UNWTOがツーリズム再始動を宣言/「旅行再開は今」呼びかけとガイドライン7つの項目を策定

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2020年2月以降、世界経済は新型コロナウイルスの流行で打撃を受けています。観光業界も需要回復と感染症の拡大防止の両立に向けて、難しい決断を迫られていました。

こうした状況を経て、6月、UNWTO国連世界観光機関)が「ツーリズム再始動」を呼びかけました。

続く7月には、3月に「今日は家にいよう、明日また旅行できるように」と呼びかけていたことを踏まえ、「明日はここにある」と、旅行を再開すべき時が来たことを表明しました。

本記事では、6月のツーリズム再始動の宣言で公開されたガイドラインを紹介し、観光業における需要回復の順序やその具体的な道のりなどアフターコロナに向けて観光業に従事する人が理解・意識すべきことを考察します。

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UNWTOが「ツーリズムの再始動」を呼びかけ

6月4日、UNWTO世界観光機関)のポロリカシュヴィリ事務局長は声明を発表し、「ツーリズムの再始動(Restarting Tourism)」を呼びかけました。

また、新型コロナウイルス対応に関連して次のように宣言し、世界の複数の国で移動制限緩和の動きが広がり、政府や民間企業が観光再開に向けた安心と信頼の回復に向けて始動していることについて言及しました。

ローカルおよびグローバルの両レベルで時勢を読み、適切な判断を下すことが終始重要となってきたが、ようやくツーリズムを再始動する時期が到来した

withコロナの観光再開に向けたガイドラインを策定

「ツーリズムの再始動」に先立ちUNWTOは、旅行・航空関連の国際団体やWHO(世界保健機関)と立ち上げた5回目のグローバル観光危機委員会において、観光再開に向けたガイドラインを策定しました。

このガイドラインでは観光再開のために優先すべき項目として、下記の7項目を掲げています。

  • 資金の流動性と雇用の確保
  • 旅行者の不安を解消する安全対策
  • 効率的な再開に向けた官民協
  • 責任ある国境開放
  • 安全対策の調整
  • 新しいテクノロジーを活用した付加価値の高い人材育成
  • ニューノーマルでの革新性と持続可能性

またそのうえで、「ツアーオペレーター/旅行代理店」「宿泊施設」「航空」「アトラクション/テーマパーク」「MICE(ビジネスイベント)」といった分野別にもガイドラインを定めるほか、各国政府に対し電子ビザビザ免除の推進、一時的なビザ取得費用の免除なども求める内容となっています。

観光業界のデジタル改革を促進

さらにUNWTOは観光業界のデジタル改革の一環として、世界の観光業界に向けてデジタル学習とオンラインスキルトレーニングの機会を提供していくため、Googleとのパートナーシップを強化していく方針を示しています。

観光業界においても今後はよりいっそうITスキルが必要とされ、オンラインでのコミュニケーションスキルが重視されていくと考えられます

▲[SAFE AND SEAMLESS TRAVEL : HOW TO REOPEN TOURISM DOOR TO DOOR]:UNWTO


このガイドラインでは「安全でシームレスな旅行」を実現するための、旅行の予約から移動、現地への到着までのフローチャートも示されています。

また、具体的な行動として、予約時には病気になった場合のキャンセル規定を確認する、移動時には一定の距離を保つ、交通機関やチェックインでの支払いにはキャッシュレスなど非接触の支払い方法を選択する、などを推奨しています。

さらに、出発前にナショナルトラッキングアプリで情報共有をする、現地到着後には移動経路のトラッキングアプリをダウンロードするなど、デジタルツールを活用して自分の移動経路をGPSで記録しておくことも推奨されています。

withコロナの観光は「マイクロツーリズム」から「トラベルバブル」へ

現時点でいきなり多くの地域からの観光客を受け入れることはリスクが大きくても、段階的に観光業を再開していこうという取り組みが注目され始めています。

星野リゾート代表の星野佳路氏は旅行需要の回復について、はじめに戻ってくるのは近隣の地元から来る観光客で、その次は大きな移動を伴う大都市圏から、そして最後にインバウンドの順だとしています。そのため星野リゾート全体で、地元観光を見つめ直すマイクロツーリズムの考えを推進しています。

これは、自家用車やタクシーで自宅から30分~2時間程度で移動できる、地元の観光客の需要を掘り起こすマーケティング戦略のことです。

また、海外ではさらに多くの観光客を対象とする新たな旅行のかたちとして、トラベルバブルがありますトラベルバブルとは、合意した特定の国の間で国境を開放し、自由に行き来できるようにするものです。

社会的・経済的に結びつきの強い隣国同士で、ひとつのバブル(泡)を形成し、その中で新型コロナウィルスの感染防止に取り組みつつ旅行を促進します。

すでに5月15日から、バルト三国では3か国の国民に限りバルト三国内の移動が認められています。さらにオーストラリア・ニュージーランド間でも、トラベルバブルの検討が進められています。濃厚接触者の追跡システムや体温検査などの準備が必要となるものの、一部の観光専門家は、2020年8月頃には、オーストラリア・ニュージーランド間のトラベルバブルが実現すると見込んでいます。

トラベルバブルとは何か/日本は中国、台湾、韓国とスタート?

