岩手県のインバウンド観光客は、2017年と2018年を比較すると、32.2%増加しています。
インバウンド観光客が増加傾向にある岩手県では、明日から取り組める簡単なインバウンド対策からセミナーなどさまざまな取り組みを行っています。
この記事では、岩手県のインバウンド事情とインバウンド対策について解説します。
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岩手県のインバウンド事情は?
岩手県におけるインバウンド対策について知る上では、近年の岩手県のインバウンド事情を理解しておくと良いでしょう。
どのような対策によって、どのように事情が変化したのかという点に注目することでインバウンド対策を効果的に進めるためのポイントを絞り出せます。
以下では、岩手県のインバウンド事情について解説します。
過去最高の人数に
「いわての観光統計」教育旅行客・外国人観光客の入込動向(平成30年1月から12月)に掲載されている外国人観光客数についてのデータを見ると、2018年(平成30年)には延べ34万4,140人の外国人が岩手県を訪れています。前年の外国人観光客数と比較すると、延べ人数では8万3,748人増加、割合では32.2%増加しています。
また、さらに以前のデータと比較すると平成23年以降は増加傾向を継続しており、岩手県のインバウンド事情は右肩上がりであると言えます。
この結果は、岩手県におけるインバウンドを意識した取り組みが成功していることを示していると言えるでしょう。
国別では圧倒的に台湾が多い
同じく「いわての観光統計」教育旅行客・外国人観光客の入込動向(平成30年1月から12月)によれば、岩手県を訪れる外国人客の国別の内訳で最も多いのは台湾からの訪日客で60.5%、中国からの訪日客が8.5%、韓国からの訪日客が4.6%となっています。
以降は、香港が4.5%、タイが2.9%と続きます。前年比で最も大きな伸びを記録したのは中国の82.4%増で、2018年に中国人が大きく岩手に対する関心を高めたことがわかります。
スノースポーツの楽しさとステイタス感に惹かれる中国人が日本のスキー場に足を運んでいることは、昨年より報道されてきたところです。岩手は、北海道ほどの知名度がまだありませんが、北海道に負けない雪質や景色、美食があります。中国人はこうしたスポットを訪れることで、人より「先取り」していいところを見つけたと満足する傾向があります。
現在の岩手は良い意味で知名度がそれほど高くなく、それでいてインバウンド受け入れ対策も進んでいるため足の向きやすい目的地になっていると考えられるでしょう。
中国以外の国や地域でも、例えば韓国人は51.3%増加など高い割合の増加傾向が見られます。ひとくくりにインバウンド対策と言っても、国によってニーズは異なるため、全ての国からの訪日客を均等に増加させるのは簡単ではないでしょう。
市町村別の外国人観光客数
続いては、市町村別の外国人観光客数について解説します。
最も多いのは豊かな自然が魅力の八幡平市です。2018年には県庁所在地である盛岡市の53,432人(15.5%)をおさえて、岩手を訪れる訪日外国人のうち23%にあたる79,259人の外国人が同市を訪れています。
八幡平市にはスキー場があり、また紅葉や温泉など、中国人の求める日本体験が楽しめる地であることが理由となっていると考えられます。なお、盛岡市の後には、平泉町が14.8%、花巻市が14.5%と続いています。
岩手県のインバウンド対策
先述の通り、順調にインバウンド市場拡大を進めている岩手県ですが、どのようなインバウンド対策が行われているのでしょうか。
都道府県レベルで取り組むインバウンド対策の中には、独自の魅力や資源を活かしたものもありますが、他の都道府県においても同様に取り組めるものも多いため、参考にできるでしょう。
以下では、岩手県のインバウンド対策について解説します。
岩手県のインバウンド需要
岩手県は他の東北地方各県と同様、インバウンド需要を示す訪日外国人訪問率やインバウンド宿泊人泊数などの数値において伸び悩んでいる項目が多く、インバウンド需要においては課題が多いと言えます。
「いわての10手」
岩手県では、明日からできるインバウンド対策をコンセプトに「いわての10手」を示しています。
「いわての10手」は、誰しもが明日からできるインバウンド対策という点を重視して考案されており、岩手県を訪れた外国人客に満足してもらうための指針です。
- 文字よりも絵で示そう
- 「ようこそ」を表現しよう
- 自分から話しかけよう
- 写真はタテ・ヨコ両方で
- 一緒に写真に収まろう
- 基本は「そこまで一緒に」
- 一生懸命さを伝えよう
- 何かに書いてあげよう
- 荷物を手伝ってあげよう
- 世界にお礼を言おう
「いわての10手」は、ブランド戦略についてのエキスパートである村尾隆介氏のアイデアです。
