訪日外国人がホテルに求めるものとは?インバウンド対策の課題と解決策を紹介

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7月22に開かれた政府対策本部にて、在留資格を持つ外国人を対象に、「再入国」制限を緩和する方針を表明しました。

訪日外国人への緩和施策は未だ不透明なものの、入国規制緩和に向けた第一歩として期待が高まっており、ホテルなどの宿泊施設にとっては訪日需要回復時における受け入れのための準備期間という見方も可能です。

事実、インバウンドメディアの地位向上を目指している「日本インバウンド・メディア・コンソーシアム(JIMC)」が2020年4月中国人ユーザー145名を対象に実施した調査によると、アフターコロナで行きたい国としては日本が群を抜いてトップとなっており、訪日意欲は顕在であることが伺えます。

本記事では、コロナ禍でのホテルを取り巻く状況、および今期に改めて押さえておくべき訪日外国人がホテルに期待することについて、成功事例を踏まえて解説します。


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ホテルのインバウンドの現状

新型コロナウイルス感染拡大に伴う入国制限による訪日外国人観光客の激減は、インバウンド需要に頼ってきたホテルでは致命的な打撃となり、経営難に陥っている企業も少なくありません。

オリンピックに向け右肩上がりで成長を続けてきたホテル業界の、これまでの足取りについて振り返ります。

2019年までのホテル業界

2019年までの訪日外国人観光客数を振り返ると、2017年は2,869万人、2018年は3,119万人、2019年は3,188万人と、右肩上がりで増加をしてきました。

インバウンド集客が好調だったため、受け入れ先となるホテルは続々と建設され、2014年から2018年までの5年間でホテルの軒数は9,809軒から10,402軒と増加しています。

これに伴って外国人宿泊者数も増加しており、同じく2014年から2018年で見ると3大都市においては117.3%、その他の年では175.3%と大幅な増加が見られました。

宿泊者数の増加によりホテル従業員側の業務負担が増え、一時は従業員不足が指摘されていたものの、現在は新型コロナウイルスの影響により従業員を「過剰」とする傾向にあります。

帝国データバンクが2020年4月に実施した、人手不足に対する企業の動向調査では、正社員について「不足している」と回答した企業は前年同月比で19.3%減の31%に留まっています。

一方で、「過剰」と回答した企業は13.5%増の21.9%となっており、インバウンド需要をはじめとした宿泊需要の減少に伴い、業務量が大幅に減少したことが原因と見られています。

新型コロナウイルスの影響

帝国データバンクによると、新型コロナウイルスによる倒産は2020年4月27日時点で全国で100件を超えました。8月14日時点におけるホテル・旅館など宿泊業者の倒産件数は全国で49件となり、1位の飲食店(60件)に次いで2位となっています。

倒産は観光需要が多数を占めていた旅館やホテルなどで顕著であり、新型コロナウイルス感染拡大防止のための観光客の移動制限が、兼ねてよりの赤字決算などによる業績不振に致命傷を与えたと見られています。特に訪日外国人観光客が主要な顧客であった宿泊業者にとって、今回の新型コロナウイルスによる損失は大きく、中国や韓国からの顧客が多かった宿泊施設は倒産に追い込まれています。

なお、倒産している企業の分布としては、東京都で107件、大阪府で45件、北海道で23件、静岡県で21件、兵庫県と愛知県でそれぞれ20件となっており、主要都市で特に影響が大きかったことが伺えます。

Go To Travel キャンペーンで需要回復?

新型コロナウイルスにより打撃を受けた観光・宿泊業界支援のため、7月22日から「Go To キャンペーン事業」の核とも言える「Go To Travel キャンペーン」が政府主導で開始されました。

大幅な需要低迷が懸念されている宿泊施設や観光施設において、収益回復に有効であるとの期待を受けて、当初8月上旬からの開始予定を前倒し4連休前日の7月22日からのスタートが決定されました。これを受け、京都府京都市の「京都プラザホテル京都駅南」や、北海道洞爺湖町の老舗ホテル「洞爺湖万世閣ホテルレイクサイドテラス」では4連休中ほぼ満室となるなど、一定の効果をもたらしました。

しかしながら、コロナウイルスの全国的な感染拡大が広がるタイミングと重なったことにより、キャンペーン開始直前の7月16日には、感染拡大が深刻な東京発着の旅行は除外されることが発表された他、地方へのウイルス拡散を懸念する自治体や、観光客受け入れにあたる宿泊施設は複雑な胸中を抱えるなど、物議を醸しています。

「Go To Travel」キャンペーンとは?徹底解説:仕組み・対象をおさらい/期待と不安交じる事業者の声

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訪日外国人がホテルに求めるものとは?

