中国・武漢市で発生した「新型コロナウイルス肺炎(COVID-19)」の感染が拡大する中、中国国内でも感染防止対策に関する様々な支援や対応、社会的変化が広がっています。
今回は中国国内のEC各社の動きからから見える中国のECサイトと強みと、日中間における、プラットフォームと消費者の関係性の違いについて解説していきます。
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新型コロナウイルスの感染拡大を受けた中国EC各社の対応
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ECプラットフォーム各社を含む多くの中国企業が社会的支援を実施しました。
中国国内では感染防止のため在宅勤務や在宅学習が余儀なくされる中、大手ITグループ「網易(ネットイース)」や大手教育グループの「新東方(New Oriental Education & Technology Group)」などではオンライン学習講座を一部無料開放するなどの対応を行なっています。
アリババや京東などの大手ECプラットフォーム各社においては、武漢市の医療現場にマスクや医療用手袋の物資を支援したり、義援金の寄付をしたりといった動きがありました。
こうした直接的な支援の他に、必要とされるモノやサービスが必要な人の元に届くよう、プラットフォーム自体を改善、進化させる動きがみられました。
たった一夜で不正な価格で売られていたマスク57万件の販売を停止したアリババ
ウイルスの感染拡大という非常事態を受け、中国国内では深刻なマスクの供給不足が発生しました。一部商品は不正に販売価格が釣り上げられたり、品質に問題のある「偽マスク」が流通するといった社会問題に発展しました。
これを受けてアリババでは1月27日に不正販売されていた57万件ものマスクを一気に販売停止し、一部の店舗には今後の出店を永久に禁止するという厳格な処置を下しました。
売り手が自由に参入できるマーケットプレイス型ECのタオバオでは、これまで商品の品質コントロールに苦戦してきた歴史があり、品質改善のために相互評価の仕組みや、申告窓口の設置、違反商品の自動パトロールなどの機能を構築してきました。
今回はこれらの積み重ねが合わさり、緊急時の迅速な対応として真価を発揮する結果となりました。
既存割引キャンペーンの対象商品に「感染予防品」を加えた拼多多
同じ商品を複数人で購入する団体購入の仕組みを使って商品を安価に提供する拼多多(ピンドゥオドゥオ )では、これまで「補貼」(ブーティエ)と呼ばれる施策でユーザーを増加させてきました。
「補貼」はプラットフォーム側が購入資金の一部を負担することを意味し、これによる大規模な割引キャンペーンを繰り広げ、新規ユーザーの購入を促します。
今回の新型コロナウイルス感染拡大を受け、いち早く割引キャンペーンの対象商品にマスクや消毒液などの感染予防品を加えました。
これらの商品は特設ページとして、トップページに大きくバナーリンクが設置されています。
プラットフォーム側が購入資金を負担する大胆な割引キャンペーンは、以前より拼多多を皮切りに京東、タオバオの聚划算(アリババ傘下の共同購入サイト)でも対抗が続き、合戦の体をなしていました。今回の非常事態を受け、やはり各社一斉に社会的に必要とされる商品に割引を適用させるという方針が取られました。
独自の物流網を活かし、必要なモノを必要な場所に届ける京東
自社物流網に強い強みを持つ京東はこれまでの医薬品の即日配送などのオンラインとオフラインをつなぐサービスを提供してきましたが、むやみな外出を避ける今回の状況下ではそれらの既存サービスが多くの人の役に立つこととなりました。
また、今回の感染拡大により対面での配送を避ける動きがありましたが、これを受け京東では無人のスマートデリバリーロボットを走行させ「京東物流(JD Logistics)」仁和ステーションから約600m先にある武漢第九病院へ医療物資を配送しました。
これまでも中国各地で無人配送のためのインフラづくりやテスト配送を重ねてきた京東ですが、今回特に無人配送が必要とされる武漢市で実際に応用されることになりました。
強みを理解し、状況に応じて社会的役割を果たす中国のECサイト
中国のオンラインショッピングの世界では「本来の人間の性質は悪である」という性悪説に基づき、プラットフォーム側が積極的にユーザーと店舗の間に介入し全体を管理するコントロール力が強い傾向があります。
これまで中国のEC市場は、EC各社が熾烈な争いの中で異なる強みやカラーを出しながら共存してきました。
今回の非常事態を前に中国では、EC各社が自社プラットフォームの強みを理解し、全体を見渡して今自分ができることは何かを把握し、コントロール力の強さを生かして一般生活者が必要とする商品を提供しました。
その点で特別な策を講じたというよりも、これまでユーザーの利益やユーザーに喜ばれることを目的に設計されてきたサービスが、災害時にはより一層の「強み」として機能することが証明されたといえるでしょう。
不正ができない空間から溢れた商品はどこに行き着くのか?
