「あのお店はサービスがいい」「あの会社はサービスがなってない」……誰しもこのようなことを考えたことがあるのではないでしょうか。でも、手に取ったり使ったりすることができる製品に比べると、サービスは目に見えるものではないので、その内容を伝えたり、質を評価するのはとても難しいことです。
たとえ「私たちの旅館は最高のサービスでお客様をおもてなしします」とホームページに書いてあっても、それが果たして本当に最高なのかどうか、ユーザーが体験しないことには判断ができません。
そんなサービスの質を”見える化”して多くの人にわかりやすくするための「おもてなし規格認証」制度について紹介します。
【訪日ラボは、インバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を8月5日に開催します】
おもてなし規格認証とは
日本のサービス産業は今やGDPの7割を占めており、日本経済をけん引する重要な分野に成長しています。でも、どんなに素晴らしいサービスを提供しても、その付加価値を価格に反映させるとなると、消費者の理解を得るのは難しい現状があります。
サービス産業をさらに発展させ、地域経済の活性化を図るためには、サービス品質を”見える化”し、それに見合う評価が受けられるような制度が必要ではないか? ……そこで登場したのが一般社団法人 サービスデザイン推進協議会が認定する「おもてなし規格認証」です。
おもてなし規格の定義
「おもてなし規格」では、多くの場合において以下の方程式が成り立つとしています。サービス=接客を通じて提供した「製品」+その製造の「プロセス」
製品はファッションや食べ物のように時代や受け手によって日々変わっていくものであるため、複数の視点から見える化すべきものです。
一方、プロセスは、対応のスピードや手順などによって評価がしやすく、共有のハードルも低いことから、「おもてなし規格」では主にプロセスに重きを置いた評価が行われています。
「おもてなし規格」は顧客だけでなく、企業には従業員や社会(地域)の満足度を高め、発展させ続けるという目的があるとし、4つの定義を設けています。a. 「お客さま」の期待を元に、共に価値を創ること
サービス内容について事前にわかりやすく伝えるとともに、お客さまの期待を取り込み、サービス内容および提供プロセスに反映させることで、顧客の満足度向上を実現する。
b. 「従業員」の意欲と能力を引き出すこと
従業員の意欲や能力を発揮ないしは向上できる環境を整えることで従業員満足度を高め、高いサービス品質の提供を可能にすることで、顧客の満足度向上が実現する。
c. 地域・社会と共生していくこと
地域、社会に参画することで、地域・社会の声を取り込み、地域、社会の事業所への理解が進むことで、地域への貢献も視野に入れたサービス提供が可能となる。その結果、事業活動の持続可能性が向上する。
d. 継続・発展していくこと
サービス品質の向上および企業経営の改善追求に定期的に取り組むことで、変化し続ける顧客ニーズに応え、新たなサービス価値を生みだす枠組みが構築可能となる。また、事業者は、期待されるサービスの成果に向け、そのプロセスを明確化し管理し、継続的改善に取り組むことで、組織の継続的な発展が可能となる。出典:一般社団法人 サービスデザイン推進協議会:おもてなし規格認証とはより引用
4つの認証
おもてなし規格には、自ら適合していることを宣言する紅認証のほか、第三者によって認証される金認証、紺認証、紫認証の4つがあります。30あるチェック項目のうち、既に実施している取り組みがそれぞれの認証に必要な数をクリアしていれば認証を受けられます。
紅認証 |
|
★(金認証) |
お客さまの期待を超えるサービス提供者(第三者認証【有償】) |
★★(紺認証) |
独自の創意工夫が凝らされたサービス提供者(第三者認証【有償】) |
★★★(紫認証) |
お客さまの期待を大きく超える「おもてなし」提供者(第三者認証【有償】) |
新設されたトラベラー・フレンドリー認証
2019年4月には「トラベラー・フレンドリー認証」が新設されました。これは従来の金認証・紺認証に加えて、新たに設定されたインバウンド対応項目に5つ以上該当している場合に認められます。2019年のラグビーワールドカップを皮切りに、2020年の東京オリンピックパラリンピック、そして2021年の大阪万博に向けてインバウンド需要の増加が見込まれています。
大企業だけでなく、中小規模の事業所でも取り組みやすくするために、「できることから、なるべく早く、まず始める」を目指してポイントが絞られています。
取得するメリット
「おもてなし規格認証」を取得すると、おもてなしマークを掲出できるようになります。店頭などに張り出すことで、サービスの質の向上に取り組んでいることをアピールできます。
金認証以上の認証を取得すれば、第三者機関にもその取り組みが行なわれていることが確認されている証拠となり信頼性を増すことができます。なお、おもてなし規格認証のホームページ上では登録事業者が検索できるようになっています。
取得方法
おもてなし規格認証の対象は、一部例外を除いて顧客に対してサービス業務を行う事業所です。登録事業者は小売業や宿泊業、飲食サービス業のほか、体験学習施設や金融機関など、幅広い業種が名を連ねています。紅認証はインターネットで登録が可能です。金認証以上は紅認証の取得が条件となるため、まず紅認証を取得しましょう。
紅認証の取得には、メールアドレスやチェック項目等を入力します。本登録が完了すると事務局から送られるメールのリンクから登録証や認証マークをダウンロードします。
金認証以上は認証機関の審査を受ける必要があります。審査を受ける認証機関には地域や業種などに特徴があるため、申し込みの際に認証機関を申請者自身が選択します。登録には審査料や認証料、更新料が発生します。
まとめ
サービス品質の評価は非常に難しいものです。年代や性別などによってもサービスの評価の仕方は異なります。ましてや外国人観光客の場合は日本との文化的な違いが顕著であり、全ての人を100%満足させるのはまず不可能でしょう。しかし、大多数の人がそれなりに快適で心地良いと感じられるサービスを模索することは可能です。
「おもてなし規格認証」は自己申告制の紅認証で取り組みをスタートさせたうえで、第三者認証にランクアップさせていくことが可能です。審査に合格できなかった場合には改善ポイントの指導が受けられるため、チャレンジする価値はあると思います。
特に今回新設された「トラベラー・フレンドリー認証」のチェック項目は、インバウンド対応の進め方のガイドラインとしても活用できる内容です。認証を取得することで、訪日外国人観光客へのアプローチに自身が持てるようになるのではないでしょうか。
<参考>
一般社団法人 サービスデザイン推進協議会:トラベラー・フレンドリー金認証、トラベラー・フレンドリー紺認証始まりました
【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
→「THE INBOUND DAY 2025」特設ページを見てみる
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
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詳しくはこちらをご覧ください。
→「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】
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