アジア初開催となったラグビーワールドカップは、9月20日の開催より約1ヶ月半にわたる熱戦を繰り広げ、南アフリカの3大会ぶり3回目の優勝で11/2(土)に幕を閉じました。日本代表はベスト8という史上最高の結果を残し、国内でラグビーの「にわかファン」を多く生み出しました。
Twitter:ラグビーワールドカップ公式アカウントによる投稿(https://twitter.com/rugbyworldcupjp/status/1185897410108760065)
訪日インバウンドの観点でもラグビーW杯は特筆すべきイベントです。他の国際的な大型スポーツイベントと比べ、1ヶ月半と開催期間が長いこと、開催地が北は北海道、南は熊本県の計12ヶ所に広がっていることから、地方都市を含め大きな経済効果を生み出しました。大会組織委員会は、2018年に経済効果を4,300億円、訪日外国人客の消費支出による直接効果は1,057億円と試算しましたが、予想以上の盛り上がりを見せた今大会、実際の経済効果はどうなったのかこれから徐々にデータも出てくることが予想されます。
Twitter:ラグビーワールドカップ公式アカウントによる投稿(https://twitter.com/rugbyworldcupjp/status/1185439693078294528)
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「おもてなし人材」の育成が、イベント成功のカギを握る!
公益財団法人ラグビーワールドカップ2019組織委員会の調査レポートによると、大会を目的に訪日した外国人旅行者は最大40万人と予測されていました。スポーツという筋書きのないドラマを“その場にいる全員で感動を共有する”という、まさに一生に一度の体験のために、大勢の国の人たちが日本に集まっています。
ラグビーワールドカップに続き、2020年の東京オリンピックでも大勢の外国人観光客が日本を訪れます。こうした訪日外国人を受け入れる際には「おもてなし人材」が鍵を握ると言われています。その背景と傾向について詳しく解説してみましょう。
ラグビーワールドカップの外国人観戦客、3つの特徴
今回は、ラグビーワールドカップの観戦を目的に日本を訪れた外国人観光客に見られる3つの特徴を整理しました。
1. 富裕層
ラグビーはイギリスの名門学校が発祥ということもあり、イギリスをはじめとした欧州、オセアニア地区では特に人気があります。また、比較的に所得が高いファンが多いのも見逃せません。
「スポーツホスピタリティ」という観戦チケットと専用スペース・飲食サービスがセットになった観戦スタイルは、欧米では浸透しており、ラグビーファンに多い富裕層から人気を博しています。横浜会場の個室(各20人分、全7試合、4,385万円)は、全室完売しました。
2. 紳士的なカルチャー
今大会は、ラグビーの試合後に敵味方関係なく、お互いをたたえ合う「ノーサイド」が注目を集めました。これは観戦スタイルにも染みついており、自国が負けたとしても勝ったチームを褒めたたえ、一緒に手をとって喜んでいる様子がテレビやインターネットを通じて世界中に発信されました。
Twitter:勝ち負け関係なくラグビーサポーターが拍手をする様子を映した画像(https://twitter.com/tabi_gari/status/1185531359244062720)
前述のスポーツホスピタリティ会場でも、試合中に敵味方関係なく盛り上がっている様子を見ることができました。
3. 無類のビール好き
イギリスをはじめとしたラグビーが盛んな国では、ビール好きでも有名で、ビールを飲みながら観戦するスタイルがラグビーでは主流のようです。大会スポンサーである「ハイネケン」の9月の出荷量は前年の3.4倍になったとの情報もあります。
決勝戦が開催される横浜国際総合競技場がある新横浜駅の周辺でも、試合当日は日中から夜遅くまで、ビールを片手に持った外国人を多く見かけることができました。
異文化への理解と尊重が伝わる対応力が大切
スポーツにまつわる慣習や観戦スタイルは、競技の「発祥地」や「歴史」と密接に結びついており、それらの文化を尊重した“対応力”が開催国には求められます。大型スポーツイベントの影響を受け、宿泊費が高騰するシーズンのインバウンド旅行者は、富裕層・VIPと呼ばれる方も多く含まれます。よって、異文化+VIPの海外ゲストを迎え入れる日本において、おもてなし人材の育成は、重要なテーマと言えます。
語学力だけではだめ!「プロトコール」の大切さ
インバウンドに対応する人材に必要なスキルの代表格は、「語学力」です。道案内や交通案内など、母国語で直接コミュニケーションが取れると、慣れない異国の地でも安心できるのは、海外に足を運んだことのある方であれば容易に想像できるのではないでしょうか。
ただし、VIPのお客様は、その国の文化を踏まえたプラスαの上質なサービスを求める傾向もあります。富裕層への対応では、こうした需要への配慮や気遣いが重要です。
「プロトコール」という言葉をご存知でしょうか?国際間のコミュニケーションにおける“共通認識”のような意味合いを持ち、異なるバックグラウンドをもった人同士が、お互いを認めあい、コミュニケーションを円滑にするための基本的なマナーを指します。
「異文化尊重」をはじめ「返礼相互主義」「右上位」「レディファースト」などは、プロトコールの一例です。
語学力だけでなく、このような基本ルールを身に着けたコミュニケーションを取れる「おもてなし人材」が富裕層の外国人観光客の満足度向上に一役買うでしょう。
まとめ
東京オリンピックの開催後は2025年に日本国際博覧会(大阪万博)が控えています。令和を迎えた日本では、大型のMICE(集客交流が見込まれるビジネスイベントの総称)イベントが多く実施される予定です。
ラグビーワールドカップなどの国際的な超大型スポーツイベントを継続的に誘致するためには、産学官民が一体となり、海外の参加者に支持される「おもてなし人材」を育成し、明確なエビデンスを通して日本のプレゼンスを高めていくことが重要と言えます。
本記事を執筆している日本コンベンションサービス株式会社(JCS)は、日本が国際化に大きく進んだ1964年の東京オリンピックの直後、業界でもいち早く通訳者の派遣サービスを開始しました。1981年に神戸で開催された博覧会「ポートピア’81」では、総勢約200名に及ぶコンパニオンの教育研修を体系的に行い、MICEに関わる総合的な事業に50年以上取り組んでいます。
MICEの現場において、当社だから気づけたこと、スポーツイベントに関わる街・企業の動き、MICEの最新トレンド等の有益な情報を、この連載で引き続き紹介して参ります。今後ともよろしくお願いいたします。
<参照>
https://www.jtb.co.jp/sports/rwc2019/hospitality.asp
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