上記で述べたように中国ではこれまで商品の品質や物流網の構築など、膨大な機能改善を積み重ね、現在の対応の早さと正確さが形成されました。
今回の不正販売されたマスクに限らず、不正な出店者や商品には厳しい目が向けられ、もはや不正ができないプラットフォームになっています。
出店者の競争やプラットフォーム内での露出も厳しくなってきており、これらのプラットフォームで淘汰されてしまう商品が比較的参入障壁の低い海外のECサイトに出品されるケースも存在します。
マスクの「高額転売」が後を絶たない:日本のEC
新型コロナウイルスの発生により、中国国内に限らず、日本でもマスクの買い占めや高額転売が問題になっています。
ドラッグストアやコンビニの店頭ではマスクの売り切れが続き、メルカリなどのフリマサイトでは店頭価格の数倍もする高額なマスクの転売が起き、Amazonでも出品者による高額な値付けが発生しました。
これを受け、メルカリでは公式サイト上で「マスクの取引に関するご協力のお願い」と題したメッセージを発表しましたが、あくまで「社会通念上適切な範囲での出品・購入にご協力をお願いいたします」という呼びかけにとどまっています。
ヤフオク!やラクマでも同様の声明が発表されましたが、いずれも注意喚起や、利用者に節度を保った取引をお願いするという姿勢です。
日本のオンラインショッピングは売り手と買い手の信頼と自己責任で成り立つ側面が強く、プラットフォーム側はあくまで場を提供するというスタンスと取る傾向があります。
不正な店舗を厳しく取り締まり、ユーザーからの評価や申告をスピーディーに反映する中国のECサイトと比べると、プラットフォーム側の介入が比較的弱いと言えるでしょう。放任的なプラットフォームによって、結果的に消費者が不便を被るという皮肉な事態が起きています。
非常時にこそ強みが光る中国のEC
中国のECプラットフォームは非常時に限らず、積極的なルール改定や機能改修などプラットフォーム側の介入が強いという特徴があります。
プラットフォーム側のコントロール力があるからこそ、既存サービスであっても状況に応じて使われた方を柔軟に変更できたりと、非常時に強みが光る結果となりました。
これまで予測もできなかった新型コロナウイルスの感染拡大と言った非常事態のさなかで、日々の積み重ねを的確に活用するにはどうするかということを考えるケーススタディとなるでしょう。
中国ECと消費者の関係性から学べること
中国のオンラインショッピングでは、トラブルが発生した際には消費者の自己責任よりも、出店者やプラットフォームに対して責任が問われる傾向があります。
今回のような非常事態に限らず、日本のECサービスにおいても消費者へのリテラシーやモラルの向上をお願いするよりも先に、取引の場の提供者として改善できることがないか十分に考えることが求められます。
インターネットの世界では相手の顔が見えない分、予想もできない事態が発生し、プラットフォームへの悪評につながることもあります。
サービス提供者としてどこまでコントロールができるかが、プラットフォームの強さに直結するといえるでしょう。
<参照>
https://tech.sina.com.cn/csj/2020-02-04/doc-iimxyqvz0313134.shtml
https://finance.sina.cn/chanjing/gsxw/2020-02-04/detail-iimxxste8797455.d.html
https://www.zhihu.com/question/334214411
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「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
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