現在は訪日外国人が減少していますが、アフターコロナで需要喚起が見込まれるインバウンドに際し、今後の動向を注視すると共に対策を継続して考えていく必要があります。

本項では観光庁が実施したアンケートを元に、インバウンド誘致の鍵となる訪日外国人が宿泊施設に求めているものについて解説します。

多言語対応

インバウンド集客において重要視すべき項目としては、多言語対応が挙げられます。

観光庁訪日外国人旅行者を対象に、毎年定期的に空港で実施しているアンケートによると、旅行中に困った項目として「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」「施設等のスタッフとのコミュニケーションがとれない」の合計値は、常に高い割合を占めています。

2016年度は56.5%、2017年度は47.9%、2018年度は37.0%と年々減少しているものの、多言語対応に対するニーズは未だ顕在であることが分かります。

また、観光庁が2018年3月に行った「訪日外国人旅行者の受入環境整備における多言語対応に関するアンケート結果」では、「最も必要だと思う多言語ツール」の項目で「多言語案内施設表示(館内施設案内等)」が37.7%を占め1位となっており、特に施設での多言語対応が強く求められていることが伺える結果となりました。

加えて、今日ではオンライントラベルエージェントOTA)などを通しネットでの宿泊施設予約が進む一方で、観光庁が2018年8月に実施した「平成30年度国際観光ホテル整備法登録ホテル・旅館 自主点検表」によると、ホテルのホームページ多言語化対応率は75.8%に留まっています。

今後増加が見込まれる訪日需要を見据え、Webサイトでの多言語対応強化や、タブレット型通訳サービスピクトグラムなど低予算で利用可能な多言語対応サービス導入により、アフターコロナでのインバウンド集客および満足度向上が期待できるといえるでしょう。

アクセスの良さ

訪日外国人観光客は宿泊施設を選ぶ際、立地を重視する傾向があります。

具体的にはターミナル駅や空港、主要な観光スポットに近いホテルの人気が高く、このような立地はインバウンド集客が容易であるといえます。

初めての地で右も左もわからない訪日外国人にとって、アクセスが難しい宿泊施設は選択肢から外れてしまうため、立地やアクセスの良さは非常に重要な要素の一つです。

そのため、アクセスについてPRすることもインバウンド集客に効果的であるとされ、例えばシャトルバスの運行、送迎サービスの提供などの対策を実施しインターネットで公開することにより、訪日外国人観光客の目に止まる可能性が高まります。

日本食・文化体験

訪日外国人の旅行中のニーズが、爆買いに代表されていた「モノ消費」から「コト消費」へと変化しています。

観光庁が毎年行っている「訪日外国人消費動向調査」の2019年年次報告書によると、「訪日前に期待していたこと(複数回答可)」として「日本食を食べること」 が 69.7%と最も多く、次いで「ショッピング」が52.6%、「自然・景勝地観光」が47.0%、「繁華街の街歩き」が43.3%の順で多くなっています。

ショッピングが上位に入っているものの、それ以外の選択肢は体験になっていることから、体験のニーズが高いことが伺えます。

さらに温泉入浴「今回の日本滞在中にしたことの満足度(複数回答可)」では「日本の歴史・伝統文化体験」が94.9%、「温泉入浴」が94.4%を占めています。日本ならではの食事や文化を組み込んだ体験は、訪日外国人観光客の満足度向上を狙う上では活用必至の策であるといえるでしょう。

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インバウンド対策の事例

国境をまたぐ移動は依然としてハードルが高い状況が続いているものの、未来への受け入れ準備期間として感染予防対策に加えてインバウンド施策を講じることにより、落ち込んでいた売上回復に一定の効果が期待されます。本項では訪日外国人の需要を捉え、ユニークな施策に取り組んでいるホテルの事例を紹介します。

クラブメッド 北海道サホロ:北海道ならではの体験を味わえるリゾート

4月28日、トリップアドバイザーによって発表された「旅好きが選ぶ!外国人に人気の日本のホテル 2020」にて、高級リゾートホテルを手がけるクラブメッドの「北海道サホロ」が、堂々1位を獲得しています。同ホテルは3年連続ランクインしており、昨年2018年は2位であったものの、今回順位を上げ1位に輝きました。

