4月15日にフランス・パリのノートルダム大聖堂で発生した火災を受け、京都市をはじめ、国内の文化財で緊急防火指導を開始しました。日本のインバウンド業界においても、不測の事態に備え、今一度文化財の保護について考えさせられる機会となっています。ノートルダム大聖堂の火災発生時の付近の様子や観光客への影響についての現地レポートと、京都市をはじめ各地の文化財保護対策の現状について見ていきましょう。
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ノートルダム大聖堂の火災発生時、最寄駅は大混乱
ノートルダム大聖堂は、850年の間パリの街と市民を見守ってきたシンボルであるとともに、年間約1300万人の観光客が訪れるフランス屈指の人気観光地です。年間来場者数は、ルーヴル美術館の1000万人超、ベルサイユ宮殿の500万人を大きく上回ります。
火災発生は一般拝観と工事作業が終了した後だったため、人的被害は免れましたが、木造の屋根部分の3分の2と尖塔が消失されるなど、甚大な被害をもたらしました。
ノートルダム大聖堂の最寄駅「Saint Michel Notre-Dame」は、平日の夕方ということもあり、パリ市民の帰宅ラッシュとイースター休暇で訪れた観光客など、火災発生時も多くの人が利用していました。駅のホームの電光掲示板に表示されていた電車の本数が突然減った矢先、駅員がフランス語で「出口へ!」とだけ叫びながら、利用客にホームから出るよう促すといった状況でした。アナウンスも全てフランス語だったため、観光客は困惑しながらも現状と代替手段を把握すべく、窓口付近のスタッフに詰め寄っていた様子が印象的です。インバウンド大国・フランスでも緊急時の現場対応は、日本のダイヤ乱れのときと、さほど変わらないように感じました。
ノートルダム大聖堂の火災による観光客への影響は?
火災発生から一夜明けた16日、ノートルダム大聖堂の姿を一目見ようと、付近にはパリ市民のみならず多くの観光客も詰め掛けました。一方で、ノートルダム大聖堂付近は広範囲にわたり規制線が張られ、警察官は警備と観光客の誘導に当たっていました。立ち入り規制について何も知らずに現地へ到着した土地勘のない観光客が、規制線のまわりで右往左往していた様子が見受けられました。特定の橋に多くの人が集まったため、普段以上に人混みの中でスリ被害も懸念されるといった、治安面への影響も少なくありません。
ノートルダム大聖堂の火災発生を受け、パリのツアーを催行する日本の各旅行会社は、ルートの変更など対応に追われました。大型連休を目前に、パリの定番観光名所であるノートルダム大聖堂の代替スポットの検討を進めています。
日本各地の世界遺産で防火管理の再徹底へ
ノートルダム大聖堂の火災の原因として、改修工事の足場から出火した可能性があるとしています。今回の火災を受け文化庁は、国宝・重要文化財の防火管理体制の緊急調査を求める通知を出しました。世界文化遺産の建造物の所有者には、消化器や自動火災報知設備の有無といった管理状況を調べ報告するよう求めています。
京都市ではノートルダム大聖堂の火災発生の翌日16日に、現在土塀の改修が進んでいる重要文化財「永観堂禅林寺」にて、防火指導を実施しました。消防署員が巡回し、放水銃や消火ホース等の設備がすぐに使える状態かを入念に点検しています。京都市消防局では「文化財セーフティガード」を市内の約160箇所の寺社を対象に作成し、火災発生時に重要文化財を速やかに搬出するための対策を講じています。518箇所で焚き火や喫煙を禁止するなど、防火態勢の徹底に取り組んでいる一方で、ノートルダム大聖堂の火災を受け、改めて防火対策への意識を高めようと市民や観光客に呼びかけました。
奈良県文化財保存事務所では、法隆寺や薬師寺など、出張所5箇所にて現場での火気の使用を禁止や、消化器機の配備状況の点検の再徹底を促しました。16日には、国宝の本堂がある霊山寺の消火設備の点検を実施しています。兵庫県の世界遺産・姫路城は、消防車両が大天守のそばに入れない構造のため、スプリンクラーを城内に約1000個以上配備するほか、城の地下には貯水槽の設置も実施済みです。姫路城では、新たに特別な対策を講じる予定はなく、従来の対策を改めて徹底するとしています。
まとめ:災害時の訪日客対応と文化財保護の徹底について改めて考える機会
ノートルダム大聖堂の火災を受け、災害時のインバウンド対応と文化財保護のあり方について、改めて考える機会となりました。火災発生時のノートルダム大聖堂の最寄駅の対応からは、多言語アナウンスや、スムーズに誘導する方法、正しい情報発信等、災害発生時のインバウンド対応の重要性を、再認識させられます。日本国内の歴史的建造物の多くが木造であることから、防火意識と文化財保護の対策の徹底がより一層求められるでしょう。
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