ドイツのメルケル首相が在任期間中に中国を訪問した回数は15年間で12回であり、ドイツと中国の良好な関係を示しています。
しかしドイツ人の中には、中国の世界的な台頭に危機感を募らせている人もいるという情報も散見されます。
この記事では、ドイツと中国の経済・貿易・産業などの観点から多角的にドイツと中国の関わりや課題について解説します。
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ドイツ人が危機感を抱く対中関係の背景
経済的にも政治的にも、大きな影響力を持つドイツと中国ですが、これらの外交関係は現在どのような状況にあるのでしょうか。
日本国内のメディアではあまり大きく報じられていませんが、EU経済を牽引する立場にあるドイツと、日本にとって近隣の経済大国・中国の関係性について、詳しく触れていきます。
中国の経済成長によりGDPランキンが変動
まず初めに、ドイツと中国の両国の経済状況についてです。世界のGDPランキングでは、1位アメリカ、2位中国、3位日本、4位ドイツの順となっています。
2006年までは、首位のアメリカに続き、2位に日本、そして3位ドイツ、4位が中国という順位でした。2007年以降、中国がドイツを抜き3位になり、その後現在のような順位となりました。
ドイツは、世界的に見てもGDPの大きい国ですが、もちろんEU内でのGDPは最大で、EU内でのドイツの存在感や影響力は言うまでもありません。
ドイツは中国との経済関係強化を重要視
ドイツは対外政策の一環として、中国との経済関係の強化を図っています。
メルケル首相の2005年の就任以降、日本を訪れたのはわずか5回であるのに対し、中国へは2019年9月時点で12回も中国を訪問しています。
アメリカが保守主義への姿勢を強めている中、自由貿易を促したいドイツとしては、中国との経済的なパートナーシップを求めていると考えられます。
メルケル首相は訪日回数の少なさについて「日本との関係で、首相同士で話すような内容がないため」という趣旨の発言をしましたが、これらの姿勢から、ドイツが余力のある中国をアジア経済の中心国と見ていることが否めません。
ドイツの対中外交の成果
ノーベル平和賞を獄中で受賞し死亡した民主活動家の故劉暁波氏の妻、劉霞さんは約8年にわたり中国当局による軟禁状態にありました。彼女の発言の影響力を恐れた中国当局は、長きにわたり自宅周辺に警察などを派遣し、海外のジャーナリストや外交官との接触がないようにする狙いがあったといいます。
こうした中、ドイツの粘り強い対中外交の成果で2018年7月10日、ドイツへの出国が叶っています。活動家本人の死により影響力が低下したと考えられたことや、対米政策の一環として経済的連携を強めたい中国当局の思惑があるとも言われています。
ドイツと中国の密接な貿易関係
ドイツと中国の関係性において、重要なトピックの一つは、経済的連携、貿易関係であると言えます。
保守主義傾向を強めているアメリカに対し、貿易の活性化をはかりたい経済大国の両国の関係性は、世界経済にとっても大きな影響力があります。
2000年から急激に成長を遂げた中国
2000年以降、爆発的な人口の増加を背景に、中国経済は大きく伸長してきました。
ドイツ連邦統計局の調査によると、特にEUから見て中国との貿易取引総額の伸長は著しく、2000年に5.5%だった全体に対する割合は、15.4%にまで拡大しました。
一方で、同じアジア圏に属する日本に対するEUの貿易総額の割合は、2000年の7.5%から2018年の3.4%にまで縮小しています。
日本と同様に、EUからのアメリカへの輸出入総額も減少しており、EUにとって、大きな市場と経済基盤をもつ中国との連携強化は、自由貿易の活発化を目指す上で重要であることがうかがえます。
中国の世界最大の輸出国はドイツ
一方、中国にとってもドイツは重要な貿易相手となっています。2016年から2018年にかけて、中国からの輸出総額ランキングではドイツが3年連続一位です。
2018年のドイツ-中国間の貿易総額は199.3億ユーロであり、ドイツにとっての中国につぐ貿易先は189.4億ユーロのオランダ、次いでアメリカの178億ユーロでした。
1975年から2014年までは、同じくEU加盟国のフランスが中国の主要貿易国でしたが、2016年に2位に転落して以降、2017年には4位まで後退することとなりました。
