イスラム教徒と接したことがなくても、ラマダンという言葉には耳馴染みがあるでしょう。
1か月近くも飲食を断つと聞くと、異教徒や無神論者からは異様なことのように聞こえるでしょう。
また、近年はイスラム教徒にテロリストのイメージが定着してしまったため、集団で礼拝する姿に警戒心を抱いてしまう人すらいるようです。
ラマダンの時期にはテロが多発するという事実もあり、身構えてしまうのも無理はないのかもしれません。
この記事では、なぜラマダンにテロが起こるのか、またラマダンとはそもそも何なのか、ここではイスラム教から生まれた異文化について解説していきます。
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ラマダンとは?
ラマダンとはイスラム教徒が断食を行う1か月間のことを指します。ラマダンは太陰暦(ヒジュラ暦またはイスラム暦とも呼ぶ)と関係するため、毎年異なった期間に行われます。2019年のラマダン時期は5月6日から6月7日です。純太陰暦は1か月を29日と30日を交互に繰り返すため、日程は年を追うごとに約11日間早まるとされています。
ラマダンは、国によって期間が多少変わります。上に挙げた日程はパキスタンをはじめとするイスラム国家での期間ですが、東南アジアのイスラム国家インドネシアの場合は5月17日頃からです。
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断食はイスラム教徒(ムスリム)の義務の1つ
イスラム教徒には5つの行があります。それが信仰の告白(シャハーダ)・礼拝(サラート)・喜捨(サガート)・断食(サウム)・巡礼(ハッジ)です。これはコーランにも定められており、ラマダンの目的は節食といった仏教的な考えとは異なり、あくまで宗教的な試練としてイスラム教徒に課せられます。位置付けでは「義務」に当たるものの、対象となるのは10歳以上に限られ妊婦や病人はこれに当てはまりません。期間中は一切の飲食を断つと誤解されがちですが、日の出から日没までが断食の期間となります。(詳しくは後述)
ちなみに信仰の告白とは「アッラーを唯一神とし、ムハンマドがその使徒である」ことを告白することです。
礼拝は1日5回、神と向き合い祈りを捧げることを指し、礼拝所であるモスクには毎週金曜日にイスラム教徒が集います。
喜捨とは恵まれない人や旅人に自分の財を分け与えることであり、欲に打ち勝つことを意味します。巡礼がムハンマドのお墓を訪れること、メッカのカーバ神殿を訪れることをイスラム教徒は一生に1度は行う義務とされています。
ラマダン後の最初の食事「イフタール」
先述した通り、ラマダンの断食期間は日の出から日没までで、その後は食事をとることができます。ラマダンを終えた最初の食事のことを「イフタール」と呼び、 これはしばしば「イフタール料理」と呼ばれています。
イフタール料理には決まった型はなく、国によって様々なものが食されますが、有名なのはドライフルーツです。デーツ(ナツメヤシの実)はムハンマドがラマダン明けに食したことで知られ、未だこの伝統に則っているイスラム教徒は少なくありません。
今さら聞けないインバウンド基礎知識『ハラルフード』とは?対策や事例から学ぶムスリム対応
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日本政府も駐日大使らを招いたイフタールを開催
現在は引退してしまいましたが、2013年7月31日には、イスラム教徒初の関取である大砂嵐を首相官邸に招き、世界34か国のイスラム圏の駐日大使とともに「イフタール」が開催され、話題となりました。2005年から続いている政府主導のイフタールですが、今年の6月3日にはイランやエジプトの駐日大使を中心に世界42か国の人々が集まり、日本でもイフタールが身近な言葉となりつつあります。
世界人口の「4人に1人がイスラム教徒」となった今、訪日ムスリム旅行者を無視するわけにはいかない…そのための具体的なインバウンド対策とは?
近年、日本を訪れるムスリムの訪日外国人が増えていますが、観光庁をはじめとする各省庁では訪日ムスリム旅行者向けの具体的な施策を取りまとめ、「訪日ムスリム旅行者対応のためのアクション・プラン」を策定しています。 これは今後日本におけるムスリム対応を推進するための具体策を取りまとめたもので、今後政府はこのプランに基づいた取り組みを進めていくとしています。 [blogcard url=”https://honichi.com/news/2017/12/20/musliminbound/...
「何故、今ムスリムなのか」を知るための7つのキーポイント
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ラマダン期間はテロに注意?
