なぜ台湾はWHO加盟国になれないのか「情報共有」「実績評価」への壁:新型コロナの緊急事態でも、イエスと言わない中国

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新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が世界中で広がる中、台湾は感染拡大対策を次々と打ち出し、その迅速で的確な対応が世界で注目されています。

日本では1月16日に初めて新型コロナウイルスの国内の感染者発生が公表されましたが、「指定感染症」に閣議決定されたのは1月28日のことでした。一方、台湾は感染者がまだ出てもいなかった1月15日時点に新型コロナウイルスを「法定感染症」に指定しています。

台湾の素早い対応が功を奏し、3月30日時点で台湾の感染者数は306人、死者数は5人にとどまっています。

そんな台湾の悩みの種となっているのが、「WHOに加盟できない」ということです。なぜ台湾はWHOに加盟することができないのか、WHOに加盟できないとどのようなことが困るのかお伝えします。

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台湾がWHO加盟国から排除されるワケ

新型コロナウイルスに対する対応について、国内外から一定の評価を受けている台湾ですが、なぜWHOから加盟を拒否されているのでしょうか。

国連脱退以降、中国からの反対でWHOに加盟できず

1971年に中国が国連に加盟した際、台湾は国連からの脱退を余儀なくされました。以降、台湾はWHOのほか多くの国際専門機関に加盟できていません。

国連に加盟していることは、専門機関への加盟のために必須というわけではありません。それにもかかわらず台湾がWHOに加盟できない背景には、国連常任理事国である中国が加盟に反対していることがあります。

中国台湾の加盟を認めたくない理由には、台湾中国(中華人民共和国)の一部であり国ではないという中国のロジックがあります。

台湾の国連脱退については、中国は国連の活動資金である分担金拠出額で、アメリカに次ぐ2番目の額を誇っており、強い影響力を有していることも少なからず関係しているといわれています。

台湾に住む人々にはさまざまな考え方はあるものの、政治制度がまったく異なることや、歴史的独自性をよりどころに、台湾人であって中国人ではないと考える人も少なくありません。こうした事情から台湾では、台湾のWHO加盟国を支持する国に対する肯定的な意見が見られます。

WHOの事務局補佐官、台湾の話題避ける

WHOの事務局長補佐官を務めるブルース・アイルワード氏は、3月28日に香港のニュース番組でテレビ電話によるインタビューに応じました。新型コロナウイルスについて話す中、番組プロデューサーから「台湾の加盟を再考するつもりはあるか」と問われると、沈黙ののち「質問が聞こえない」と回答し、再度質問すると回答をはぐらかしました。

さらに台湾の感染対策について話したいと求められると、なぜか電話が切れてしまいます。再度電話がつながると、アイルワード氏は「中国についてはもう話した」などと述べ、台湾の話題を避ける素振りを見せました。

このインタビューに関する記事や動画はSNS上で拡散され、台湾の外交部は3月29日に「パンデミックへの対処には政治は別にすべきだ」などとツイートし批判しました。

WHOに加盟できないと困ることとは?

台湾がWHOに加盟できないことによって、台湾、また世界にはどのようなデメリットが考えられるでしょうか。

感染者が出ているのに蚊帳の外…迅速な情報共有できず

WHOは1月30日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、新型コロナウイルスに関する3回目の緊急委員会を開き、公衆衛生上の「緊急事態」を宣言しました。しかし台湾は、すでに国内での感染者が確認されていたにもかかわらず、この緊急委員会はおろか、第1回目と第2回目の緊急委員会にも招待されていませんでした。

WHOに加盟していない台湾は、現在、新型コロナウイルスに関する情報を即時には入手できない状況を強いられているといえます。

2002年にSARSが流行した際にも、台湾はWHOから診断情報などの重要な情報を得ることができませんでした。この時、台湾での死者は180人にのぼり、世界で最もSARSの終息が遅くなりました。

台湾外交部や台湾保健当局の関係者によれば、台湾は日米欧やNGOなどを通じて新型コロナウイルスに関する必要な情報を得ているということです。

また水面下ではWHOから情報を得られることがあるものの、加盟国ではないために、必要な情報に常にアクセスできるわけではないという状況が続いています。

台湾は、政治的要因でWHOから排除されることに強い憤りを示しています。

ICAO(国際民間航空機関)も台湾を排除

また空路による感染防止に関する情報を加盟国に提供する、国際民間航空機関(ICAO)についても、台湾は未加盟となっています。このため台湾は、新型コロナウイルス感染拡大の水際対策として重要な、空港や空路の感染防止のための情報に、迅速にアクセスできないというリスクを抱えています。

ICAOは、新型コロナウイルスの対策をめぐって「台湾と協力すべき」と提案したユーザーをTwitter上でブロックしたとして、2月1日にアメリカ国務省から「国連機関としてふさわしくない」と批判されています。

台湾からの情報が加盟国に共有されず

台湾の外務省にあたる外交部は3月30日、台湾がWHOに提供した情報が他の加盟国に共有されていないとして批判しています。新型コロナウイルスに関する感染例や予防措置など、台湾新型コロナウイルスの発生直後からWHOに全情報を提供しているにもかかわらず、WHOが毎日更新している状況報告書に一度も掲載されたことがないと訴えています。

現在、新型コロナウイルスに対する台湾の対応が世界の注目を集めています。特に世界的に有名なプログラマーとして知られ、38歳という若さでデジタル担当大臣として新型コロナウイルスと戦うオードリー・タン氏の活躍は、TwitterなどのSNS上でもしばしば話題になっています。