トラベルバブルとは、ある特定の条件に合致する人々だけが、限られたエリアの中を自由に行き来することを意味する新しい概念です。地理的、社会的、経済的に結び付きが強い国同士を一つの大きな泡(バブル)の中になぞらえて表現しています。泡の中に含まれる地域間で、相互に納得できる新型コロナウイルスに対する感染防止策を講じ、海外旅行市場の回復を図る試みです。新型コロナウイルスの流行を受け、国同士の行き来が制限されたことは、インバウンド業界にとって大きな打撃となりました。インバウンド業界が冷え込む中、各国が...


3密回避のためのノウハウを蓄積

マイクロツーリズム」のマーケティング戦略によって近距離圏内の観光客の需要を掘り起こすことに加えて、星野代表は、旅館やホテルで「3密回避」のノウハウを素早く蓄積し、旅行者が安心して過ごせるようにすることが重要であると指摘しています。

たとえば星野リゾートが運営する「星のや東京」では、3密が最も懸念される大浴場での対策として、利用客が自分のスマートフォンで大浴場の混雑状況を確認できる「3密の見える化」サービスを導入しました。さらに、夕食と朝食ともに部屋食を選択できるようにしたり、料理の内容を口頭で説明するのではなく、お品書きに詳細に記載するなどの工夫もしたりと、「安心」と「安全」の提供が最重要としています。

最後に旅行需要が回復すると考えられるインバウンドについて、訪日ラボが独自に行った意識調査によれば、インバウンドの客足が戻り始める時期の予想として、1年後の2021年東京オリンピック開催頃が最も多く、回答者の31.8%が選択しました。

【独自調査】コロナ影響、インバウンド事業の8割「すでに大きな影響」訪日客戻るのは「1年後」:新型感染拡大で観光業はどうなる

4月7日に緊急事態宣言が出されてから1か月が過ぎました。緊急事態宣言の期限は当初5月6日までとされていましたが、安倍晋三首相は5月4日の記者会見で、5月31日まで延長することを発表しています。特定の国からの入国者に対する入国制限もいまだ続いており、インバウンドへの影響は長期化することが予想されます。そこで、訪日ラボでは各社のインバウンド事業に対する影響度合いを探るため、読者・メールマガジンユーザーの皆様を対象に「新型コロナ意識調査」を実施しました。調査では新型コロナウイルス感染拡大により「...

世界的な宿泊予約サイトBooking.comが公開したウィッシュリスト(お気に入りリスト)のデータでは、3月初めから10万を超えるさまざまな目的地がウィッシュリストに登録され、多くの人々が旅行の再開を心待ちにしていることが分かります。世界の都市では、東京がウィッシュリストの6位にランクインしており、多くの外国人が日本旅行を夢見ていることをうかがわせます。

Booking.comが世界のウィッシュリストを公開 国内旅行51%、東京は6位:Go Toが後押しする日本「国内旅行」からの市場回復に期待

新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で世界的に人の移動が制限をされており、旅行しづらい状況となっています。このような状況の中、世界的な宿泊予約サイト Booking.comは新型コロナウイルスの収束後人々が旅行に行ける日を夢見て、ブッキング・ドットコムに掲載されているどのような宿泊施設がお気に入り登録・保存されていたかを「ウィッシュリスト」としてデータ化し、発表しました。関連記事Booking.comはGo Toで独自の料金割引も目次ウィッシュリストとはウィッシュリスト6位に東京が...

しばらく続くと見られるウィズコロナの状況の中で地元の魅力を見つめなおし、感染防止対策のノウハウを蓄積していくことで、いずれ海外からの旅行者が戻ってきた時に、より安全で魅力的な旅行先として選択される可能性が高まるでしょう。

旅行者目線で「安心」を提供できるかがカギ

新型コロナウイルスの影響により、インバウンド市場においてすぐに外国人観光客が戻ってくることは難しいでしょう。しかしいずれインバウンド需要が回復するときに備えて、今できる対策を着実に実施していくことが重要です。

旅行先として選ばれるためには、いかに旅行者目線で「安心」を提供できるかが重要になってきます。3密回避といった基本的な感染防止対策を実現するための体制を構築していくことはもちろん、どのような対策を提供できるのかをしっかりと情報発信することが、旅行者の安心につながります。

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<参照>

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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