岩手県では同氏が講師を務めた「外国人観光客おもてなし講座」のDVDの無料貸し出しも進めており、訪日外国人に選ばれる地域づくりに取り組んでいます。
外国人観光客に対する費用無料のセミナーを開催
岩手県ではインバウンド対策の一環として、セミナーを開講しており、外国人観光客に対してどのような接客をすべきかについてセミナーを受講できます。
受講費用もかからないため、インバウンド対策に対して費用を捻出できない団体や法人も受講できるというメリットがあり、講義はネイティブ講師によって行われています。
セミナーでは、外国人観光客向けの接客につあてアドバイスを受けられる他、ポスターや案内を作成する際のポイントなどについても指導を受けられます。
ネイティブからアドバイスや意見を受けられる経験は非常に貴重であると言えるでしょう。
外国人観光モニターツアーの実施
岩手県では、外国人観光モニターツアーを実施しています。ツアー参加者は、着物を着用して、地元で有名な千厩(せんまや)ひなまつりの会場、寺院の散策を楽しめます。
さらに山村生活体験では、黒糖とくるみを団子に詰めた郷土料理「ほどもち」を食すなど、地元の人々の生活に密着した体験ができます。
着物を着用しての散策ツアーには、中国、台湾、オーストラリアから9名が、山村生活体験ツアーにも同様に9名の外国人が参加しており、いずれのツアーも高い評価を得ています。
外国人も楽しめるさまざまなイベントを用意
岩手県では、その他にも外国人向けのさまざまなイベントを用意しています。
中には人気アニメのポケモンを活用したプロモーションなどもあり、インバウンド対策として活用できるのは県が有する資源や魅力だけではないことを証明しています。
以下では、岩手県が催している外国人向けのイベントについて解説します。
人気ポケモンで岩手をPR
ポケモンことポケットモンスターは、世界各国にファンを有する日本発のアニメです。岩手県では、ポケモンと連携することによる外国人向けイベントの開催を以前より模索しており、1,000種類以上のポケモンの中からイシツブテを「いわて応援ポケモン」に指定しました。
イシツブテが選ばれた理由は、岩に手がついたようなフォルムが岩手県のイメージに合致しているためです。
世界的なアニメとの連携による集客で、今後はポケモンが登場するスマートフォンアプリの「ポケモンGO」と連携することも検討しているといいます。
「いわて幸せ大作戦」
岩手県では、観光に訪れた外国人客に対してより便利な交通手段を提供するために、県内の鉄道やバスが定額で乗り放題になるパスを販売しています。
パスは英語と中国語に対応しており、使用可能路線や観光地で利用可能なクーポン、医療機関情報などを掲載しているため、外国人観光客でも問題なく使用できます。
3日間で8,000円と安くはない金額ですが、短期間に多くの観光地を巡る外国人観光客にとっては、3日間で8,000円以上の交通費を使う可能性も十分にあるため、上手く使えばお得に旅行を楽しめるでしょう。
また、パスはネット上で購入することもでき、ネット上で事前に購入したパスは盛岡駅や花巻空港、仙台空港などで受け取り可能です。外国人が利用することの多いターミナル駅や空港でパスの受け取りができるシステムは、パスの利便性を高める要素の1つです。
お祭りに参加する外国人も増えている?
岩手県における積極的なインバウンド対策の結果として、近年ではお祭りに参加する訪日外国人客が増加しています。
岩手県では、インターネットやSNSにおける口コミや拡散をプロモーションに役立てており、岩手県でお祭りや伝統文化に親しんだ外国人の投稿によって新たに岩手県のお祭り、伝統文化に興味を持つ外国人を増やし、インバウンド客を増加させるというループを目指しています。
実際に岩手県でお祭りに参加した外国人の内には、インターネットやSNSの口コミをきっかけとして興味を持ったという人々が多くおり、岩手県のねらいは着実に集客につながっていると言えるでしょう。
中国人観光客激増、岩手のインバウンド対策に注目
岩手県は、近年特にインバウンド市場を拡大させている都道府県の1つであり、その背景には都道府県レベルから県民レベルに至るまでインバウンド対策に対する意識を浸透させているという要因があります。
また、岩手県におけるインバウンド対策への試みの内には、他の都道府県でも参考にできる部分が多くあるはずです。数年にわたってインバウンド市場を拡大させ続けている岩手県のインバウンド対策には、今後も引き続き注目してくべきでしょう。
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<参照>
https://www.pref.iwate.jp/sangyoukoyou/kankou/toukei/1009258/1017157.html
【インバウンド情報まとめ 2024年11月後編】中国、タイの2025年祝日発表 ほか
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