インバウンドの定番観光ルート「ゴールデンルート」の中でも、特に人気観光地として有名なのが京都です。あまりの人気ぶりに、近年では、訪日外国人観光客の急増による「オーバーツーリズム」が問題化しており、地元住民や国内旅行客への影響も懸念されています。
今回は、京都市観光協会による、2018年度の「京都観光総合調査」のデータ分析をもとに、京都観光の最新動向について国内旅行客・訪日外国人観光客の双方の視点から紹介し、今後の展望を考察します。
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京都観光の最新動向:1日当たり21.4万人が滞在、愛着度がアップ
京都市内に滞在する観光客の延べ人数は2015年以降は横ばいでの推移となっています。2018年は1日あたり21.4万人が滞在しており、これは京都市の人口の約15%に相当する数字です。
京都の観光客数は減少傾向ですが、近年は宿泊施設数が増加しており、1人あたりの滞在日数も増加し、結果として延べ滞在人数が維持されていると考えられます。
急増するインバウンドにおいては、京都に対する「愛着度」が増加していることも明らかになりました。愛着度を把握するための指標NPSが、京都観光を親しい友人に勧めたいかについての回答結果をもとに集計されており、訪日外国人観光客は前年比2.0ポイント増の53%となっています。
同時に、3年ぶりの増加を記録したインバウンドに対し、日本人観光客は前年比2.9ポイント減の16.7と2年連続の減少が見受けられました。
日本人観光客の求める「癒し」京都の隠れ名所
日本人観光客の愛着度の減少の背景には、観光客の増加によりこれまでと同様の京都の雰囲気を味わえなくなったことも可能性としてあるでしょう。
こうした中で日本人観光客は、京都への訪問回数が増えるにつれて人気観光スポット以外への訪問が増えているそうです。日本人は京都観光において「癒し」を求める傾向があり、京都市内中心部におけるオーバーツーリズムなどが引き起こす混雑や交通渋滞を回避したい心理が生まれていると考えられます。その結果、周辺の郊外の落ち着いた観光地を好むようになっているのかもしれません。
実際、京都市内中心部から1時間ほどの貴船では、山と川が織りなす豊かな自然が魅力で、夏は避暑地としても最適です。貴船神社は縁結びのパワースポットとして有名なため、多くの観光客が訪れますが、周辺に点在する夏の風物詩・川床では、中心部の喧騒から離れてのんびりくつろぐ日本人観光客が多く見受けられます。
京都市内中心部でも、日本人が求める「癒し」を満たすようなスポットやイベントが注目されています。
早朝の観光コンテンツで混雑緩和の効果も
比較的観光客が多くない早朝の時間帯の観光コンテンツにも注目が集まっています。調査によれば、早朝に訪れることのできる観光スポットの訪問率では、6時から拝観が可能な清水寺がトップとなりました。
世界遺産に登録されている二条城では、2017年から毎年夏に開城時間を拡大しています。
特に人気となっているのが普段は非公開の香雲亭で振舞われる1日40人限定の朝食です。この朝食は朝8時30分から提供され、毎年ほぼ満席といった人気ぶりが伝えられています。こういった取り組みにより観光客の分散化による混雑緩和や、それによる観光客の満足度の向上が期待できるでしょう。
インバウンドのリピーターに京都に来てもらうには?
訪日旅行に人気のゴールデンルートに位置する京都は、欧米からのインバウンド客は微増傾向にあります。特に2018年はイタリアとドイツからの入洛数の増加が顕著となりました。初めての訪日旅行の割合が多い欧米圏からの観光客は、京都を訪問先に選ぶ傾向があるため、京都におけるインバウンド誘客の重点市場と言えるでしょう。
実際、「京都の台所」と言われ、近年食べ歩きの人気エリアとして注目されている錦市場では、英語はもちろんドイツ語やスペイン語、フランス語なども飛び交い、欧米圏からの観光客が非常に多く見受けられます。
一方でインバウンドのリピーターは、ゴールデンルート以外の地方を周遊する傾向が顕著です。京都を訪れたインバウンド客が次回訪日する際に希望する旅先は「北海道」とする回答が多くなっています。
京都へ訪問する動機として、1回目の訪問時は「寺院・神社」「伝統文化鑑賞」との回答が多い一方で、次回京都を訪問する際は「桜・紅葉等の自然」や「温泉」を体験したいという回答が大幅に増加しました。
「京都は初めての訪日旅行で訪れる場所」といったイメージを払拭し、二回目以降の訪問でも十分楽しめるコンテンツがあることを打ち出していくことで、訪日旅行のリピーターに京都へ来てもらうえるようになると考えられます。
まとめ:地方周遊を好むインバウンドのリピーターを京都郊外へ誘客
京都観光の最新動向について、国内旅行客・訪日外国人観光客の双方の視点から見てきました。
京都観光に「癒し」を求める日本人観光客は、リピーターになるにつれて周辺の郊外の観光地を巡る傾向が見られます。一方でインバウンドに関しては、初めての訪日旅行で京都を訪れる欧米圏からの観光客は増加していますが、リピーターの取り込みは今後の課題と言えます。
今後は、インバウンド市場に向けて貴船や大原などの郊外の観光地の魅力を訴求すれば、中心部の混雑を加速させることなくリピーターの誘客と満足度の向上を実現できると考えられます。一方で、「癒し」を求める日本人観光客の混雑を回避したい心理をどのように満足させるのかは、また別軸で見ていく必要があるでしょう。
インバウンドの中には、日本在住者との交流に期待している層もある程度存在します。インバウンドと日本人観光客の交流という形を取り入れていくことは、工夫次第では観光を通じて国際化への理解を深める機会となるでしょう。こうした理解は、オーバーツーリズムによるトラブルの回避にも有効な側面が期待できます。日本を代表する観光地である京都での今後の取り組みに、引き続き注視すべきでしょう。
<参照>
・京都市観光協会:京都観光総合調査等を活用した 京都観光の最新動向詳細分析結果
・京都市観光協会:データから見る京都観光の現状と満足度の実態
・京都新聞:世界遺産・二条城で朝食を 京都、7月から1日40人限定
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