人気を誇っている大きな理由としては、日本新八景のひとつ「狩勝峠」の中腹に位置しており、ゴンドラやリフトに加え、スキーやスノーボードスクールも追加代金無しで楽しめるゲレンデが、ホテルのすぐ近くにあることが挙げられます。

また、ホテルのサービスも贅を尽くしたものとなっています。北海道の雄大な景色を背景としたカナディアンバスや大浴場が完備されている他、北海道ならではの食材を用いたレストランも併設されており、ウィンタースポーツを心ゆくまで楽しんだ宿泊者がホテルに帰宅後、十分に疲れを癒せるよう配慮されています。

宿泊料金は1泊3万円からと決して安くありませんが、スキーのインストラクターへ感謝の声が口コミで多数あがっているなど、サービス面での評価が高く、リピーター獲得に成功しています。

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4月28日、

東京ステーションホテル:AIを活用したおもてなし

1915年開業した東京ステーションホテルは、東京駅丸の内駅舎の中に位置にし、東京で現存するホテルとしては2番目に古い歴史を持ちます。国内唯一の「国指定重要文化財の中にすべてが位置するホテル」であり、国内外のラグジュアリーホテルを格付けする「フォーブス・トラベルガイド」では、4年連続4つ星を獲得しています。

そのような伝統と格式ある同ホテルは2019年7月より、英語および中国語(繁体字・簡体字)で対応が可能な、訪日外国人向けのAIチャットコンシェルジュ「Bebot」を導入しました。

「Bebot」の活用により、客室や施設内での問い合わせや観光スポットの案内、飲食店の予約などが24時間365日リアルタイムで対応可能となり、訪日外国人にとっての利便性向上はもちろん、ホテル従業員の生産性向上にも一役買っています。

さらにコロナ禍という文脈においては、対面接触による感染拡大のリスク削減にも効果的であり、アフターコロナでの訪日需要回復に備えて、導入検討の余地は十分にあると言えるでしょう。

富士レークホテル:ユニバーサルデザインへの取り組み

山梨県の河口湖畔に位置する富士レークホテルは、1932年開業以来「富士山麓の湖畔の宿」として親しまれきたホテルです。

このホテルの一番の特徴は、2000年以前より取り組んでいる「国籍・年代・全ての人を受け入れる」ユニバーサルデザインであり、全74室の3分の1近くにあたる23室がユニバーサルデザイン対応となっています。

昨今観光業会の間では、この「ユニバーサルデザイン」という概念に着目した観光のあり方、「ユニバーサルツーリズム」への認知が高まっており、2000年以前から事業の中核に据え置いてきた富士レークホテルは、まさに「ユニバーサルツーリズム」の先駆け的存在といえるでしょう。

ユニバーサルデザイン対応の具体的な例としては、荷物の多い訪日外国人や、ベビーカーなど小さな子供連れのファミリーにとっても使い勝手の良いバリアフリー対応などの他、客室露天風呂の完備(一部のユニバーサルデザイン対応の部屋)、加えてアレルギーや好き嫌いへの対応はもちろん、ミキサー食への対応など食のユニバーサル対応にも取り組んでいます。

一方、同社社長の井出泰済氏曰く、「インバウンド比率は20%程度であり、他のホテルと比較すると低いものの、政治や天候などの影響を鑑みて、日本人観光客とのバランスが重要」と語っています。

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訪日外国人観光客が快適に過ごせるホテル作りを

新型コロナウイルスは未だに世界で猛威を振るっており、感染拡大は衰えの兆しを見せませんが、世界観光機関UNWTO)が7月30日に発表したレポートによると、世界217の国や地域のうち、約40%を占める87の国や地域で、入国制限の緩和が進められていることが明らかになっています。

感染予防にはこれまで通り注力しつつも、新たな生活様式で経済活動を再興し、ウィズコロナ時代を乗り切ろうとする動きが広まっていることが伺えます。

日本における訪日外国人の受け入れにはまだ時間がかかると見られていますが、その場合ホテルなどの宿泊施設はインバウンド最前線で受け入れを担うことになるため、現在の準備期間を有効活用し、インバウンド施策の見直しに充てることでこれまで以上の集客が期待できます。

本記事で取り上げた成功事例を踏まえ、訪日外国人観光客がコロナ禍でも快適に過ごせるよう受け入れ体制を整えることが、今後一層求められるようになるでしょう。

<参照>

観光庁:訪日外国人消費動向調査 2019年年次報告書


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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

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