京都市の市バスが抱える問題とは | 京都人気の理由・バスの混雑現象・オーバーツーリズムによる問題・混雑緩和のための2つの方法を解説

公開日:2019年10月30日

日本各地で訪日観光客が増えています。その中でも圧倒的なインバウンド勝者と言えるのが京都です。観光都市として非常に人気で、観光客が押し寄せ、こうした事態を乗り切るために他の地域に先駆けて様々な観光政策を打ち出してきました。

しかしながら、インバウンド需要が市民生活に豊かさをもたらしたかと言われれば、複雑な問題を抱えているのも確かです。

特に、交通機関の混雑は代表的な「観光公害」の一つです。京都市を走るバスは乗客の需要があるにもかかわらず、近年は運転手の確保に苦労しているそうです。免許取得のための補助金も支給されていますが、運転手の定着率はあまり芳しくないことが伝えられています。

また交通機関だけでなく、だれかれ構わず写真に収める観光客に住民が辟易し、ついに「写真撮影禁止」の立て札も設置されたといいます。

今回は、京都市が直面するオーバーツーリズムの問題をご紹介します。

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京都市のインバウンド事情

京都市が調査を始めた2000年から京都への訪日外国人は緩やかに増え続け、2014年から飛躍的に数字を伸ばしています。

2016年には観光者数が300万人を超え、旅マガジンを運営するツーリストコミュニティーサイト「Wanderlust」では2016年から2年連続の読者人気ランキング1位を獲得しました。(2017年京都観光総合調査より)

人気の観光地、京都は訪日観光客が増え続けている

▲[観光入込客数,観光消費額及び外国人宿泊客数の年次推移:京都府ホームページより引用]
▲[観光入込客数,観光消費額及び外国人宿泊客数の年次推移:京都府ホームページより引用]

平成30年京都市観光協会の発表によると、 宿泊客に占める訪日外国人の割合が前年比3.7ポイント上回る43.9%ととなり、調査を開始した26年から4年連続で過去最高記録を更新しています。

その背景にはLCCの便数が増加したことにより、旅行費が以前と比べて低価格になったことや、成田空港から東京入りし、箱根・富士山・京都をめぐって関西国際空港から帰国する定番ルート、「ゴールデンルート」として京都が外せない場所となっていることが挙げられます。

その他、トリップアドバイザー「外国人に人気の観光スポットランキング2019」第1位には伏見稲荷神社(6年連続)が輝くなど、観光地として注目され続けています。

人気の理由は寺院や神社などの名所

訪日外国人が京都を訪れて最も感動したと答えているのが「寺院・神社・名所」です。

京都市を訪れた中で最も多かった外国人観光客は欧州出身者で、中国出身者と続いていますが、「寺院・神社・名所」も欧州・中国から訪れる人が4割以上を占め根強い人気となっています。 

寺院・神社・名所で記念写真を撮影する際に着物を着用できるなど、場所を訪れるだけではなく、体験を加味したサービス、いわゆる「コト消費」が好評となっています。

また、京都を一度訪れて気に入り、リピーターになったり、家族や友人へ口コミを紹介する事例が多いということも京都へ来る訪日外国人が増えている理由でしょう。

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オーバーツーリズムにより市バスが大混乱?

市バスは京都市民、その中でも高齢者にとって欠かせない交通機関です。

京都では市バスが多く走っており、通勤・通学に利用する人も多く、重要な役割を担ってきました。

しかし近年では、京都市民が利用するバスがオーバーツーリズムの弊害を受けています。

その問題点と解決に向けた動きを見ていきましょう。

観光客増加により市民が市バスに乗れない

京都観光に人気の桜と紅葉のシーズンには、定員70人の市バスに最大140人が乗り込むほどの大混雑に見舞われています。

60人も乗れば満員状態となるにもかかわらず倍近い人が乗車する上に、観光客は手荷物が多く、スペースがさらになくなってしまいます。

こうした混雑からトラブルになるケースも多く、特に先述した高齢者からはバスに乗れない、乗っても降りられないといった苦情が出ています。

問題は市バスだけではない

マナー面でも訪日外国人が市民とトラブルを起こす事案も発生しています。

閑静な住宅街で深夜にスーツケースを引きずる音を響かせる、突然自宅の呼び鈴を鳴らされ外国語で道を聞かれる、宿泊施設で大騒ぎするなど以前から度々問題が起きており、こうした問題を受けて京都市内では民泊事業に厳しい規制を設けることになりました。

