8月上旬、通信会社大手KDDIの投資ファンド、KDDI Open Innovation Fund IIIが「シェアリング電動キックボード」大手のNeutron Holdings(世界ブランドの「Lime」の運営会社)へ出資したと発表しました。
アメリカ・サンフランシスコに本社を構えるNeutron Holdingsは米国をはじめとする25カ国でサービスを展開、提供台数は7,000万台にも及びます。世界で流行する新サービスに期待する日本企業は多く、総合商社の丸紅もシェアライド企業の一つモビーライドと協業プログラムを開始したと発表しました。
世界では日常的に利用されているサービスであり、訪日観光客の中にも使い慣れた人も少なくないはずです。
今回はインバウンド業界にも関係の深い、シェアリング電動キックボードについて考察していきたいと思います。
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競合ひしめく”シェアリング”電動キックボード、利用方法は?
2017年後半より、シェアリング電動キックボードはeスクーターとも呼ばれ、世界で爆発的な広がりをみせています。
前述のLimeをはじめ各国で多くのベンチャーが誕生し、アメリカのほか、中国、インド、ドイツ、フランス、スウェーデン、スペイン、イスラエル、オーストラリア、と競合企業がひしめき合っている状況です。
新しいシェアリングサービスの一つとして生まれた電動キックボードは、日本でもLuup(ループ)やmobby ride(モビー)、Wind(ウィンド)など次々とベンチャーが生まれており、注目の業界といえるでしょう。
利用方法も工夫されており、ユーザーの煩わしさをうまく解決しています。
実際にどのように利用できるのか、休暇で北欧を訪れた筆者が体験した「Tier」を例にご紹介していきたいと思います。
1. アプリをダウンロード、クレカを紐付けてキックボードQRをスキャン
まずは電動キックボードを見付けるところから、といっても街中の至る場所で見付けることが出来るので何の心配も要りません。この辺は日本でもサービスの広がるシェアリングバイクとの相違点の一つです。
シェアバイクの多くは「ポート」と呼ばれる駐輪場を見付け、そこでしか自転車を借りることが出来ませんが、北欧はじめ、諸外国での電動キックボードはどこでも乗り捨て自由になっています。とにかく利便性に優れたサービスです。
”乗り捨てに厳しい”日本では、どの様な形で導入されるか、利便性を損なうことなくサービスを輸入することができるのかには注目といえるでしょう。
日本市場に参入する「Wind」は2019年6月時点で駐輪ポートを3か所用意したと発表しており、やはりシェアバイクの様にポート設置が必須になるのかもしれません。
2. 説明スライドを見て、いざ乗車開始
電動キックボードを見付けたら、アプリをダウンロード。アプリ上で支払い方法のクレジットカードを紐付け、シンプルで可愛いイラストの利用方法スライドを確認します。
数枚しかないスライドで情報量は限られていましたが、利用開始方法やブレーキのかけ方、制限速度や駐車場所など十分の情報を得ることができます。
その後はアプリにある数少ない機能のQRリーダーを立ち上げ、レンタルしたいボードのQRをスキャンします。アプリのUIはシンプルで分かりやすいものになっています。
乗車開始ボタンを押すとロックが外れます。このシェアリング電動キックボードは時間貸しであり、乗車開始ボタンを押してから利用終了ボタンを押すまで時間が計測されています。乗車終了後の手続きを忘れてしまうと料金がその分加算されてしまうので注意が必要です。
料金は?約20分で590円、お手頃?
筆者はダウンタウンから宿泊していたホテルまで実際にこの「シェアリング電動キックボード」を利用してみました。
ピックアップした場所も、目的地のホテルも駅から少し距離があったので「これは便利!」と。請求金額は19分利用で52.75スウェーデンクローナ(以下SEK、約590円)となりました。
19分の走行は乗ってみるとわかりますがあっという間の出来事です。自分で運転しながらの移動とあり、だいたい300円くらいを予想していました。走行中は値段を気にしていませんでしたが、請求(インボイス)を見て「少し高いな」というのが正直な感想です。
内訳は、34.2SEKがレンタル代、ロック解除代金が8SEKで、25%の付加価値税です。北欧と比べ消費税が安い日本では、もう少し安く収まる可能性もあります。
ちなみにこの距離を地下鉄で移動するのに掛かる金額は32SEKで、シェアリング電動キックボード利用との価格差は2.2SEKで24円ほどです。地下鉄で車両への乗り降りをはさまず、出発地点から目的地へ一直線に移動できることを考えると、やはり妥当な金額とも思えます。
電動キックボードは安全か?訪日客の”足”としての可能性
世界的ブームとは裏腹に、その安全面が疑問視される事件が多発しています。
UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)が公表した研究によると、2017年下半期以降、電動キックボードによる傷害事件は米国だけでも1545件にも上り、治療を要する負傷者は249名、その1/3は救急車で病院に搬送されているそうです。
もちろん利用者の交通ルールも問われますが、電動キックボードで危ない思いをしている利用客は一定数存在していると考えられるでしょう。
一方で、欧州のいくつかの都市をまわり筆者が目にしたのは、電動キックボード利用客に頻繁に出くわすという現状です。ダウンタウンはもちろん、少し離れた住宅街でもスイスイと快適そうに利用している姿が見られました。
やはり、利便の良さで利用は着実に広がっているといえそうです。日本でも、駅から離れた観光地までのアクセスに重宝されると考えられます。
インバウンド担当者としてどの様に付き合っていくべきか?
ここでインバウンド担当者として「シェアリング電動キックボード」とどのように付き合っていくべきでしょうか。
下の写真は、欧州のごく日常的な光景です。街中は電動キックボードで溢れかえっています。
日本に来たばかりの訪日客は、仮に国内で「駐輪ポートで乗降して」とルールがあったとしても気付かず乗り捨てする利用客も多いと予想されます。もし店舗をもつインバウンド担当であったなら、電動キックボードの駐輪についてルールを決める必要があるかもしれません。
シェアリング電動キックボードが乗り捨てられているさまは、正直整備された景観とは言い難いものです。こうした環境を住民側が受け入れられるような折り合いのつく方法も探す必要が出てくるかもしれません。
あるいは、店舗の近くにあった電動キックボードの使用方法を聞かれるといった状況も考えられます。そんな時のためにも、利用方法を理解しておいたり、図案を用いて説明できるように準備しておくのも良いかもしれません。
新たなビジネスチャンス?Free Mile kick scooterが第一歩を踏み出す
渋谷にオフィスを構えるクリエイティブジャパン株式会社は法人に向けた電動キックボード「Free Mile kick scooter(フリーマイル キックスクーター)」は、10月発売予定です。
日本の道路交通法上、本電動キックボードを公道で運転するには車両の原付自転車登録が必要です。利用者は原付免許も必要になります。これまでの電動キックボードが公道を走れないとされている中、他者に先駆けて販売を開始する形になります。
本キックボードを原付ナンバー登録すれば公道を走ることができ、保険の加入も可能です。観光地等でのレンタルが想定されています。
この他にも複数の電動キックボードの販売が予定されていたり、実証実験が進められています。インバウンド業界にも大きく影響する移動の「ラストワンマイル」を解決する電動キックボードの展開には、今後も注視すべきでしょう。
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