2018年の訪日外国人観光客数は3,000万人を突破し、政府は東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年には4,000万人を目標としています。
順調にインバウンド誘客が進む一方で、一部の人気観光地ではオーバーツーリズムによる観光公害が発生しているほか、「ゼロドルツーリズム」問題など、課題も山積している状況です。
世界と日本のオーバーツーリズムの現状と「ゼロドルツーリズム」問題をふまえ、今後のインバウンド誘致の課題について考えてみます。
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オーバーツーリズムが及ぼす地域への悪影響
オーバーツーリズムとは、観光客の急増による住民生活の質の低下や民泊を目当てとした不動産投機などによる家賃高騰、観光客によるゴミ問題など、地域にあらゆる悪影響が出ている状況を指します。
海外の人気観光都市、バルセロナやアムステルダム、タイやベトナムなどでは、すでに観光客の大幅な増加によるオーバーツーリズムが顕著です。背景には、中国や東南アジアなどの、経済発展が著しい国での海外旅行需要の拡大や、LCCの台頭により旅行費用が格安になったことがあります。
こうした状況に不満を抱く市民も少なくなく、バルセロナなどでは、観光産業に対する抗議デモも発生しました。
オーバーツーリズムの波は日本にも押し寄せており、京都では路線バスが観光客で大混雑し住民の利便性が低下するケースや、人気のお寺や神社は観光客で溢れ、神秘的で落ち着いた空間を体験することが難しくなってきており、観光客の満足度の低下も懸念されます。
北海道の美瑛町(びえいちょう)では、アジア人観光客が押し寄せ、農作物に悪影響を及ぼすケースもありました。
観光客の増加は、混雑を引き起こすだけでなく街並みも変化させている状況です。京都の台所と呼ばれる錦市場は地元民が通う商店街ですが、次第に観光客向けの土産店やドラッグストアが増加し、錦市場の文化的価値が下がってきたと言われています。
京都市の市バスが抱える問題とは
日本各地で訪日観光客が増えています。その中でも圧倒的なインバウンド勝者と言えるのが京都です。観光都市として非常に人気で、観光客が押し寄せ、こうした事態を乗り切るために他の地域に先駆けて様々な観光政策を打ち出してきました。しかしながら、インバウンド需要が市民生活に豊かさをもたらしたかと言われれば、複雑な問題を抱えているのも確かです。特に、交通機関の混雑は代表的な「観光公害」の一つです。京都市を走るバスは乗客の需要があるにもかかわらず、近年は運転手の確保に苦労しているそうです。免許取得のための...
正しいオーバーツーリズム対策で生活環境を守れ!混雑解消・経済活性化・訪日外国人観光客の満足の全てを実現する方法
京都・鎌倉・箱根といった日本を代表する人気観光地では、バス・電車などの公共交通機関が訪日外国人観光客で混雑を極め、乗り場に大行列ができている風景が日常茶飯事となっています。これらの交通手段は市民も利用するため、通勤や通学に影響が出るなど地元住民の生活の弊害となっています。
海外で話題の「ゼロドルツーリズム」問題とは?
インバウンド誘客促進の裏で問題となっているオーバーツーリズムに加え、海外では「ゼロドルツーリズム」にも注目が高まっています。
具体的な例としては、イタリアのヴェネチアやカリブ海などの大型クルーズ船が挙げられます。何千人もの観光客を乗せて観光地を訪れる大型クルーズ船ですが、宿泊も食事も船内で済ませ、ツアーも関連会社が催行することから、地域に落ちるお金は決して多くはありません。
一方で、トイレやゴミの処理といった受け入れ側の地域の負担は増大します。観光の経済効果は観光客数だけでは図れないと言えるでしょう。海外で注目されている「ゼロドルツーリズム」は、日本でも徐々に影響を及ぼしている状況です。
訪日外国人観光客に人気の観光地・白川郷には年間170万人以上の観光客が訪れますが、平均滞在時間はわずか約40分と言われています。写真を撮り自動販売機で飲み物を買う程度の観光客に対し、トイレの整備やゴミ処理といったインバウンド対応は地域の負担も大きく、費用に見合う収入となるのか懸念されています。
観光客誘致は量から質への転換へ
オーバーツーリズムによる観光公害や「ゼロドルツーリズム」の問題に向き合う上で重要なのが、インバウンド客誘致における量から質への転換です。
すでにオランダの人気観光地・アムステルダムでは、旧市街に新たな宿泊施設を認めない、大型クルーズ船の寄港地は郊外に移転、商店街の店舗の入れ替えは選定委員会で決定するといった取り組みが実施されています。
観光客の誘致に力を入れなくても自然と観光客が押し寄せオーバーツーリズムとなっている現状を受け、オランダ政府の観光機関は今年、観光促進には予算を使わないことを発表しました。
日本でも人気観光地では、富裕層の誘客を促進させ量から質へ転換させるほか、郊外や地方へ訪日外国人観光客を誘致し分散化を図る取り組みが求められている段階です。
京都市内の中心部は観光客で溢れかえっている一方で、同じ京都でも伏見や大原など周辺都市への誘客には課題が残っています。そこで京都市と京都観光協会は、VisaやVoyaginと連携し、京都市内全域の周遊を促進するプロジェクトを実施しています。
2020年の4,000万人目標以降もインバウンド誘客のさらなる促進を目指す日本では、今後は京都のみならず、あらゆる地域でオーバーツーリズムや「ゼロドルツーリズム」への対策と備えが必要となるでしょう。
まとめ:さらなるインバウンド客の増加に備え「量から質への転換」も検討
海外ではすでに各地で問題となっているオーバーツーリズムや「ゼロドルツーリズム」について、日本も目を向け早めにインバウンド対策を講じていくことが重要です。
訪日外国人観光客を人気観光地から地方へ誘客するほか、富裕層を中心に誘客するなど「量から質への転換」といった取り組みも検討する必要があるでしょう。
また、地域へ誘客する際も、観光客数の増加だけを目標とするのではなく、地域への経済効果が期待できるような仕組み作りが求められます。
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<参考>
・SankeiBiz:インバウンド急増「亡国の落とし穴」東洋文化研究者、アレックス・カーさんに聞く
・voyagin:Kyoto City Visa Offer
【7/9開催】消費額1.7兆円超!最新中国インバウンド市場の攻略ポイント
2024年、訪日外国人による旅行消費額は過去最高の約8兆1,257億円を記録。 そのうち中国は1.7兆円超(全体の約21%)と圧倒的な1位を占めており、宿泊日数や訪問者数でもトップクラスの存在感を示しています。
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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
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【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
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