観光地でも桜や紅葉を折る、街中の舞妓や芸妓を許可なく写真撮影するといったマナー違反が見られ、訪日外国人が増える一方、京都を訪れる日本人観光客は2014年から4年連続で減少傾向にあります。

観光公害、オーバーツーリズムとは

日本人にも人気の観光地である清水寺、金閣寺、伏見神社は常に観光客で溢れているような状態となり、日本人の中には「風情が失われてしまった」という人も珍しくありません。

紅葉シーズンはこれまで「穴場スポット」と呼ばれるような場所でも身動きができないほどの混雑が続き、我先にとカメラや自撮り棒を使って記念撮影を行っています。

ついには「巡行は観光客、宵山は市民と」いう棲み分けができていた祇園祭に地元民の足が遠のくほど、どこへ行っても観光客の姿が目立つようになり、地域住民の生活や自然環境にまで影響を及ぼしています。

一過性ではなく持続可能な観光地として京都を押し出していくためにも、こうした問題への対策が急がれます。

混雑緩和の方法は?

毎年実施されている京都観光総合調査で、不満点として挙げられているのが「混雑状況」です。

これに比例するかのように「京都が市民にとって暮らしやすい観光地」と回答する住民は、平成26年をピークに年々悪化の一途をたどるようになりました。

京都が本来もっている美しい景観を維持し、市民の観光客受け入れ意欲を損なわせないために取り組んでいる対策とは何でしょうか?

京都市の実際の取り組みを紹介します。

1. バス料金の値上げ

市バスから地下鉄へ交通機関の利用を分散するために、京都市はバス1日乗車券を500円から600円に値上げし、地下鉄・バス1日乗車券を1,200円から900円に値下げしています。

これにより2018年3月〜6月までの地下鉄・バス1日乗車券の売り上げは前年比の3倍となり、バス1日乗車券の売り上げが落ちるなど交通機関分散化の効果が実証されました。

さらに「後乗り、前降り後払い」から「前乗り先払い、後降り」へ利用方法を移行し、各バス停での停車時間が12秒程度短縮するなどスムーズな乗降も可能となりました。

この乗車方法が一定の有効性を発揮したことから、2019年3月から「前乗り先払い、後降り」を市バスで本格導入し、ピークシーズンでは無料の地下鉄振替券の提供を検討しています。

2. 「手ぶら観光」を推進

京都では民間業者が荷物の預かり、配送サービスを行い「手ぶら観光」をサポートしています。

市バスの混雑緩和とともに、手ぶら観光のメリットを伝えるウェブサイト「Hands Free Kyoto」が2019年3月に公開されました。

スーツケースは移動中にスペースを取るだけではなく、騒音問題として敏感に反応する市民も少なくありません。「Hands Free Kyoto」では動画で分かりやすく、荷物を持っての観光と手ぶらでの観光を紹介しており、サービスを提供している場所を検索することができます。

駅や空港から宿泊施設まで荷物を運ぶサービスもあり、体力を温存できるほか、滞在時間を有効利用、徒歩での移動が苦にならないなど、周囲にも自分にも優しい観光スタイルを提案しています。

観光地の分散、時間の分散がカギに

オーバーツーリーズムへの対策を行っている京都ですが、一定の効果は上がっているものの抜本的な問題の解決には至っていないのが現状です。

観光客が殺到するピーク時の混雑は避けられず、時間帯によっては市バスも常に満員状態が続いています。観光客の適正数を検討し、それに見合ったインフラ整備や市民生活への配慮は早急に進められるべき事項です。いくら経済的に潤ったとしても、生活者を犠牲にしたツーリズムは日本では現状受け入れらない可能性も高いでしょう。

知名度が高くない隠れた観光名所の発掘や、観光客が訪れるタイミングをずらすような対策の採用が待たれます。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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