インバウンド最前線で活躍 全国通訳案内士の島崎秀定氏インタビュー:通訳案内士法&旅行業法の改正がインバウンドに与える影響とは?

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日本国政府招聘の要人のアテンド経験もある全国通訳案内士、島崎秀定氏に、今年1月4日に改正・施行された通訳案内士法及び旅行業法について聞きました。また、インバウンドのリアルな現状についての話も。インバウンド関係の著作もある全国通訳案内士の話は貴重です。

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リピーターの増加により、インバウンドはゴールデンルート一辺倒から多様化の時代へ

訪日ラボ
まずは、通訳案内士になったきっかけを教えていただけますか?

島崎秀定氏
旅行が好きだということ、独立して何かしたかったということですね。そこで、昔資格だけとっていた通訳案内士をすることにしました。
2010年から通訳案内士としてスタートしましたが、今ほどインバウンドが盛り上がっている状況ではなく、当初は日本人相手にもガイドをしていました。

訪日ラボ
ご案内するお客様のうち、何割が訪日外国人観光客でしたか?

島崎秀定氏
7割くらいです。当時は都内観光が多く、スルーガイドとしての仕事は5割くらいでした。いわゆるゴールデンルートが多かったのですが、長いコースもありました。それは、通常の、東京から富士・箱根、京都・奈良といった通常のゴールデンルートのあと、岡山・広島、九州、四国と巡り、関空から帰国というものでした。

▲全国通訳案内士の島崎氏

▲全国通訳案内士の島崎氏

訪日ラボ
ゴールデンルートは、もう飽きられているような印象がありますが、他のコースはどうでしょうか。

島崎秀定氏
飽きられているわけではありませんが、リピーターの増加に伴い、訪問地は多様化していますね。最近の傾向として、クルーズ船が増えています。船では、陸路のツアーではなかなか行けないところも行けます。今後も、増えていくでしょう。

▲クルーズ船でのアテンド。お客様と夕食をご一緒。

▲クルーズ船でのアテンド。お客様と夕食をご一緒。

訪日ラボ
天候が悪いときは、大変ですよね。

島崎秀定氏
去年の話ですが、クルーズ船にお客様と一緒に乗っていたとき、台風に当たりました。予定では、函館に寄港する予定だったのですが、できずに、代替としてロシアのウラジオストックに行きました。また、日本の寄港地も一部変更になってしまいました。行ったことのない場所もあったので、急遽下調べをしました。

訪日ラボ
乗客からクレームはなかったのでしょうか。

島崎秀定氏
天気図をみせて、クルーズ・デイレクターが説明し、全員が状況を理解していたのでクレームはあがりませんでした。急遽、寄港することになったウラジオストックでも、船会社が迅速にロシア人の現地ガイドを手配しました。

改正通訳案内士法&旅行業法のインバウンドへの影響とは?ツアーの質の底上げに期待

訪日ラボ
1月4日に通訳案内士法が変わり、従来の通訳案内士は全国通訳案内士という名称になりましたが、誰でも有償でガイドができることになりました。全国通訳案内士の中には、島崎さんのように、クルーズ船での対応もできるようになって、他のガイドから一歩前に出たいという方もいらっしゃると思います。

島崎秀定氏
私は、クルーズ船には年に50日くらい乗っています。その経験でいえるのは、語学も大切ですが、まずはコーディネートの力が必要だと思います。それから、仕事のチャンスがあったら積極的に手をあげるといいです。

訪日ラボ
全国通訳案内士さんは、実際にお客様をご案内する前に、下見をしなくてはいけないとおっしゃる方が多いですよね。

島崎秀定氏
おそらく8割くらいの全国通訳案内士が、下見が必要だというのではないでしょうか。不安だとは思いますが、下見はそれほど気にするものではないと思います。もちろん、インターネット等での情報収集は欠かせませんが、それよりも、お客様がハッピーになるようにすること。それには、コーディネートの力が必要です。

訪日ラボ
全国通訳案内士の資格試験は、筆記だけで実地試験がないですね。私は、オーストリアの旅行会社で働いていましたが、オーストリアのガイドは日本と同じく国家資格なのですが、実地試験があります。日本の全国通訳案内士さんの下見のこだわりには、制度の問題もあるのでは、と思います。

島崎秀定氏
現在は通訳案内士の資格を取った後に、通訳案内士団体の研修に参加して勉強しますね。通訳案内士法が改訂になって、全国通訳案内士には5年に一度の研修が義務付けられますから、そこでバス研修などをしてもらうといいかもしれません。それから、通訳案内士法は1949年に施行されているのですが、今まで違法ガイドの取り締まりが行われたことは一度もありません。これも問題ですね。

▲島崎氏の著作は全国通訳案内士によく読まれています

▲島崎氏の著作は全国通訳案内士によく読まれています

訪日ラボ
ヨーロッパでは、違法ガイドを厳しく取り締まっている国も多いですね。それから、1月4日には旅行業法にも変更がありました。ランドオペレーター(旅行サービス手配業者)の登録制度の創設が目玉ですね。特に外資のランドオペレーターには、無理な行程を組む業者もいてあぶないと思います。

島崎秀定氏
アジア系のランドオペレーターが欧米人を取り扱いはじめています。彼らは、値段勝負でいきますね。売りっぱなしでガイドに報告書すら求めないこともあるし、オプションで追加料金を取ったり、詰め込みすぎで忙しすぎる行程も多いです。行程がよくないと、事故につながる可能性があります。また、誰でもガイド業務ができるようになると、アジア系の方が欧米人のアテンドにつくのではないでしょうか。そうなると、ツアーの質が低下し、日本の印象が悪くなるのではないかと懸念しています。

訪日ラボ
今回の旅行業の改正には、キックバックを前提とした土産品屋への連れ回しの是正も含まれていますね。まだ通訳案内士法も旅行業法も、1月4日に改正・施行されたばかりですが、訪日外国人の皆さまが満足してくれるようになればよいと思います。ありがとうございました。

インタビュイープロフィール

島崎秀定
1963年東京生まれ。高校時代にアメリカ・オレゴン州の高校へ1年留学。慶應大学経済学部卒業後、経営コンサルティング会社を経て、伊豆ガラスと工芸美術館にて副館長を務める。1998年、フランス・ソルボンヌ大学パリ文明講座にて1年学ぶ。帰国後、ニッコウトラベルにて海外旅行の企画・添乗(添乗日数約500日)などを経験し、2009年末より通訳ガイドとして活動(2015年の年間稼働日数は220日)。また、スポーツイベントなどの通訳も務める。
資格:通訳案内士(英語。1993年取得)、英検1級、仏検2級、博物館学芸員、総合旅行業務取扱管理者、一級小型船舶操縦士、クルーズ・コンサルタント、調理師など多岐にわたる。
ホームページ:Let’s Travel in Japan

著書:

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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