先述した通り、ドイツにとっては、中国は非常な重要な貿易相手となっています。
中国の経済がドイツに大きく影響
ドイツにおける貿易黒字の減少が要因となり、2018年の国内総生産(GDP)速報値は、前年比1.5%増と、5年ぶりに低い伸び率を記録しました。
ドイツの経済成長の低迷の陰には、対中貿易があり、主要貿易国であるアメリカとの関税問題における不確実性と、ドイツの貿易総額で大きな割合を占めている中国の経済成長の減速が原因であると考えられています。
このことからもドイツ経済にとって中国の経済成長や貿易政策は、自国の経済状況にも大きな影響を及ぼす要因となっています。
ドイツ人から見た中国、中国から見たドイツ
ここまでは両国における政治的、経済的な関係性についてご説明してきました。
この項では、ドイツが中国に対してどのようなイメージを抱いているのか、反対に、中国ではドイツにどのような印象を持っているのかについてご紹介していきます。
中国から見たドイツ
ドイツ人のステレオタイプとしてよく言われるのが「厳格」というイメージです。中国でも「厳格といえばドイツ人」と言われるほど、ドイツの正確さ精密さにかんする信頼感は非常に厚いようです。
そのイメージの通り、第二次世界大戦以前では、当時人口1億人にも満たなかったドイツが、ノーベル賞の受賞者の約半数を占めていました。
戦後、それまで国営化されていた軍事工場などの民営化が進み、それらの工場では優れた生産技術が開発され、品質の良いものが量産されたために、ドイツ製品といえば「高品質」というイメージが定着しました。
ドイツから見た中国
一方、ドイツから見ると中国は、これまで触れてきた通り、「重要な経済パートナーのうちのひとつ」というイメージが強いようです。
中国に関するニュースについては、ポジティブなものや信頼感を与えるようなものが多く取り上げられてきました。
実際、この背景には、政治的経済的に重要な存在である中国に関して、印象を悪くするようなものを放映できなかったという背景もあるようです。
また、ドイツと中国の間には歴史的なわだかまりがないこともあり、現在の中国の持つ力強い成長のイメージと、古代中国の伝統的な神秘性などと言った面がよく注目されいるのも一因と言えます。
盗作疑惑の多い中国製品がニセモノ博物館に
一方で、中国の「盗作疑惑」に関しては、ドイツでもその印象は少なからず浸透しているようです。
ドイツにある「ニセモノ博物館」では、中国製のニセモノが多く展示されているほか、ドイツの工業団体の調査によれば、ドイツ企業の製品が模倣されたものについて、その約8割が中国による模倣であったことが報告されています。
中国国内の技術力向上に伴い、「ニセモノ」の精度もあがってきており、知的財産権保護の観点から問題視されています。模倣品の作成に対して、政府に対する提言書も作成されました。
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今後の中独関係に注目
中国の大手通信会社のファーウェイを安全上の理由から排除する方針をアメリカが出したというニュースは、今年のホットトピックの一つでしょう。
その後アメリカは、ドイツに対してもファーウェイの排除を要請していましたが、2019年10月、ドイツは安全性に関する調査を行う必要性については言及したものの、特定の企業の排除という措置はとらない方向性を打ち出しました。
これは、最大の貿易パートナーである中国との関係悪化を阻止するためと考えられます。このように、中国とドイツの関係性は、自由貿易を主軸とした貿易活性化の政策と、対アメリカという構図の中で今後も展開していくことが予想されます。
<参照>
https://www.destatis.de/Europa/EN/Topic/Foreign-trade/EU_tradingPartner.html
http://www.xinhuanet.com/english/2019-02/18/c_137831889.htm
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/01/post-11562.php
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