新型コロナウイルス感染拡大の影響により、ヨーロッパ各国でロックダウンが実施されていた2020年3月から5月まで、プロのスポーツ選手は屋外でのトレーニングが禁止されていました。ヨーロッパを本場とするスポーツの一つである自転車競技においても、選手たちは室内でのトレーニングを余儀なくされました。
この期間、選手たちの室内トレーニングのお供となったのが「Zwift(ズイフト)」と呼ばれるアプリケーションです。「Zwift」では、自転車とローラー台そしてPCやタブレットなどの端末をインターネットとつなげることで、仮想空間で自転車レース楽しむことができます。
コースの景色を楽しめる屋外のトレーニングと比較すると、室内の自転車トレーニングは単調なものになりがちです。しかし、多くの選手はZwiftを利用しバーチャル空間でのトレーニングを実施し、2020年7月にはZwift上で自転車レースが開催されました。
今回の記事では、こうしたZwiftのようなバーチャルな空間でのスポーツが、観光産業に与える影響について分析します。
【訪日ラボは、インバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を8月5日に開催します】
バーチャル「ツール・ド・フランス」
多くの自転車選手がロックダウン期間中にZwiftを使って練習したことで、選手同士がネット上でつながり、バーチャル上でも自転車レースが数多く開催されるようになりました。
たとえバーチャルなものであっても、「レースに出たい」あるいは「レースに勝ちたい」という思いは、自転車選手のモチベーション向上につながります。
7月には、Zwift上で「ツール・ド・フランス」が開催され、多くの観客を集めました。本来リアルで開催されるはずだったツールのコースの一部をZwift上で再現しレースすることにより、自転車レースを見ることができなかった多くの人が世界各国からネットを通じて、Zwiftのレースを見守りました。
ツール・ド・フランスは毎年7月にフランスで開催される、世界最高峰の自転車ロードレースです。例年現地に訪れる平均観客数は1,000万人、TVなどによる視聴者数は30億人とも言われています。
日本では、J SPORTSがこのバーチャル版ツール・ド・フランスTV中継しました。同様にほかの国でもTV中継に踏み切ったテレビ局があり、実際にこのバーチャル自転車レースを視聴した人の数はもっと多いものと考えられます。
「Zwift」とは?
ヨーロッパがロックダウンしていた約3か月の間、プロスポーツ選手は屋外でトレーニングをすることができませんでした。自転車選手も例外ではなく、室内でトレーニングすることとなりました。
そんな多くの自転車選手の室内練習のお供となったのが「Zwift」というレースアプリです。Zwiftは自転車の室内練習で使用する「ローラー台」に自転車を取り付けPCなどの端末に接続することで、室内で自転車に乗りながら仮想空間で自転車レースをしている感覚を味わえます。
Zwiftを使うことにより、自転車選手たちは新型コロナウイルスの感染や天候の心配なく、トレーニングを続けることができました。
アマチュアサイクリストや自転車ファンもZwiftを活用して、好きな選手とつながる
Zwiftはバーチャル上での「レース」のためだけのものではありません。プロの自転車選手やチームの中には、一般のサイクリストに向けてSNSで告知し、仮想空間の中でファンと交流するイベントも開かれました。

Twitter:Equipo Kern Pharmaの投稿(https://twitter.com/EqKernPharma/status/1241372502854643717)
世界中にいるアマチュアサイクリストにとって、バーチャル空間は場所の制限を取り除き、世界中のサイクリストとともにサイクリングを楽しむ機会が生まれています。
バーチャルレースを通してリアルの地に興味を持ってもらう
こうしたバーチャルレースの参加者や観戦者をいかにリアルのレースの場に引きつけることができるかどうかが、観光産業におけるバーチャルレースの利用方法の一つとなるのではないでしょうか。
レースの舞台となるのは、リアルの世界の自転車レースで使用されている場所やコースです。Zwiftの登場により、バーチャルの世界でプロが走る有名コースをアマチュアサイクリストも自転車走行できるようになりました。
ただし、バーチャルの世界での体験と、実際にコースを走ることで体験できることは、まったく別のものです。例えば、リアルな世界の自転車レースでは風向きや風速が勝負の行方を左右する重要な要因となりますが、バーチャルの世界では風の強さを体感することはできません。
また、リアルなレースの気温や雨の天候条件、そして道路の路面状況といったものも、仮想世界には存在しないものです。
バーチャルレースの参加者や観戦者の多くは、リアルなコースを実際に自分で体験してみたいと考える人が少なくありません。たとえば、肌に触れる風や気温などは、リアルな世界でのみ体験できるものです。
仮想空間でのレースは、リアルな道・景色といった観光資源の価値について参加者に訴えかけるよいチャンスとなると考えられます。
グアムでは、今回の新型コロナウイルスの感染拡大により中止になってしまったスポーツイベントがバーチャルものに変更され、参加者の関心を集めました。
バーチャルコンテンツで、関心をつなぎとめる効果も期待
スポーツ以外でバーチャルとリアルをつなげた好例のひとつとして「ポケモンGO」が挙げられます。同アプリをインストールしたスマートフォンを持った人々が街の中を歩き回ってポケモンを捕獲する様子は、日本だけでなく、世界の多くの国で見られました。
サイクリングと掛け合わせるのであれば、リアルな世界のコースを自転車で走りながら、スマートフォンのアプリを使って何らかのアイテムを獲得し、よりサイクリングが楽しくなるようなプログラムも考案できそうです。
新型コロナウイルス感染拡大に伴い世の中が大きく変わった世界規範「ニューノーマル」のもとでは、遠方に旅行することに一抹の不安を抱えている人々もいます。その中には、スポーツ観戦やスポーツイベントへの参加を趣味にしている人もいると考えられます。こうした人々の関心をつなぎとめておくためにバーチャルを活用することは、今後有効な手段となるでしょう。
<参照>
日刊スポーツ:遠藤健太さん 自転車オンライン競技会で交流を
OLYMPIC CHANNEL:F1グランプリシリーズがバーチャルで開催。“おうち時間”を充実させる自転車やヨガの人気も急上昇【スポーツのデジタル化】
BiCYCLE CLUB:バーチャル版ツール・ド・フランス、NTTプロサイクリングが総合優勝|パリ
Cyclist:今さら聞けないツール・ド・フランスの基礎知識 30億人が熱狂する一大イベントとは?
Cyclowired.jp:全世界50万人が登録するバーチャルサイクリング「ズイフト」を体験 その魅力と導入方法
GUAM VISITORS BUREAU:グアムのスポーツシーンが変わる?! バーチャルスポーツイベント、続々開催!
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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
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