同氏は、自らマスク在庫管理アプリを開発するなど、IT技術を活用して迅速かつ的確な対策を次々と打ち出し、こうした行動に高い支持が集まっています。

WHOは3月29日、台湾の感染状況を注視しており、台湾の対策から教訓を得ていると主張しました。しかし台湾が主張するように、台湾からの情報が十分に活用されていないとすれば、世界にとって大きな損失となってしまうでしょう。

また新型コロナウイルスについてまだ中国での流行がメインに取り上げられていた1月29日、カナダのトルドー首相が「台湾がWHOの会議にオブザーバーとして参加することは国際衛生上、最大の利益をもたらす」と議会で答弁しています。

複雑な国際情勢でも少しずつ理解を深め、真の観光立国へ

WHOやICAOが台湾を排除していることについて、国際社会からは批判が高まっています。アメリカがICAOの姿勢を批判したほか、EUも台湾のWHO参加を支持する立場を示しています。安倍首相も、1月30日の参議院予算委員会で台湾に言及し、「政治的な立場で、この地域を排除するということを行うと感染防止は難しい」と述べています。

一方で、台湾の加盟を妨げる最大の要因となっている中国の姿勢は強硬なままです。新型コロナウイルスの感染拡大という緊急事態において、WHOやICAOの加盟国に比べると、台湾は今後も不利な状況を強いられる可能性があります。

国家間の関係や、国際社会における関係者のスタンスは、時に一般市民では共感しがたいロジックで決定されています。また、実際に日本を訪れるアジア圏の訪日外国人一人ひとりの考えを推し量ることは、観光業に携わるすべての人にとって、現状、容易なことではないでしょう。

こうした現状にあっても、日本で観光業に携わる人々が少しずつ理解を深めることで、日本がより快適な観光地となるための基盤を作ることができるでしょう。

例えば漢字の書かれたガイドブックを持っていたり、声調のある言語(中国語や広東語のような抑揚のはっきりとした言語)を話しているからといって、旅行者の国籍をすぐに断じるべきではありません。台湾香港からの旅行者にとって、中国に所属する人として扱われることが喜ばしくない場合もあるからです。

またアジア人風の外見であるからといって中国人と決めてかかることも避けるべきでしょう。現在はカナダアメリカなどに定住する中華圏出身の人々も少なくありません。

観光地や観光施設を訪れる人にとって何が必要なのか、目の前にいる一人ひとりのニーズを読み解こうとする姿勢こそが、インバウンドの現場でも大切となってきます。そして歴史や国際関係に対する少しの理解が、その判断の助けとなってくれるはずです。

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<参照>

中央社フォーカス台湾 :台湾、死者5人に 感染者は300人突破 新型コロナ

AERA.dot:新型コロナ“神対応”連発で支持率爆上げの台湾 IQ180の38歳天才大臣の対策に世界が注目

日本経済新聞:台湾のマスク管理アプリ IT駆使、担当相にも評価

朝日新聞デジタル:新型コロナ、WHOは台湾提供の情報を共有せず=外交部

東洋経済オンライン:新型肺炎で台湾がWHOから排除され続ける理由

J-CASTニュース:WHO幹部、台湾の質問「聞こえない」 「一つの中国」配慮か、外交部「政治は別にすべき」

BBC NEWS:Why Taiwan has become a problem for WHO

AFP BB NEWS:米、ICAOを「国連機関としてふさわしくない」と非難 台湾排除で

【6/11開催】欧米豪インバウンドに刺さる!“地域にどっぷり浸かる”ローカルイマーシブ観光とは?


本ウェビナーでは、株式会社movと株式会社大阪メトロ アドエラの共催により、欧米豪向けインバウンドをターゲットとした「ローカルイマーシブ “地域にどっぷり浸かる没入体験”の提供」をテーマに最新情報をお届けします。

2025年大阪・関西万博の開催を契機に、欧米豪を中心とした訪日外国人観光客が関西を中心に日本全国に訪れる機会が急増しています。

一方で、地域の受け入れ側には「英語対応が難しい」「どう関わればいいかわからない」「コンテンツや訴求方法がわからない」「対応できる人材がいない」といった課題も多く、せっかく外国人観光客が訪れても、地元に経済的な波及効果が十分届いていないのが現状です。

本セミナーでは、大阪メトロ アドエラが展開する欧米豪向けインバウンド事業「Osaka JOINER」をもとに“まち全体でインバウンド受け入れるスキーム”を通じた、インバウンドに関わる人と経済のパイを増やすための可能性を紹介します。

観光施策、まちづくりに携わる方にとって、明日から活かせるヒントが満載です。

<本セミナーのポイント>

  • 欧米豪インバウンドに刺さる「ローカルイマーシブ観光」の実践例がわかる!
  • 多様な人材や事業者を巻き込む”まち全体”に経済効果を波及させる仕組みがわかる!
  • 旅行者目線を徹底し、英語対応が難しくても、無理なくインバウンドを受け入れる方法が学べる!
  • 旅行者満足度を獲得することで、マーケティング・プロモーションなど、広がる可能性がわかる!

詳しくはこちらをご覧ください。

欧米豪インバウンドに刺さる!“地域にどっぷり浸かる”ローカルイマーシブ観光とは?【6/11開催】

【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」

2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。

「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。

初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。

参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。

<こんな方におすすめ>

  • インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
  • 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
  • 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
  • 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
  • インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生

「THE INBOUND DAY 2025」特設ページを見てみる

【インバウンド情報まとめ 2025年5月後編】2025年の訪日客数「4,500万人」へ、観光庁長官の見解は? ほか


訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。

この記事では、主に5月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。

※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。

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2025年の訪日客数「4,500万人」へ、観光庁長官の見解は? / 2025年訪米旅行者支出「125億ドルの損失」予想 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年5月後編】

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

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