昨年11月23日、パリで行われていた博覧会国際事務局総会にて2025年に大阪で万国博覧会(以下、万博)が開かれる事が決定しました。
大阪での万博開催は55年ぶり、日本での開催は2005年に愛知県で行われた愛・地球博以来20年ぶりの開催となります。
今回は万博について、またこれから行われる大阪万博について、そして過去に日本で開かれてきた万博について解説します。
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そもそも万国博覧会(万博)って?
国際博覧会は略して「万博」とも言われます。国際博覧会条約という国際条約に基づいて登録または認定されている会の一つです。
条約では「二以上の国が参加した、公衆の教育を主たる目的とする催しであって、文明の必要とするものに応ずるために人類が利用することのできる手段又は人類の活動の一若しくは二以上の部門において達成された進歩若しくはそれらの部門における将来の展望を示すものをいう」と定められています。
万博は、世界各国の最先端の技術の展示や国際交流を目的としています。
第1回万国博覧会はロンドンのハイドパークで行われ、以後、世界各国で行われてきました。
こうした博覧会はもともとは、時の権力者たちが財宝や戦利品を展示することによって自らの力を示す手段でした。その後博覧会の目的は変化し、今では平和の象徴として世界各国の人たちの交流の場となっています。
どれくらいの頻度で開催する?
万博には二種類あります。
人間の進歩をテーマとした「登録博」と、特定の分野に絞って行われる「認定博」の二種類に分けられます。
登録博は5年周期、認定博は不定期で開催されています。
開催国はどうやって決まる?2025年大阪万博が決まるまで
各開催候補地がそれぞれプレゼンテーションを行い、それに対する博覧会事務局(BIE)総会の投票によって決まります。
大阪開催が決定した時の投票では、日本の大阪、フランス、ロシアのエカテリンブルク、アジェルバイジャンのバクーが候補地に挙がっていました。
選考の過程でフランスは辞退したものの、開催地は決選投票に結果をゆだねることとなりました。結果、過去の万博の開催実績や運営能力の高さなどが評価され、大阪が開催の権利を勝ち取りました。
この際、フランスとロシアの2か国は「初開催」を売りにし、同時に、ロシアは14年冬季五輪や18年サッカーワールドカップ(W杯)など国際イベントの実績を強調しました。イスラム教国のアゼルバイジャンは宗教、文化面で関係の深い中東諸国などを中心に支持を広げましたが、結果として選出されませんでした。
大阪万博では何をする?テーマとは?
大阪万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」です。
人工知能(AI)や仮想現実(VR)などを体験できる「最先端技術の実験場」にするというコンセプトのもと、150か国の参加を見込んでいます。
総工費は7,300億円以上と言われています。
場所は人工島である「夢州」、期間は2025年5月3日~11月3日の185日間、国内外から約2,800万人の来場があると予想しています。
人生100年時代と言われる長寿時代における豊かな人生の送り方や、持続可能な社会システムといった、世界共通の課題を解決する「未来像」の共有を目標に最新技術が展示される予定です。
大阪万博開催で期待されることは?
2025年大阪万博が全国に与える経済波及効果は、約1.9〜2兆円と言われています。
この試算の内訳は、会場建設費に約4,000億円、会場管理や出展に関する費用に約4,000億円、来場者による飲食や宿泊費用などの消費支出に約1兆1,000万円です。
全国への経済効果も見込まれていますが、大阪万博では何より関西経済の復活を目指し企画が進められています。この方針の背景には、関西地域のGDPの日本全国全体における割合が、前回大阪万博のあった1970年から現在にかけて落ち込んでいるということがあります。1970年の関西地域のGDPが全国のGDPに占める割合は19.3%、2015年には15.2%であり、これは中部地域のGDPの比率に劣ります。
加えて、2017年までの10年間で大阪から転出した企業が2,263社の一方で転入したのは1,515社であり、「企業の大阪離れ」が進んでいます。大阪府と大阪市は万博を機にこうした状況を改善に持ち込みたいと考えています。特に「負の遺産」となっている夢洲地区に、多くの投資を呼び込みたいと考えています。
大阪万博開催に向けた課題は?
