新型コロナウイルスの流行をふせぐために、全国を対象に出された緊急事態宣言の期間が5月末まで延長されています。
オリンピックも1年延期が決定され、これまでになかった事態をどのように乗り切るか、プライベート、そしてビジネスで悩む声が大きくなっています。
新型コロナウイルスは手についたウイルスや濃厚接触により感染するため、手指を消毒したり、対面の機会をなるべく減らしたりすることで感染拡大が防げるといわれています。
検査の件数や医療機関のキャパシティ、また人口構成比や医療保険の整備など各国に様々な要因があり、各国の感染状況は一概には比べられません。その一方でSNSでは、日本で比較的感染拡大スピードが緩やかである理由に、公衆衛生の意識の高さを指摘する声も見られます。
今回の新型コロナウイルス流行を経てアップデートされた、日本そして海外での公衆衛生の保ち方について紹介します。
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「新型コロナウイルス感染症」での対応・日本
2020年5月現在も収束には至っていない新型コロナウィルスですが、まだ日々感染者が発生している状況です。
発症後に自宅での療養に当たるケースもあります。厚生労働省はこうした場合に注意すべき、8つのポイントを提示しています。
- 部屋を分けましょう
- 感染者のお世話はできるだけ限られた方で
- マスクをつけましょう
- こまめに手を洗いましょう
- 換気をしましょう
- 手で触れる共有部分を消毒しましょう
- 汚れたリネン、衣服を洗濯しましょう
-
ゴミは密閉して捨てましょう
共用部分(ドアの取っ手、ノブ、ベッド柵など)は、薄めた市販の家庭用塩素系漂白剤で拭いた後、水拭きしましょう。
・物に付着したウイルスはしばらく生存します。
・家庭用塩素系漂白剤は、主成分が次亜塩素酸ナトリウムであることを確認し、使用量の
目安に従って薄めて使ってください(目安となる濃度は0.05%です(製品の濃度が6%の
場合、水3Lに液を25mlです。))。
出典:ご家族に新型コロナウイルス感染が疑われる場合家庭内でご注意いただきたいこと~8つのポイント~
こうした対策の中には、インフルエンザや伝染する胃腸炎にかかってしまった家族と同居する場合にとられてきたものではありますが、新型コロナウイルスの流行によって、より広く知られるところになったといえるでしょう。
小売店での会計では、飛沫防止のビニール幕
地域民の生活を支える小売業では、働くスタッフと来店する消費者の双方を感染から守るため、これまでになかった取り組みを始めています。

会計の際に対面する両者の間に、物理的な境目を設けることで、感染の原因になるという飛沫に接触することを防ぎます。
近距離での医療サービス提供では吸引装置の設置も
近距離での診察が迫られる医療業界では、働いている従業員や医師を感染の危険から守るべく何重もの対策が取られています。
飛沫感染が恐れられている歯科業界ではゴーグルの装着やマスクの2重着用、手袋のこまめな交換など衛生管理が徹底され、患者の近くに吸引機械を設置し、口の中のものと合わせて2台の吸引器を設置し対策を取っている病院もあるようです。

厚労省は注意喚起にファッションモデルを起用したYouTubeコンテンツを配信
更に、重症化しないと信じられていた若年層にも感染が広がり重症化しているケースも散見されるとして、厚生労働省は若者に人気のファッションモデル達とのコラボレーション動画をYouTubeに公開しています。
こうした取り組みにより、公衆衛生に対する考え方のアップデートがさらに進むと考えられます。
「新型コロナウイルス感染症」での対応・海外
海外ではどのような対応がなされているのでしょうか。
日本でも影響力のある芸能人が情報発信しているように、ハリウッドのセレブリティもメッセージを公開しています。
例えば若者に広く利用されているショートムービーアプリの「TikTok」や、「YouTube」にて独自に手洗いの方法や衛生管理の大事さを訴えています。
公衆衛生といわれても興味がわかないという層であっても、自分が関心を抱く人物の発信であればメッセージを受け止める、というケースもあると考えられます。
こうしたメッセージも後押しとなり、各国で公衆衛生に対する認識のアップデートが今後は進んでいくでしょう。
買い出しの際の「ソーシャルディスタンス」
新型コロナウイルスの流行を受け、世界各地の人々が「外出制限令」を受けている状況です。欧州では英国、フランス、イタリア、スペインなど、アジアではインド、ネパール、スリランカなどが自宅待機を要請、指示されており、国によっては罰則も科されています。
ただし生活必需品を購入することは禁止されてはいません。こうした買い出しにより、店内では時には密集する可能性が生じています。どのような感染症対策をしているのでしょうか。
海外では、食料品、日用品の買い出しにあたっては、特に会計の際、屋外でも人が密集することが珍しくありません。
イギリスをはじめとするヨーロッパ諸国、人口が多いインドなど、会計時の人と人の距離感が詰まるのを防ぐため、屋内、屋外ともに、「整列のためのポジション」を示すマークを設置する取り組みが見られます。こうした「整列マーク」は日本でも大手スーパー、コンビニはじめ各地で採用されています。
@TheEllenShow social distance in Danish supermarket pic.twitter.com/jSz4J6Bs3D
— Knud Thisted (@KnudJT) March 20, 2020
Maintaining social distance at ration shop's n vegetables markets pic.twitter.com/co12q1PMOy
— SHO BEGUMPET (@shobegumpet) April 7, 2020
こうした感染リスクを下げる他人との距離は「Social Distance(社会的距離)」と呼ばれています。
新型コロナウイルスは、人との間を2メートル空けることで感染を防げるといわれています。買い出しなど、他人と同じ空間にいることでしか達成できない目的での外出は、まだ完全にゼロにはできません。
新型コロナウイルスの流行を受け広まった概念ですが、今後も、飛沫感染が起きる予期せぬ病気のリスクを防ぐ有効な概念として、流行収束後も普及する可能性があります。
インバウンドの現場では?感染症予防・公衆衛生への意識の高まりがサービスの様式を変える?