国際的なテロ組織イスラム国はラマダン期間中にテロ行為に及ぶ可能性が高いとされています。ラマダンの間は「天国に行ける」という機運が高まり、そのために努力をする=テロをするという誤った解釈を一部でされていることが理由です。
あくまで一部の人々の話ではありますが、ラマダン期間中注意すべきことをご紹介します。
外務省から注意喚起も
2019年に絞ってみても、ラマダン明けのテロ行為は15件も起こっています。東南アジアから北アフリカまで広範囲にわたって自爆テロや、警察官・兵士が襲撃に遭い、7月7日にはアフガニスタンで200人以上の死傷者が出ました。爆弾を積載したトラックの大規模爆破、武装集団による襲撃など身近なものを使って不特定多数を狙う事案が増えてきています。
こうした事態に対して外務省は以下の注意喚起をHP上で行いました。
●近年、ラマダン月及びその前後に世界中で多くのテロ事件が発生しています。
●最新情報の入手に努め、テロの標的となりやすい場所を訪れる際には、安全確保に十分注意を払ってください。情報収集には「たびレジ」を活用してください。
[出典:外務省HP]
テロが増える理由は「ザカート」?
イスラム教徒5行の1つである喜捨(サガート)は、本来弱者に共感することを目的としています。ラマダンの時期はイスラム教徒としての努力を重ねることで、より天国が近いものになるという考えがあると前述しました。つまり、ラマダン時期はサガートによる寄付が過激派やテロ組織にも集まりやすくなり、結果彼らのテロ行為を支援する動きにつながってしまうのです。
サガートの寄付金は全財産の2.5%が目安とされているため、国内外から莫大な寄付金が集まってきます。テロ行為だけではなく、テロ組織そのものがサガートによって支えられているという事実もあるようです。
一方消費は増大
マイナスなイメージも伴う「ラマダン」ですが、消費を促進する側面もあります。例えば世界最大のイスラム国であるインドネシアでは、ラマダン前にはイフタールに向けて大量の食料品を買い込む傾向があり、ラマダンが明けると商業施設ではセールが開催されています。このように、ラマダン前後で、人々の消費活動が活発になっています。
また、国によってはラマダンの時期に合わせてボーナスを支給する企業があります。ラマダン後の祝祭に親族が集ってお祝いを行うということもしばしば見られ、こうしたイベントの際には子供達は服を新調するなどの習慣があり、やはり消費拡大の一翼を担っています。
ラマダン中のイスラム教徒(ムスリム)に対し配慮すべき事項とは?
日本では、ラマダン=断食とみなされがちですが、実際にイスラム教徒は喫煙・性行為・投薬なども控えなければいけません。日本での生活の場合に、職場や学校において、ストレスが溜まっている、生産性が下がるといったデメリットも考えられます。職場や学校にがいる場合には、こうした習慣を理解し、支えるような態度が必要でしょう。
特に体力面でのサポートが必要
断食の間は体力が低下し、仕事の効率性が悪くなります。使用員や従業員の中にイスラム教徒がいるのであれば、断食直後に休憩時間を与え、軽食や喉を潤すことができるようにしましょう。ラマダンだからといって仕事を休むという観念はイスラム教徒にありません。あくまで仕事は通常通り行ってもらいつつも配慮することが大切になります。通常とは生活ペースが大きく異なるため、多少のミスがあっても寛容に接することがイスラム教徒への理解を示す態度だと言えるでしょう。
また、病人、妊婦、生理中、そして旅行中はラマダンを行う義務はないとされています。
非イスラム教徒のマナーは?
イスラム教徒ではない我々も、断食中の彼らの前では基本的に飲食をしない、喫煙をしないのが礼儀とされています。目の前でそのような行為をしたからといって、彼らが危害を加えることはありませんが、なるべく配慮した行動を取ることが望ましいです。テロなど過激な行動をするのは一部のイスラム教徒であり、一般的なイスラム教徒がこれらの行動を取るわけではないので、偏見のまなざしを向けないことが大切です。
また、ラマダン中のイスラム教徒の面前で飲食や喫煙を行う場合でも一言断ってからであれば、相手の心象を悪くしません。
多文化の世界で生きていくことは、相手を理解することで自分への理解も得られることができます。
ラマダンは「苦しい」どころか「楽しみ」!?
一切の飲食を断つため、外から見るとラマダンは苦行のような印象を受けてしまいます。しかし、実はイスラム教徒の中ではラマダンは楽しみの1つとして捉えられ、待ち焦がれる人も珍しくありません。親族一同が集まり、イフタールといった当別な食事や子供にとってはプレゼントをもらえることも多々あるため、イメージとしてはクリスマスに近いと考えられます。
ラマダンの基礎を知り、イスラム教徒(ムスリム)への理解を深める
コーランの定める五行の一つとして、ラマダンはイスラム教徒にとって生活の一部です。テロと結びつけられる要素があることは否定できませんが、身近にいるイスラム教徒に対しては最大限に配慮していくことが大切です。イスラム国であるインドネシアからの訪日旅行者も年々増えています。企業や自治体のインバウンド担当者は、代表的習慣である「ハラール」に加え、今回紹介したような習慣からもイスラム教への理解を深めていくことが必要となってくるでしょう。
【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
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→宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
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<こんな方におすすめ>
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- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
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- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
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