新型コロナウイルスの感染流行により、世界中の観光業界が大きな損害を受けるなか、台湾の台中郊外にある「星のやグーグァン(谷關)」は、2020年2〜6月の客室稼働率を7〜8割に維持しました。
また、公式サイトによると、7〜8月の予約は満床で、9月の予約もほぼ埋まっているなど、星のやグーグァンは台湾で今最も予約困難な宿泊施設の一つとされています。
台湾は新型コロナウイルスの封じ込めに成功したとはいえ、外国人に対する入国制限措置は継続されているため、2020年の訪台客は昨年の同月と比較すると2月は62.6%減、3月は92.8%減と、大幅な減少となりました。
現在は海外旅行が中止されていることもあり、台湾域内での国内旅行がブームとなっているため、星のやグーグァンは国内旅行での台湾人の利用が多いものと考えられます。
少なくとも2万元(約7万円)のハイクラスな宿泊価格設定にもかかわらず、台湾で星のやグーグァンが高い客室稼働率と予約率を維持している背景について考察します。
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台湾星のやの紹介
「虹夕諾雅谷關(星のやグーグァン)」は2019年6月、台湾第二の都市・台中市内から車で約1時間半の「谷關(グーグァン)」にて開業しました。グーグァンは古くから温泉地として有名で、「星のや」ブランドの海外展開では「星のやバリ」に続き2軒目となっています。
1泊2万元(約7万円)のハイクラスな価格設定でも、訪日旅行を機に星のやのファンになった台湾人も多く、開業当初は3か月以内の土日の予約がすべて埋まるなど、台湾で高い人気を得ていることがうかがえます。現在は、台湾で最も予約が取りづらいホテルの一つともいわれています。
- 最高のおもてなし、食事も極上でした。プールのある庭も整備され、きちんと管理されています。お部屋も広いし、お風呂も最高。本当に美しい旅の思い出ができました。
- 素晴らしい。日本にいるみたいだった。サービスがしっかりしています。
- ホテルの環境や内装、サービス、かなり満足度高いです。宿泊客の食事の好みや記念日に合わせておもてなししてくれて、チェックアウトの際には祝いの品までいただけだけて、もう感動の一言です。チャンスがあれば、また必ず来ます!
コロナ禍でも予約満床の理由
星のやグーグァンの安定した客室稼働率の理由として、台湾では新型コロナウイルスの感染が収束傾向にあることや、海外旅行に行けないなかで国内旅行への注目が高まっていることなどが考えられます。ここでは、コロナ禍の台中の宿泊施設における安心安全への取り組みについて紹介します。
安心・安全への取り組み:「台中市安心旅宿」
まず、台湾の宿泊施設における安心安全への取り組みには、台湾政府の新型コロナウイルス対策との連携が大きく影響しています。
日本では、7月15日に開かれた東京都知事の記者会見で「感染防止徹底宣言ステッカー」の発行が発表されました。これは、ステッカーを掲示することによって、この施設・店舗が政府が作成したガイドラインを遵守し感染予防対策の徹底に取り組んでいることを利用者に知らせるものです。
一方、台中の観光局では、3月の時点ですでに「安心旅宿」の認証制度を開始しています。安心旅宿は、宿泊客の海外渡航歴や体調の確認、宿泊施設で体調不良が発覚した際の対処方法、施設内の定期的な消毒、清掃状況など、観光局が定める複数の感染予防対策の項目をクリアしたホテルや旅館を対象に認定を与える制度です。
台中の観光当局では新型コロナウイルスの感染流行による混乱を機に、安心旅宿という認証制度を整備することで、宿泊客が安心して予約できるようにし宿泊施設の稼働率アップを図っています。
安心旅宿に認定されたホテルの一覧は台中観光局のホームページで公表され、2020年7月15日現在で少なくとも300以上の施設が審査を通過し、公表されています。星のやグーグァンは、4月1日に日本の事業者として初めて安心旅宿に認定されました。
東京都 コロナ警戒レベルを最高に引き上げ|事業者には「感染防止徹底ステッカー」活用を、都民はステッカーない店舗避けて
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安心感とリラックスを両立させた「星のや」3つのポイント