2018年4月11日にラジオNIKKEIで放送された「インバウンド感染症と問題点と対策」では、訪日観光客が増加するとともに海外から特定の感染症が渡ってくることへの懸念が語られました。
外国人が持ち込み、国内流行のおこることが懸念されているのが、髄膜炎菌感染症です。この病気は飛沫感染をおこしますが、国内では発生数が少ないものの、アフリカでは毎年乾季に大流行がおこります。また、欧米諸国でも時々流行が発生しています。発病すると髄膜炎やショックなど重篤な症状をおこし、致死率が大変に高くなります。この感染症の患者が、2015 年に山口県で開催された世界スカウトジャンボリーの外国人参加者の中に発生しました。患者が確認されたのはイギリス隊(3 人)とスウエーデン隊(1 人)で、いずれも開催期間中に感染し、帰国後に発病しています。(「インバウンド感染症の問題点と対策」より)
上記で言及されている「髄膜炎菌感染症」は一つの例でしたが、今回の新型コロナウイルスのように、世界では、これまで発生していなかった感染症が発生する場合もあります。
それではどのように感染症の拡大を予防をすることができるのでしょうか。同放送では、以下のように感染症の拡大予防について伝えています。
まずは、一般臨床医の先生方が、外国人が受診した際に、結核など公衆衛生上の問題となりうる感染症の早期診断、早期治療に努めていただくことが大切です。
訪日外国人による結核の持ち込みを防ぐため、日本に長期滞在する外国人に対し、ビザ申請時に「結核にかかっていないことを証明する文書」の提出を求めることが検討されています。
外国人労働者の多い企業や外国人留学生の多い学校では、就職や入学する外国人に対して、健康面でのスクリーニングや、一定の予防接種を要求するなどの対応が必要になるでしょう。たとえば、日本からアメリカに留学する際には、アメリカの学校が、麻疹、風疹、ムンプス、水痘、髄膜炎菌などのワクチン接種を留学生に要求してきます。
急激な訪日観光客の増加は、未知の感染症を日本にもたらす等のリスクも伴います。
訪日する際の予防接種の義務化だけでなく、今回の流行対策として採用されたような物理的隔壁の設置や、ソーシャルディスタンスの確保など、感染リスクを徹底的に下げるような、サービス提供の様式が普及していくことも考えられます。
また中国、韓国やシンガポールで導入され、一部からは批判も招いていますが、感染源特定や感染者との接触者の特定のため、今後は日本人、訪日外国人に対する移動経路のトラッキングができるようなシステムの導入が検討されてくるかもしれません。
横浜市のとある民泊が、新型コロナウイルス拡大でもリスクを最小限にとどめられるワケ:多様な宿泊者層・接触は最小限・行政との連携
新型コロナウィルスの感染拡大が止まりません。中国国内のみならず、日本経済にも影響が現れてきています。インバウンド市場へのダメージも避けられないとの見方も強いでしょう。今回の感染拡大を受け、訪日外国人を受け入れるインバウンド業界の現場では、どのように対応しているのでしょうか。筆者は、横浜市の民泊、2nd Placeを経営されているホストの方からお話をうかがいました。実は民泊では、新型コロナウイルス対策以外の災害対策にも応用できそうな、意外な強みがあることが見えてきました。関連記事専門家会議「...
まとめ
一般社団法人日本感染症学会が2019年7月に定めた「インバウンド感染症の感染対策」には、症状からみた感染症予防策を、治療に従事する医療関係者に向けて細かく説明しています。海外発の感染症の流行を経て、今後はこうしたガイドラインが訪日外国人の一番近くにいるホテル業や小売業、サービス業の事業者たちにも広く共有されていくことが予想されます。
日常生活でも、罹患する人にとっては致命的となってしまう感染症の拡大に寄与してしまうという点が、今回の新型コロナウイルスの流行の特徴です。こうした意識は、これまでの日常で人々が持ちえなかったものです。
これにより変化する「公衆衛生」に対する認識、態度の変化を自社サービスに反映させていくことが、インバウンド業界はじめとする各業界に求められているといえるのではないでしょうか。
<参照>
一般社団法人日本感染症学会:インバウンド感染症の感染対策
ラジオNIKKEI:2018年4月11日放送「インバウンド感染症の問題と対策」
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