「ココイチ」の愛称で親しまれるカレーチェーン最大手の「CoCo壱番屋」は、2019年2月時点で国内1,267店舗、海外172店展開しており、国内だけでなく海外でも人気を博しています。
国内同様、典型的な「日本のカレーライス」を提供しており、日本のカレーに馴染みのない外国人にも受け入れられているそうです。
CoCo壱番屋のカレーが文化的背景の違いにかかわらず広く受け入れられるおいしさを提供できていること、CoCo壱番屋の店舗環境などが支持されていることなどがあるようです。CoCo壱番屋が海外進出を成功させ、外国人から好評を得ている背景をさぐります。
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海外進出を次々成功させるCoCo壱番屋(ココイチ)
CoCo壱番屋は1994年のハワイ進出から海外展開がスタートしました。
その後、2004年に中国・上海に出店をしたことからアジア地域を中心に店舗を拡大しています。中国・台湾・韓国といった距離的に近い地域はもちろん、現在タイ・フィリピン・インドネシアといった東南アジアにも。
さらに2018年にはイギリスのロンドンに欧州1号店をオープンしました。近年は日本食レストランが海外進出すること自体は珍しくありませんが、営業を継続し、且つ店舗数を拡大していくことは容易ではありません。その中でCoCo壱番屋は、日本のカレーチェーンというポジションを確立し、海外展開も上手く軌道に乗せています。
変わらない日本の味、変わる店舗デザイン
外国人にとって、日本式のカレーは寿司やラーメンと言ったスタンダードな和食ほどなじみがありません。 それでもCoCo壱番屋では、日本のカレーの美味しさを知ってもらうために、海外でも基本的に味を変えずに提供しています。
海外店舗の利用客の反応を見ると、「独特の甘み・コクのあるルーが美味しい」「トッピングの組み合わせが抜群」といった声があります。
中国では女性客がターゲット
日本式のカレーをそのまま現地で食べられるように、味にこだわっているCoCo壱番屋ですが、一方で店舗の作りは日本と大きく異なります。
海外で本格的な事業展開をスタートした最初の地・中国では、当初集客に苦戦していました。そこで、新しいものへの関心が高い女性をターゲットとし、2号店からは女性を意識した魅力的なお店のデザインに変更したところ、予想以上の反響で一気に集客が拡大しました。
特に、中国では男女交際においては女性の意見を重視する傾向にあります。結婚後もこの基本姿勢は変わらず、女性の選ぶお店はカップルや家族の来店も見込めます。交際中は記念日などイベントも多く、こうしたタイミングで利用される店舗の地位を確立すれば、記念日の特別感演出に悩む男性にも歓迎されると考えられます。
CoCo壱番屋の中国進出は15年も前のことですが、メニューには当時から「映え」を意識したものを用意したといいます。こんなにも前から、食品のビジュアルが飲食店の差別化に有効であったことがうかがえます。
外観・内装のオシャレさ、現地の女性が好むメニューの創作など、まず女性客を掴むことに注力したことで中国での集客成功へと繋がり、その後の韓国・台湾・タイなどへの進出にも応用しています。また、女性を呼び込むことができれば、パートナーなど男性を連れて来てくれるため、どんどん集客の輪が広がるという側面もあります。
人口13億のインドの巨大マーケット
中国の次にCoCo壱番屋が進出を目指しているのは、カレーの本場・インドです。2019年の夏に2020年前半のインド進出を発表し、CoCo壱番屋の大衆的イメージや、また本家本元に勝負をかけるその姿勢が大きく注目を集めています。
インドはスパイスカレーが主流のため、日本式のカレーがどれほど多くの人に受け入れられるかは現在のところ未知数です。
日本でカレーを食べたインド人によれば「甘いカレー」は想定の範囲外の味のようです。ただし、その味はインドのカレーに似ているところもあるという意見もあります。
日本人が家庭では日本のカレーを食べながらも外食ではインドカレーを選ぶこともあるように、将来的にインド人にとっても日々の食事の選択肢となることもあるかもしれません。
13億人という巨大な人口を抱えるインドとあり、桁違いな市場可能性に期待が高まります。インドではイスラム教徒に配慮したハラールメニューも提供することが求められます。CoCo壱番屋は国内にハラール対応の店舗を運営しており、在留・観光イスラム教徒から支持を得ています。そのため、インド出店もハラールを意識した店作りになると予想できます。
訪日外国人の食欲を満たす外食チェーンの条件
観光庁が発表した2018年の「訪日外国人の消費動向」によると、訪日外国人が訪日前に最も期待していたこととして「日本食を食べること」が最も多い結果となっています。さらに、実際の滞在中にしたこと及びその満足度においても、同じく「日本食を食べること」が最多の回答でした。
このことから、日本食を食べたいと考える訪日外国人は非常に多く、CoCo壱番屋をはじめとする多様な日本食チェーンも魅力的な選択肢になると言えます。
1. コストパフォーマンスの良さ