長期の外出自粛生活によるコロナ疲れから、非日常を楽しみたい・リラックスしたいといった心理的欲求が膨らむなかで、星のやグーグァンはまさにその2つの欲求を満たしつつ、徹底した感染予防策による安心感も兼ね備えています。ここでは、星のやグーグァンにおける、安心感とリラックスを両立させた3つのポイントについて紹介します。
1. 三密回避できる立地と施設・設備
谷關(グーグァン)は台中中心部から車で約1時間半の自然が豊かな郊外に位置しており、三密回避ができる立地が特徴です。ホテルが提供している「氣循森呼吸」というエクササイズや草花散策などのアクティビティは外で行うため、コロナ下でも安心して参加できます。
客室は全50室のみで、客室のサイズは台湾国内のリゾートホテルより2〜3倍大きく、全室に源泉掛け流しの温泉が付いています。そのため、チェックイン後は他者と接触することなく安心安全の滞在が楽しめます。
2. 地域の魅力を実感できる
星のやグーグァンは、その地域にしかない独自の魅力を体験できる、非日常感の演出に注力しています。たとえば、敷地にある緑は古くから谷關に生息する植物を保存したもので、ガイドと一緒に谷關ならではの自然を満喫しながら森を散策できます。
また、プールで提供する飲み物は、谷關産の植物や香辛料をテーマに作られており、宿泊客に谷關の地域の魅力を伝え認識を深める機会を提供しています。
3. 日本式おもてなし
星のやグーグァンでは、日本式のおもてなしを体験できます。日本の会席料理やデコレーション、スタッフの対応など、日本の星のやのと同等なおもてなしが台湾でも体験できるとして、台湾人に人気です。
台湾にいながら、日本の旅館を訪れているような非日常感を味わうことができ、訪日旅行のヘビーリピーターが多い台湾では、海外旅行ができない今、台湾域内で訪日旅行気分を楽しめる点が魅力的に映るようです。
コロナ収束後、訪日台湾人を誘致するために
多くの宿泊施設が新型コロナウイルスによる打撃を受けているなか、台湾の星のやグーグァンは、安心旅宿などの「安心・安全への取り組み」、グーグァンの「三密回避できる立地と施設・設備」、温泉や日本式おもてなしなどの「非日常体験の提供」により、高い稼働率を維持できたと考えられます。
この星のやグーグァンの実例は、ウィズコロナ・アフターコロナ時代での、訪日台湾人観光客をはじめとしたインバウンドの再誘致・受け入れへの取り組みについて、参考となるかもしれません。
台湾で訪日旅行メディア「トラベルバー(旅行酒吧)」を運営する「BEENOS Travel」が台湾人会員1,538名を対象に6月に実施した訪日旅行に関する調査によると、旅先を選ぶ基準について、44%の人が「新型コロナ対策の有無」と回答しました。
また、「どのようなコロナ対策がされていれば安心ですか」という質問では、88%の人が「マスク着用必須」、71%の人が「入店/退店の消毒」、63%の人が「ソーシャルディスタンスの保持」、61%の人が「検温」と回答しています。
台湾では、新型コロナウイルス対策はもはや生活の一部となっているため、日本の入国制限解除後に訪日台湾人観光客の受け入れを再開する際には、徹底した新型コロナウイルス対策と安心安全のアピールが必要となるでしょう。
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台湾にて訪日旅行メディアサイト「トラベルバー(旅行酒吧)」を運営しているBEENOS Travel株式会社は、2020年6月5日から6月25日にかけて同サイトの台湾人会員1,538名を対象に、訪日旅行に関する調査を実施しました。 台湾国内では既に2か月以上にわたり新型コロナウイルスの感染者が確認されておらず、6月からは段階的に新型コロナウイルスの感染拡大予防措置を解除し、国内旅行を再興させる取り組みが政府主導で実施されています。 一方、現在でも...
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<参照>
臺中市政府観光旅遊局:臺中市安心旅宿方案詳細Q&A與旅宿業相關優惠資訊
SankeiBiz:台湾、ホテル運営でも「優等生」 星野リゾートは予約率9割超維持
星のやグーグァン:公式サイト
LINE TODAY:在觀光低迷的谷關 星野集團如何賣出一晚9萬的旅館
商周:3萬元在國內住一晚,訂房竟滿到7月底!星野谷關如何做到?
遠見:日本旅館救星看上921災區谷關,推出每晚2萬2000「虹夕諾雅」
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