、東京オリンピックが開催される日本のインバウンドの転換期である平成32年度(2020年度)迄に、更なるインバウンド対応を進めていくとのことです。具体的には、前述のWi-Fi環境、案内サインの多言語化の充実、国内だけでなくインバウンド向けのプロモーション活動を推進することで、更なるインバウンド来園者の増加を目指していくとのこと。
まとめ:遺跡の保護と観光スポットの両立
国内最大規模の環濠集落跡を持ち、学術的な価値が高い遺跡でありながら、観光地としても成功を収めている吉野ヶ里遺跡。ユニバーサルデザインの導入にも力を入れており、障害者はもちろんのこと、訪日外国人観光客にも利用しやすい環境づくりが進められています。
弥生時代が肌で感じられる体験プログラムや、公園設備を利用した「弥生の丘マルシェ」などが行われており、息の長い観光施設として成立しているようです。
<参考>
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