チェーン店と言えば、安さが特徴です。インバウンド市場では、手軽に利用しやすく、安くて美味しい日本食が食べたいという節約志向の観光客に選ばれていると考えられます。
例えば、回転寿司チェーンでは、日本の代表的な食である寿司を一皿から手軽に食べられます。安くて美味しい寿司を食べられる他にも、寿司以外の和食も揃うメニューの充実感や、注文した寿司が専用レーンに設置された電車などに乗って席まで運ばれてくるアミューズメント要素など、外国人が楽しめる環境も揃っています。
また、吉野家は牛丼の大手チェーンで、値段の安さに比べてボリュームを感じられるのが特徴です。このように、コストパフォーマンスの良さも外国人に支持されている理由の一つです。
2. 提供の早さと味の美味しさ
チェーン店を選ぶポイントとしては、料理の注文から提供までのスピードの速さ、そして味の美味しさも重要です。例えば、「丸亀製麺」は、店内で自家製麺を製造している程打ちたての美味しさにこだわっている一方、オーダーから提供まではスピーディーで、値段も非常に安価です。
また、「一蘭」は、豚骨ラーメンが美味しいと人気のあるラーメンチェーンです。提供時間も早く、その一方で豚骨スープのコクや旨味は海外の食文化に慣れているとインパクトのあるものとなっています。
観光の合間や移動の途中で気軽に立ち寄れる飲食店としておすすめできます。
CoCo壱番屋から学ぶ飲食チェーンが取り組むべきインバウンド対策
飲食チェーンは安い・早い・美味しいの3要素が揃っていることが共通しています。これらの要素は万国共通で好まれるため、幅広い外国人に利用されていると言えます。
さらに、インバウンド集客に力を入れるなら、よりインバウンド需要に沿った内容、外国人が好むスタイルを提供することも求められます。
ベジタリアン・ハラール対応
観光庁は平成30年5月に「訪日ムスリム旅行者対応のためのアクション・プラン」を策定し、以降ムスリム旅行者の取り込みに向けた受入環境整備やプロモーションを推進しています。
イスラム教を信仰する人々のことを「ムスリム」と呼びますが、インバウンド市場で増加するインドネシアやマレーシアといった東南アジアからの訪日旅行客にはムスリムが多く、今後関連した市場の成長が期待されています。
外国人が好むカスタマイズ
現在すでに、CoCo壱番屋は観光客、在住者問わず多くの外国人に選ばれています。理由の一つとして、トッピング・カレーの辛さ・ご飯の量などをカスタマイズできることがあります。豚カツやハンバーグなどの肉類をはじめ、魚介類・野菜類といった多種多様なトッピングが揃い、自分好みのカレーを注文できることが大きな魅力です。
カレー自体の美味しさに加え、組み合わせが自由となると、「次はこの組み合わせにしよう」「もっと辛いカレーを食べてみよう」などとリピートに繋がります。外国人が好むカスタマイズを充実させることも、インバウンド需要を取り込むための鍵となるでしょう。
コミュニケーション不要の食券機システム
日本の飲食チェーン店では、入口などに食券機を設置している店舗も多く見受けられます。
日本語でのコミュニケーションに不自由する外国人にとって、券売機を使うことにより、店員との注文・支払い時のやりとりが不要になり、ストレスフリー・時間短縮にも繋がります。
店舗側にとっても、注文の聞き間違い防止や人員削減に繋げられるといったメリットがあります。インバウンド客のスムーズな利用を促すなら、タッチパネル式・写真付き・多言語対応の食券機システムの導入、もしくは既存の食券機があるなら英語での説明や写真を加えるなどの工夫が有効です。
外国語メニュー
飲食店のインバウンド対応で欠かせないのが、外国語表記のメニューです。CoCo壱番屋は、英語・中国語・韓国語・ロシア語・アラビア語・ポルトガル語など複数の言語に対応した多言語メニューブックを用意してあるため、幅広い国のインバウンド客の取り込みを意識しています。
また、メニューには料理の写真も一緒に掲載することが望ましいでしょう。言葉だけではなく、一目見てどのような料理かわかるようにすれば魅力も伝わるため、注文してもらいやすくなります。
外国人客の取り込みで集客拡大&収益アップ
2018年の観光庁による「訪日外国人の消費動向」の調査報告書では、旅行中に最も満足した飲食は「肉料理」「ラーメン」「寿司」「魚料理」の順で高い結果となっています。
このような訪日外国人に人気の日本食を提供するチェーン店は豊富にあり、訪日外国人の増加が見込まれる今後はますます多くの集客が期待できます。
日本の食は世界でも評価が高く、思った以上に大きな市場ポテンシャルが眠っていると考えられます。こうした店舗で、新たなメニューに目を向けてもらえる工夫も、今後は進んでいくかもしれません。
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<参照>
東洋経済オンライン:ココイチ社長が激白!「聖地」インド進出の勝算
フェイスブックページ:カレーハウスCoCo壱番屋(ココイチ)
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