大阪万博に向け期待されていることの一方で課題もあります。主に3つの課題があるとみられています。
1つ目が財源の確保です。
会場整備にかかると見込まれている約1,250億円以上を国、自治体、経済界で3分の1ずつ負担する予定です。しかしその具体的な負担方法はまだ決まっていません。特に経済界が負担する予定の約400億円については、理解が得られるかどうかわからず支出できるか不透明な状態です。
この財源のために、前回の大阪万博での収益金を運用している「日本万国博覧会記念基金」の約190億円を充てることも検討しています。
加えて、会場設備費とは別にこれまでほとんど活用されてこなかった夢洲への交通インフラの整備が必要です。地下鉄を夢洲へ延伸したり、道路を拡張したりする必要があり、約730億円かかると見込まれています。この財源も、どのように捻出するのかが今後課題となりそうです。
2つ目が開催後の景気維持です。
半年間の期間限定イベントである万博後経済が落ち込んでしまうのではないかと考えられています。実際に、前回の大阪万博の時にも関西経済が落ち込みました。
これを防ぐため、夢洲へのカジノを含む統合リゾートを誘致しようと大阪府・大阪市は考えていますが、今のところ住民の理解は得られていません。
3つ目は、関心の低さです。
中高年の方々には強い印象の残る前回の大阪万博ですが、若年層では万博とは何かといった認識の人も少なくありません。
個々の嗜好・興味・趣味が細分化されている今、「国際博覧会」が幅広い層の興味・関心を引くか、また高い関心を抱いてもらえるか、それによって客足を増やすことができるかが課題となりそうです。
実際、2025年大阪万博とほぼ同規模での開催だった2000年のドイツ・ハノーバー万博は、来場者は約1,800万人、約1,200億円の赤字に終わりました。近年開催された万博も、2010年の上海万博以外は2,000万人前後の来場者数にとどまっており、ターゲット層の関心を集めるのに苦戦している様子がわかります。
日本での過去の万博開催と、その時の効果は?
続いて過去日本で行われた万博を紹介します。
1. 日本万国博覧会
日本で最初の一般博となった日本万国博覧会は1970年3月15日から9月13日までの183日間、大阪府吹田市の千里丘陵で開催されました。この万博は非常に大きな成功を収めた例と言えるでしょう。
海外から 76か国が参加し、入場者数6,421万8,770人を記録しました。
テーマ は「人類の進歩と調和」とし、技術文明の進歩を示すだけではなく、その進歩が生み出した様々なひずみにも目を向け、問題をどのように解決し、「調和」のある「進歩」をどのように実現していくのかを考えていくという意味が込められました。
展示のなかでもアポロ12号が持ち帰った月の石は特に注目され、連日大行列ができました。太陽の塔に象徴される日本万国博覧会、通称大阪万博は大盛況の内に終わりました。
2. 沖縄国際海洋博覧会
沖縄国際海洋博覧会は、沖縄県国頭郡本部町にて、沖縄返還・沖縄県の日本本土復帰記念事業として開催されました。期間は1975年7月20日から1976年1月18日の183日間です。
「海-その望ましい未来」をテーマとした特別博には36か国が参加し、349万人が来場しました。
この万博は失敗例として知られ、当初予定していた入場者数を達成することができず、経済の「自爆剤」とまで言われています。
3. 国際科学技術博覧会
1985年3月17日から9月16日の間、筑波研究学園都市にて行われた万博です。
「人間・住居・環境と科学技術」をテーマに48か国が参加する国際科学技術博覧会です。184日間で2,033万人が来場しました。
4. 国際花と緑の博覧会
1990年4月1日から9月30日、大阪鶴見緑地にて国際花と緑の博覧会が行われました。
「花と緑と生活の係わりを捉え 21世紀へ向けて潤いのある社会の創造を目指す」をテーマとしています。
83か国が参加し、183日間で2,312万人が来場しました。
5. 愛・地球博
愛・地球博は2005年3月25日から9月25日の185日間を会期とする、愛知県瀬戸市南東部と豊田市、長久手町にて行われた万国博覧会(登録博)です。
「自然の叡智」をテーマとし、121か国が参加しました。
185日間で、2,204万9,544人が来場しました。となりのトトロでおなじみのサツキとメイの家や冷凍マンモスなどが注目されました。
万博は訪日外国人を呼び込むチャンス、大阪万博の盛り上がりに期待が高まる
一般博、登録博、特別博に分けられる万国博覧会、通称万博は、各国が科学技術の発展のアピールや国際交流を行う場です。開催に伴う経済効果も非常に大きくなっています。
昔から人類の進歩を表す場であった万博が2025年に大阪で開催されます。大阪では2度目の万国博覧会です。この機会をいかし、インバウンドにもつなげていきましょう。
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